脳神経外科ジャーナル
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24 巻, 5 号
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特集 脊椎・脊髄疾患の最新治療戦略
  • 原 政人
    2015 年 24 巻 5 号 p. 280-291
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/25
    ジャーナル フリー
     頚椎固定術には前方法と後方法がある. 固定術の絶対適応は, 頚椎に不安定性があることである. 相対適応としては, 椎間操作に伴う医原性不安定症のための固定, 高度の変形を伴った症例での矯正固定, 減圧効果を高めるための矯正固定, 頚椎後縦靱帯骨化症での病態の進行を抑制するための固定などがある. 固定の方法は種々報告されているが, それぞれの手技においてのピットフォールやリスクを常に意識しておく必要がある. 現在の代表的な手術方法として, 前方では前方除圧固定術 (ACDF) があり, 後方ではpedicle screw, lateral mass screwとrodを組み合わせた固定術などがある. これらの手術の実際と起こり得る合併症について論じた.
  • —最新固定技術を含めた適応と方法—
    高橋 敏行, 花北 順哉, 渡邊 水樹, 河岡 大悟, 大竹 安史, 小野 功朗, 牧野 恭秀
    2015 年 24 巻 5 号 p. 292-300
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/25
    ジャーナル フリー
     腰椎変性疾患に対するinstrumentationを併用した脊椎固定術は, 脊椎安定性を即時に獲得し, 腰仙椎配列を良好に維持するために必要不可欠な手技であり, 固定手技や機器の進歩, 合併症予防の啓発や低侵襲化の加速により, 汎用性が高まっている. 本編では従来から行われている各種腰仙椎固定術のほか, 最新固定術を含めた術式の利点欠点, 生体力学的特徴, 有害事象と手術のポイントについて概説する. また, 近年注目度の高い低侵襲固定術, 手術完成度を高めるための安全対策と術中支援, 骨粗鬆症や骨病変などを伴う脆弱性脊椎に対する固定インプラントの開発や工夫などについても言及する.
  • —手術根治性と機能回復の両立を目指して—
    髙見 俊宏, 内藤 堅太郎, 山縣 徹, 大畑 建治
    2015 年 24 巻 5 号 p. 301-309
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/25
    ジャーナル フリー
     脊髄腫瘍の手術では, 腫瘍の性状・局在等によって手術難易度が大きく異なる. 個々の病状を慎重に判断し, 最善の手術方針を決定しなければならない. 腫瘍制御と四肢・体幹機能温存の最良バランスが治療ゴールである. 手術手技, 神経モニタリング・術中画像による手術支援およびリハビリテーション・薬物治療などの術後療法の総合力が求められる. 本稿では, 手術方針で問題となるダンベル型神経鞘腫, 脊柱管腹側髄膜腫および髄内腫瘍を中心に, 手術方針および技術的問題について記載する.
  • —術中蛍光診断/神経内視鏡を併用して—
    遠藤 俊毅, 中川 敦寛, 冨永 悌二
    2015 年 24 巻 5 号 p. 310-317
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/25
    ジャーナル フリー
     本稿では脊髄髄内腫瘍, 脊髄動静脈奇形の手術を安全かつ確実に行うための手術中の工夫について紹介した. 脊髄髄内腫瘍の手術では, 5-ALAあるいはICGによる術中蛍光診断が有用である. これにより脊髄と髄内腫瘍の境界判別が可能になり, 腫瘍摘出率の増加と良好な予後につながった. 脊髄動静脈奇形の手術では, 三次元融合画像を用いて複雑な血管構造を可視化することが, 治療方針の決定に役立った. 手術では, 顕微鏡に神経内視鏡を併用すると複数の光軸からの観察が可能になる. 脊髄背側から進入し脊髄腹側の血管構造観察と手術操作が可能となり有用である. 脊髄病変の最大限の摘出/切除と脊髄神経機能温存の両立のために, 術中の可視化は重要である.
  • 菅原 卓, 東山 巨樹, 渡部 直子, 内田 富士夫, 神志那 弘明, 井上 望
    2015 年 24 巻 5 号 p. 318-326
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/25
    ジャーナル フリー
     三次元コンピューター技術の進歩は, 手術のプランニング, シミュレーション, ナビゲーションの領域で技術革新をもたらしたが, 本論文ではわれわれの脊椎外科分野における取り組みを紹介する. 脊椎固定術において, 術前に3Dビューワーでスクリューの設置部位を決定し, 3Dプリンターで椎弓に密着するスクリューガイドテンプレートを作成, 術中に正確なスクリュー誘導を実施している. また, 工業用モデリングソフトと3Dチタンプリンターを使用して新規のオーダーメイド脊椎制動具を開発し, 臨床試験に向けて準備中である. これらは医工連携により実現したプロジェクトであり, 今後も産学官が一体となった取り組みが必要である.
症例報告
  • 竹中 朋文, 芝野 克彦, 梅垣 昌士, 佐々木 学, 鶴薗 浩一郎, 松本 勝美
    2015 年 24 巻 5 号 p. 327-333
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/25
    ジャーナル フリー
     NOACは種々のランダム化試験においてワルファリンと比較し頭蓋内出血の発生率が低いことが知られている. しかしNOAC内服中の頭蓋内出血における対応は, いまだ明確なガイドラインが設立されていないのが現状である. われわれはNOAC内服中にいずれも緊急外科的治療を要した頭蓋内出血を3例経験した.
     1例目は82歳女性で, ダビガトラン最終内服20時間後に開頭血腫除去術を施行した. 術中および術後止血は良好で, 輸血も要さなかった. 2例目は77歳男性で, 正中偏位を伴う急性硬膜下血腫を認めた. リバロキサバン最終内服後17時間経過していたが, APTTは74.9秒であった. 新鮮凍結血漿やPCC投与しながら手術を施行した. 術中出血量は400mlであった. 3例目は78歳男性で, 右側頭頭頂葉30mm大の外傷性脳内血腫を認めた. 最終内服より11時間経過しての外傷であったため, 当初集中治療室にて保存的加療とした. しかし3時間後意識レベルがGCS 14点より8点まで低下した. 頭部CTでは血腫は70mm大に増大を認めた. 新鮮凍結血漿を投与しながら手術を施行し, 止血を得た. NOAC内服中の外傷性頭蓋内出血患者には, 慎重な経過観察として頻回な頭部CT検査や血液検査ならびに, 有用性は明確に証明されていないがPCCや, あるいはFFPの準備が必要であると思われる.
  • 土持 諒輔, 井上 琢哉, 下釜 達朗, 金城 満, 鈴木 聡
    2015 年 24 巻 5 号 p. 335-340
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/25
    ジャーナル フリー
     舌下神経管近傍に発生した腫瘍で, 当初神経鞘腫や髄膜腫を疑い腫瘍切除術を行ったが, その病理学的診断がsolitary fibrous tumor (SFT) であった症例を経験したので報告する.
     症例は55歳, 女性. 2012年7月ごろより舌が右に引きつるようになり, よく噛むようになった. 近医にて右舌下神経麻痺を指摘され, 当科紹介となった. 頭部MRIで延髄右腹側から右舌下神経管内に進展する最大径20mm大の腫瘤を認めた. 右舌下神経管は拡大し, 延髄は腫瘤により左背側へ圧排されていた. 舌下神経鞘腫や大孔前縁髄膜腫を疑い, 右外側後頭下開頭腫瘍切除術を施行した. 摘出病変の永久病理標本では類円形∼紡錘形の腫瘍細胞が増生した膠原線維間に増殖しており, 免疫染色で抗CD34および抗STAT6抗体による免疫染色が陽性であったことからSFTと診断した.
     SFTは多くは胸膜に発生する腫瘍であるが, 中枢神経系に発生した例も報告されている. これらには特徴的な画像所見がなく, 中枢神経系に発生し得る腫瘍として鑑別に挙げておくことが必要と考えられた.
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