脳神経外科ジャーナル
Online ISSN : 2187-3100
Print ISSN : 0917-950X
ISSN-L : 0917-950X
24 巻, 8 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
特集 良性脳腫瘍の診断と治療の可視化
  • 中村 英夫, 矢野 茂敏, 倉津 純一
    2015 年 24 巻 8 号 p. 506-512
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/26
    ジャーナル フリー
     頭蓋内に発生する原発性の腫瘍で, 最も多い腫瘍が髄膜腫である. 悪性髄膜腫の場合は外科的手術に加えて放射線治療を追加することもあるが, ほとんどの髄膜腫は外科的手術だけの治療のことが多い. 症候性の髄膜腫であれば手術適応のことがほとんどであるが, 無症候性の場合は手術適応の決定に関してさまざまな要因を考慮する必要がある. 患者の要因としては年齢とADLなどがあり, 腫瘍の要因としては診断時のサイズ, 発生部位などが挙げられる. 発生部位に関してはskull baseに存在する髄膜腫は, それ以外の髄膜腫に比べて増殖速度が緩徐であるという報告がある. 最近, 2cm未満の髄膜腫が5年以内に症候性になることはないとの報告も認められる. われわれの施設で行った約600例の無症候性の髄膜腫のフォローアップに関していえば, 63%の腫瘍はフォローアップ期間に増大を示さなかった. 5年以上フォローアップした患者の37%において腫瘍の増大を認めたが, 症候性となったものは16%であった. 無症候性の髄膜腫に関しては, 腫瘍のサイズ, 発生部位を踏まえて, その自然歴をよく理解し, 外科的治療に踏み切るべきであり, 経過観察でよい症例に関しては無理に手術を行う必要はないと思われる. 髄膜腫の自然歴, 外科手術の適応, などに関して, 最近の文献を踏まえて概説する.
  • 鮫島 哲朗, 酒井 直人, 大石 知也, 鈴木 智, 川路 博史, 小泉 慎一郎, 天野 慎士, 野崎 孝雄, 平松 久弥, 徳山 勤, 杉 ...
    2015 年 24 巻 8 号 p. 513-520
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/26
    ジャーナル フリー
     錐体骨先端部・斜台錐体部髄膜腫に対する治療は, 高度な手術技術と豊富な経験を要する. 特に周辺構造物との癒着の強い症例においては「機能温存」と「摘出率」という相反する問題に直面することになるが, この部位における髄膜腫は病理学的には良性であるため, 機能が温存できる範疇で可及的に摘出を行い, 再発率を抑えて, 患者のQOLを長期的かつ良好に維持させてあげることが最も理想的な治療と考える. 術前画像診断や手術技術の向上はもちろんのこと, 経過観察, 多段階手術, 放射線治療等を含めた総合的な判断力とバランスの良い治療が要求される.
  • 富永 篤, 木下 康之, 栗栖 薫
    2015 年 24 巻 8 号 p. 521-527
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/26
    ジャーナル フリー
     先端巨大症の治療の第一選択は手術である. 治癒率向上のためには手術成績を向上させることが最も大切である. しかし, 海綿静脈洞浸潤を伴う腺腫では手術のみで根治は困難である. 手術で治癒できない場合には薬物療法が必要である.
     手術療法は経鼻的下垂体手術が基本的治療法であり, 内視鏡下手術も顕微鏡下併用, 内視鏡単独含めて一般的になりつつある. 一般に先端巨大症の手術治癒率はおよそ70%前後である. 手術により治癒できない症例では, 薬物療法が行われる. 薬物療法はsomatostatin analogが主流で, わが国では現在2剤が使われておりIGF-I正常化率はおよそ50~70%とされる. そのほかにdopamine agonistやGH receptor antagonistが用いられる. Dopamine agonistは内服薬であるが有効率は低い. GH receptor antagonistは, 有効率は70~90%と高いが副作用も多い. これらの薬物を併用することにより, IGF-I正常化率を高めることができる. 放射線治療は主に定位的放射線治療が行われるが, IGF-I正常化率は60~70%とされ, 正常化まで数年かかる. 今回は手術療法のトピックス, 薬物併用療法を中心に述べる.
  • 長谷川 安都佐, 小藤 昌志, 高木 亮, 長縄 憲亮, 伊川 裕明, 岸本 理和, 辻 比呂志, 鎌田 正
    2015 年 24 巻 8 号 p. 528-534
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/26
    ジャーナル フリー
     頭蓋底部の脊索腫は胎生期の脊索の遺残組織より発生するまれな腫瘍である. 治療の第一選択は手術だが, 重要臓器と近接している場合, 完全摘出は困難である. このような症例に対して, 術後放射線治療が行われる.
     放射線医学総合研究所では1994年から重粒子線 (炭素イオン線) 治療が開始された. 炭素イオン線はほかのイオン種や光子線と比較して, 強い生物学的効果と良好な線量分布を併せ持つ. そのため, 放射線抵抗性腫瘍に対する効果が確認されている. 1995年5月~2012年1月まで, 50例の頭蓋底脊索腫に対して炭素イオン線治療が行われた. 本稿では, 放射線医学総合研究所で炭素イオン線治療が行われた頭蓋底脊索腫の成績について概説する.
  • 四方 聖二, 小西 良幸, 林 基弘
    2015 年 24 巻 8 号 p. 535-543
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/26
    ジャーナル フリー
     頭蓋咽頭腫は組織学的良性腫瘍であり全摘出により完全治癒が期待できる一方, 重要な神経血管組織との癒着, 浸潤がある場合には全摘出は通常困難であり, 深刻な術後合併症はその後の患者QOLを大きく損なうことにもつながる. 術後残存腫瘍や再発腫瘍に対するガンマナイフ定位放射線手術は比較的新しい治療技術であり, 罹患年齢が若年であり生命予後が比較的よいため長期的な治療成績を明らかにすることが必須である. 本稿の目的は自験例をもとにその長期的な治療成績を明らかにすることである.
     対象症例は51例 (男性30例, 女性21例) で年齢中央値は44歳であった. 全例で組織診断がなされ, 6例で過去に放射線照射が行われていた. 腫瘍体積中央値は1cm3, 25病変が充実性, 16病変が囊胞性, 14病変が混合性であった. 腫瘍辺縁に対して照射線量中央値12Gyの照射が行われた. 前視路最大線量中央値は9.6Gyであった. 追跡脱落症例はなく, 追跡期間中央値は71カ月であった. 5年全生存率は92%であった. 局所再発は16病変で確認され, 3年および5年後局所制御率はそれぞれ88%, 67%であった. 遠隔再発は6例で経験され, 5年遠隔再発率は11%であった. 6例で腫瘍増大に伴い視機能の悪化がみられたが, 放射線誘発性視神経障害は経験されなかった. 中枢性尿崩症が2例で合併した. 頭蓋咽頭腫に対するガンマナイフ定位放射線手術は長期的に満足のいく局所制御率と低い治療関連リスクを両立する補助治療手段であり, われわれの治療成績は諸家の報告に比肩するものであった. しかしながら, 腫瘍制御率を向上させる余地はまだ残されており, 線量の上積みや寡分割照射の導入など技術的改善に継続して取り組む必要がある.
症例報告
  • 高橋 和孝, 松本 康史, 山口 卓, 小野 隆裕, 小田 正哉, 笹嶋 寿郎, 清水 宏明
    2015 年 24 巻 8 号 p. 544-550
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/26
    ジャーナル フリー
     大型でhypervascularな聴神経腫瘍は摘出術のリスクが高い. 今回塞栓術と二期的摘出術を施行して良好な結果を得た1例を報告する.
     症例は31歳, 男性, 家族性神経線維腫症Ⅱ型 (neurofibromatosis 2), 13年前に右聴神経腫瘍を手術した. その後左聴神経腫瘍が増大, 左聴力消失, 歩行障害をきたし, 1年前に摘出術を行った. 術中出血のため部分摘出を行い, 一時小脳症状は軽快したが, 再度悪化し今回の手術となった. 腫瘍は7cmで脳幹を強く圧排, 腫瘍内動静脈シャントを有した.
     液体塞栓物質を用いての塞栓術後, 二期的に亜全摘術を行い, 術後経過良好であった. 大型でhypervascularな聴神経腫瘍では, 塞栓術と二期的手術が有用な選択肢である.
  • 宮田 武, 花北 順哉, 高橋 敏行, 渡邊 水樹, 河岡 大悟, 北原 孝宏, 服部 悦子
    2015 年 24 巻 8 号 p. 552-559
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/26
    ジャーナル フリー
     首下がりは, 座位や立位時に首が垂れ下がり前方注視困難を呈する症候であり, さまざまな基礎疾患で生じ得る. 一期的な前後方よりの固定術で改善した首下がりの2例を報告する. 症例1は70歳女性, 数年前より立位時の頚部前屈が出現, 四肢のしびれも合併し当科入院となった. 症例2は83歳女性, 9カ月前より歩行障害, 4カ月前より歩行時頚部前屈を生じ, 巧緻運動障害も呈し当科入院となった. 2例ともC4, 5の動的不安定性を認め, 前後方の固定術を一期的に行い, 首下がりは消失した. 首下がりに対し外科治療が実施された報告例をもとに, この病態に対する外科治療法を中心に検討を加えた. 症例ごとの治療方針の熟慮と, 経時的なフォローが肝要な病態と考えられた.
治療戦略と戦術を中心とした症例報告
エラータ
feedback
Top