脳神経外科ジャーナル
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24 巻, 9 号
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特集 基礎研究から臨床へ―トランスレーショナルリサーチの現状と展望―
  • 名村 尚武
    2015 年 24 巻 9 号 p. 592-596
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/25
    ジャーナル フリー
     新規治療法の臨床応用を考慮する前段階として, 通常, 妥当な動物モデルを用いた前臨床試験が行われる. 前臨床試験で観察される効果の程度とデータの頑強性が, 臨床試験に移るかどうかの判断の根幹となる. 適切な動物モデルと評価法の選択はもとより, 試験の各過程で混入し得るバイアスを最小限に抑え, 得られたデータの適切な統計学的評価が, 臨床へのトランスレーションの可能性に関する予測能 (predictive value) を高めるために役立つと考えられている. 脳梗塞に対する神経保護療法の前臨床試験を例に, トランスレーション予測能を最大化するための近年の動向を概括する.
  • 土井 大輔, 髙橋 淳B
    2015 年 24 巻 9 号 p. 597-604
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/25
    ジャーナル フリー
     パーキンソン病に対して胎児中脳腹側細胞移植の効果が報告されているが, 移植細胞の量的・質的問題があり標準治療にはなっていない. ES/iPS細胞を用いた細胞移植ではこれらの課題を解決できる可能性がある. さらに, iPS細胞を用いた場合には自家移植が可能である. われわれはヒトES細胞由来のドパミン神経がサルのパーキンソン病モデルに生着・機能することを示した. また分化誘導法の改良とソーティングにより効率よく大量のドパミン神経前駆細胞を作製し, ヒトiPS細胞由来のドパミン神経がラットに生着し機能することを確認した. さらに, サルiPS細胞を用いて自家移植と他家移植の直接比較を行い, 自家移植では免疫反応がほとんど起こらないことを示した. これらの成果に基づき, われわれは孤発性パーキンソン病患者を対象として臨床研究を行い, ヒトiPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞の安全性を検討する予定である.
  • Johnny Wong, Ivan Radovanovic, Michael Tymianski
    2015 年 24 巻 9 号 p. 605-613
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/25
    ジャーナル フリー
      Optimal management of unruptured brain arteriovenous malformations (bAVMs) remains controversial. Unruptured bAVMs are believed to confer a life-long risk of hemorrhage at approximately 1-4% per year. Treatment modalities, such as neurosurgery, radiosurgery and embolization, are able to eliminate the risk of hemorrhage, but are associated with treatment risks. Thus the risk/benefit rationale of treating unruptured bAVMs is unclear.
      ARUBA (A Randomized Trial of Unruptured Brain Arteriovenous Malformation) was a multi-center randomized controlled trial conducted to compare conservative medical management and active intervention. It was terminated early due to a statistically significant superiority of medical management over interventional treatment, but has itself raised controversy because of its design, results and conclusions. Since its publication in 2014, the implications of ARUBA have already affected neurosurgical practice.
      However, due to ARUBA's limitations, the findings are not necessarily generalizable to all bAVMs. Treatment of bAVMs should be evaluated on an individual basis, accounting for the location of bAVMs, features of the angio-architecture, patient characteristics, and the individual institutions' experience with each modality of treatment.
原著
  • 恩田 敏之, 笹森 大輔, 米増 保之, 橋本 祐治, 本田 修, 高橋 明, 野中 雅, 大坊 雅彦
    2015 年 24 巻 9 号 p. 614-621
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/25
    ジャーナル フリー
     コイル塞栓術後フォローアップにCTAを用いることはartifactの問題があり, 困難であった.
     Dual energy CTを用いることにより, 単色X線画像が算出可能となり, ビームハードニング効果を抑制できるようになった. さらに, エネルギーサブトラクション処理を用い, 塞栓コイルの消去と造影剤の高いCT値の確保を行うことにより, コイル近傍の造影剤の画像化が可能となり, 塞栓術後再開通の評価が実現した.
     また, エネルギーを最適化することより, ステントの描出もより鮮明となりステントそのものの評価も可能となった. ステントの評価が可能になることで, 今後, 塞栓症のリスク評価, 抗血小板剤の継続の判断に影響を与える可能性がある.
  • 長田 秀夫, 長谷 公洋, 豊岡 輝繁, 和田 孝次郎, 大谷 直樹, 富山 新太, 戸村 哲, 上野 英明, 森 健太郎
    2015 年 24 巻 9 号 p. 623-631
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/25
    ジャーナル フリー
     脳浮腫の強い深在性実質腫瘍の手術におけるexoscope (Karl Storz) とViewSiteTM (Vycor Medical) との併用の有用性について検討した. 2014年3~11月の6例でViewSiteを挿入後, exoscope下での腫瘍摘出を実施した. 腫瘍はViewSite先端部に接した表面から “inside to outside” の様式で摘出され, 悪性リンパ腫の1例以外5例で肉眼的に全摘出した (4例は転移, 1例は放射線壊死). 顕微鏡下で残存腫瘍を認めた症例と止血を要した症例がおのおの1例存在した. Exoscopeは操作空間が広く, 明るく鮮明な画像が得られるため, 深在性脳腫瘍におけるViewSiteとの併用の有用性が示唆された.
症例報告
  • 中井 友昭, 岩橋 洋文, 森下 暁二, 藤本 昌代, 田代 敬, 相原 英夫
    2015 年 24 巻 9 号 p. 632-640
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/25
    ジャーナル フリー
     67歳, 女性. 水頭症による頭蓋内圧亢進症状で発症し, 小脳橋角部と脳室内に多発病変を認め, 脳室内病変に対する内視鏡下生検にて類表皮囊胞の診断を得た. シャント術のみで経過観察としたが, 腫瘍増大を認め, 後頭蓋窩の腫瘍本体の摘出にて扁平上皮癌の診断に至り, 類表皮囊胞の悪性転化が示唆された.
     発症時点で無菌性髄膜炎や水頭症を合併するなど, 非典型的所見が複合的にみられたため診断に苦慮し, 髄腔内播種を呈し, 放射線・化学療法を行うも経過不良であった. 類表皮囊胞の悪性転化はまれとされるが, 当初より造影効果を有するなど, 悪性化を示唆する所見も認めており, 腫瘍本体の積極的摘出にて早期診断・治療につながった可能性がある.
治療戦略と戦術を中心とした症例報告
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