脳神経外科ジャーナル
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25 巻 , 5 号
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特集 脳機能解剖の多次元解析
  • 藤井 正純, 前澤 聡, 岩味 健一郎, 齋藤 清
    2016 年 25 巻 5 号 p. 396-401
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/25
    ジャーナル フリー
     大脳白質解剖は, 古くは17世紀から行われている技術であるが, 前世紀にいったんその役目を終えたかにみえた. しかし, 近年のトラクトグラフィーなど画像診断の進歩や, 高次脳機能を含む脳機能に関する知見の集積, 覚醒下手術の発展などに伴って, ヒトの脳解剖, 特に白質解剖は再度その重要性が増しており, 日米欧でのプロジェクトの進行など, まさにルネッサンスを迎えている. 実際, 現在でも新たな白質線維とその機能が次々と「発見」され, 報告されている. また, これまでの脳という臓器に対する皮質中心の固定化した局在的脳機能観から, よりダイナミックなネットワークとしての脳機能観への新たな展開がみられる. 脳神経外科手術においても, これまでの比較的単純な神経機能温存を超えて, 豊かな社会生活を営むうえで高次脳機能の温存の重要性が認識され, 脳神経外科医にとって今後こうした白質解剖と脳機能に関する十分な知識が欠かせない. 一方言語の神経基盤は, 古典的なブローカ野・ウェルニッケ野とこれらを結ぶ弓状束からなる単純なモデルから, 現在では, 大きく, 上縦束を中心とする背側の音韻処理系と下前頭後頭束を中心とする腹側の意味処理系からなる基盤的二重回路に複数のサブネットワークが関与するダイナミックなネットワークモデルに発展している. これら言語機能を支える神経基盤について, 特に関連する白質解剖につき最新の知見を交えて紹介した. 言語を含めた高次脳機能の温存には, 皮質だけでなく白質についても熟知する必要がある.
  • 田岡 俊昭
    2016 年 25 巻 5 号 p. 402-410
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/25
    ジャーナル フリー
     生体内の水分子の自己拡散を画像化する拡散画像には, 早期梗塞の検出などに有用な拡散強調像のみではなく, 拡散検出磁場のかけ方により, さまざまな情報を得ることができる. 正規分布モデルによる拡散テンソル法はトラクトグラフィーとしての応用が広く行われているが, 複雑な生体の微細構造の情報を得るには限界がある. 最近では強い拡散検出磁場を用い, 正規分布モデルによらない拡散画像の撮像法や解析法が発達しており, 組織のより詳細な構造の解明が可能となってきている. また, 逆に弱い拡散検出磁場をかけて組織灌流を描出する手法も最近実用化されてきている. これらのさまざまな拡散画像の手法に関して若干の物理学的事項も交えて考察したい.
  • 山尾 幸広, 國枝 武治, 松本 理器
    2016 年 25 巻 5 号 p. 411-420
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/25
    ジャーナル フリー
     術後の脳機能温存のためには脳局所の機能だけでなく, 皮質間ネットワークの把握が重要である. 単発電気刺激 (1Hz) を皮質に与え皮質皮質間伝播を介した皮質・皮質間誘発電位を計測することで, 刺激部位と誘発電位記録部位間の皮質間結合を優れた時間空間分解能で機能的に探索できる. 高頻度電気刺激 (50Hz) で刺激部位の機能を同定し, 両者の刺激を組み合わせることで皮質間ネットワークのマッピングが可能である. この手法を覚醒下手術中の皮質・白質刺激に応用し, 背側言語経路に関わる白質線維束の機能同定と結合する皮質の追跡に成功した. 弓状束の術中機能モニタリング法として今後の臨床応用・普及が期待される.
  • 定藤 規弘
    2016 年 25 巻 5 号 p. 421-426
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/25
    ジャーナル フリー
     脳血流計測に基づいた脳機能画像法は, 入力を心理的差分法による課題で制御し, 出力たる神経活動変化を, 脳血流を介して計測することより, 特定の心的過程に対応する脳領域を画像化する方法として確立した. 一方, 機能的MRIにより, 内在的に駆動される局所神経活動のゆらぎを領域間での相関として捉えるネットワーク解析が可能となった. 課題不在時の局所神経活動相関を調べるdefault mode network研究は, 個体内解析に始まり, 対面で相互作用しつつある2者によって形成される神経活動をも対象とするところまで展開している. 個人間の関係性を定量的に研究する「間主観性」脳科学を大きく推進することが期待される.
  • 石合 純夫
    2016 年 25 巻 5 号 p. 427-434
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/25
    ジャーナル フリー
     神経心理学は, 局在性脳損傷によって起こるさまざまな症候を分析し, 病巣との関連から脳の働きを知ろうとする臨床神経心理学が基本となって発展してきた. このような症候論は, どちらかといえば亜急性期から慢性期の病態を扱っている. 一方, 脳神経外科領域の覚醒下手術中の電気刺激あるいは脳腫瘍等の切除過程で評価される症状は急性の病態をみていることになる. 症候論に加えて, 近年は機能画像研究や拡散テンソルトラクトグラフィ−等の脳画像研究の進展により, 神経心理学は, 巣症状の考え方から神経ネットワークとしての捉え方へと変化してきている. 急性に起こる症状はしばしば一過性であり, 神経ネットワークの冗長性によって, その構成部分のうち損傷されても機能脱落が慢性的とならない部位が少なくない. 脳神経外科手術においては, 術後1カ月頃の機能的予後を重視すべきであり, 覚醒下手術中の所見と臨床神経心理学の知見とのすり合わせを行うことが望まれる. 本稿では, 左半球の言語の神経ネットワークと右半球の空間性注意のネットワークに注目して, 必要十分な切除範囲を判断するのに役立つ情報を整理したい.
温故創新
原著
  • 原 敬二, 瀬尾 善宣, 野呂 秀策, 前田 理名, 伊東 民雄, 尾野 英俊, 中村 博彦
    2016 年 25 巻 5 号 p. 438-444
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/25
    ジャーナル フリー
     Cadaver dissectionや画像診断により錐体尖部近傍の解剖学的研究は数多く報告されてきた. 今回われわれは3D-CTAとMRI (CISS) を用い, 三叉神経圧痕つまりMeckel’s caveの周囲の骨構造, SPSの走行, Dorello’s canalの走行について検討した. 対象は57例 (男性18例, 女性39例 平均年齢57.8歳). 内訳は髄膜腫29例, 神経鞘腫21例, その他7例. 手術例の健側が基本で, 聴神経腫瘍など構造に影響のない症例では患側も検討した. 注意すべきは, Meckel’s caveを包むように骨性ridgeが存在する症例があること, SPSはcaveの下を通ることもあること, さらにDorello’s canalは3D-CTA上, 必ずしもbasilar plexusやIPSに包まれていないことである. これらはanterior petrosectomyをより安全に行える一助となる.
症例報告
  • 畝田 篤仁, 鈴木 健太, 大久保 修一, 平下 浩司, 柚木 正敏, 吉野 公博, 能島 舞, 溝渕 光一
    2016 年 25 巻 5 号 p. 445-452
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/25
    ジャーナル フリー
     テント上下に進展したsolitary fibrous tumor (SFT) はまれであり, 過去に10例の報告があるのみである. 栄養血管塞栓術後にテント上下からアプローチすることでほぼ全摘出できた症例を報告する. 患者は49歳, 女性. 2カ月前からのふらつきを主訴に来院した. 頭部MRIで右後頭蓋窩からテント上に進展する腫瘍を認めた. 脳血管造影で後頭動脈から栄養血管を認め, 小脳テント髄膜腫の診断で手術を行った. 栄養血管塞栓術後にテント上下に開頭し, 腫瘍を摘出した. 病理診断はSFTであった. SFTの術前診断は困難であるが, テント上下に進展する脳実質外腫瘍の鑑別として挙げる必要がある.
治療戦略と戦術を中心とした症例報告
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