脳神経外科ジャーナル
Online ISSN : 2187-3100
Print ISSN : 0917-950X
ISSN-L : 0917-950X
26 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
特集 State of the Art―難治例に対する手術―
  • 舟木 健史, 髙橋 淳, 宮本 享, JAM Trial Group
    2016 年 26 巻 1 号 p. 4-11
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/25
    ジャーナル フリー

     The Japan Adult Moyamoya (JAM) Trialは, 出血発症もやもや病に対する直接バイパス術の有効性を初めて示した無作為比較試験である. 事前に定められたJAM Trialのサブ解析では, 初回後方出血が再出血の予後予測因子かつ手術の効果修飾因子であることが明らかとなった. レンズ核線条体動脈・視床穿通枝・脈絡叢動脈から形成される脆弱側副路であるperiventricular anastomosisが, 後方出血群の高い再出血率を説明する鍵となるかもしれない. JAM Trialの血管撮影解析では, 脈絡叢動脈からの側副路や後大脳動脈病変の存在が, 初回後方出血に関わる要因であった. 脈絡叢動脈や後大脳動脈に関する知見の蓄積により, 出血発症もやもや病外科治療のさらなる発展が期待される.

  • 立嶋 智
    2016 年 26 巻 1 号 p. 12-20
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/25
    ジャーナル フリー

     フローダイバーターを用いた巨大脳動脈瘤に対する親動脈再建治療はきわめて根治性が高く, 動脈瘤治療戦略に大きな変革をもたらした. 動脈瘤という付帯現象を治療する瘤内塞栓術と違い, 病態の本質である変性した親動脈自体を補強修復できるところがフローダイバーター治療の魅力である. 臨床導入から比較的歴史の浅い本治療にとって, 知識や経験の共有は重要な意味を持つ. 多くの治療選択肢の中からフローダイバーター治療に最適な症例を見出すには, フローダイバーター留置手技の難易度を予測する目利き力が鍵となる. その利点・欠点を正確に理解することで, 既存の治療法を含めた包括的脳動脈瘤治療戦略を立てることが可能となる.

  • —機器の開発改良—
    坂井 信幸, 今村 博敏, 坂井 千秋, 足立 秀光, 谷 正一, 徳永 聡, 船津 尭之, 別府 幹也, 鈴木 啓太, 足立 拓優, 奥田 ...
    2016 年 26 巻 1 号 p. 21-28
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/25
    ジャーナル フリー

     脳血管内治療は, いうまでもなく新しい機器と技術の開発と改良がその発展の原動力である. 離脱型コイルの開発により本格的に始まった脳動脈瘤に対する血管内治療は, バルーンやステントの開発と導入により大きく発展してきたが, すべて瘤内にいかにコイルを充塡するかが目標であった. Flow diverterはそれとは大きく異なり, 脳動脈瘤へ流入する血流を制御するメカニズムを基に開発された機器である. これによりこれまで治療が難しかった大型, 不規則形状の脳動脈瘤の治療が可能になった, しかし, 分岐部の大型瘤や遠位アクセスが難しい症例のflow diverter治療は困難であり, PulseRider, WEB, MEDINAなどの新しい機器が開発されている. 頚動脈ステント留置術はCEAに代わる治療として本邦では広く活用されているが, 術後の脳卒中を防ぐために細かい網状のストラットを有する次世代ステントmicro-mesh stentが開発された. 本邦ではCASPERの治験が始まっており, その適格基準にCEA normal riskも含まれており, 結果次第ではCASの適応が拡大される可能性があるため大きな関心が寄せられている. その他の治療でも機器の開発と改良は止まることはなく, 適切な適応判断, 技術の習熟, 結果の検証を通じて, 新しい機器の開発と改良が脳血管内治療の発展に貢献するよう努めねばならない.

  • —手術アプローチの考察—
    斉藤 延人, 金 太一, 中冨 浩文
    2016 年 26 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/25
    ジャーナル フリー

     脳幹へはさまざまな手術法が工夫されており, 本稿はその総説である. 手術適応として, 海綿状血管奇形, グリオーマ, 血管芽腫などが対象疾患となる. 原則として脳幹への進入は, 病変が脳幹表面に最も近い部位で切開を加えるが, そのために 「two-point method」 などの方法が提唱されている. また, 病変の存在下での脳幹内の核や神経路を把握する必要があり, 術前画像のシミュレーションで病変により圧排された解剖構造を把握することも有用である.

     手術による障害を最小限に抑えるためには, motor evoked potential (MEP), auditory brainstem response (ABR) やsomatosensory evoked potential (SEP), 心電図 (EEG), 顔面神経の電気刺激などの術中モニタリングが有用である.

     代表的な中脳背側からのアプローチとして, occipital transtentorial approach (OTA) がある. 背側と比較して中脳腹側へのアプローチは難しいが, orbitozygomatic approachとtrans-lamina terminalis approachなどが使用される. 橋から延髄の背面へのアプローチには, 第四脳室経由のアプローチがあるが, 第四脳室を広く開放する方法として, trans-cerebellomedullary fissure (CMF) approachが有用で, これにはlateral approachとmedial approachがある. 橋・延髄レベルの前側方からのアプローチとしてsubtemporal approach, anterior petrosal approach, far lateral (transcondylar) approachがあり, 錐体路を避けることが重要である.

原著
  • 舟越 勇介, 花北 順哉, 高橋 敏行, 南 学, 大竹 安史, 尾市 雄輝
    2016 年 26 巻 1 号 p. 37-45
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/25
    ジャーナル フリー

     高齢化社会の進行に伴い, 本邦では骨粗鬆症性椎体骨折患者が急激に増加している. 本来, この病態に対しては疾患の予防が最も重要であるが, いったん骨折が生じると, 適切な時期の外科的治療の介入が必要となる症例も存在し, その治療体制の構築が求められる. 当施設は脊髄脊椎疾患治療専門施設であり, 骨粗鬆症性椎体骨折の治療も地域医療と連携して積極的に取り組んでいる. 当施設でBKPが導入された2011年1月~2015年9月までの間で, 当施設における骨粗鬆症性椎体骨折患者は420例であった. このうち77例でBKP, 19例で脊椎除圧・固定術を施行し, 治療成績はともに良好であった.

  • 尾市 雄輝, 花北 順哉, 高橋 敏行, 南 学, 河岡 大悟, 大竹 安史, 舟越 勇介, 川内 豪
    2016 年 26 巻 1 号 p. 47-55
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/25
    ジャーナル フリー

     腰椎椎間板ヘルニアは日常臨床でしばしば出会う疾患である. 本研究では, 脊髄外科訓練施設である当院における直近5年間の腰椎椎間板ヘルニア707例を後方視的に評価し, 臨床的特徴や手術率等につき検討した. 昨今の高齢化を示唆する平均罹患年齢の上昇や, 当院が脊髄外科訓練施設であるという特色を示す手術率の高さ (38%) 等が特徴的であった. また, ヘルニアの高位別・突出方向別に詳細に検討することで, それぞれの特徴を捉えることができた. 本研究は1脊髄外科訓練施設におけるデータである. 今後も多施設からのデータの蓄積および解析を進めることで, この分野におけるわが国脳神経外科医の一層の取り組み推進の一助となることを願う.

症例報告
  • 佐瀬 泰玄, 内田 将司, 吉田 泰之, 伊藤 英道, 榊原 陽太郎, 田中 雄一郎
    2016 年 26 巻 1 号 p. 56-60
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/25
    ジャーナル フリー

     症例は6年前から左眼球痛を患う42歳の男性. 眼球痛は発作性で30秒ほど持続し, 眼球充血や流涙を伴い, 薬剤抵抗性であった. 症状からは三叉神経第一枝痛ないし結膜充血および流涙を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛 (short-lasting unilateral neuralgiform headache attacks with conjunctival injection and tearing : SUNCT) が疑われた. MR cisternographyで血管が左三叉神経に接触し神経軸の捻れがあっため, 微小血管減圧術を試みた. 錐体静脈と外側橋静脈の合流部が三叉神経を圧迫しており解除した. 術直後から眼球痛は消失した.

     本症例は開頭術で圧迫が確認でき減圧も有効で, 三叉神経第一枝痛と考えた. 三叉神経第一枝痛とSUNCTの鑑別は症状からは困難な場合も多く, 診断や治療に細心の注意を要する.

feedback
Top