脳神経外科ジャーナル
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27 巻, 11 号
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特集 体位頭位から微小解剖まで
  • 西岡 宏
    2018 年 27 巻 11 号 p. 796-802
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/25
    ジャーナル フリー

     拡大経鼻手術 (経鞍結節部アプローチ) は開頭術でblindとなりやすい視交叉腹側面を含めた鞍上部・第三脳室底・上位脳幹腹側面を脳の剝離・牽引なしに直視下に観察・操作できることが利点だが, 鞍上部の頭蓋咽頭腫ではその進展方向とともに視交叉・下垂体茎の位置が重要である. 経鼻手術, 拡大経鼻術ともに安全確実な手術操作の基本はblind操作を避けた内視鏡下のmicrosurgeryである. 内視鏡手術は最大の利点としてpanoramic viewが得られるが 「見えること」 と 「操作できること」 は異なり, また内視鏡と手術器具の干渉もある. 腫瘍被膜と視交叉・後交通動脈などの繊細な剝離操作には適切な体位および必要十分な術野の展開が必須であり, これには鼻腔を含めた解剖の理解とアプローチ各ステップ (鼻腔, 頭蓋底骨, 硬膜, くも膜内) での確実な操作が必要である. また腫瘍摘出後は髄液漏の程度に応じた確実な修復も不可欠である.

  • 堀内 哲吉, 本郷 一博
    2018 年 27 巻 11 号 p. 803-809
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/25
    ジャーナル フリー

     Pterional approachは, 脳神経外科直達手術の中で, もっとも汎用される手術方法である. Hambyがpterional approachという名前を用いて眼窩病変の治療を行い, Yasargilが一般的な治療方法として確立した. 術者・施設間での細かな相違はあるものの, 脳槽を必要十分に開放し病変に到達する方法である. 本項では, 歴史的背景について考察し, われわれの実際の方法について提示した. 今後もpterional approachは, さまざまな創意工夫がなされより洗練された治療方法になると思われる.

  • 大塩 恒太郎, 内田 将司, 松森 隆史, 伊藤 英道, 高砂 浩史, 田中 雄一郎
    2018 年 27 巻 11 号 p. 810-817
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/25
    ジャーナル フリー

     半球間裂アプローチ (IHA) は, 大脳正中およびその近傍病変に適応されるが, 前方からanterior IHA, middle IHA, posterior IHAの3つに分けると理解しやすい. 術野確保のため半球間裂を広げるが, 脳ベラによる脳圧排はときに静脈灌流障害や脳挫滅を招く. これらの合併症は, 術前に架橋皮質静脈を十分評価し, 左右のアプローチ側を決め, 静脈を十分に剝離することや頭位の工夫で避けることが可能である. 特に術野で大脳縦裂を水平にするhorizontal IHAは以下の理由により脳へのダメージを軽減しうる. 脳自重の利用で脳ベラ使用を最小限にし, 水平方向に広い術野を確保できる. 本法に必要な手術体位と頭部固定について症例を提示し解説する.

  • ―Intra- and Extradural Approach, Anterior Petrosal Approach, and Endonasal Approach―
    戸田 正博, 吉田 一成
    2018 年 27 巻 11 号 p. 818-827
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/25
    ジャーナル フリー

     Subtemporal approachは, 側頭葉内側病変に加え, 硬膜外頭蓋底病変にも応用されるため, さまざまなバリエーションがある. 基本的なポイントは, 側頭葉が前方で中頭蓋窩に深く陥入しているため, 脳ベラ圧排による脳損傷と静脈損傷を回避することである. 側頭葉圧排を軽減するために, 中頭蓋底に沿った開頭を行い, テント下病変に対しては錐体骨を追加削除する. 静脈損傷を回避するために, superficial sylvian veinの灌流路やLabbé静脈などの架橋静脈を術前にチェックし, 温存する工夫を行う. さらに, 最近の内視鏡手術の進歩により, 経鼻的に中頭蓋窩・側頭窩下へアプローチ可能となった. 一方, 鼻腔・副鼻腔構造はバリエーションが多く, 画像解析に基づく手術シミュレーションが重要である. 本稿では, 中頭蓋窩の手術解剖, 注意すべき静脈を含め, subtemporal approachの基本とバリエーションについて概説する.

  • 鰐渕 昌彦
    2018 年 27 巻 11 号 p. 828-834
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/25
    ジャーナル フリー

     錐体骨にまで病変が及ぶ頭蓋底病変に対して, posterior transpetrosal approachは有用な到達法である. 1970~90年代前半にかけ多数報告されており, lateral suboccipital approachよりも腹側からの術野が得られるのが特徴である. 腫瘍性病変のみならず, 血管病変に対しても応用可能であり, 本稿ではmastoidの解剖とmastoidectomyを中心とした手術手技について解説する.

     手術は側臥位で行い, 後頚筋群は損傷しないよう剝離し, 後頭骨とmastoidを露出する. 後頭骨をcraniotomyした後, mastoidectomyを施行する. 頬骨弓根部の背側, 乳様突起先端部, アステリオンの3点を囲むような三角部を骨削除していき, sigmoid sinus plate, mastoid antrumを確認する. その後, mastoid antrum内の外側半規管を目印として後半規管と上半規管を露出し, 顔面神経や頚静脈球を同定する. 実際の手術でposterior transpetrosal approachを単独で行うことは少なく, 多くの場合, 他のアプローチと組み合わせた手術野の展開が必要となる.

     Posterior transpetrosal approachを施行するには, 詳細な解剖学的知識と確かな頭蓋底drillingの技術が必須であり, 必要かつ十分に術野を展開することが重要である.

  • 中冨 浩文, 金 太一, 齋藤 延人
    2018 年 27 巻 11 号 p. 835-844
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/25
    ジャーナル フリー

     Lateral suboccipital approachは, 主に小脳橋角部 (CPA) 病変に対して用いられ, 三叉神経, 内耳孔, 下位脳神経, 椎骨動脈が術野の中心となる上部, 中部, 下部CPAへのアプローチに分けられる. Park bench positionとし, 頚部を前屈させて固定する. 頚部屈曲で静脈灌流が妨げられないこと, 皮膚切開と項筋の処置で顕微鏡の視軸が妨げられないことが重要である. 開頭範囲は, 十分外側まで行う. 下部, 中部CPAへのアプローチでは, petrosal fissureを開放し, 小脳半球の可動性を高める. 大槽から髄液を排除し, 小脳延髄槽のくも膜を順に外側に切開し, 下部, 中部CPAに到達する. 上部CPAへのアプローチでは, 迂回槽のくも膜を切開して髄液を排除し, 錐体静脈周囲のくも膜を十分に剝離すると三叉神経周囲の視野が確保できる.

     Midline suboccipital approachでは, prone positionとし, 小脳延髄裂 (cerebellomedullary fissure : CMF) を広く開放する小脳延髄裂アプローチを併用することで, 第四脳室病変, 脳幹背側病変に対応できる. CMFの外側では, 第四脳室外側陥凹から小脳片葉 (flocculus) 腹側の脈絡組織 (tela choroidae) を, 内側では小脳扁桃 (tonsil) と小脳虫部の尾側である小脳虫部垂 (uvula) 間を広く開放することで, 橋上部背側病変までの到達が可能となる.

     これらのアプローチを用いた腫瘍性病変の手術シミュレーションと術中写真を提示し, 適応, 頭位・体位, 皮膚切開, 筋層展開, 開頭, 顕微鏡下手術手技につき総括する.

温故創新
症例報告
  • 三宅 勇平, 三島 一彦, 小林 裕介, 鈴木 智成, 安達 淳一, 西川 亮
    2018 年 27 巻 11 号 p. 847-851
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/25
    ジャーナル フリー

     68歳男性の中枢神経原発悪性リンパ腫に対し, 大量メトトレキサート (MTX) 療法を施行した. 投与2時間半後に発熱をきたし, 血清クレアチニン値と炎症反応の上昇を認めた. MTXによる急性腎不全と感染症の合併を疑ったが, 感染源は明らかでなく抗生剤も無効であった. ガリウムシンチグラフィでの両側腎への集積, 尿中好酸球, 薬剤リンパ球刺激試験でのMTXへの陽性反応より, MTXによるアレルギー性機序による急性間質性腎炎が考えられた. よってMTXの再投与は避け, 全脳照射を行い寛解を得た. MTXによる急性間質性腎炎はまれだと考えられるが, その発症は用量非依存性であり薬剤の再投与は危険があることから, 鑑別診断として考慮することは重要である.

  • 萩田 大地, 山城 重雄, 加治 正知, 牟田 大助, 竹﨑 達也, 賀耒 泰之, 竹島 裕貴, 鈴木 悠平, 後藤 智明, 山本 東明, ...
    2018 年 27 巻 11 号 p. 852-857
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/25
    ジャーナル フリー

     約1カ月の経過で急速に増大し, 瘤内血栓化および再開通をきたした小型未破裂前交通動脈瘤の1例を経験した. 症例は64歳女性. 軽度の頭痛を主訴に近医を受診し, MRIで3mm大の前交通動脈瘤を指摘された. また, 左内頚動脈の狭窄ともやもや血管も併存していた. その後約1カ月の経過で同動脈瘤は2度の血栓化と再開通を繰り返し, 長径は3mmから最大9mmまで増大したため, 破裂リスクが高いと判断し, 開頭クリッピング術を行った. 瘤内血栓化と再開通をきたす動脈瘤は急速に増大し破裂する危険性が高いため, 早期に適切な治療介入を講じるべきである. また, 片側もやもや病の合併が前交通動脈瘤の発生および増大に関与した可能性があると考える.

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