適切に選択された2種類以上の抗てんかん薬で単独あるいは併用療法が行われても, 1年以上発作が抑制されないてんかんは薬剤治療抵抗性てんかんと定義される. 全てんかん患者の30~40%を占め, 外科治療適応を検討することが推奨されている. 本稿では, 最近の診断技術の進歩も踏まえて, 部分てんかんのてんかん焦点診断のためにキーとなるてんかん関連領域を概説し, 実際の症例提示から, てんかん焦点の術前診断のプロセスを紹介する. 焦点関連領域の評価にはさまざまな検査法を行うが, 単独で焦点診断に至る 「万能な」 検査はなく, 各検査の特性・限界を理解して, 各種検査間の結果の整合性を検討しながら, 包括的に術前評価を行うことが重要である.
てんかんの外科治療は薬剤抵抗性てんかんに対して検討されるが, 多くの患者は長期の罹病期間を経てから薬剤抵抗性と判断され外科治療に至る. てんかん焦点が明らかで術後に良好な発作転帰が予想される患者には早期の外科治療が望ましい. 代表的なものに内側側頭葉てんかんと, てんかん原性腫瘍によるてんかんがある. 一方, てんかん焦点が多焦点性で難しいがきわめて薬剤抵抗性のために, 常に専門的な見地から外科治療の可能性を探るべき複雑なてんかん症候群がある. これには, 結節性硬化症やWest症候群, Lennox-Gastaut症候群などが含まれる. 外科適応を拡大するためにも, わが国には低侵襲デバイスの導入が待たれている.
難治性の慢性疼痛に対して, 脊髄刺激療法 (spinal cord stimulation : SCS) は有効な治療選択肢の1つである. 最適な治療効果を得るのに重要なのは, 適切な患者選択, 刺激部位および刺激方法である. 脊髄以下の末梢の神経障害性疼痛および虚血性疼痛に対してSCSが奏効することが多い. SCSの作用機序の詳細は解明されていないが, 脊髄後索を適切に刺激することが鎮痛効果の発現に重要であると考えられている. 電極留置では疼痛部位を十分カバーするように留置する必要がある. 最近では新世代型SCS (超高頻度刺激, バースト刺激) が行われるようになり, エビデンスレベルの高い治療効果も報告されている.
本態性振戦は, 不随意運動として臨床上遭遇する機会が多いものの, 他の不随意運動症の頻度は比較的低く, 一般の脳神経外科医にとっては不慣れな領域と考えられる. 不随意運動症は, 脳血管障害, 脳腫瘍, 外傷などに伴い生じることもあり, 包括的に神経系疾患を診療する脳神経外科医として必須の知識でもある. 振戦に対しては視床腹側中間核 (Vim) に対する脳深部刺激療法 (deep brain stimulation : DBS) が一般的であるが, alternative targetとしてposterior subthalamic areaが注目されている. 症候性不随意運動症であるHolmes振戦や遅発性ジストニアは, 報告数が限られているものの, 難治例に対してDBSは有効な治療である. 凝固巣を作成しない可逆性, 調節性を有した治療法としてのメリットは, 現在もなお難治性不随意運動に対する治療として大きな役割を担っている.
脊髄硬膜外くも膜囊胞は, 硬膜欠損部から脱出したくも膜に髄液が流入することにより生じ, 外科治療に際し硬膜欠損部の閉鎖が必須とされる. 今回われわれはMRI 3D TSE法により術前に硬膜欠損部の同定が可能であった1例を経験した. 症例は72歳の女性, 腰臀部のしびれと疼痛, 両下肢の筋力低下の精査で硬膜外くも膜囊胞を指摘され, 術前MRI 3D TSE法で2D TSE法では認められなかったL1椎体左外側辺縁にくも膜下腔と囊胞を連続するflow voidを認めた. くも膜下腔と囊胞内のflow voidの交点が硬膜欠損部と疑い, Th12-L1の椎弓切除での手術を行う方針とし, 術中所見でも疑っていた部位に硬膜欠損を認め, 欠損部の閉鎖を行い術後良好な経過が得られた. 本症例から脊髄硬膜外くも膜囊胞に対しMRI 3D TSE法での術前評価を行うことで非侵襲的に硬膜欠損部同定が可能であり, 治療方針の決定に有用であった.
手術技術の1つにはイメージの能力や観察力も必要であり, イラストレーションは必要と思われる. 術前に術野を想定したイラストを描き, 術後には手術のイメージが残っているうちに手術の過程や術中の判断, 反省点などを記載しておくべきである. 術前術後のイラストレーションの描き方と手術手技の向上に有効な利用法について述べる.