脳神経外科ジャーナル
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29 巻, 4 号
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特集 小児脳神経外科
  • ―脊髄係留による痛みとその対策について―
    埜中 正博, 淺井 昭雄
    2020 年 29 巻 4 号 p. 254-260
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル フリー

     脊髄髄膜瘤は妊娠早期に行われる胎生期神経管の閉鎖が何らかの理由で障害され, 開いたままになってしまうことで生じる奇形である. 脊髄病変の修復と水頭症に対する治療は出生後から乳児期にかけて行われるが, この時期に治療が完結するわけではない. 特に脊髄病変の修復術後の癒着が脊髄係留を引き起こし, 既存の膀胱機能障害の悪化, 下肢の運動障害や変形, 痛みが生じる例が存在する. 脊髄係留解除術は一部の症例には有効であり, 特に痛みについては術後症状が改善する割合が高いため, この点に焦点を当てて報告する. 脊髄髄膜瘤患者の長期予後を改善させるためには, 脊髄係留の症状を適切に管理する必要がある.

  • 佐藤 慎祐, 新見 康成, 久司 一貴, 呂 聞東, 望月 達城, 島 彰吾, 今中 康介, 劉 美憬, 井上 龍也, 桒本 健太郎, 岡田 ...
    2020 年 29 巻 4 号 p. 261-269
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル フリー

     小児脳脊髄静動脈シャント疾患を理解するためには, 詳細な血管解剖, 発生学的見地を十分に把握することが重要である. 血管内治療や周術期の全身管理において, 小児は成人と異なりサイズも小さく, 小児特有の多彩な症状を呈するため十分な検討が必要となる. 小児の脳脊髄動静脈シャント疾患は, 血管内治療が第1選択となるが, 病態が複雑で治療も難しいものが多いのも小児の特徴である. 治療の目的は神経症状の安定や悪化の防止であり, 治療のゴールは症例ごとに異なるが, 初回の治療が最も予後を左右すると考える. このような疾患に対して迅速に血管内治療を行う, 集約的なセンター施設が求められる.

  • 金森 政之, 斎藤 竜太, 冨永 悌二
    2020 年 29 巻 4 号 p. 270-278
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル フリー

     胚細胞腫は思春期・若年成人に好発し, 腫瘍制御のみならず, 機能温存を目標とすべき疾患である. 胚細胞腫の中で頻度が多い胚腫では, 機能温存を目指した治療開発が行われてきた. 初期の放射線治療単独治療では, 高い腫瘍制御率が得られるが, 長期経過後のperformance status, 社会適応能力の低下, 特に治療時低年齢症例での知能低下, 内分泌障害, quality of life (QoL) 低下などの晩期合併症を生じる. 近年導入された化学療法併用低線量全脳室照射では, 知能, 記憶, 遂行機能, 社会機能などの温存が得られている可能性がある. しかし経過観察期間・症例数とも不十分で継続的な評価が必要である. 長期機能予後の評価には膨大な時間と労力を要するが, 体系的・網羅的な情報蓄積・多職種での評価体系の構築が必要である.

  • 坂本 博昭
    2020 年 29 巻 4 号 p. 279-287
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル フリー

     小児脳神経外科領域での移行期医療の現状を把握するため, 日本小児神経外科学会 (JSPN) の評議員の所属施設を主な対象としアンケート調査を行った. 小児期発症の成人例の外来と入院の症例数は施設ごとに大きく異なるが, 大学病院と小児病院に分類される施設群で症例数の分布に大きな差はなかった. 返答結果から, 大学病院では小児脳神経外科の人材不足の解消が必要で, 小児病院では成人例の入院制約を改善し, また単独の小児病院から他施設へ継続診療を依頼するよりも, 同じ施設内や隣接施設での継続診療が容易な診療体制への移行が望ましい. 問題改善のため, JSPNは医療現場のみならず厚生労働省や社会に働きかける.

温故創新
原著
  • ―定位的脳生検から開頭手術まで―
    藤谷 牧子, 野田 龍一, 玉井 雄大, 井上 雅人, 原 徹男, 菊池 嘉, 岡 慎一
    2020 年 29 巻 4 号 p. 291-296
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル フリー

     Human immunodeficiency virus (HIV) 感染症は, 今日コントロール可能な疾患へと変貌を遂げつつある. しかし, 合併した頭蓋内腫瘤性病変の診断, 治療には臨床所見・各種検査を重ねても確定診断に至らないことがある. そこで今回2008~2017年に当院で加療されたHIV感染症患者の中で, 脳腫瘤性病変を有し診断に苦慮した症例, 中でも脳神経外科的手術を要した症例につき後方視的に検討した. 全19症例のうち7例に生検術が行われ, 5例で手術にて確定診断に至った. 今後の診断, 早期治療の向上には, 多様な診断学的モダリティの活用と脳神経外科による遅滞ない生検術が重要であると考えられる.

症例報告
  • 高井 想生, 前澤 聡, 中坪 大輔, 加藤 祥子, 石崎 友崇, 柴田 昌志, 若林 俊彦
    2020 年 29 巻 4 号 p. 298-305
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル フリー

     今回, われわれはBroca野にてんかん焦点 (皮質形成異常) を認め, 覚醒下に同部位の摘出を行った症例を経験した. 前方言語野 (Broca野) は解剖学的には下前頭回三角部, 弁蓋部であり, 言語マッピングで陽性となった場合は摘出を控えるのが一般的である. しかし言語機能温存には皮質下連絡が重要であり, 皮質自体は摘出可能という意見もある. 本症例では最終的に言語マッピングで陽性となった部位に対して, 永続的な言語症状を引き起こすことなく摘出を行うことができた. 同領域における脳の可塑性や機能温存, 摘出限界を考えるうえで興味深く文献的考察を加えここに報告する.

イラストであらわす手術記録
  • 越智 さと子, 三國 信啓
    2020 年 29 巻 4 号 p. 307-310
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル フリー

     てんかん外科治療はチーム医療で諸検査を基に評価, 適応検討し, 術中モニタリングに関わる医師も情報を共有する. 術記録には簡単な経過と治療目的を記載する. 体位, 開頭野を記載後, 脳溝や機能野などを解剖学的に同定し, 皮質脳波 (electrocorticogram : ECoG) の電極位置などをモニタリング結果とともに記載するとよい. メルクマールの構造物として, 脳神経や主要血管と分枝など, さらに脳表の所見 (腫大, 変色, 血管変化など) も記載する. 当院では, てんかん緩和外科治療を選んだ場合, 原則迷走神経刺激療法 (vagus nerve stimulation : VNS) を先行し, 2年経過後も改善が不十分な場合に脳梁離断術 (corpus callosotomy : CC) や脳葉離断術を追加する方針としている. したがって, CC症例はVNS留置例が多く, 術中ECoGで離断効果や脳波変化を確認しており, これらも記載する. VNS留置術は定型的ながら, 体位や皮切位置, 迷走神経モニタリング結果を付記するとともに, 機器システム (ロットとシリアル番号) を記載することが重要である.

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