小児モヤモヤ病に対する間接的血行再建術施行後,側副路形成が不良な症例で,症状が進行性か,一過性脳虚血発作を繰り返す例では,これらの再建術が必要となる.本症例は11歳女児で,四肢不全麻痺,運動失語および高度知能底下を呈し,過去に左右のencephalo-myo-synangiosis (EMS) を受けた.その後も症状の有意な改善を認めなかったため,左側EMSの血行再建術を施行した.EMS施行時の皮膚切開を利用し良弁を作製したが,良弁内のsuperficial temporal artery (STA) およびposterior auricular artery (PAA) は直径が0.3mmで,末梢部での分枝が多く,単独では長さが不足しており,血管吻合が不可と考えられたため,STAを3 cmにわたり剥離後採取し,それをPAA末梢へ端側吻合をした.次に,PAAの吻合部末梢を結紮切断後,STA graftの他端をmiddle cerebral artery (MCA) の分枝(直径0.8 mm)にend-to-side anastomosisした(脳表には直径0.2 mm以上のMCAの分枝が存在しなかったので,シルビウス裂を分けたところで分枝を確認し吻合した).手術後,右手指の運動機能の改善および運動失語の軽度改善を認めた.failed EMSに対する血行再建術の方法につき報告する.
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