本邦ではCadever確保がより困難であるが,頭蓋底部の微小解剖のtrainlngを日常化するために,剖検時に海綿静脈洞および錐体骨を含む頭蓋底中央部をen blocに採取し,その方法と意義について報告する.頭蓋底部に病巣を有さない6例の剖検例から,脳実質採取後露出した頭蓋底部から両側性に海綿静脈洞(前方は蝶形骨平面から),中頭蓋窩(棘孔の外側まで)および錐体骨(外側は顔面神経のmastoid segmentを含む)を,さらに後端は斜台の上半分までを一塊として採取した.動物用定位脳手術装置に標本を固定後,顕微鏡下に硬膜を剥離しながら,各部位のdissectionを行った.前床突起の切削,視束管や内耳道のunroofingおよび錐体骨の切削を行った.海綿静脈洞内,中頭蓋窩および錐体骨内の動脈,視神経から聴神経までの各脳神経および内耳器官などの頭蓋底外科解剖の重要構造の把握が可能であり,手術のSimulationにもきわめて有用であった.本bloc標本は頭蓋底部の重要構造物を十分包含しており,比較的入手しやすく,頭蓋底外科の骨切削を含めたtrainingや術前のSimulationを行うためにも活用性が高いと考える.
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