自験腰仙部脊髄脂肪腫手術症例99例(入院時年齢1ヶ月〜52歳, 男:女=49:50)を後方視的に分析し, 本症の診断および治療上の問題点について述べる.99例のうち無症候例は36例, 残る63例では膀胱直腸障害, 両下肢の運動感覚障害, 下肢の変形などの症状, 症候を認めた.画像診断上, 脂肪腫をdorsal type, caudal type, combined type, fiar type, lipomyelomeningoceleに分類したが, 全例に低位円錐をみた, 手術は脊髄の係留解除を目的に脂肪腫を可及的に切除したが, 脂肪腫と神経構造との識別が困難な症例では脂肪腫を一部残存せしめた.平均8.49年の術後経過観察期間で, 症状改善が9例, 悪化が4例, 不変が86例であった.無症状の腰仙部脂肪腫に対する予防的手術の是非については議論の多いところであるが, 今回の検討では早期の係留解除術は神経症状の発現防止に一定の役割を果たしている可能性が示唆された.しかし一方で, 予防的手術によっても, 症状発現を防止することのできない症例が存在することも明らかとなった.
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