Jannettaらは延髄の神経血管減圧術で早期に高血圧が改善することを報告し, 左延髄腹側部が蛇行血管の圧迫を受けると, 本態性高血圧が発生するとの説を提唱した.今回われわれは, 本態性高血圧症に片側顔面痙攣を伴う2症例に神経血管減圧術を行い, 従来の報告と若干異なる所見を経験した.症例1は53歳, 男性で, 30歳時より高血圧症を指摘され, 症例2は50歳, 女性で, 40歳時より高血圧症のため投薬治療がされたがコントロール不良であった.2例ともMRIで蛇行血管による延髄腹側部の圧迫所見を片側顔面痙攣と同側に認め, 症例1は左側の, 症例2は右側の神経血管減圧術を行った.術後, 2症例とも徐々に血圧が降下し, 術後3カ月で正常血圧となった.今回経験した1例では, 右側の延髄腹側部を減圧することで血圧が低下したので, 右側の血管圧迫でも高血圧が生じることが判明した.また神経血管減圧術の降圧効果は, 今回のように徐々に出現する例もあり, 術後数カ月に及ぶ経過観察が大切である.
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