均等配分(同じように分けること)の実験では,従来の研究においては,人形にクッキーやアメを分けたり,皿に積木を分けたりする課題などで,人形や皿といった「配分先(いくつ分;除数)」が明確にわかるものが用いられていた.本研究では皿に分けるといった明確な配分先をなくした場合の配分行動について,幼児を対象にした個別実験の結果からその分析を行った.また本実験では,例えば6個のものを2個ずつ3つに分ける場合に,「2つずつ分けて」という教示のみがなされる群(Quotient; Q群)と,「3つに分けて」という教示のみがなされる群 (Divisor; D群)の2群を設定した.そして,そのような教示により,幼児の配分行動がどのように変化するのかに焦点をあてた.3歳から6歳までの幼児128名が,このいずれかの2群に割り当てられた.その結果,どの年齢においてもQ群の得点が高く,またD群では5歳から6歳にかけてのみ得点が上昇することが示された.これらの結果から分離量に関しては商を指示して配分をする方が早期に発達すること,また年少の幼児にとっては「○つに分けて」という理解が難しいということが示唆された.ここで示された結果は,年少幼児にとっては,等分除が,むしろ困難であるということを示したもので,就学後にわり算を学習する際,いくつ分かという除数を求める包含除の理解の困難さとは,矛盾する結果とも考えられる.
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