本論では,認知・知覚実験における視覚刺激呈示ハードウエアとして,LED光源のDLP (digital light processing)プロジェクタで,比較的安価な一般向けのものを取り上げ,その投影特性について実際に計測・可視化したデータを刺激呈示の厳密な時間的制御が実現できるかという視点から紹介する.視覚刺激の呈示時間制御が重要となるバックワードマスキングのような実験操作には投影映像の輝度変化速度が重要となるが,計測の結果,DLPプロジェクタはCRTディスプレイなどのハードウエアよりも非常に高速な輝度制御を実現していた.一方でDLPプロジェクタには比較的大きな表示遅延(映像表示命令を受けてから実際に表示を始めるまでのタイムラグ)が確認されたが,その遅延の大きさは常に一定であり,実験プログラム上またはデータ解析時に遅延分を補正することで対処可能であることが示された.DLPプロジェクタは入手の容易性や将来性,ならびにfMRI, MEGなどの脳機能計測実験への適応可能性に鑑みても,その視覚刺激呈示ハードウエアとしての有用性は大きいといえる.
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