日本大腸肛門病学会雑誌
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26 巻, 3 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • その分類と臨床的取り扱い方について
    武藤 徹一郎
    1973 年 26 巻 3 号 p. 265-274,365
    発行日: 1973年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸直腸ポリープは病理組織像の相違により腫瘍性である腺腫と非腫瘍性である過誤腫性ポリープ,炎症性ポリープ,化生性ポリープの四群に大別される.過誤腫性ポリープにはPeutz-Jeghers症候群,juvenile polyp,炎症性ポリープには潰瘍性大腸炎,大腸クローン病に伴うポリポーシスが含まれ,いずれのタイプも化生性ポリープと共に腺腫,癌とは全く関係がないと考えられている.
    これに反して腺腫は癌化のpotentialを有しており,そのpotentialは腫瘤の大きさと密接な関係にある.腺腫は発育パターンの差からtubular, papillary, villousの三型に分けられるが本質的には同一の疾患である.
    腺腫の癌化の判定規準に関するMorsonの考え方を紹介し,腺腫の癌化には2つの経路があることの実例を提示した.
    大腸直腸ポリープの組織学的分類の理解が治療方針,患者管理のために最も重要であることを強調した.
  • 鳴海 裕行, 今 充, 阿保 優, 高野 〓
    1973 年 26 巻 3 号 p. 275-280,365
    発行日: 1973年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    肛門疾患に対する保存的療法の一つとして新しく開発されたゼロイドZeroidの臨床効果について検討する.これは長さ10cm,外径1.2cmのプラスチック製円筒状の器具で,中に冷却液が入っている.これを通常の冷蔵庫内で-4℃に凍結させ肛門部の局所的冷却を行なうものである.
    術前のもの30例,術後のもの20例,計50例に使用し,82.0%の症例に臨床症状の改善ないしは消失をみた.特に出血・疼痛に対して極めて有効であった.
    以上の詳細について述べるとともに,肛門疾患の保存的治療の一つとしてゼロイドは今後主要な地位を占めるものと予測するものである.
  • 安斉 恒雄
    1973 年 26 巻 3 号 p. 281-283,366
    発行日: 1973年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    術前診断及び術後診断に苦労し病理組織学的診断に依って始めて解明した回盲部リンパ節に発生せるEp-itheloid cell granuloma Diseaseの1症例を経験した.患者は32歳男子鋳物工,1971年3月頃から右下腹部痛,るいそう,食思不振を訴え慢性胃炎の診断で約5ケ月通院治療同12月から約2週間急性肝炎の診断で入院,翌年2月14日から約2週間急性気管支炎の診断で入院,同3月右尿管結石と診断された.同日当院に転医,所見,血液検査:血液検査3828,赤血球382万,白血球8200,ザーリ72%,Al-P7.0,T. P6.9 ASLO100C. R. P+6, R-A(-)腹部所見,虫垂切除の手術創周辺に腫瘤状のものが触れたが腹壁緊張が強く明瞭に触知出来なかった,病理組織学的診断でランゲルハンス型巨細胞及び異物性巨細胞を多数伴ったEpith-eloid cellが見られサルコイドージスが第一に老えられた.Kveim'sTest(-)肺に陰影なし,単一臓器に.発生した点から第6回国際サルコイドージス会議の見解に従ってEpitheloid cell granuloma Diseaseとして報告する.
  • 1973 年 26 巻 3 号 p. 283
    発行日: 1973年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
  • 原 宏介, 堀江 良秋, 武藤 徹一郎, 富山 次郎, 小林 順弘, 土屋 周二
    1973 年 26 巻 3 号 p. 284-290,367
    発行日: 1973年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    著者らは最近9年間に東大第1外科で診療した肝門部の悪性腫瘍8例について検討を加え,次のような結論をえた.1)肛門部悪性腫瘍8例のうち,肛門(肛門管および肛門縁)癌は6例,直腸癌の肛門管進展の疑いのあるもの1例,肛門部細網肉腫1例であった.2)肛門癌6例中,1例は扁平上皮癌,2例はanal ductから生じたと推定される特有の所見を示す腺癌,3例は痔瘻に関連して生じた腺癌であった.3)肛門部悪性腫瘍8例中4例に対し,腹会陰式直腸切断術および鼠径リンパ節郭清術をおこなったが,このうち扁平上皮癌,腺癌各1例が術後約3年間再発をみなかった.これに対し放射線照射,局所切除,抗癌剤局所灌流をおこなった4例はいずれも再発または死亡した.4)肛門部の悪性腫瘍は痔核,痔瘻などの良性疾患と誤診され治療開始が遅れるため,予後不良のことが多い.肛門部の難治性疾患や見なれない病変がある場合は,生検をおこなうべきである.
  • 高野 正博, 隅越 幸男, 佐藤 昭二, 平塚 襄, 岡田 光生, 有輪 六朗
    1973 年 26 巻 3 号 p. 291-298,367
    発行日: 1973年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    過去11年において経験した肛門癌は16例で大腸肛門癌合計症例185例中8.6%を占める.比較的まれな疾患であるにかかわらず,病理学的には非常にvarietyに富んでいる.これには肛門部の上皮を形成する肛門上皮,cloacogenic zone等の構成細胞の特異性,複雑さによるものである.
    1.Adenocarcinoma tubulare(1例)直腸に比してその頻度はごく少ない.
    2.Adenocarcinoma epidermoides(2例)epidermoidca.の性格を有するadenocarcinomaである3.Colloid carcinoma(6例)肛門や直腸の周囲に発生する点が特異的で,症状として腫瘤形成,ゼリー様分泌物があり,痔瘻と誤られた例も多い.組織学的にはムチンを充満したcystを形成する.発生母体を示すものとして肛門腺と関連を有する例が2例,腸管上皮のduplicationを認める例が3例,痔瘻を認める例が3例ある.予後は他型に比べて良好である.
    4.Epidermoid carcinoma(4例)組織学的に角化の著しいものから少ないものまで種々であるが,成熟度の高いもので予後の悪い例もあり,また周辺部ではinsitu様に表皮内を浸潤するcaseもある。
    5.Basosquamous cell carcinoma(2例)角化のないbasaloid cell nestを形成するものである.
    6.Basal cell carcinoma(1例)肛門縁に浸潤性の少ないいわゆる"rodentulcer"を形成する.我々の例はpigmentを有するものでmalignant melanomaと誤られた.
    以上の16例をまとめると,非浸潤性の1例を除きいずれも進行癌で,他臓器の癌に比べ簡単に発見出来るだけに残念である.手術が遅れた理由として患者が痔と判断していた例も多いが,痔と診断されてくり返し手術を受けている例も多い.手術としては,病変の組織学的性格,拡がり,リンパ系転移の方向等を考慮してabdominoperinealに十分な切除が必要である.術後の経過としては5年以上生存例が4例,死亡例3例であり,悪性度の高い疾患である.
  • 粕川 剛義
    1973 年 26 巻 3 号 p. 299-304,368
    発行日: 1973年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    1952年1月より1972年7月までに,東邦大学第1外科教室で取扱かった,直腸肛門癌260例について検討したところ,33例肛門部癌を認めた.この症例と直腸癌を高さによりIII群に分類し比較検討した.病悩期には各群とも差はなく,症状では出血が各群において高率にみられた(37~69%).痔瘻を合併する症例が7例あった.肛門部癌の組織形をみると,扁平上皮癌は7例で,他は単純癌,腺癌であった,各群について5年生存率をみると肛門部癌85.6%(6/7),第II群62.5%(10/16),第皿群,56.2%(9/16),第IV群60%(6/10),であり,肛門部癌の症例が数は少ないが,良いことがわかった.
  • 高橋 孝, 山田 粛
    1973 年 26 巻 3 号 p. 305-313,369
    発行日: 1973年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    消化管の末端部の癌腫を,その下縁と歯状線との距離によって肛門部癌,その中心と歯状線との距離によって肛門癌と定義した.そして各々について,組織型,大きさ,肉眼型リンパ節転移,深達度,壁内進展様式について検討し,これを直腸上部癌,直腸下部癌のそれと比較した.肛門部癌,すなわち肛門管内に下縁のある癌腫よりも,歯状線以下に下縁のあるものの方が,更には,肛門癌としたものの方が,より明瞭に,上記の病理学的諸事頃の上での差違を表現している.とくに,リンパ転移の様態,組織像のうえでは特異的な差違がみられる.肛門部癌,肛門癌は組織像の上では確かに多彩さがあり,扁平上皮癌はこの部位に特異的ではあるが,消化管末端部の癌腫の特徴をより良く反映する組織像は,扁平上皮癌を含めても見あたらなかった.従って,組織像によるよりも,癌腫の部位によって,いわゆる肛門癌を規定する方が妥当であると思われる.
  • 北条 慶一, 広田 映五, 小山 靖夫, 伊藤 一二, 佐藤 量造
    1973 年 26 巻 3 号 p. 314-320,369
    発行日: 1973年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    肛門部の悪性腫瘍は,その部位の関係から発生する腫瘍の形態とその進展方向が注目され,治療面から考慮されねばならない.
    この機会に芝私ども過去11年間に経験した肛門部の悪性腫瘍29症例について臨床・病理学的に検討をおこなった.
    腫瘍の組織像は症例によって種々多様であり,とくに従来扁平上皮癌とみなされているものの中にKlotz(1969)らの提唱した移行上皮癌とおもわれるもの3例認められ,それぞれ組織像を提示した.
    臨床経過は,その進行度によって当然左右されるが,一般に直腸膨大部以高の大腸癌に比べて予後不良で,とくに術後早期に局所再発がしばしみられた.また悪性メラノームは小さくてもすべて(4例)術後2年以内に再発死し,極めて予後不良といえる.直腸切断といった従来の単純な治療に対する再検討が必要であると同時に,術前の経過をみると大多数の症例が痔など良性疾患とみなされて,癌の早期治療を逸していることが大きく反省された.
    また,鼠径部リシパ節への転移を検討した結果,鼠径部リンパ節の予防的な廓清の意義はそれほど大きくないとし,また術前に転移が認められることは,既に骨盤内のリンパ節転移が進展していることを示唆するものであるとした.
  • 安井 広明, 近藤 利之, 冨士原 彰, 児玉 和典, 宮崎 達久
    1973 年 26 巻 3 号 p. 321-324,370
    発行日: 1973年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸下部及び肛門癌に対する腹会陰式直腸切断術(Miles)の会陰創は二次的治癒を営むには1~3カ月を要し,時には半年以上にもわたる欠点がある。この欠点を無くするために会陰創の一次的縫合閉鎖術を行った。腹腔側から始め,病巣と挙肛筋とを切離することが出来れば会陰側の手術は砕石位で行い,剥離止血が不十分な時は左側臥位で行うと便利である。挙肛筋の筋層縫合と後腹膜縫合間に生ずる死腔に対しては腹腔側から排液管を挿入し好結果を得た.9例中8例は2週間以内に全治し,1例は感染〓開した。癌病巣が余程大きくない限り会陰創の一次的閉鎖は可能であり,治療期間の短縮により患者の精神的肉体的苦痛や経済的負担は激減し,医師側にも万事好都合である.
  • 馬場 正三, 村山 憲永
    1973 年 26 巻 3 号 p. 325-330,370
    発行日: 1973年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    肛門部の解剖学的構成は非常に複雑であり,かつ発生学的にも内外胚葉の移行部であるため,そこより発生する悪性腫瘍は多彩である,しかし,その発生率は比較的低いために,これまで本邦においてその病理学的分類,治療方針の確定などについてはまとまった報告例は認められない.最近慶大外科において経験した興味深い症例を報告するとともに,肛門部悪性腫瘍を発生母地に従い病理組織学的に分類し,合わせてその治療方針について文献的考察を行ってみた,興味症例としては肛門腺より発生したと思われる腺癌,およびブレオマイシンが著効を示した肛門部扁平上皮癌,および直腸肛門部より発生せる細網肉腫の計3例を報告した,
  • 痔瘻に続発した傍肛門部腺癌および肛門周囲汗腺に原発したHidradenocarcinoma
    荒川 広太郎
    1973 年 26 巻 3 号 p. 331-337,371
    発行日: 1973年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    肛門部悪性腫瘍のうち,陳旧性の痔瘻に続発した肛門外側の腺癌の症例と,数十年に亘って肛門周囲の皮膚汗腺の化膿性炎症があり,極めて除々に発育した汗腺癌の症例について,臨床的,病理組織学的観察を報告すると共に若干の文献的考察を試みた.
    症例1は65歳の男性で,単純な皮下痔瘻が20年来あり最近無痛性の腫瘤がその外瘻孔に接して生じ,遂に手挙大となった.組織学的にはadenocarcinoma papillotubulareであった.リンパ節転移,或は周囲への浸潤は認められなかった.
    症例2は61歳の女性で,肛囲に古い瘢痕と瘻孔があり,その周囲に鶏卵大から指頭大の結節性腫瘤があり,肛門輪に沿って皮下及び皮膚に広範な腫瘍の浸潤があった.会陰直腸切除術を施行し,組織学的にはhidradenocarcinomaと云えるが,極めて稀有な症例であると考えられる.
  • 村井 紳浩, 吉川 宣輝, 原 満, 麻生 礼三, 進藤 勝久, 向坂 隆, 中林 晟, 安富 正幸
    1973 年 26 巻 3 号 p. 338-343,371
    発行日: 1973年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    1953年から1972年までの20年間に,当教室では29例の肛門およびその周辺部の癌を経験した.この同じ期間内における直腸肛門癌は333例あり,直腸肛門癌に対する肛門癌の割合は8.7%であった,一般に肛門癌の頻度は直腸肛門癌に対して約3~5%といわれており,我々の症例が8.7%と比較的多いのは,肛門管のみならず肛門周囲の皮膚や女性の陰唇,下部直腸癌で歯状線にまで浸潤がおよんだ症例も肛門癌の範囲内に入れて取り扱ったためである.
    肛門癌の患者の主訴は肛門部の有痛性の腫瘤,肛門出血,tenesmusなどが主であり,そのほかに肛門瘻孔をもつものがかなり多かった.病悩期間の長い症例が多く,2年以上の病悩期間を有する症例が約半数におよび,20年をこえる症例が1例あった.fistulaまたはhemorrhoidを合併しているか,またはこれらの疾患の既応歴をもつ症例が多く,2年以上の病悩期間を有する患者ではとくに多く痔瘻をわずらっており,そのほとんどの患者が肛門癌と診断される以前に1回ないし2回の痔瘻の手術を受けていた.
    肛門癌の診断は比較的容易ではあるが,しかし痔瘻または肛門の慢性の炎症との鑑別診断は困難なことが多く,このような症例に対してはbiopsyによって診断を下すことができた.
    手術々式は腹会陰合併直腸切断術をほとんどの症例に行なった.子宮や腟に癌が浸潤している場合には,これらの臓器の合併切除を行ない,また膀胱に癌が浸潤している場合には膀胱を全剔して,ileal conduitを作製した.そけい部のリンパ節廓清は原則として行ない,この廓清の必要な症例に対しては腹部の皮膚切開は下腹部に弧状切開を加える新しい試みを行なっている.この皮膚切開法によれば,そけい部リンパ節の廓清は容易となる.
    5年生存率は9例中6例(66.7%)で,これらの患者はすべて10年以上生存し,すぐれた成績であった.組織学的分類ではsquamous cell carcinomaやadenocarcinomaが主であった.adenocarcinomaの場合,mucoid cancerが多く,組織学的にも痔瘻との関連性を疑わせる症例が多かった.またtransitional cell carcinoma, basal cell carcinomaが各々1例あった.
  • 1973 年 26 巻 3 号 p. 344-355
    発行日: 1973年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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