日本大腸肛門病学会雑誌
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29 巻, 6 号
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  • 本邦報告例を中心として
    升森 茂樹, 野垣 茂吉, 細田 峻
    1976 年 29 巻 6 号 p. 489-497,610
    発行日: 1976年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸カル季ノイドの本邦報告例は1970年以後増加しはじめ1975年から著増し,今日まで65例の報告をみるが,これはカルチノイドー般への関心と共に直腸鏡検査の普及によるものと見做された.発生年齢,発生部位は欧米例と大差なかったが,男性例が稍多く,特定の壁在性を示さなかった.直径2cm以下のものが大部分で単発黄色性粘膜下腫瘍として発見され,粘膜固有層から筋板への浸潤をみたが,多くは局所切除術を受けた.11例の転移例では径2cm以上のものが多く,腫瘍の局所深達度も高く腹会陰合併直腸切断術の対称とされた.主訴としては肛門出血,疼痛等の非特異症状が多く,カルチノイド症候群をみたのは2例のみである.病理組織学的に直腸カルチノイドはリボン,ロゼット形成,硬化模様などから大凡診断可能であったが, Grimeliusの好銀染色による好銀顆粒,電顕による径200nm前後の円形分泌顆粒の証明によって最終的に診断が確定する.
  • 諸臓器カルチノイドの比較
    亀谷 徹, 下里 幸雄
    1976 年 29 巻 6 号 p. 498-505,610
    発行日: 1976年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    副鼻腔,気管支,胃,虫垂,直腸のカルチノイドを電顕でしらべ,特徴的な分泌顆粒が全例にみられ,腺管形成が明らかなものと存在しないものがある事,虫垂カルチノイドの顆粒は一見して他と異なるが,他臓器のものでは円形で,類似しているが,症例によって,また一症例でも細胞によって,大きさと質にある程度の偏位があることを指摘した.カルチノイドの確定診断に電顕は有力な武器となるが,免疫組織化学,内分泌学的・生化学的定量を併用することにより,本腫瘍の組織発生,細胞発生の解明に役立つことを解説した.最近カルチノイド腫瘍がAPUD系でneural crest originであるとする説が有力だが,その妥当性と問題点に触れた.
  • 微小カルチノイドを含む21例の病理組織学的険索
    遠城寺 宗知, 渡辺 英伸
    1976 年 29 巻 6 号 p. 506-515,611
    発行日: 1976年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    微小カルチノイド4個を含む21例24個の直腸カルチノイドについて組織形態学と組織化学との立場を中心として検討した.
    組織形態は索状吻合状やリボン状が主で所々に他の像を合併するものが21個と多く,3個では充実結節の組織構造が主体を成していた.
    銀反応を行いえた21個すべてに陽性顆粒が証明され,うち19個は好銀性,2個は銀還元性であった.PAS染色を行いえた16個すべてに細胞質内に陽性顆粒が見られ,アルシアンブルー染色を施した20個中2例でごく一部に上皮性粘液が証明された.
    4個の微小カルチノイドは好銀性細胞の均一集団より形成されており,粘膜深層の粘膜筋板直上部に見られ,直径0.7mm大ですでに粘膜下層に浸潤し,5mm以上では腫瘍主塊は粘膜下層に見られた.
    直腸カルチノイドはすべて銀反応陽性で,好銀性傾向が強いと考えられ,これは前腸系カルチノイドの銀反応と類似する.また同腫瘍は腺底部の内分泌細胞,特に好銀性細胞から発生することが多く,まれに見る粘液産生は腫瘍細胞の異分化によると考えられた,
  • 岡田 光生, 住江 正治, 坂田 寛人, 隅越 幸男, 有輪 六朗
    1976 年 29 巻 6 号 p. 516-520,612
    発行日: 1976年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    過去8例の直腸カルチノイドを経験した.そのうちの2例はいはゆる悪性カルチノイドであった.1例は前方切除術後10カ月目に広汎な肝転移のため死亡した.他の一例は貫通術式施行時すでに肝転移を認めたが11カ月後健在である.この2症例につき,臨床的事項と病理学的所見を報告した.
  • Placeboを用いたSingle blind test
    白松 幸爾, 横川 金弥, 榊山 悠紀士, 高田 義人, 中野 武次
    1976 年 29 巻 6 号 p. 521-527,612
    発行日: 1976年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    痔核の急性発作に対する保存療法の一つとしてProctosedyl坐薬を使用し,Placeboを用いたsingle blind法による本剤の臨床効果を評価した.内痔核を主とした60例を対象とした(Proctosedyl30例,〓14例,♀16例,Placebo30例,〓21例,♀9例),効果は2週間に亘り観察を行いTab.5の様な基準にもとづいて減点率を求め判定した.臨床効果はPrctosedylで著効6例(20.0%)有効17例(56.7%)無効7例(23.3%),Placeboで著効0,有効4例(13.3%),無効26例(86.7%)であった.項目別評価は,疼痛(自発痛,排便痛),出血,腫脹,自覚症状,他覚症状にいずれも効果を認めたが痔核の縮小に対しては効果を認め得なかった。副作用として,肛門内異物感(Proctosedyl 1例,Placebo 1例)挿入後排便感(Proctosedyl 1例)を認めた.
  • 三枝 純郎
    1976 年 29 巻 6 号 p. 528-535,613
    発行日: 1976年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    各種の肛門外科手術を始めとし種々の腐蝕療法及び近来流行の凍結療法McGiveney等の器具による結紮療法をうけた後で,何時迄たっても一向に手術創が治らない~フサガラないとの訴えにて受診する患者は稀ではなく,また著者の自験例にもこうした症例は存在する.これらのProlonged healingを按ずるに,その第一の原因は肛門手術原則の無視~軽視にあり,第二に術後の不適当な排便管理があげられ,殊に開放創が肛門管内に残ってしまった際には,後者は往々にしてその最大の原因となる.更にこれらの両者が満足されていても,開放創の上皮化を阻障する疾患が合併々存する際には,当然の結果としてProlonged healingの起る可能性があり,また上皮化完成後のAftercareが不満足であると,治癒瘢痕上皮の剥脱,タダレ,甚だしきは皸裂~亀裂を生じ,確実に治癒は遷延する.加えて困った事にこれら以外にも全く原因不明のProlonged healingを示す症例もあり,これらに対しては一向に決め手となるものがないのが著者の現状である.
  • 6年間の腸外科臨床例と1部の実験的症例を含めた
    村上 博圀, 宗岡 熈, 岡本 勲, 道園 博昭, 宮本 多美枝, 橋羽 伊佐雄
    1976 年 29 巻 6 号 p. 536-543,613
    発行日: 1976年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    昭和45年6月から,当病院外科に,大腸肛門部を設置し,腸外科臨床の症例集積と,それらの背景分析に努力している.過去6年の資料から,この自的の趣旨に合っているか否かを反省と共に老察した.この報告は,その結果である.憩室症,S字結腸過長症,回腸炎,腸間膜淋巴筋炎,潰瘍病変,術後癒着症,腸結核症,ポリープ,回腸淋巴濾胞増多症等が,今後,治療方針の対象となるものである.腸粘膜下淋巴組織の形態的変化が,腸臨床と,どのようなかかわり合いを有するのかに興味を持ち,特に,Poly-Surgeryに移行する時の1つの見方に,この淋巴組織を通した観方をしている.直腸癌の術後,人工肛門友の会に集まる患者側の意識の分析をしたことも合せ報告する.
    今後の注目疾病,パイエル氏板と,外科臨床,人工肛門ケースワーク等日頃の臨床の問題点を問うてみた.また,粘膜下淋巴組織と,腸腺組織の関係を異種蛋白刺激(犬副腎エムルジョン刺激法)で感作し,パイエル氏板の観察を行った.腸臨床の背景にある浮腫症と,その反応について.私的な老察をしたものである.
  • 虫垂粘液〓腫による腸重積症の1例
    棟方 昭博, 大沼 やえ子, 相馬 信, 相沢 中, 吉田 豊
    1976 年 29 巻 6 号 p. 544-547,614
    発行日: 1976年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は62歳女性で,2年前より時々右下腹部に無痛性の腫瘤を触知していた.入院2目前突然,右側腹部痛,嘔気嘔吐があり,某病院に救急入院し,注腸X線検査で結腸腫瘍が疑われ当科に転院した.入院時,回盲部に手拳大の腫瘤を触知した.Colonofberscopyでは右結腸曲に粘膜下腫瘤を思わせる所見があり,注腸X線検査では,Coil-spring signを認め腸重積症と診断した.これらの検査により,重積は整復されたが,回盲部に胡桃大の腫瘤を新たに触知し,再度の内視鏡検査で虫垂腫瘍と診断し外科に転科,術後診断は虫垂粘液嚢腫であった.虫垂粘液嚢腫による腸重積症は極めて稀で,本邦では10数例報告されているが,本症例のように腸重積の状態を内視鏡的に観察し得た例の報告はない.
  • 黄司 富彦
    1976 年 29 巻 6 号 p. 548-569,614
    発行日: 1976年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸および肛門管の壁内リンパ管の微細分布を従来の色素穿刺注入法の他に加墨汁硝酸銀水動脈内注入により,リンパ管を現わす方法と電顕による検索を用いて次の結果を得た.
    (1)mucocutaneous junctionの下約2mm以上の粘膜下リンパ管は上方へ向う弁を有す.
    (2)mucocutaneous junctionは歯状線であると一般に信じられている.然し著者の組織学的研究によればmucocutaneous junctionは歯状線に一致しない.
    (3)色素を歯状線より上へ注入すれば歯状線へは下行せず,また色素をpectenへ注入すればはっきり此の線で止まると云われている.然しながら著者の研究によればpectenへ色素を注入すれば歯状線を越えて自由にリンパ管を充すのに対し,歯状線の上方で注入すればpectenのリンパ管を制限された程度で充す,著者はこの現象を組織学的立場から明かにした.
    (4)直腸および肛門管のリンパ管の微細構造は一般リンパ管と大差はなかった.
  • 岡野 良彦, 柳田 謙蔵, 吉雄 敏文, 青山 彰
    1976 年 29 巻 6 号 p. 570-577,615
    発行日: 1976年
    公開日: 2009/12/03
    ジャーナル フリー
    走査電子顕微鏡は医学生物学の分野において広く利用されつつある.われわれは大腸粘膜の粘膜表面を走査電子顕微鏡を用いて立体的に観察し,同時に従来の光学顕微鏡および透過電子顕微鏡による像と対比し,両者を総合して,検索を新たな方向へ広げようと試みた.
    観察の主な対象としたのは,今回は正常大腸粘膜像と潰瘍性大腸炎粘膜像である.
    結果:低倍率では正常の大腸粘膜は中央が陥凹してcryptが規則正しく配列していた.大腸の各部位においては各々cryptの配列と,その周囲の様相に特徴があるように思われた.高倍率では粘膜上皮表面にはmicrovilliが密集し,またgoblet cellの粘液が細胞表面を押し上げて分泌されることなどが観察できた.潰瘍性大腸炎ではcryptは不規則な裂隙または噴火口のような穴を呈し,表面の凹凸はほとんどなく平坦であった.
    高倍率ではmicrovilliは著しく減少し,その大きさも小さく短かかった.
    上皮細胞は扁平で不規則な配列をしていた.以上の所見を透過電子顕微鏡像でも確認できた.
  • 1976 年 29 巻 6 号 p. 578-603
    発行日: 1976年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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