1973年5月よう本年9月までに大腸X線検査を740例に施行,43例5.8%に大腸憩室を認めた.右側結腸の頻度が高く,43例中31例72%であった.右側結腸憩室1例,左側結腸憩室2例の計3例に手例を行った.
今回はS状結腸に高度な狭窄を認めた1例を報告する.
患者は57歳男性,昭和47年4月下腹部痛及び排便困難を訴え受診,注腸検査にてS状結腸及び盲腸部を中心にほぼ大腸全域に多数の憩室を認めたが狭窄及び炎症症状はなく大腸憩室病と診断した.
内視鏡検査では高度の狭窄を認め,狭窄部周囲には腫瘤や潰瘍もなく比較的平滑であったが強度の浮腫状粘膜を示し,発赤,出血及び変色が所々に認められ憩室炎に由来する狭窄と診断した.
摘出標本ではS状結腸部に手拳大の腫瘤を形成し,その割面は筋層及び脂肪組織の肥厚が認められ,粘膜面には,びらん,潰瘍は認めないが,強い収縮と憩室入口部を所々に認めた.組織学的には,狭窄部の輪状筋は11mmに肥厚し粘膜はいしわ状を呈し輪状筋をつらぬいたherniationを認め嵌入粘膜の先端では所々にmicroabscessの形成を認めた.
この症例は官城の憩室炎発生と進行に関しては比較的軽度な憩室炎から短期間に炎症性腫癌を形成し狭窄を来したものと考察した.
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