痔核の治療には従来いろいろの方法が用いられ,それぞれに成果を挙げて来たが,中でも最近開発された凍結手術は極めて優れた治療法の1つと考えられる.本研究においては,実験的に直腸肛門領域の凍結を行ない,凍結手術の安全性や有用性を確かめるとともに,凍結壊死の機序の解明を試みた.その結果,組織の壊死脱落は施術部の末梢循環障害に起因するものであることが判明した.なお凍結療法と注射療法との比較では,後者は結果が微妙な手技に左右され,潰瘍形成などの危険性をも伴うなど前者に比べ不利であると考えられた.
臨床上では,過去4年間に111例の痔核症例に対し,外来治療として凍結手術を行なった.男女比は89対22で,平均年齢は45.8歳であった.111例中96例(86.5%)では,特に術後の愁訴もなく満足すべき結果が得られた.術前脱出をくり返していた15例(13.5%)は,術直後より局所に高度の腫脹をきたし,肛門部痛や異和感を訴えたが,症状は1~2週後には軽快し,4週後には完治した.全症例中今日まで再発を認めたものは1例もなく,ほぼ満足できる臨床成績と考えられた.
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