日本大腸肛門病学会雑誌
Online ISSN : 1882-9619
Print ISSN : 0047-1801
ISSN-L : 0047-1801
35 巻, 6 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 世界の現況を含めて
    小林 世美
    1982 年 35 巻 6 号 p. 549-553
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    日本人に大腸癌がふえているが,発見早期癌の頻度は,今尚わずかに10%前後である.これを改善するには,無症状群での大腸集団検診が必要である.
    集検を成立させるためには,疾病側の条件と集検方法選択の条件がマッチすることが肝要である.直腸鏡やファイバースコープによる集検は仲々困難で,手間がかからず,経済的で大量に処理できる便潜血テストが最も可能性のある方法であろう.欧米では,大腸癌のスクリーニングにヘモカルト法による便潜血テストが行われている.西ドイツでは,年間600万人がヘモカルト法を受け成果を上げている.1981年ワシントンの国際大腸癌シンポでは,スクリーニング法としてヘモカルト3回連続法を年1回行うこと,S状ファイバースコープを3年に1回やることを奨めている,今後は胃集検だけでなく,集検体制を強化し,便潜血テストを加えた消化管集検の必要性を強調したい.
  • システム化への方法論
    川井 啓市, 渡辺 能行, 多田 正大
    1982 年 35 巻 6 号 p. 554-560
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    本邦では大腸癌の死亡率が年々増加しているため,二次予防としての大腸集検の確立が望まれている.このためには種々の相反する要因を最大公約数的にとり入れ,より効率的な方法論が展開されねばならない.即ち,集検の対象となるためには対象疾患は重篤で,より早期の状態の有病率が高く,かつ確定診断までの検査法が確立されており,スクリーニング検査法は信頼性と妥当性を有し,被験者'の苦痛も少く,安全に効率的に行えること等の要因が満されねばならない.などの条件が必要である,
    本邦の胃集検,乳癌検診,子宮癌検診等の実態・成績を基礎に,さらに大腸癌が多発する欧米での大腸集検のあり方をもとに,わが国に相応した検診体系が確立されねばなるまい.これらの点から,我々は便潜血検査と問診による一次スクリーニングの後,二次スクリーニングとしてsigmoidoscopyを行なう検診方法を応用しているが,問題点も少くないため,実際の検診成績を通じて評価を行ない,より完成されたシステムをめざしたい.
  • 竹下 俊隆, 杉本 伸彦, 芦沢 真六
    1982 年 35 巻 6 号 p. 561-566
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    近年本邦においても,大腸癌の頻度は増加しており,大腸癌集検の必要性が言われている.現状では一次スクリーニングとして便潜血反応を用いるのが一般的と思われ,西欧では,一次スクリーニング陽性者約1.0~5・0%・うち精査の結果約9.0^一25%に大腸癌が発見されている.しかし,・予想以上のfalsenegative,false positiveが存在し,従来の化学的便潜血反応では,false negativeを無くす為に,その感度を上げると,食餌中の動物ヘモグロビン等によるfalse positiveが増加してしまう.この欠点を克服する為に,ヒトヘモグロビンにのみ陽性となる免疫化学的便潜血反応に関し検討した.正常者20例では,本法では陽性が1例もなく,又非消化管疾患例89例でも,スライドA法で48例,B法で29例で陽性,偽陽性に対し,本法では17例でのみ陽性と,良好な結果を得た.免疫化学的便潜血反応は,従来の方法に比し,より精度が高く有用な方法と思われる.
  • 棟方 昭博, 相沢 中, 福士 道夫, 吉田 豊
    1982 年 35 巻 6 号 p. 567-572
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    弘前市近郊の農村地帯19力町村の一般住民を対象として,直腸鏡による地域集検を行った.受診者数は15,074名に達しており,精密検査は教室で注腸二重造影法および大腸ファイバースコープで行った.検査結果は癌20例0.13%で,うち早期癌は11例であった.ポリープは459例3.04%であり,受診者の3.54%に異常を認めた.発見した癌の年齢分布は30歳代1例,40・50歳が各々3例,60歳代が12例,70歳代が1例と60歳代が多かった.救命効果の点では,進行癌9例中4例がDukes Aであり,早期癌を含めると20例中15例と3/4が略curativeな段階で発見された.
    直腸鏡検査は非常に簡単な検査であり,診断範囲は直腸とS状結腸の一部に限られているが,集検に応用したところ癌の発見率が0.13%であった点は注目に価すると思われる.深部大腸癌発見を目的とした便潜血反応との併用の普及化が今後必要である.
  • 山本 登司, 志田 晴彦, 浅野 哲
    1982 年 35 巻 6 号 p. 573-579
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    昭和48年より現在迄の約10年間に人間ドック入院患者延4,448名,外科外来初診患者1,037名に対して直腸鏡による下部大腸検診を行ない,無自覚無症状の人間ドック検診ではポリープ173例3.9%,癌6例7病変(m癌4,sm癌+pm癌1,ss癌1)0.14%を認め,有症状の外来検診ではポリープ49例4,7%,癌56例(早期癌8,進行癌48)5.4%を認めた.
    直腸鏡単独では診断し得なかった癌症例の分析から,下部大腸癌の検診においても直腸鏡のみでは不充分であり,大腸ファイバースコープの使用が望ましいと老えられた.
    現行の各種便潜血テスト及び大腸癌の部位別臨床症状を検討し,大腸集検における問診と便潜血反応によるスクリーニングでは癌の見落としの可能性が大きいことがうかがわれ,将来の大腸集検のあり方としてスクリーニングの段階で注腸又は大腸ファイバースコープ検査を取り入れるのが望ましく,その為の手技の簡便化に努力したいと考える.
  • 本邦の現況と問題点
    北條 慶一
    1982 年 35 巻 6 号 p. 580-586
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌の診断は容易である.早期発見がおくれているのは一般に大腸癌は症状が乏しいので患者がたとえ出血などがあっても受診するのが遅れているからである.症状があって受診するときは可成り進行癌である.無愁訴のうちに,あるいは症状の乏しい時期に発見すること,これには予防検診,あるいは集団検診を普及させることである.
    この1~2年,本邦でも大腸集検が注目され,大むね便潜血反応でscreeningをかけ,その陽性者を精査するという方法で,現在のところでは受検者の0.2%程度に大腸癌を発見し,そのうち7割は早期癌であり,有益さが実証されつつある,一方スクリーニングの手段とする便潜血反応もfalse negativeが少からずあり,これによる見落し例の拾い上げが一つの大きな現在の課題である.
  • 富田 正雄, 三浦 敏夫, 下山 孝俊, 石井 俊世, 田淵 純宏, 原田 達郎, 中山 博司, 平野 達雄
    1982 年 35 巻 6 号 p. 587-592
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    1965年1月から1980年12までの15年間に長崎大学医学部第一外科で経験した大腸癌切除269例中pm癌24例につき検討した.
    (1)初発症状の大半は下血・血便であったことから,早期に発見される手がかりは,下血・血便の自覚症状にあるといえる.
    (2)環周性は1/2ないし1/3周,腫瘍径5cm以下であるが,3cm以下の症例が多く,大半は潰瘍限局型であった.
    (3)組織型では高ないし中分化型を示し,リンパ節転移はないか,あってもn1(+)にとどまった.
    (4)脈管侵襲としてはV(+)37%,ly(+)67%の侵襲頻度であったが,すべてH,P,であり外科的に治癒切除可能な癌であり,さらに手術成績の向上が期待できるものと考えられた.
  • 高橋 康幸, 武藤 徹一郎, 上谷 潤二郎, 小西 文雄, 沢田 俊夫, 杉原 健一
    1982 年 35 巻 6 号 p. 593-599
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    外来においてステロイド治療が行われた炎症大腸疾患患者52名を対象に,計185回の血中コーチゾールレベルを測定し,とくにステロイド坐剤が副腎皮質機能に与える影響について検討した.局所投与における副腎皮質機能の抑制出現率は経口投与より低かった.プレドニン坐剤単独使用では8.1mg/日,16週,総投与量910mgで抑制がみられ,1日の投与量増加とともに短期間に抑制がみられた.局所投与として,20mg/目,総投与量2240mgを境に抑制出現率に有意差が認められ,抑制出現率は1回投与量と相関することが示唆された.抑制された副腎皮質機能の回復は,2週間めから認められたが,回復因子として有意な因子は認められなかった.
    臨床的副作用の出現がきわめて少ないステロイド局所療法においても,副腎皮質機能には抑制が起こりうることを示し,ステロイド局所療法中における副腎皮質機能チェックの必要性を指摘した.
  • 制限食下便潜血連続2枚法の成績
    藤田 昌英, 太田 潤, 木本 安彦, 大嶋 一徳, 上田 進久, 塚原 康生, 堀野 俊男, 熊西 康信, 大道 道大, 下妻 晃二郎, ...
    1982 年 35 巻 6 号 p. 600-605
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌の集団検診の必要性が近年ようやく認識され始めたが,現在なおその方法模索の段階にある。教室では昭和53年から,便潜血でスクリーニングを行う集検を試みており,一部はすでに報告した.昭和55年から2年間に,制限食下便潜血スライド連続2枚法の受検者は9,449名で,うち男は3,645名,女は5,804名であった.要精検者は1,401名,14.8%で,精検受検者は858名であった.大腸癌は11名(0.12%)発見されたが,うち8名は早期癌であり,残る進行癌3名中2名もリンパ節転移陰性であった.部位は盲腸1, S状結腸2,直腸8名で,治療後全例が健在である.他に大腸ポリープは91名,大腸憩室は59名,胃癌は2名に発見された.便潜血陽性の頻度をみると,癌の9名は1回のみ陽性であり,癌といえども出血は問歇的であることが判った.適切な便潜血検査によるスクリーニングは,大規模,かつ信頼度の高い大腸癌集団検診を実施する方法として有用である.
  • 特に統計的検討を中心に
    関 正道, 宗像 敬明, 森田 建, 井上 健和, 板垣 和夫, 片山 久, 河村 博
    1982 年 35 巻 6 号 p. 606-616
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    新生児期より排便障害を呈し28歳に至って成人Hirschsprung病と診断された一治験例を経験し,その概略と共に本邦および欧米例について文献より統計的観察を行ない成人Hirschsprung病の診断,治療,予後,等における特殊性について報告する.
  • 森谷 宜皓, 小山 靖夫, 柳川 繁雄, 筧 正兄, 牛尾 恭輔, 広田 映五, 板橋 正幸
    1982 年 35 巻 6 号 p. 617-622
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    下部直腸,肛門管の悪性黒色腫は稀な疾患である.外科治療後の5年生存率は20%前後と極めて低い.本症例は,69歳女性で肛門外縁より2cm口側に2/3周を占める凹凸不整の腫瘤を認め,生検で悪性黒色腫と診断された.腹会陰式直腸切断術と両側そけい郭清術を施行した.多数のリンパ節転移が認められた.術後6カ月目にイレウス状態となり,開腹術を施行したところ,仙骨前面に7×6cmの局所再発巣を認めた.この腫瘍に3本のアフターローディングチューブを挿入し,1Ci60Co小線源によるRALS治療と追加外照射,化学療法を加え行った.患者は不幸にも縫合不全による長期にわたる腸瘻のため,回腸左外腸骨動脈瘻を形成し,初回手術後1年目に出血死したが,剖検により再発病巣は完全に消失していた,文献的考察を加え,本法の有用性について述べた.
  • 頸部皮下気腫を呈した穿孔例
    高島 茂樹, 冨田 富士夫, 上野 桂一, 上村 卓良, 片山 外一, 山口 明夫, 喜多 一郎, 宮崎 逸夫
    1982 年 35 巻 6 号 p. 623-626
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    1976年以降,過去6年問に施行したCF334件中1件(0.30%)に偶発症の発生を認めた.偶発症併発例は下痢及び下血を主訴とした59歳,女性で脾彎曲部を中心とした多発性ポリープのためCFにて観察生検を施行した.ファイバースコープのS状結腸通過はα-loop法にてsliding tubeを用いた.検査時,患者は何ら苦痛を訴えなかったが15時間後に軽度の下腹部痛,微熱を認め,24時間後に両側頸部皮下気腫をきたし穿孔が示唆された.X線学的に後腹膜腔から縦隔に亘り広汎な気腫像が観察されたが,気腹像及び臨床的に腹膜炎症状が全く認められなかったことから保存的治療を行ない6日目に症状の完全な消褪をみた.検査後7日目に原疾患治療のため開腹したが穿孔部位の確認は困難であり,しかも不可能であった.以上,CFに基ずく偶発症として頸部皮下気腫を呈した一例を報告するとともにこのような症例の治療に際し腹腔内遊離ガス像の有無が重要であることを強調した.
  • 田沢 賢次, 宗像 周二, 永瀬 敏明, 笠木 徳三, 眞保 俊, 唐木 芳昭, 田近 貞克, 斎藤 寿一, 伊藤 博, 藤巻 雅夫, 池田 ...
    1982 年 35 巻 6 号 p. 627-630
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    手術後に次第に陥没した回腸人工肛門のため局所管理に難渋,慢性皮膚炎がストーマ周囲に発生,続発するように全身性乾癬が発症した,33歳の男性,潰瘍性大腸炎術後の症例について報告した.昭和44年,全結腸,直腸肛門部切除術,回腸人工肛門造設術が施行されている.全身性乾癬の原因としてストーマ周囲皮膚炎による局所刺激が疑われ,人工肛門再造設が行なわれた.術後,尋常性乾癬は治療することなしに軽快し,1カ月後には色素沈着を残して寛解した.陥凹状の人工肛門の場合,周囲皮膚炎を避けることができず患者にとっては非常に苦痛である.更に本症例のごとく皮膚病変発生の外的刺激因子になることが考えられる.潜在的に皮膚疾患を有する症例では,人工肛門造設に充分注意すべきである.また術前,術後においても,enterostomal therapyとしての専門的配慮が必要であることを強調した.
  • 1982 年 35 巻 6 号 p. 631-638
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
  • 1982 年 35 巻 6 号 p. 639-642
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
feedback
Top