大腸癌の集団検診の必要性が近年ようやく認識され始めたが,現在なおその方法模索の段階にある。教室では昭和53年から,便潜血でスクリーニングを行う集検を試みており,一部はすでに報告した.昭和55年から2年間に,制限食下便潜血スライド連続2枚法の受検者は9,449名で,うち男は3,645名,女は5,804名であった.要精検者は1,401名,14.8%で,精検受検者は858名であった.大腸癌は11名(0.12%)発見されたが,うち8名は早期癌であり,残る進行癌3名中2名もリンパ節転移陰性であった.部位は盲腸1, S状結腸2,直腸8名で,治療後全例が健在である.他に大腸ポリープは91名,大腸憩室は59名,胃癌は2名に発見された.便潜血陽性の頻度をみると,癌の9名は1回のみ陽性であり,癌といえども出血は問歇的であることが判った.適切な便潜血検査によるスクリーニングは,大規模,かつ信頼度の高い大腸癌集団検診を実施する方法として有用である.
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