日本大腸肛門病学会雑誌
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35 巻, 5 号
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  • 総論
    荒川 廣太郎
    1982 年 35 巻 5 号 p. 449-453
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    近年直腸脱の研究・治療の進歩はめざましいものがある,また成因・病態・発生のメカニズムの解明などに新しい手法を取り入れ,徐々に本態が明らかになりつつある.
    治療法においてもほぼ定型的な術式が確立され,以前のように,術式の選択にあれこれ迷うことが少なくなった.
    しかし,直腸脱とこれにともなう骨盤底の弛緩や肛門括約機能不全の全貌がすべて明らかにされたわけではない.本疾患の人種的相違,性年齢別発生の特徴,stage分類などの研究が更に積み重ねられてゆくにつれ,一層単純で確実な治療方法が老案され,やがて本疾患に対する予防的施策も編み出されて来ると思われる.
    ここでは直腸脱の諸問題を概説的に述べる.
  • 今 充, 中田 一郎, 小野 慶一
    1982 年 35 巻 5 号 p. 454-458
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸脱の分類と発生メカニズムにつき綜説的に記した.
    分類法:完全直腸脱と不完全直腸脱との分類法は単純にして明解であり,臨床的に治療法にもつらなる極めて有意義なものである.さらにTuttleの分類,Bearhsらの分類も紹介した.
    発生メカニズム:直腸脱の発生メカニズムとして挙げられる成因,誘因は多数あり,実際臨床上,それぞれに納得のいくものである.ところが,その発生機点を一つの説で,明解に共通して説明してくれるものはなく,色々の因子が,様々な程度に関与しているものと考えられる。Ripstein, Lanterら,Moschowitzなどの腸重積,滑脱ヘルニアとの考え方,骨盤底筋,肛門括約筋などの支持組織の弱体化や機能異常について述べた.また直腸脱成因を腹成術(槇,1975)に関連して考えるとき,腹圧負荷も大きな要因の一つであることが,明らかに理解出来て興味深い.
  • 鈴木 宏志
    1982 年 35 巻 5 号 p. 459-462
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸脱では報告者によっても異なるがおよそ半数の症例に便通異常がみられる.
    直腸肛門管内圧測定を5例の直腸脱患者に行ったところ,3例では正常の直腸肛門管静止圧,直腸肛門反射がみられたが,2例では直腸肛門反射は正常にみられたものの,肛門管内圧の有意な低下がみられ,うち1例では肛門管長の短縮もみられた。
    直腸脱にみられる括約不全が1次的なものか2次的なものかについてはいまだ意見の一致をみていない.
  • 殊に直腸肛門内圧学的検討
    野口 哲彦, 矢野 博道
    1982 年 35 巻 5 号 p. 463-470
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    小児の直腸脱は2~3歳に好発するが頻度の高い疾患ではない.小児期の直腸脱の原因はこの年齢特有の解剖学的ならびに生理学的未熟さにあると考えられている.
    我々は最近3年間に7例の小児直腸脱を経験し,6例は3歳以下であった.これら7例に治療の前後にわたって都合15回の直腸肛門内圧測定を施行した.その結果,直腸肛門反射の直後に肛門管圧の異常な上昇(over contraction after reflex)を6例に認めた.この異常現象を認めなかった1例は短期間で自然寛解した.直腸肛門静止圧曲線でも手術的治療前後で昇圧帯が肛門側へ移動した.このことは肛門管内圧を形成している内外肛門括約筋の相互作用に不均衡が生じて直腸脱が発生していることを暗示している.
    したがって小児期の直腸脱の治療においては,肛門括約筋の機能を温存した侵襲の少い治療法を選ぶことが重要である.
  • 山城 守也, 日野 恭徳
    1982 年 35 巻 5 号 p. 471-475
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    60歳以上の不完全直腸脱35例と完全直腸脱26例について臨床的検討を行った.
    性別頻度について,不完全型は痔核の有無に関係なく男女ほぼ同頻度であったが,完全直腸脱は男4対女22と女性の方が多かった.
    最も長い病悩期間は,不完全型で痔核をもつもの30年,痔核をもたないもの7年,完全直腸脱19年であった.初回治療者は大部分が数年以内であった.
    主要症状は脱出感,出血と疼痛である.痔核をもつ不完全型は有痛例が多く,痔核をもたないもの,完全型では少い.前立腺肥大,慢性気管支炎,便秘など腹圧上昇を伴う併存疾患との相関はみられなかった.
    衰弱した高齢者では,簡単な術式を採用すべきである.著者らは不完全直腸脱に対しては結紮切除法,完全直腸脱に対しては,開腹,直腸つり上げ,後方固定,腹膜形成(Sudeck変法)を採用している.
    手術例44例中4例に再発がみられた.
  • とくにGant-三輪法・Thiersch法併用手術
    竹村 浩, 土屋 周二, 小林 俊介
    1982 年 35 巻 5 号 p. 476-482
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    完全直腸脱19例に対し,初回手術として経肛門的手術の一つであるGant-三輪法・Thiersch法併用手術を行ない,その成績と意義を検討した.
    手術後30日以内の死亡はなく,術後合併症として7日目に縫縮部の一部が壊死に陥り後出血をきたしたものが,1例(5%)にみられた.3例が他病死(生存中直腸脱の再発はみとめられなかった.)し,2例が消息不明であった.再発は2例(14%)で,1例は術後50日に,1例は術後6年に生じた.残り12例は手術の結果にほぼ満足であったが,下着の汚染,肛門周囲の湿疹は手術後も続くものがみられた.
    Gant-三輪法・Thiersch法併用手術は,手技が簡単で安全であり,術後の合併症や再発が少なく有効な手術なので,年齢や全身状態に関係なく,完全直腸脱の症例に第一にえらばれてよい手術法である.
  • 岡田 光生, 岩垂 純一, 柳田 通, 塚本 順, 隅越 幸男
    1982 年 35 巻 5 号 p. 483-486
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    昭和35年より昭和57年3月までに当センターにて経験した直腸脱症例は96例である.そのうち会陰術式により手術したものは47例あり,うち21例に再発,再手術を行っている.
    開腹手術は初回手術49例,再手術13例の計62例に施行した.Bacon法25例,Kummel法31例,前方切除術6例である.うちBacon法に1例,Kummel法に2例,前方切除術に1例,計4例の再発がある.術後生じた直腸粘膜脱に対して結紮切除術等を追加した症例が5例ある。
    開腹直腸固定の手術手技を要約すると,骨盤底に関する操作は省略し,仙骨前靱帯,または小腰筋腱膜に固定するが,腸管の追加切除は行なっていない.
    前方切除術は少数例であり,今後の問題である.
    直腸脱に対しては,積極的に根治性の高い術式を初回から選択すべきである.
  • 宇都宮 利善, 篠原 央, 篠田 政幸
    1982 年 35 巻 5 号 p. 487-492
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    手術手技:直腸を骨盤壁から遊離して,前方に転位している直腸を正常の後方彎曲を保持させるために仙骨弓にグラフトを縫合固定し,直腸の滑脱を防ぐために直腸前壁とグラフトを縫合固定する.
    成績:1967年以来14例の完全直腸脱にRipstein法を行なった.患者の性別は男性5例,女性9例であり,平均年齢は男性36.5歳,女性50.6歳である.手術による直接死亡は全くなく,術後の再発も現在のところ経験していない.各患者の予後は3年後老衰死1例,3年6カ月後腸閉塞で前方切除,7年後に老衰死1例,頑固な便秘のため1年3カ月後にグラフト除去,前方切除1例,9年後直腸癌になりMiles手術1例,4年後膀胱癌手術1例であるが老衰死の2例を除いた12例が生存している.この手術は手技が比較的容易であり,手術侵襲が少ないため,老人においても安全に行なえる手術であり,再発も少なく効果ある手術法である.
  • 石原 通臣, 宗像 敬明, 岡部 郁夫, 森田 建
    1982 年 35 巻 5 号 p. 493-501
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    鎖肛術後の排便状態を検討するため,直腸肛門内圧検査が広く応用されてきている.しかし排便状態の推移に梓う直腸肛門内圧の変動について言及した報告は少い.
    私共は5年前に高位鎖肛術後症例57例について直腸肛門内圧検査,とくにreflex profileの面より検討した.こののち排便異常例,便秘14例,失禁19例に対し一定の対策を行ってきたところ,約半数に排便状態の改善を認めた.
    そこで5年後の今回これら症例に対し直腸肛門内圧検査を行い,排便状態の推移に伴う内圧の変動について検討した.
    便秘ではreflex profileにおいて,以前肛門管下部の弛緩不全もしくは収縮を認めたのに対し,改善した今回は肛門管全体に弛緩を認めるようになった.失禁ではreflex profileにおいて,以前肛門管全体に弛緩を認めなかったのに対し,改善した今回は肛門管全体に弛緩を認めるようになった.
  • 貫通法の手技・有用性と4症例報告
    森谷 宜皓, 小山 靖夫, 北條 慶一
    1982 年 35 巻 5 号 p. 502-508
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    外科的治療を必要とする放射線直腸障害に対して,従来,人工肛門造設術が一般的治療法と考えられていた.しかし自然肛門からの排便は,患者の最大の願望である.そこで,障害腸管の切除と肛門括約筋温存術が施行された4症例を報告すると共に,本症に対する肛門括約筋温存術式,特に貫通法の具体的手技とその有用性について言及した,本術式の適応基準として,(1)原疾患の再発が骨盤内に認められない,(2)S状結腸上部に放射線障害を認めない,(3)歯状線上2cm以内の直腸に放射線障害を認めない,(4)回腸に高度な放射線障害を認めない,(5)痔瘻や高齢などに起因する肛門括約筋機能低下がない,以上の5項目が重要と考えられた.本症には,放射線誘発癌の問題もあり,follow upに当っては症状を過少評価することなく,経時的検索が必要であると考えられる.
  • とくに粘膜固有層内のリンパ管の存在について
    桑原 大祐, 西 満正
    1982 年 35 巻 5 号 p. 509-514
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    消化管のリンパ管構築は病態により種々の変化をきたすと思われるが,形態学的には未だ十分に明らかにされたとはいえない.大腸においては他消化管と異なり,粘膜内におけるリンパ管は存在しないか,あっても粘膜筋板直上に起始部が盲管として存在しているとされている.著者は,その実体をさぐるために,この研究を行った.研究材料は成犬の大腸と,ヒトの切除大腸標本を使用した.方法は,硝酸銀水動脈内注入法と,色素穿刺注入法にて行った.その結果,粘膜内に毛細リンパ管を描出することができた.とくに犬では粘膜表面の近くに腺窩をとり囲むようなリンパ管叢をみとめ,そのリンパ管叢と粘膜筋板直上のリンパ管叢とが交通する所見をえた,すなわち粘膜固有層内には浅層の第一次毛細リンパ管叢と深層の第ニ次毛細リンパ管叢があり,壁に垂直に走行する集合毛細リンパ管により交通している.そのあと粘膜筋板を穿通し粘膜下層に入る.粘膜筋板を穿通する部位には弁をみとめているが,粘膜固有層内のリンパ管には弁がみられず毛細リンパ管と考えられる.
  • 高橋 日出雄, 下田 忠和, 石川 栄世, 石田 秀世, 東郷 実元, 穴沢 貞夫, 桜井 健司
    1982 年 35 巻 5 号 p. 515-523
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    1981年6月までに当教室で経験した肛門部癌8例の病理学的検討を行なった,さらに255例の結腸直腸癌と対比して検討も加えた.また,長期間存在していた痔瘻より発生したと老えられる肛門部癌4例と,痔瘻を合併していない肛門部癌について比較検討も行なった.そこで,痔瘻より癌が発生したとする病理学的根拠として,痔瘻と癌との占居部位,癌の発育形態などの特徴像を見い出した.痔瘻から発生した肛門部癌に共通した所見として,癌は瘻孔を中心として肛門部のほぼ歯状線上に占居しており,壁外性発育を示し,組織像は主に粘液癌あるいは粘液産生能をもつ高分化型腺癌であった.痔瘻を合併していること以外の点では,肛門腺由来と考えられる肛門部癌と病理学的に同様の所見であり,肛門腺―痔瘻―癌の密接な関係が強く示唆された.
  • 貞広 荘太郎, 近藤 喬, 武士 昭彦, 篠原 央, 呂 俊彦, 大西 英胤, 宇都宮 利善, 向井 美和子
    1982 年 35 巻 5 号 p. 524-529
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    昭和43年8月~55年7月までの12年間に,大腸単発癌220例,同時性大腸多発癌10例,異時性大腸多発癌4例,大腸癌を含む原発性重複癌11例を経験した.同時性多発癌は全大腸癌の4.0%,異時性多発癌は1.6%,大腸癌を含む原発性重複癌は4.5%を占める.これらの多発・重複癌の発生頻度は期待値よりも有意に高く,これらの癌の発生には単発癌とは異った要因の関与が示唆される.同時性多発癌の60%では,多発病変は比較的離れた領域に存在している.また,異時性多発癌の病変出現間隔は2年~20年である.家族歴の調査により,異時性多発癌患者を発端者とする大腸癌多発家系を見い出した.
    大腸癌患者の診断・治療にあたっては,多発癌・重複癌の存在を考え,手術前の全大腸にわたる検索と手術後の綿密な追跡調査が必要と思われる.
  • 本邦報告50症例の統計的考察
    金丸 洋, 天野 一夫, 小野田 万丈, 倉光 秀麿, 織畑 秀夫, 山本 晴義, 窪田 幸男, 山田 濶, 長廻 紘
    1982 年 35 巻 5 号 p. 530-537
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    結腸及び直腸絨毛腺腫については,米国にその報告例が多く,詳細な検討がなされている.しかし本邦では,その報告は少く,渡辺(1953)の発表以来約50例にすぎない.しかし,その特徴的形態と,癌化率の高さから,近年次第に注目を集めている.今回我々は,直腸絨毛腺腫の1例を経験したので,本邦報告50例及び米国報告約1300例の文献的考察を加えて報告する.本邦例では,(イ)男女比19:31と女性に多く認められた.(ロ)直腸及びS状結腸部に44例(88%)が発生した.(ハ)下血,粘液排出を93例(86%)に認めた,(ニ)浸潤癌の合併が11例(22%)に認められた.(ホ)適切な手術術式の選択が重要である.
  • 1982 年 35 巻 5 号 p. 538-547
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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