60歳以上の不完全直腸脱35例と完全直腸脱26例について臨床的検討を行った.
性別頻度について,不完全型は痔核の有無に関係なく男女ほぼ同頻度であったが,完全直腸脱は男4対女22と女性の方が多かった.
最も長い病悩期間は,不完全型で痔核をもつもの30年,痔核をもたないもの7年,完全直腸脱19年であった.初回治療者は大部分が数年以内であった.
主要症状は脱出感,出血と疼痛である.痔核をもつ不完全型は有痛例が多く,痔核をもたないもの,完全型では少い.前立腺肥大,慢性気管支炎,便秘など腹圧上昇を伴う併存疾患との相関はみられなかった.
衰弱した高齢者では,簡単な術式を採用すべきである.著者らは不完全直腸脱に対しては結紮切除法,完全直腸脱に対しては,開腹,直腸つり上げ,後方固定,腹膜形成(Sudeck変法)を採用している.
手術例44例中4例に再発がみられた.
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