日本大腸肛門病学会雑誌
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36 巻, 2 号
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  • 吉川 宣輝, 笹井 平, 山本 秀樹, 水野 滋, 村井 雅己
    1983 年 36 巻 2 号 p. 95-100
    発行日: 1983年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    本邦における大腸癌の増加により,大腸における集団検診の必要性がさけばれている.大腸集検の方法はいまだ確立されておらず,過去に試みられたいくつかの報告の成果をもとに,効率の良い方法が検討されつつある.私共は56年度に職域を中心とした大腸集検を試み,13の企業1547名のスクリーニングを施行し,早期癌1名を発見した.スクリーニングとして食事制限なしの3日間の便潜血反応と問診票に加え,精検希望者も考慮に入れた方法をとった.精検手段として大腸ファイバースコープおよび注腸透視を併用した.56年度の成績からえられたいくつかの反省から,57年度には二次スクリーニングとして,食事制限付きの3日間便潜血検査を施行している.
  • 長期管理の方針について
    牧山 和也, 村上 一生, 井手 孝, 小森 宗治, 市村 経敏, 福田 博英, 原口 増穂, 今村 和之, 原 耕平
    1983 年 36 巻 2 号 p. 101-107
    発行日: 1983年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎症例70例の治療経験をもとに,その治療と長期管理の方針について検討を行った.潰瘍性大腸炎は原因不明で,再燃緩解を繰り返す難病であるが,このような疾患を処置していくには,いかにコントロールし易い状態に疾患を治まらせ,緩解後をいかに長期間うまくコントロールし管理していくかというところに治療方針の基本があるのではないかと考えられた.具体的には,1)活動期には医原性増悪因子を少なくし,早く緩解期に導入するためにサラゾピリンとステロイドの併用療法から開始する方がよりよい治療効果が期待できるものと考えられた.2)再燃の約67%が薬剤の中止あるいは減量が関与していたことから,長期管理の方針としてはサラゾピリンによる長期維持の重要性が浮き彫りにされた.3)長期経過観察のための検査法や,診療のあり方などの環境因子も,患者管理の上で重要な要因の一つであることを指摘した.
  • 藤見 是
    1983 年 36 巻 2 号 p. 108-118
    発行日: 1983年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    炎症性腸疾患は,内科療法が主になり,経過観察例が増加しているため,診断困難例が増加しつつある.したがって診断困難例を少なくするため炎症性腸疾患特に潰瘍性大腸炎,クローン病,腸結核の隆起性病変の臨床的病理学的差異に注目し,またこの事をポリペクトミーにも応用した.対象は,潰瘍性大腸炎69例,クローン病20例,腸結核19例である.潰瘍性大腸炎の炎症性ポリポージスは,発症後1~2カ月ほどで出現し,病理学的には,粘膜の萎縮,好中球を主体とする炎症性細胞浸潤,粘膜筋板の消失などであった.クローン病の敷石状隆起と密集性炎症性ポリポージスは,組織学的に類似しており,粘膜固有層は,棄症軽度で粘膜筋板も保持されていた.腸結核のポリープは,粘膜固有層のリンパ球を主体とする軽度の炎症性細胞浸潤で,粘膜筋板は,不明瞭であった.以上の事は,切除及びポリペクトミー標本にもみられ,経過観察中の症例では,鑑別上有用な事と思われた.
  • 多田 正大, 川本 一祚, 渡辺 能行, 傍島 淳子, 川井 啓市
    1983 年 36 巻 2 号 p. 119-124
    発行日: 1983年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌集検の第一歩として,便潜血検査は簡便にでき,集団をスクリーニングするには最適である.欧米ではその方法としてHemoccult法を用いることが多いが,わが国ではまだ一致をみない.そこでGuaiac法とHemoccult法の大腸疾患に対する診断能を対比してみた,その結果,Guaiac法では進行癌はすべて陽性,早期癌も66.7%が陽性であった.Hemoccult法では進行癌98.5%,早期癌50%が陽性であった.良性ポリープも腫瘍が大きくなるほど陽性率は高かった.健常者のfalse positive率は制限食下ではGuaiac法で7.7%,Hemoccult法で2.6%であったが,無制限の場合Guaiac法28.6%,Hemoccult法7.1%であった.自験例でも感度の低いHemoccult法でも根治術の可能な進行癌であれば診断できると考えられたが,より小さな病変の診断にはGuaiac法が適していた.
    集検の規模,陽性者に対する精密検査の処理能力によって,便潜血検査の感度が設定されなければならないが,受診者が数目間の食餌制限に耐えられ,かつ精密検査の処理力が十分にあるなら,日本人の集検には感度の高いGuaiac法がふさわしいと老えられた.
  • 三輪 洋子, 前田 淳, 山下 克子, 横山 泉, 長廻 紘, 佐々木 宏晃
    1983 年 36 巻 2 号 p. 125-128
    発行日: 1983年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    内視鏡的ポリペクトミーにより診断しえた大腸の良性リンパ濾胞性ポリープの2例を経験した.第1例は血便を主訴として来院し,直腸に病変を認めた.第2例の主訴は下痢で,病変部位は横行結腸であったが,直腸にも腺腫を合併していたため,同時にポリペクトミーを施行した.いずれの病変も肉眼的には腫瘍性か非腫瘍性の鑑別が困難であったため,「ポリープ」の診断名にとどめた.2つの症例は,大腸ポリペクトミー施行後病理組織学的な検査をおこない良性リンパ濾胞性ポリープと診断された.本症に対するポリペクトミーの有用性とともに文献的考察も加えた.
  • 樋渡 信夫, 今野 保敏, 小林 和人, 後藤 由夫
    1983 年 36 巻 2 号 p. 129-133
    発行日: 1983年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は33歳女性.昭和53年11月(30歳)に潰瘍性大腸炎(全大腸炎型)が発症し,薬物療法により緩解に至ったが,54年末に再燃し重症となり,結腸亜全摘術を受けた.55年9月より咳嗽,喀痰出現し,症状は次第に悪化し,血痰,胸痛,呼吸困難も伴うようになった.胸部レ線では両下肺野に索状,蜂巣状陰影を認めた.各種抗生物質の投与にもかかわらず,症状やレ線所見の改善はほとんどみられなかった.肺機能検査では軽度の閉塞所見を示した.プレドニン大量投与により症状や検査所見は劇的に改善した.改善後の気管支ファイバー,造影では,慢性炎症および軽度の拡張,壁不整を認めた.
    潰瘍性大腸炎と気管支病変の発症機序や因果関係は不明であるが,潰瘍性大腸炎が先行している,気管支病変の原因が認められない,他の腸管外合併症(肝障害,関節痛)を有することなどより,気管支病変は潰瘍性大腸炎の腸管外合併症の可能性が示唆された.
  • 濱田 映, 石沢 隆, 小田原 良治, 大井 正文, 野村 秀洋, 愛甲 孝, 西 満正, 田中 貞夫
    1983 年 36 巻 2 号 p. 134-137
    発行日: 1983年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    肛門出血を主訴とする69歳女性.肛門縁より約2.5cm口側,7時の後壁に小指頭大腫瘤を触知.生検組織診断にて類基底細胞癌と診断され直腸切断術を施行した.歯状線直上部の1.3cm×1.3cmのpolyp様腫瘤で表面不整,潰瘍形成無く,所属リンパ節への転移も無い(N(-),So,Po,Ho,M(-)=stageI).組織学的には深達度はsmで角化傾向を示す中分化型扁平上皮癌であり,一部にbasaloid patternとされるperip-heral palisading像を認めた.術後6ヶ月現在健在である.類基底細胞癌は肛門管で最も特徴的なものとされるが,扁平上皮癌の亜型であろうとも言われており,本症例も扁平上皮癌の一部にbasaloid patternの混在を認めた例である.
  • 中島 均, 芳賀 陽一, 福士 玄, 福士 道夫, 千葉 満郎, 相沢 中, 棟方 昭博, 吉田 豊
    1983 年 36 巻 2 号 p. 138-142
    発行日: 1983年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    Crohn病5症例にMetronidazoleを投与し,その効果を検討した.症例は20~37,平均年齢が24.6歳で,男性2例,女性3例であった,小腸・大腸型が4例.大腸限局型が1例で,体重1kg当たり10~20mgのMetronidazoleを投与した.投与期間は17日~137日であった.有効例は2例で,うち1例は大腸限局型の21歳男性で,500mg/日を137日間投与し,自覚症状の消失,赤沈やCRPの正常化など完全寛解の状態に達し退院した.副作用は全く出現しなかった.他の1例は,大腸が主病変の小腸・大腸型で,20歳男性だった,有効例であったが副作用の下肢のシビレ感が強く,止むを得ず中止した.無効例3例のうち,1例は腹痛のため,他の2例は全く効果がなく中止した.5症例と少ないが,MetronidazoleのCrohn病への適応は,大腸限局型または主病変が大腸の小腸・大腸型の症例であると思われた.
  • 〓 辛黎
    1983 年 36 巻 2 号 p. 143-144
    発行日: 1983年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    New suture and ligation treatment (compression therapy) was developed in our hospital for the treatment of internal haemorrhoids and the 100 cases have been treated since May 1978 to August 1980.
    The theory of the method is that the blood vessels in the rectum are running longitudinally, so that, when a haemorrhoid is multiply tied in horizontal position, i. e., parallel to the pectinate line, the ligation of the vessels is effective and the internal haemorrhoid becomes atrophied due to obstruction of the circulation and finally slougshs off. No drugs are needed.
    The operative procedures are that the patient lies in Sim's position, the anus is relaxed and dilated with local anesthesia. Allis' clamp is used to catch the outer third of the internal haemorrhoid. Around needle holder threaded with silk is passed from the right side at the base of the internal haemorrhoid to the left, the silk is pulled through the haemorrhoid and a tight knot is made over the surface of the mucous membrane.
    With the above-mentioned method, 2 silk ligatures are applied for a small haemorrhoid, 3 to 4 ligatures are applied for a larger haemorrhoid.
    The procedure is simple, less painful, and with good results. Ninty one cases were followed up from 2 months to two years, with 90 cases cured and 9 cases improved, with curing rate of 99 %.
  • 1983 年 36 巻 2 号 p. 145-182
    発行日: 1983年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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