日本大腸肛門病学会雑誌
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38 巻, 4 号
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  • 高野 正博, 藤好 建史, 相良 泰至
    1985 年 38 巻 4 号 p. 345-354
    発行日: 1985年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    坐骨直腸窩痔瘻・骨盤直腸窩痔瘻が含まれる深部複雑痔瘻の治療に関しては,根治術は従来極めて難しいものとされており,これに関するわが国の文献は少ない.私は従来より直腸穿孔を伴う骨盤直腸窩痔瘻などの複雑痔瘻に関しての治療を積極的に行い,その手術術式,成績などについて述べてきた.また痔瘻の根治と共に,他の痔瘻では極めて少ない特殊疾患の合併,癌化などを伴う症例が多いところから,全瘻管の精査も欠くべからざるものである.これに対してわれわれは従来瘻管の全開放を行ってきたが,括約筋に対する損傷がかなり著明であり,術後多少の括約不全を免れることが出来なかった.
    このような症例に対し,最近われわれは括約筋外に孤状に切開を加え,時にはそれを後方に延長して全瘻管を露出し,精査を行い,疑わしい部分は病理学的検査をする,この創は必要に応じて筋肉充填を行いドレーンを入れた後閉鎖あるいは半閉鎖とする.次いで原発口の処置としては,多くは後方正中にある原発口からCourtneyのspaceに存在する原発膿瘍までの瘻管は経肛門的になるべく小さく切除し浅いドレナージを形成後,括約筋の欠損部は縫合閉鎖する.このような手術を過去2年間にわたって19例に行い,一期的治癒例17例,再発例2例とかなりの好成績を収めた。このような試みはかつて発表されなかったと思われるので報告する.
  • 諸富 立寿, 白水 和雄, 磯本 浩晴, 掛川 暉夫, 森松 稔
    1985 年 38 巻 4 号 p. 355-358
    発行日: 1985年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    factor VIII related antigen(F VIII RAG)が血管内皮細胞に存在し,かつリンパ管内皮細胞にはほとんど存在しないことを利用して大腸癌の術前生検材料と切除標本において,静脈侵襲(v)とリンパ管侵襲(ly)との識別にperoxidase-anti-peroxidase method(PAP法)を応用した.結果はリンパ管内皮細胞は陰性~弱陽性に,毛細血管,静脈,動脈は陽性に染まり,v,lyの識別は容易であった,切除標本でv,lyを検索することはもちろん重要であるが,術前の生検材料からv,lyを確認することは,大腸癌の多くを占める転移リンパ節n0,n1における縮小手術や,肝転移危険群に対する術中補助療法等を考えるうえで非常に重要であり,その補助診断の1つとしてF VIII RAGのPAP法は有用であると考える。
  • 東 昇
    1985 年 38 巻 4 号 p. 359-368
    発行日: 1985年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    ENNG坐剤を6頭のイヌに経肛門的に連投し,びまん浸潤型大腸癌の初期像および組織発生を検討した。3頭はその内視鏡的経過観察から発赤,びらんついで小陥凹,ひきつれが生じそのまま狭窄をきたしたびまん浸潤型癌であった.全経過を通じ隆起性病変は認められなかった.次に組織発生を追求するために直腸に小陥凹を認めた時点で1頭を屠殺剖検した.小陥凹の他に肛門より約15cmの大腸に全周性の出血性びらんが回あり,組織学的には共に粘膜下に達する高分化型腺癌であった.これらびらん周辺の連続切片にて,癌巣が粘膜筋板の組織間隙を経て粘膜下組織へ達しようとする像が散在性に多数認められ,de novo,多中心発生が示唆された.さらに,2頭にびらんを認めた時点で手術的に部分切除した.うち1頭に300μのde novo発生を示唆する微小癌を認めた.本研究により,ヒトのびまん浸潤型癌の初期像および組織発生の一端が示唆された.
  • 竹下 俊隆, 堀口 潤, 木下 剛, 陳 培欽, 勝亦 重弘, 堀向 文憲, 窪田 良彦, 杉本 伸彦, 宮岡 正明, 松本 英一, 斉藤 ...
    1985 年 38 巻 4 号 p. 369-375
    発行日: 1985年
    公開日: 2009/12/03
    ジャーナル フリー
    消化管出血の検索のため従来から行われている化学的便潜血反応には,ヒトヘモグロビン以外の物質と非特異的反応をおこすという欠点がある.この問題を解決するため抗ヒトヘモグロビン抗体を作製し,二次元両者拡散法(Ouchterlony法)を用いて免疫学的便潜血反応を臨床的に検討した.非消化管疾患107例では9.3%,消化管疾患150例をは48.7%,大腸癌60例では75.0%に陽性を示し,健常者30例では全例で陰性であった.Ouchterlony法は消化管疾患や大腸癌では,化学的便潜血反応であるシオノギスライドB法とほぼ同様の陽性率を示したが,非消化管疾患および健常者では明らかに低率を示し,偽陽性率の改善が可能であった.従って本法は消化管疾患による出血,特に大腸癌からの出血のスクリーニング法として有用と考えられた.
  • 山崎 安信, 杉田 昭, 川本 勝, 諏訪 寛, 福島 恒男, 竹村 浩, 土屋 周二
    1985 年 38 巻 4 号 p. 376-379
    発行日: 1985年
    公開日: 2009/12/03
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎のため結腸全摘出を行った2年後に,多発する無菌性皮下膿瘍と膝関節炎を合併した症例を経験したので報告する.
    症例は,19歳女性で,昭和54年より全大腸炎型の潰瘍性大腸炎で治療していたが,重症発作のため,昭和55年8,月に結腸全摘兼回腸直腸吻合術を行った。昭和57年12月に多発する皮下膿瘍を呈したが,細菌学的検査では陰性であった.昭和58年1月に左膝関節炎を合併した.皮膚症状と関節炎は軽快し以後昭和59年12月まで,皮膚および関節炎症状は認められない.潰瘍性大腸炎には腸管外の皮膚,関節,肝臓などに合併症を認めることが知られているが,結腸全摘術後に多発する無菌性皮下膿瘍を呈した症例の報告は本邦ではなく,稀な症例と思われた.
  • 野口 友義, 浜野 恭一, 次田 正, 三浦 修, 秋本 伸, 由里 樹生, 亀岡 信悟, 五十嵐 達紀, 三神 俊史, 高石 潔, 相原 ...
    1985 年 38 巻 4 号 p. 380-385
    発行日: 1985年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    小腸Crohn病で,稀な合併症といわれている穿孔性腹膜炎をきたし,緊急手術にて救命し得た2症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
    症例1は,34歳男性.急激な腹痛にて来院し,腹部単純X線にて遊離ガス像が認められ,穿孔性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.回盲部より口側約50cmの回腸腸間膜付着側に穿孔が認められ回腸を約80cm切除した.切除標本は肉眼的,組織学的にCrohn病であった.
    症例2は,42歳男性.腹部膨満を主訴に,腸結核の疑いにて入院した.入院後2日目に激烈な腹痛が出現し,穿孔性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.Treitz靱帯より約3mの回腸の腸間膜付着側に穿孔が認められ,小腸を約150cm切除した.切除標本は肉眼的,組織学にCrohn病であった.
    Crohn病の穿孔はまれで,本例はそれぞれ本邦における16例目,17例目の報告例である.
  • 康 権三, 勝見 正治, 竹井 信夫, 石本 喜和男, 山本 真二, 湯川 裕史, 坂口 雅宏, 浅江 正純, 坂本 幸具, 林堂 元紀, ...
    1985 年 38 巻 4 号 p. 386-390
    発行日: 1985年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    腸管子宮内膜症は比較的稀な疾患であるが癌との鑑別診断が困難である.症例1は46歳でS状結腸,直腸に発生した子宮内膜症であり,症例2は38歳で虫垂に発生した子宮内膜症であった.
    本症の診断の要点は1.詳細な病歴,現症.2.注腸と大腸内視鏡は,月経開始前後と月経周期の中間に施行する.3.組織学的確認をすることである.また本症において血便をきたすメカニズムは1,子宮内膜組織の腸管内露出.2.糞便の狭窄部通過による器械的刺激の2つが考えられる.
  • 宮岡 正明, 白鳥 泰正, 堀口 潤, 木下 剛, 陳 培欽, 窪田 良彦, 勝亦 重弘, 堀向 文憲, 竹下 俊隆, 松本 英一, 斉藤 ...
    1985 年 38 巻 4 号 p. 391-394
    発行日: 1985年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    脳硬塞を契機として発症した急性の偽性大腸閉塞,いわゆるOgilvie症候群に対し大腸内視鏡挿入を試みた.本疾患の診断には大腸に閉塞部のないことを確認しなければならず,そのためには大腸X線検査よりも体位変換の不要である内視鏡検査は有用と思われた.また内視鏡は吸引操作を行うことにより,腸内の減圧を図り,本疾患の主症状である腹部膨隆を消失させるとともに,腸管内圧の上昇により危険性の増した穿孔を未然に防ぐ,治療面においても有用であった.
    従来,大腸内視鏡検査は,その手技の困難さにより特殊検査法であったが,器械の改良や手技の確立により,簡単かつ安全な検査法となった.しかし本症例のごとく,全身状態の悪化した症例では被検者の状態が刻々と変化する場合があり,細心の注意が必要である.またこのような状態での検査を円滑に行うためには,日頃より症例を重さね,その挿入に熟達しておかねばならないと思われた.
  • 萩原 四郎
    1985 年 38 巻 4 号 p. 395-400
    発行日: 1985年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    肛門掻痒症の定義は明記されているが,その原因および分類は種々の報告があるものの一定していない.著者は当院における3カ年間に肛門掻痒を主訴として来た478例に対して原因別分類を試みた.本症例中,原因が明らかに肛門の原疾患(痔核脱出,痔裂,痔瘻),蟯虫によるもの,婦人科疾患によるもの計119例を除いて原因のつかめない359例に対し,詳細な問診,真菌検索,陰窩の深化の有無を検査した結果,アレルギー性57例(15.87%),真菌を検索し得たもの33例(9.19%),陰窩性のもの160例(44,56%),原因不詳のもの109例(30.36%)の群に分類した.陰窩性による掻痒症を否定する発表もあるが,著者は明らかに陰窩性と見られる症例を見出し,また食品によるアレルギー性のものでは生ニンニク摂取による急性発症を多く観察した.
  • ホルモンと痔瘻
    高月 晋
    1985 年 38 巻 4 号 p. 401-406
    発行日: 1985年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    痔瘻ことに乳児痔瘻については不明の点が多く,疑問は久しい.
    およそ局所解剖学上,肛門,口,鼻孔など生体のいわゆる開口部付近には脂腺(汗腺と異なりホルモン依存)が特異的に発育し,生物学的意義の一端を伺わせるものがある.著者は,まず乳児痔瘻について発生の本質は顔面の新生児〓瘡のそれとおそらく同類と見なし,ついで一般の痔瘻についても同じく発生基盤をホルモン脂腺におき構想し解説した.
  • 佐々木 英, 池田 英雄, 下津浦 康裕, 古賀 聖祥, 日高 令一郎, 下河辺 正行, 村山 俊二, 上田 俊明, 藤見 是, 豊永 純, ...
    1985 年 38 巻 4 号 p. 407-414
    発行日: 1985年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    クローン病24例を対象として治療経過を検討した。初期治療においては,薬物療法別に検討すると緩解までの期間に差が無く栄養療法で比較するとED投与が明らかに緩解までの期間が短かった.局所病変においては,潰瘍病変はほとんど改善傾向を示し,特にアフター様潰瘍, fissuring ulcerは消失した.炎症性ポリープが密に認められた症例の一部に増悪がみられた.つぎに一年以上経過を追えた15症例についてその後の再燃についてみると,初期治療の差異が再燃までの期間に影響をあたえるまでには至らなかった,また不十分な食事制限を行っても再燃までの期間に差を認めなかった.
  • 1985 年 38 巻 4 号 p. 415-442
    発行日: 1985年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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