下部大腸癌70例に対し,通常下腸間膜血管造影を57回(以下通常法)およびPGE
1を用いた薬理学的下腸間膜血管造影を47回(以下薬理法)を行い,とくに薬理法による静脈変形像を検討し,静脈直接変形として不整像41(41/47,87.2%),狭小像40(40/47,85.1%),欠損像37(37/47,78,7%),閉塞像28(28/47,59.6%)を認めた.これらの変形は壁深達度ss-a
1からsi-aiの範囲でよく出現し,またこれらの変形の存在した静脈分枝は第2次分枝が主であり,その変形は不整像30(30/41,73.2%),狭小像30(30/40,75%),欠損像27(27/37,73%),閉塞像16(16/28,57.1%)であった.変形の存在する静脈分枝は壁深達度を反映し,腸管壁内を示す第3次分枝の変化は深達度pmを,腸管壁外側を示す第2次分枝の変化はss-a
1からs-a
2を,腸管外を示す第1次分枝の変化はsi-ai以上を反映していた.
静脈の変形分枝よりみた壁深達度の正診率はpm62.5%, ss-a
1 50%, s-a
2 77.8%,si-ai 100%であった.6例の肝転移例では,すべて第2次分枝より中枢の静脈に変形が認められ,しかも欠損,閉塞所見が非肝転移例よりも明瞭に描出される症例が多かった.
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