日本大腸肛門病学会雑誌
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39 巻, 4 号
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  • とくに薬理学的下腸間膜静脈造影法での検討
    永澤 康滋, 森 克彦
    1986 年 39 巻 4 号 p. 327-336
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/12/03
    ジャーナル フリー
    下部大腸癌70例に対し,通常下腸間膜血管造影を57回(以下通常法)およびPGE1を用いた薬理学的下腸間膜血管造影を47回(以下薬理法)を行い,とくに薬理法による静脈変形像を検討し,静脈直接変形として不整像41(41/47,87.2%),狭小像40(40/47,85.1%),欠損像37(37/47,78,7%),閉塞像28(28/47,59.6%)を認めた.これらの変形は壁深達度ss-a1からsi-aiの範囲でよく出現し,またこれらの変形の存在した静脈分枝は第2次分枝が主であり,その変形は不整像30(30/41,73.2%),狭小像30(30/40,75%),欠損像27(27/37,73%),閉塞像16(16/28,57.1%)であった.変形の存在する静脈分枝は壁深達度を反映し,腸管壁内を示す第3次分枝の変化は深達度pmを,腸管壁外側を示す第2次分枝の変化はss-a1からs-a2を,腸管外を示す第1次分枝の変化はsi-ai以上を反映していた.
    静脈の変形分枝よりみた壁深達度の正診率はpm62.5%, ss-a1 50%, s-a2 77.8%,si-ai 100%であった.6例の肝転移例では,すべて第2次分枝より中枢の静脈に変形が認められ,しかも欠損,閉塞所見が非肝転移例よりも明瞭に描出される症例が多かった.
  • 拾いあげと分布状況について
    岡本 平次, 佐竹 儀治, 松島 善視, 衣笠 昭, 鈴木 信夫, 河野 一男, 鈴木 和徳
    1986 年 39 巻 4 号 p. 337-342
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    肛門病院外来患者を対象に大腸癌スクリニーグを目的として,total colonoscopyを施行し,大腸疾患特に隆起性疾患の発見頻度,病変の分布,内視鏡導入の有用性について検討した,最近3年11カ月間に3,607名に対してtotal CFを4,282回試行した.発見し得た病変はポリープ1,075名,29.8%,大腸癌164名,4.5%(早期癌96名,2.7%),炎症性疾患211名,5.8%,その他233名,6.6%であった.すなわち隆起性病変は受検者の約1/3に発見され,特に大腸癌は4.5%でかなりの高頻度であった.ポリープ2,066個の分布は1044個,48.6%が下行結腸より深部大腸に存在していた.大腸癌は直腸・S状結腸が好発部位で133個,77.3%であったが右側結腸にも20個,11.6%が認められ,直腸・S状結腸に比すと,進行癌の比率が高かった.5mm以下のポリープ1,504個中m癌を6個,sm癌を1個見い出した.したがって肛門病を標傍する施設では,痔疾患だけにとらわれることなく大腸癌ハイリスク群として,積極的に内視鏡を取りいれ,深部挿入すべきである.
  • 北條 慶一, 山崎 雅文
    1986 年 39 巻 4 号 p. 343-347
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    最近5年間の直腸癌に対する肛門括約筋温存術施行151症例の術後排便機能を検討した.術後1年経過して"とくに不自由なし"56%,逆に日常生活に支障があり困るとするもの27%であった.
    排便機能障害を5段階に分けて評価した.正常に近いものをgrade Oとし,頻便のため社会復帰に障害があり,人工肛門が奨められるものをgradeIV,便の回数3-4回であり,ときには緩下剤などを必要とするか,特に支障なし,社会復帰できるもの,gradeIIとし,それぞれの中間をgradeIおよびIIIとした.
    術後6カ月,1年後ではgradeIIであるものが高頻度で,それぞれ全体の40%,42%を占めている.
    対象を下部直腸癌に限定して,術式別に評価すると,貫通法では術後1年を経過しても,grade IIIと不良であるものが多く,肛門管直上,および肛門管で吻合した経仙骨吻合法,肛門吻合法は,術直後は頻便でgrade IVであるが術後2-3カ月経過すると著しく改善し,術後1年ではやや高位で吻合した低位前方切除と同様に大部分が日常生活に支障のないgrade II, Iに回復するのが多かった.肛門管上縁で切除せざるを得ないような症例は従来貫通法の適応とされていたが,術後排便機能を考えると肛門吻合法を行うべきであろう.
  • 岡野 良彦, 渡辺 正志, 田村 進, 上田 哲郎, 大森 堯, 柳田 謙蔵, 吉雄 敏文
    1986 年 39 巻 4 号 p. 348-360
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌の立体観察は実体顕微鏡と大腸ファイバースコープの拡大観察で行われていたが,われわれは走査型電子顕微鏡を使用して,さらに高倍率で観察した.
    過去10年間に正常大腸粘膜150例,結腸癌68例,直腸癌46例を観察し,正常大腸粘膜と癌粘膜表面を比較検討した.
    走査型電子顕微鏡の観察所見を,現在までに報告されている実体顕微鏡と大腸ファイバースコープ拡大観察の分類を基にVI型に分類した.I型は単純型で3例(2.6%),II型はcrypt orificeの大きなもので14例(12.3%),III型はgiant cryptで8例(7%),IV型は脳回転型で18例(15.8%),V型は混合型で63例(55.3%),VI型は分類不能型で8例(7%)であった.分類のI-II型では良悪性の判断はできず,変化の強いIII-VI型が存在すれば悪性と考えてよく,とくにgiant cryptの存在する時には悪性と判断して間違いなかった.MicrovilliにおいてもV型に分類され,1)数が少なく長短があり,頭部が膨張しているもの2)長くて屈曲蛇行しているもの,3)長短のトゲのように立っている,4)屈曲蛇行して表面を被っている,5)正常と変らないものがみられた.上記のうち,1)~4)が存在すれば,悪性を疑ってよいと考えた.
  • 五十嵐 達紀
    1986 年 39 巻 4 号 p. 361-372
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸癌局所再発の成立機序を解明するために,局所再発症例61例(再切除例19例,非再切除例42例),対照症例(5年以上,非再発例)83例を検索対象として病理組織学的に検討した.原発巣の臨床病理学的諸因子について,再発例と対照例を対比し,その臨界点(depth=ss(a1),ew=3.9mm,ly=2,v=2,n=1)を求め,さらに再発時の病理組織学的所見および検査所見を組み合わせることにより,再発様式の成因別判定基準を作成し紅これにより分類すると,肛門側切除断端(AW)よりの再発:1例,外科的剥離面(ew)よりの再発:14例,リンパ流よりの再発:25例,血流よりの再発:1例,implantationによる再発:2例,分類不能18例で,61例中43例(70.5%)に局所再発の成因が推定された.また臨床的検討(再発様式と主占居部位,手術術式,予後との関係)により,この分類は臨床的にも意義深いものであると考えられた.
  • 森山 茂
    1986 年 39 巻 4 号 p. 373-381
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎19例の直腸平坦粘膜より得た30標本について病理組織学的変化と細胞核DNA量について検討した.非活動期の9例から得た13標本には病理組織学的に細胞異型,構造異型を認めなかったが,活動期13例から得た17標本のうち11標本に細胞異型あるいは構造異型を認めた.30標本中1標本がindefinite for dysplasiaであったが,他はすべてnegative for dysplasiaと判定された.細胞核DNA量は,潰瘍性大腸炎症例で増加しており,活動期例と対照例(12例)の間には有意差を認めないが,非活動期例および長期経過例では対照例に比し有意に高い値を示した.腺管表層のS,G2+M期細胞の比率は,非活動期例および長期経過例で共に対照例より有意に高い値を示した.以上より病理組織学的に明らかなdysplasiaを認めなくとも,非活動期例や長期経過例では高い細胞増殖活性と細胞増殖帯の表層への延長を示すことが知られた.
  • 沖 真
    1986 年 39 巻 4 号 p. 382-392
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    著者はいまだはっきりと解明されていない大腸の運動生理学的特徴を明らかにするため結腸括約部を中心にstrain gauge force transducerを用いて意識下におけるイヌの大腸運動を測定した.また大腸各部位について腸管の蠕動を制御していると思われる壁内自律神経叢,とくにAuerbach神経叢を腸管伸展標本を用いて組織化学的に染色し,同時に筋層内のacetylcholinesterase活性の測定を行い比較検討した.Force transducerによる大腸運動の観察ではdigestive stageに結腸括約部を境に明瞭な運動の変化が認められ,それを中心とした逆蠕動波も観察された.一方結腸括約部のAuerbach神経叢のcholinergic fiberによる網目構造は他の部位に比較して密であり,またAchE活性も結腸括部で高い傾向を認めた.以上より結腸括約部は逆蠕動始発部位として大腸運動において重要な役割を果し,また壁内自律神経構築学的にも特異な構造を示していることが示唆された.
  • 林 勝知, 味元 宏道, 加納 宣康, 堀谷 喜公, 鬼束 惇義, 広瀬 光男, 稲田 潔, 後藤 明彦
    1986 年 39 巻 4 号 p. 393-396
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    きわめて稀な直腸,肛門,会陰部,臀部にわたるdiffuse cavernous hemangiomaの1症例を報告した.症例は28歳,女性,生下時より会陰部から臀部にかけて,赤色母斑を認めていた.10年前より肛門出血を認めており,昭和55年12月1日,某病院で痔核の診断で手術を受けたところ,肛門出血が持続し,同年12月20日当科に入院した.直腸,肛門,会陰部,臀部にわたる広範囲なdiffuse cavernous hemangiomaのため,直腸,肛門出血に対し,バルーンタンポナーデ,両側内腸骨動脈塞栓術などを試みたが無効であり,後方アプローチにより直腸,肛門を切断した.その後数カ月止血した時期もあったが,結局,会陰部,臀部のhemangiomaより頻回に出血を繰り返すことになり,全身衰弱にて昭和59年8月22日死亡した.
    頻度は少ないものの,このような症例に対しては慎重な対応が必要であると思われ,文献的考察を加えて報告した.
  • 本邦報告例の集計
    竹内 教能, 伊藤 久, 渡辺 成, 八木田 旭邦, 小野 美貴子, 北島 政樹, 立川 勲, 福住 直由
    1986 年 39 巻 4 号 p. 397-402
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸脂肪腫は,比較的稀な疾患であり,また小腸腺筋腫は極めて稀な疾患である.最近筆者らは空腸腺筋腫を合併した横行結腸脂肪腫の1例を経験した.症例は66歳の男性,主訴は水様便,精査の結果横行結腸癌を疑い右半結腸切除術を施行,術後イレウスとなり第13病日癒着剥離術を施行し術中空腸に腫瘤を触知したため,小腸部分切除も同時に施行した.術後経過は良好である.横行結腸,空腸の腫瘤は共に粘膜下腫瘍であり,結腸は脂肪腫,空腸は腺筋腫であった.本邦報告例を集計すると自験例を含め大腸脂肪腫は136例であり,小腸腺筋腫は14例のみである,大腸脂肪腫は平均年齢55.1歳,発生部位は盲腸,横行結腸に多く術前脂肪腫と診断された症例は10%以下であり75%以上の症例で腸切除がなされている.小腸腺筋腫は10歳以下に多く,術前診断された症例はない.自験例のごとく,小腸腺筋腫を合併した大腸脂肪腫は調べ得た限りでは本症例が本邦第1例目と思われる.
  • 本邦報告例の検討およびEstrogen Receptorの免疫組織化学的研究
    松田 泰次, 八田 昌樹, 久保 隆一, 西山 真一, 田中 順也, 森川 栄司, 安富 正幸, 中居 卓也
    1986 年 39 巻 4 号 p. 403-409
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    びまん浸潤型大腸癌の2例を経験し,報告した.症例1:45歳,女性.主訴は下腹部痛,下痢と便秘,注腸X線検査および内視鏡検査でS状結腸癌(4型)と術前診断する.手術所見はP0,H0,N2(+),S2,M(-).S状結腸切除術,R3郭清,絶対治癒切除術.術後1年6カ月再発徴候なく健在である.症例2:49歳,女性.主訴は排便時出血,肛門部痛,便柱細小.CEA33ng/ml.イレウスのため緊急手術する.手術所見は,RbPにありP0,H0,N3(+),Si,Ai,M(-).後方骨盤内臓摘出術.R3郭清相対治癒切除術後6カ月で癌死した.組織学的には2例とも低分化腺癌で一部印環細胞癌が見られた。免疫組織学的ER染色は2例とも陽性であり,本症に対する内分泌療法の可能性を示唆した.
  • 集検発見癌と外来発見癌の比較
    小林 和人, 樋渡 信夫, 江川 春延, 三浦 正明, 中嶋 和幸, 山崎 日出雄, 佐藤 弘房
    1986 年 39 巻 4 号 p. 410-414
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    当科では腸症状を有する外来初診患者に対し,腸疾患のスクリーニングとして,S状結腸ファイバースコープ検査(SF)と注腸レ線検査(BE)の同日併用法を行っている.また1983年より宮城県内のモデル町の住民を対象に一次検診としてヘモカルト3目法,二次検診としてSFとBEを用いて大腸集団検診を行っている.今回は1983年と84年の2年間の外来検診と集団検診の大腸癌の拾い上げ能につき比較検討し,以下の成績を得た.集検は延べ6062名に一次検診を行い,11例(0.18%)の大腸癌(早期癌7例,Dukes A8例,C3例),87例(1.44%)の腺腫が発見された.一方,外来検診では,1712名にスクリーニングを行い,61例(3.56%)の大腸癌(早期癌20例,Duckes A22例,B8例,C26例,不明5例),187例(10.9%)の腺腫が発見された.
    結論として,癌発見の効率は外来検診群の方が高く,早期癌の発見は集検群に高率であった.
  • 北野 厚生, 鈴木 紘一, 押谷 伸英, 小畠 昭重, 日置 正人, 松本 誉之, 橋村 秀親, 大川 清孝, 小林 絢三
    1986 年 39 巻 4 号 p. 415-418
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸ポリープの内視鏡下ポリペクトミーはルーチン化され,診断と治療両面から欠かせない手段となっている.しかしポリープの性状による術前の安全性の確認が肝要であり,かっ後出血に対する適正な処置が重要である.他方,潰瘍性大腸炎例の活動期遷延例における出血に対する治療にも限界があり,新たな治療方針の検討を要する段階と考えられる.これら両疾患に対し局所用トロンビンを経肛門的に注腸,あるいは点滴注腸法を用いて投与し両者ともに止血効果が得られた.
  • 1986 年 39 巻 4 号 p. 419-464
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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