潰瘍性大腸炎(UC)の免疫学的背景を検索するため,組織と血中の免疫グロブリン(Ig)の動態を検討した,UC生検例を前回と同様,組織学的に浸出期,肉芽期,回復期,寛解期の4病期に分類し,螢光抗体法(IF)直接法により各病期に於ける粘膜内のIg保有細胞数と分泌成分(SC)を正常大腸粘膜のそれらと比較した.また,血中Ig値とdimeric IgA(d-lgA)値は生検時採血した血清を用い一元免疫拡散法(SRID)と酵素抗体法(ELISA)にて測定した,Ig保有細胞の分布は正常,UCともにIgGは粘膜固有層深部に,IgAは上部に集簇し,IgMは散在性に出現した.UC大腸粘膜のIg保有細胞数は回復期,寛解期では正常粘膜と差はなかったが浸出期ではIgA保有細胞数が増加しIgAは腸管粘膜局所の丘rstde fenseの役割を担っていると思われた.肉芽期でIgA保有細胞は減少傾向を示すが,IgM保有細胞の増加が認められ分泌型Igの共同作用を示唆していた.血中Ig値のうちIgAは肉芽期に有意の増加を示したが,IgG,IgMともに増加傾向はあったが有意差はなかった.またd-IgA値が肉芽期で有意の増加を示した.goblet cell depletion(GCD)の著明な肉芽期でcrypt上皮のSC及びIgAのIF陽性度は低下を示した.血中抗大腸抗体(ACA)は症例の60%にIgG抗体として証明されたが,血中IgG値とは相関がみられなかった.UCでは粘膜防禦機構であるS-IgA系の発症初期での破綻が,疾患の進展に影響を与えるものと考えられた.
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