日本大腸肛門病学会雑誌
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40 巻, 1 号
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  • 八田 昌樹, 泉本 源太郎, 久保 隆一, 田中 晃, 森川 栄司, 西山 真一, 康 謙三, 松田 泰次, 進藤 勝久, 岩佐 善二, 安 ...
    1987 年 40 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    クリアリング法を用いて大腸癌のリンパ節転移様式を検討するとともに癌のリンパ管侵襲および宿主側の反応としての癌間質および癌先進部のリンパ球浸潤との意義について検討した.大腸癌のリンパ節転移率は55.6%(結腸癌54.1%,直腸癌56.5%)であった.組織型では低分化な癌ほど転移率は高くとくに粘液癌で高率であった.壁深達度は深くなるに従って転移率は高くなり,s・a2以上でとくに著明であった.リンパ管侵襲(ly)の程度が高くなるほど転移率は高率となり,lyの存在部位がsmからss,sと進むほど転移率は高率であった.癌間質および癌先進部のリンパ球浸潤(LI)が高度な症例は転移率が低く,軽度な症例は転移率が高かった.LIは宿主側の因子として癌細胞の脈管内への侵襲に対して抑制する働きがあり,リンパ節転移に影響し,予後を左右すると考えられた.
  • 辻本 志朗
    1987 年 40 巻 1 号 p. 8-17
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎(UC)の免疫学的背景を検索するため,組織と血中の免疫グロブリン(Ig)の動態を検討した,UC生検例を前回と同様,組織学的に浸出期,肉芽期,回復期,寛解期の4病期に分類し,螢光抗体法(IF)直接法により各病期に於ける粘膜内のIg保有細胞数と分泌成分(SC)を正常大腸粘膜のそれらと比較した.また,血中Ig値とdimeric IgA(d-lgA)値は生検時採血した血清を用い一元免疫拡散法(SRID)と酵素抗体法(ELISA)にて測定した,Ig保有細胞の分布は正常,UCともにIgGは粘膜固有層深部に,IgAは上部に集簇し,IgMは散在性に出現した.UC大腸粘膜のIg保有細胞数は回復期,寛解期では正常粘膜と差はなかったが浸出期ではIgA保有細胞数が増加しIgAは腸管粘膜局所の丘rstde fenseの役割を担っていると思われた.肉芽期でIgA保有細胞は減少傾向を示すが,IgM保有細胞の増加が認められ分泌型Igの共同作用を示唆していた.血中Ig値のうちIgAは肉芽期に有意の増加を示したが,IgG,IgMともに増加傾向はあったが有意差はなかった.またd-IgA値が肉芽期で有意の増加を示した.goblet cell depletion(GCD)の著明な肉芽期でcrypt上皮のSC及びIgAのIF陽性度は低下を示した.血中抗大腸抗体(ACA)は症例の60%にIgG抗体として証明されたが,血中IgG値とは相関がみられなかった.UCでは粘膜防禦機構であるS-IgA系の発症初期での破綻が,疾患の進展に影響を与えるものと考えられた.
  • 第1報:検査法と分析方法
    村上 浩二
    1987 年 40 巻 1 号 p. 18-26
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸の内容輸送運動は,その重要性が指摘されているにもかかわらず,正常時はもとより,下痢や結腸性便秘などの異常時においても十分解明されているとはいえない.今回,私は,ヒト大腸の内容輸送を長時間,連続して観察する新しい検査法一大腸シンチグラム検査(colonoscintigraphy)一を老案し,大腸に器質的な異常を認めない6例に施行した.検査は,大腸内視鏡を用いて盲腸に留置したカテーテルに99mTc-DTPAを注入し,その腸管内の動きをシンチカメラで70~90分間撮像する方法で行われた.その結果,全例で盲腸・上行結腸から直腸への内容の移動を示す大腸シンチグラム(colonoscintigram)が得られ,その立体表示も行った.さらに関心領域を大腸の5か所に設定し,各々の部位の大腸排出曲線(colonogram)を作成し,大腸の内容輸送を検討した.本検査法はヒト大腸の内容輸送運動の生理学的,臨床医学的研究において,有用な一検査法と考えられる.
  • 水沢 清昭, 岸本 弘之, 木村 修, 貝原 信明
    1987 年 40 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は肛門部痛を主訴とした71歳女性で,昭和53年に子宮頸癌にて広汎子宮全摘術をうけ,その後の放射線治療にて放射線直腸炎を来たし,近医にて加療をうけていた.昭和60年,同医にて直腸前壁の腫瘤形成を指摘され,直腸癌の疑いにて当科を紹介された,生検で直腸のreactive lymphoreticular hyperplasia(以下RLH)が疑われ,経肛門的に腫瘤切除術をうけた.切除標本は肉眼的にIIa様の低い隆起性病変を呈し,組織学的には,異型性の認められない成熟した小型リンパ球の著しい浸潤と大小不同の腫大したリンパ濾胞の形成が認められ,直腸のRLHと診断された.本邦では大腸原発のRLHの報告は,自験例を含めて3例のみであり,原因として一番有力視されている慢性炎症がみられたのは本症だけであった.また,子宮癌に対する放射線治療後には,照射部位の放射線直腸炎や第2癌発生の問題とともに本症のようなRLHの発生にも注意する必要があると考えられた.
  • 堀江 泰夫, 千葉 満郎, 太田 弘昌, 五十嵐 潔, 荒川 弘道, 正宗 研
    1987 年 40 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は44歳女性,主訴は残便感,腹部不快感.24歳で長女出産後軽度,便秘傾向あり,時々市販の浣腸液や緩下剤を使用していた.昭和60年9月中旬,残便感,腹部不快感が出現,次第に症状増悪し尿閉もみられた,9月下旬,某医で加療されたが約1カ月間症状が持続したため当科外来を受診した.大腸X線,内視鏡検査により直腸S状結腸移行部に糞塊を確認し大腸糞瘤と診断した.入院後,dioctyl sodium sulfosuccinate, casanthranol(Bulkosol)の経口投与,carboxymethylcellulose sodium(Bulkose)の注腸で入院8日目に糞瘤の排出がみられた.大腸糞瘤の本邦報告例は過去30年間で8例のみで,いずれも手術,用手摘便,浣腸により治療されており,本例のように薬剤が奏功した例の報告はない.大腸糞瘤で腸管の完全閉塞がないとき,本治療法は積極的に試みられるべきものと考えられた.
  • 中島 均, 工藤 育男, 和賀 卓, 大沼 裕行, 佐藤 新一, 浅野 真彦, 棟方 昭博
    1987 年 40 巻 1 号 p. 36-39
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は,58歳女性で全身倦怠感を主訴に来院した.22歳時の虫垂切除術を最初に44歳の糞瘻切除術まで計4回の開腹手術の既往があった.外来での血算では,2カ月蘭にへモグロビン値が9.0g/dlから5.5g/dlへと著明な貧血の進行が認められた.貧血精査の目的で入院,消化管を中心に検査を進めた.上部消化管内視鏡検査では異常なく,注腸X線検査でも右側結腸の変形以外,特に異常は認められなかった.経管小腸造影を施行したところ,bilind loopで放置しておいた上行結腸と回腸との間に内瘻が形成されており,その境界部位に潰瘍性病変が認められた.貧血は同部位からの失血と考えられ,潰瘍性病変の切除を目的に右半結腸切除術を施行した.切除標本ではblind loopの上行結腸に2型の夫腸癌があり,この部位で回腸と内瘻が形成されていることが判明した.本例はblind Ioopに発生した大腸癌で,blind Ioopおよび回盲部切除後の大腸癌発生に関して若干の文献的考察を加え報告した.
  • 本邦報告例の文献的考察
    辻田 和紀, 柳田 謙蔵, 吉雄 敏文, 亀谷 寿彦, 野崎 達夫, 竹内 節夫, 辻本 志朗
    1987 年 40 巻 1 号 p. 40-44
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    患者は20歳男性.腹痛および粘血便を主訴として入院した.入院時所見,入院後の経過検査より,それらの症状は終末回腸のリンパ濾胞増殖症に起因する腸重積によるものと思われた.後日の内視鏡検査にて,脾彎曲部に,表面平滑で光沢,透明感のある腫瘤を認めた.その腫瘤は体位変換圧迫により容易に変形することが内視鏡下に確認された.以上の所見より,粘膜下簍胞とくにリンパ管腫を疑い,内視鏡ポリペクトミーを施行した.摘出腫瘍は,1.2×1.1×0.8cmの嚢胞性リンパ管腫であった.
    本邦における大腸リンパ管腫の報告例は,自験例も含め42例と少なく,ポリペクトミー施行例はわずか11例のみである。本邦報告例について若干の文献的考察を加え報告した.リンパ管腫の性状を利用して,もっと積極的に内視鏡的ポリペクトミーを施行すべきと思われた.
  • 原口 増穂, 牧山 和也, 千住 雅博, 船津 史郎, 長部 雅之, 田中 俊郎, 橘川 桂三, 井手 孝, 小森 宗治, 福田 博英, 森 ...
    1987 年 40 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    高アミラーゼ血症を伴ったクローン病の1例を経験した.症例は27歳の男性で上腹部痛を主訴に受診高アミラーゼ血症がみられたため膵炎として治療したが約3カ月にわたって高アミラーゼ値は持続した.アミラーゼ値の正常化後も腹痛が続くためにさらに精査を進め,小腸造影での縦走潰瘍などの典型的な所見と生検によるサルコイド様肉芽腫の証明によりクローン病の確診を得た.
    高アミラーゼ血症については,ERP,CT,USにて膵炎を疑わせる膵管あるいは膵実質の器質的変化がみられないこと,高アミラーゼ値の持続期間が長いこと,腹痛とアミラーゼ値の相関が乏しいことなどより膵由来のものではないと考えられた.したがって本症例はクローン病に膵炎が合併したものではなく,高アミラーゼ血症を伴ったことについては他の機序,たとえば腸管アミラーゼの関与などが示唆され,興味ある症例と思われ,文献的考察を加え報告した.
  • 佐藤 匡美, 宮田 秀夫, 関山 隆之, 佐藤 直毅, 田島 芳雄
    1987 年 40 巻 1 号 p. 50-54
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎に合併した重篤な中毒性巨大結腸症に対しTurnbull法が有効であったので報告する.症例は33歳の男性で激症型の潰瘍性大腸炎として発症し,Salazopylinとprednisoloneの投与を受けていた.発症37日目より粘血便の回数が増加し,同時に腹部膨満が著明となり,腹部単純X線写真で幅12.5cmに拡張した横行結腸がみられ,中毒性巨大結腸症と診断した.prednisoloneの動注療法を行ったが,症状の改善がみられず,緊急手術として,Turnbull法にしたがい横行結腸瘻と回腸瘻を造設した.術後経過は良好で,3週間後には粘血便は消失した,3カ月後に根治手術として全結腸切除,回腸直腸吻合,回腸瘻造設術を行い,その後回腸瘻を閉鎖し,3年後の現在は通常の日常生活を送っている.可能であれば,一期的な根治手術を行うのがよいが,このような重篤例には,Turnbull法は安全性において優れていると思われる.
  • 1987 年 40 巻 1 号 p. 55-65
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
  • 1987 年 40 巻 1 号 p. 66-117
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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