日本大腸肛門病学会雑誌
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41 巻, 7 号
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  • 大原 毅, 倉本 秋
    1988 年 41 巻 7 号 p. 865-872
    発行日: 1988年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    早期大腸癌の概念の必要性:早期大腸癌とは,大腸癌のきわめて早い段階のものをいうのであって,早期胃癌と同じような考え方にたっている.すなわち,癌の浸潤が粘膜内あるいは粘膜下層までにとどまる大腸癌をとりあえず早期大腸癌と称している.その理由は早期大腸癌は大腸のきわめて初期の癌であって,その発生母地あるいは進展を推測するのに大変役に立つのみならず,また治療上ではこのような早期大腸癌を早く発見することが大腸癌を完全に予防する大きな要因になるゆえに大切なのである、そのためには早期大腸癌がどのような形態をとっているか,またどのような母地に発生するか,その進展はどうか,あるいは日常診療上,治療上ではどのようなことが問題になるのかに関して総説的に述べることにする.
  • 丸山 雅一
    1988 年 41 巻 7 号 p. 873-883
    発行日: 1988年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    近年,本邦における大腸癌は漸増傾向にあり,西暦2000年には,全癌のトップの座を占めるであろうとの予測がなされている.大腸癌,とくに早期癌の診断に関する研究は,早期胃癌の診断が軌道に乗り始めた頃に開始された1),言い方を変えると,早期大腸癌の診断は早期胃癌の診断のアナロジーとしての可能性を追求するところから始まった.事実,早期大腸癌の大部分は隆起性病変であり,これを早期胃癌の隆起型分類で整理することが可能であった.
    そして,方法論的には,すでに10年前には,早期大腸癌の診断は確立されたはずであった.ところが,われわれの施設で内視鏡的ポリペクトミーを開始した1973年より1987年に至る15年間の早期大腸癌の発見頻度には大差がない(後述).一方,進行癌の発見数は15年間に倍増している.この事実を,純粋に診断学の立場からながめると,早期大腸癌の診断学は,10年前に期待したほどには進歩していないと考えるべきであろう.トータルコロノスコーピーが隆盛をきわめている昨今においてもである.
    つぎに,不遜なことながら見方を変えて,早期大腸癌の発見数が増加しない事実を,粘膜内癌の病理組織学的診断基準との関連において捉えることも必要であろう.X線・内視鏡診断の存在意義は,組織学的所見の違いは肉眼所見の差として認識可能であるという一点にある.病理組織学的診断の進歩が混乱をも包含している3)状況を否定できないとすれば,逆に,臨床診断の側から病理組織学的診断にその整合性を求める試みがあって当然である.
    本論文で笹者が意図したのは,以上述べたことがらを踏まえて,早期大腸癌の存在診断と質的診断(診断理論)の現状を再評価するとともに,それぞれがかかえている問題点を明らかにすることである.
  • 内視鏡
    長廻 紘, 屋代 庫人, 太田代 安津, 佐藤 秀一, 飯塚 文瑛, 鈴木 茂, 長谷川 かをり
    1988 年 41 巻 7 号 p. 884-890
    発行日: 1988年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    1982年より87年までの6年間に内視鏡診断した早期大腸癌293個につき検討した.内詳はm癌217個,sm癌76個である.早期癌の形態をくびれのあるもの(+)とないもの(-)にわけると,m癌はくびれ(+)83%であるのに対してsm癌はくびれ(+)46%で,m癌とsm癌では形態に差がみられた.部位別でみると,直腸,右結腸でくびれ(一)の早期癌が多い.そのうちでは直腸に陥凹型Sm癌,右結腸に扁平早期癌が,それぞれ多い傾向がみられた.S状結腸ではくびれ(+)の早期癌が多かった.大腸では早期癌がくびれ(+)のものが圧倒的に多いといわれてきた.診断法の進歩によって従来診断されなかったような形態の早期癌が診断されるようになったため,必ずしもそうではなく,とくにsm癌ではくびれのないものの方がむしろ多いことがわかった.
  • その時代的変遷
    武藤 徹一郎
    1988 年 41 巻 7 号 p. 891-898
    発行日: 1988年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    早期大腸癌の実態を歴史的にたどりその変遷を概説した.早期大腸癌の大多数は腺腫内癌の形態をとっている.外科切除材料の検索から,大きな腺腫ほど癌化率が高く,早期癌の発見率が高いことが明らかにされた.内視鏡的ポリペクトミーの普及によって,早期癌(腺腫内癌)の実数は1-2cmのものが多く,1cm以下の腺腫にも約5%の割合で早期癌が存在すること,さらに,短茎性,無茎性の病変に早期癌が多いことが明らかにされだ.さらに最近の内視鏡検査により,1cm以下の平担腺腫(flat adenoma)の存在が明らかにされ,その中に高率に癌巣の併存することが報告された.またIIc,IIc+IIaなどの病変が存在することが確認され,これらの病変が腺腫由来であるのか,"de novo"癌であるのかが問題にされている.それぞれの病変の真の頻度は今後よく検討されなければならないと考えられる.
  • 高野 正博, 藤好 建史, 高木 幸一, 平井 一郎, 河野 通孝, 小倉 克徳, 野村 真一, 沢田 勉, 津曲 淳一
    1988 年 41 巻 7 号 p. 899-910
    発行日: 1988年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    昭和57年1月から昭和62年12月までの6年間に,われわれの施設で経験した早期大腸癌231症例を種々の要素別に分類し,治療法と成績を比較検討した.
    1) 症例数m癌140例,sm癌98例であり,重複癌が7例(2.9%)にみられた.2)術式ポリペク113例,腸切96例,局切29例で,局切は開腹6例,経肛門22例,経仙骨1例である.3)追加切除19例あるが,その中で断端(+)は13例である.4)術式選択ポリペクではポリペク可能と判断94例,浸潤度診断13例,m癌と診断5例である.腸切の理由としては,ポリペク不能18例,sm癌と診断23例,進行癌と診断29例などが多い.5)形態隆起性病変はポリペクが多い,IIa,IIb,IIcは割と大きめで,リンパ管侵襲が(+)のものが多い.広範に切除する例が多い.6)最大径5mm以下の11例はすべてm癌で,隆起性が多い.2cmまでがポリペク,それ以上は腸切,局切である.7)深達度sm2までがポリペクで,それ以上では腸切,局切が行われる.8)部位別ポリペクは各部位で行われる.腸切も同様である.局切は直腸下部のものに用いられる.Pの症例は6例で,平盤型が多く,ファイバーでの発見は難しい.9)組織分類高分化はポリペクが多く,中分化は腸切されることが多い.10)癌組織比率cancer with adenoma, de novo癌などの要素はさほど術式に関連しない.11)リンパ管侵襲・静脈侵襲lyo, voはポリペクで,(+)は腸切で処理されることが多い.12)n(+)症例は3例あり,病変はいずれも大きめで,部位はRb, ly(+)である.13)局所再発例はない.肝転移は2例ある.14)合併症はポリペクで出血1例,穿孔1例,開腹でイレウス2例,縫合不全5例である.
  • 福島 恒男, 大木 繁男, 大見 良裕, 松尾 恵五, 土屋 周二
    1988 年 41 巻 7 号 p. 911-918
    発行日: 1988年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    早期大腸癌の治療は,(1)5年生存率でほぼ100%近い数値が得られるような治療方針を立て,(2)その結果が得られる最小の侵襲で治療を行い,(3)その後も定期的に経過を観察するという3つの条件を満していることが必要である.進行癌と異なり,粘膜ないし粘膜下層に限局し,ごく一部の症例で周囲のリンパ節に転移を認めるだけなので,早期癌では過大な手術侵襲は不必要であり,原則的には腫瘍切除,局部切除あるいは近傍リンパ節郭清を含めた局所切除が行われている.
    腫瘍切除はほとんどの場合,大腸内視鏡によるendoscopic polypectomyであり,これによって切除され,その切除断端に癌がない場合は治療は完了したことになる.局所切除はendoscopic polypectomyでは切除が困難,ないしは不可能な病変に対して行う.
    結腸病変の局所切除は開腹して行わざるを得ないが,直腸病変に対しては,経肛門的切除法,経括約筋的切除法,経仙骨的切除法など開腹を必要としない手術方法が主として行われている.将来は結腸の局所切除も一部は経内視鏡的な手術や,レーザー照射などの開腹を必要としない操作に代りうる可能性がある.上部消化管ではendoscopic surgeryがすでに実用化しつつあり,これらの新しい方法は大腸疾患の分野にも応用されよう.
    ここでは現在行われている大腸早期癌の治療法を列記し,その適応,方法,成績,注意点などについて述べて行きたい.
  • 岩垂 純一, 隅越 幸男, 小野 力三郎, 黄田 正徳, 宮脇 晴彦, 山本 清人, 東 光邦, 北村 成大
    1988 年 41 巻 7 号 p. 919-926
    発行日: 1988年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    われわれが今までに経験した直腸肛門部の早期癌の治療を振り返り,直腸肛門部の早期癌の治療についての考えを述べた.m癌37例には例外を除いて主として経肛門的に局所切除術を行われていたが全例健在であった.sm癌には初回の手術として29例におもに経肛門的な局所切除が行われ,うち6例にリンパ管侵襲のために追加手切除が行われていた.また24例には初回からリンパ節郭清を伴う根治手術が行われていた.sm癌癌の予後は行方不明,他病死を除いて初回より根治手術を受け肝転移で死亡した2例を除いて全例が健在であった(5年生存率92%).現時点の直腸肛門部の早期癌に対する治療方針としてはIIa+IIc型や,Is,Ip型でも触診で可動性のないものには初回より局所切除を行い,それ以外のものはポリペクトミーや局所切除を行って病理学的に検討しリンパ管侵襲陽性のもの,高分化腺癌以外のものに追加切除を行うのが妥当と考える.
  • (パラフィンブロックを用いたFCMによる検討)
    石川 啓, 田川 泰, 中越 享, 三根 義和, 梶原 啓司, 下山 孝俊, 三浦 敏夫, 富田 正雄
    1988 年 41 巻 7 号 p. 927-933
    発行日: 1988年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    核DNA量と予後との関係を検討する目的で,大腸癌236例のホルマリン固定パラフィン包埋ブロックを用いてフローサイトメータによりDNA量を測定した.B.Schutteらの方法に準じて単離細胞浮遊液を作製しPI染色の後FACS IVにてDNAヒストグラムを作製した.DNAindex値は腫瘍内浸潤リンパ球を内部標準として求めた.DNA量は臨床病理学的因子の中で年齢,性,腫瘍占居部位,腫瘍最大径,肉眼型,組織型,壁深達度,腹膜播腫性転移とは相関がなかったが,リンパ節転移,肝転移,Dukes分類との間に有意の相関を示した.Dukes分類別の生存率では,DukesC症例においてdiploidyとaneuploidyの間に有意の生存率の差を認めたが,aneuploidyの中ではDNA量の多寡による生存率の差は認められなかった.以上の結果よりDNA量は独立した予後因子として有用であると考えられた.
  • 熊谷 裕司, 樋渡 信夫, 山崎 日出雄, 森元 富造
    1988 年 41 巻 7 号 p. 934-938
    発行日: 1988年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    クローン病(CD)と潰瘍性大腸炎(CU)におけるコラーゲン代謝を血中P-III-P濃度の変動より検討した.CD緩解期では平均16.5ng/mlと,CD活動期,UC活動期,緩解期に比し,有意に高値を示した.CDでは栄養療法を単独で施行すると治療開始直後よりP-III-P濃度が上昇し,緩解導入後も引き続き上昇して約3カ月で正常に復する傾向を認めた.これにステロイド療法を併用すると,P-III-P濃度の上昇はみられなかった.UCではステロイドが投与された症例が多かったがその有無にかかわらず病期による差は認められなかった.以上より,ステロイドの併用がCD緩解導入期のコラーゲン合成を抑制することと,両疾患のコラーゲン代謝に差異がある可能性が示唆された,
  • 更科 広実, 斉藤 典男, 布村 正夫, 新井 竜夫, 中山 肇, 奥井 勝二, 轟 健, 岩崎 洋治, 大津 裕司
    1988 年 41 巻 7 号 p. 939-944
    発行日: 1988年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    進行直腸癌に対する術前照射療法の効果を高めるため,放射線増感剤(PepleomycinとBUdR)の腫瘍内局注併用療法を施行した.その治療効果を比較するため,照射単独群15例と局注併用群19例の切除標本を用い検討した.対象とした癌巣はすべて固有筋層外に遺残するもので,連続切片にみられる個々の病巣を大星・下里分類に従い組織学的に判定した.このようにして得られた照射効果の程度(Grade)の分布状況に従い,それぞれ5段階(E1~E5)に分類し両群の治療効果を比較した.その結果,すべての切片でGrade IIb以上の効果が認められ有効と判定された症例(E4,E5)は,照射単独群26.7%,局注併用群57.9%であった.両群間に統計的有意差(P<0.05)が認められ,局注併用療法の有効性が示唆された.
  • 後藤 明彦
    1988 年 41 巻 7 号 p. 945-949
    発行日: 1988年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    EIA法を用い,1,366例に免疫学的便潜血反応による大腸集検を施行した.潜血反応陽性者は331名で受診者の24.4%を占めた.これは同時に施行した他の免疫学的便潜血反応のいずれの方法よりも高値であった.そこで,EIA法で施行した症例をヒト・ヘモグロビン値を10ng/mlづつの段階で検討し,注腸造影などの精検により発見した大腸疾患との関係を検討した.ヒト・ヘモグロビン値が60ng以下では大腸ポリープは発見できなかった.大腸腺腫17例,ポリープ13例,合計32病変を発見したが,ヘモグロビン濃度とポリープの発見頻度には相関は認めなかった.しかし,80ng以下で発見したポリープは3mm以下のものであった.
    EIA法は高感度のため,他の免疫学的検査法に比べ,偽陽性が高くなりやすく,cut off値の設定に留意を要し,グァヤック法との併用が望ましいと考える.
  • その発育,発生に関する研究
    宮崎 茂夫, 馬場 正三, 野垣 茂吉
    1988 年 41 巻 7 号 p. 950-958
    発行日: 1988年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    38症例50病変のvillous tumorを検討した.まず,その発育,発生について検討するため拡大内視鏡と実体顕微鏡にて表面形態を観察し,組織学的に癌の有無とその局在を検討した.次に本腫瘍の発生増殖を細胞動態的に研究する目的でEx. vivo autoradiogramを用いてS期細胞を標識し,その分布を観察し次の結果を得た(1)本腫瘍では,S期細胞の均一な分布が観察された.(2)このことより,上方,側方への進展傾向が強いことが示唆された.(3)本腫瘍は腺管腺腫よりも標識率が高く,癌よりも標識率は低かった.(4)Ex. vivo autoradiogramの結果からもmalignant potential特にmulti-focalな発癌の可能性が考えられた、この場合,深部に発生したfocal cancerの表層からの観察は困難であった.
  • 関戸 仁, 池 秀之, 福島 恒男, 土屋 周二, 大高 京子, 竹村 浩
    1988 年 41 巻 7 号 p. 959-964
    発行日: 1988年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は甲状腺手術歴のある75歳女性,主訴は腹部膨満,便秘.昭和55年頃から高度の便秘で下剤を連用していた.昭和59年7月,イレウスと診断され,手術を受けたが,術後も腹部膨満が続き,昭和60年9,見当科に入院した.入院時,腹部は著しく膨満していた.腹部単純X線所見では大腸は著しく拡張し,注腸造影検査では大腸に器質的狭窄を認めなかった.甲状腺機能検査では一次性甲状腺機能低下症を認めた.以上の、所見から甲状腺機能低下症に続発した偽性腸閉塞症と診断した.拡張部腸管の減圧のために経肛門的に減圧管を挿入し,高カロリー輸液を施行し,原疾患に対しては甲状腺末を投与したところ,血中甲状腺ホルモン値が正常化するとともに腹部膨満も消失し,軽快退院した.甲状腺機能低下症に続発した偽性腸閉塞症の本邦報告例は1987年8月末まで5例のみであった.慢性続発性偽性腸閉塞症に対しては拡張部腸管の減圧と原因疾患に対する治療が必要である.
  • 畑 真, 長浜 徴, 福島 文典, 中嶋 孝司, 勝浦 康光, 榊原 宣
    1988 年 41 巻 7 号 p. 965-970
    発行日: 1988年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,男性.38歳時,血便を主訴に来院.兄が直腸癌,大腸ポリポージスを指摘されており,注腸X線造影を施行したところ,非密生型の大腸ポリポージスが認められ,大腸腺腫症と診断した.患者は豆腐製造販売業を営み,術後頻回の排便は,職業上,衛生的観点より非常に不都合であるため,計3回の手術と計34個の内視鏡的ポリペクトミーを行って,可能なかぎり直腸肛門機能を温存した.術後15年経過した現在も,排便機能は良好で,健康で仕事に従事している.残存大腸に対しては厳重な経過観察を行っており,現在ポリープは認められていない.大腸腺腫症の治療には種々の問題があり,画一的治療を行うことは困難である,個々の症例において,癌種の進行度,発生部位,および社会的背景因子を十分考慮し,術式を選択すべきであると考えられた.
  • 福島 浩平, 佐々木 巌, 舟山 裕士, 内藤 広郎, 神山 泰彦, 高橋 道長, 松尾 哲也, 松野 正紀
    1988 年 41 巻 7 号 p. 971-975
    発行日: 1988年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は37歳の男性である.18歳時に全大腸炎型潰瘍性大腸炎の診断のもと,当科にて全結腸切除兼回腸直腸吻合術を施行された.術後18年目に残存直腸より発生したと思われる進行直腸癌を認め,放射線療法などを施行したが昭和61年9月死亡した.近年潰瘍性大腸炎の癌化が注目されているが,本疾患に対する全結腸切除兼回腸直腸吻合術後の残存直腸を母地として癌が発生したという報告は,本邦では見当たらない.潰瘍性大腸炎に対する術式の中で,大腸粘膜が残存する場合には,術後の適切なフォローアップがとくに重要であると思われた.
  • 松尾 義人, 池田 英雄, 高木 孝輔, 松隈 則人, 鴨井 三朗, 鶴田 修, 力武 潔, 南野 隆一, 池園 洋, 川口 新一郎, 佐々 ...
    1988 年 41 巻 7 号 p. 976-981
    発行日: 1988年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    malignant lymphomaに伴う消化管病変の報告は多いが,今回われわれは,興味ある大腸X線所見を呈した1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する. 症例は60歳の男性で,多量の下血と全身倦怠感にて搬入され,全身リンパ節腫大と肝脾腫,さらに注腸二重造影法で大小多数の小隆起を認め,同隆起からの生検によりmalignant lymphomaと診断された.このようなリンパ系疾患に伴う消化管の広範囲な隆起性病変を,最初に報告したのはBriquet(1835年)であり,その後1961年にCornesらは,28例をまとめmultiple lymphomatous polyposis of gastrointestinal tract (MLP) の名称を提唱している.今回のわれわれの症例も同疾患と思われるが,すでに全身リンパ節腫大と肝脾腫を呈しており,成井らのいう病期IIIに相当すると思われる.
  • 森 正樹, 芳賀 駿介, 松本 紀夫, 梅田 浩, 蒔田 益次郎, 加藤 博之, 熊沢 健一, 小豆畑 博, 菊池 友允, 梶原 哲郎
    1988 年 41 巻 7 号 p. 982-986
    発行日: 1988年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌肝転移の臨床病理学的特徴について検討した.対象は1975年から1985年までの手術を施行した大腸癌267例である.そのうち肝転移例は手術時に認められた29例,術後認められた13例の計42例(15.8%)である.性別の肝転移率は男性19.2%,女性12.4%で男性に高く,年齢別では男性60歳代,女性50歳代が最も高率であった.腫瘍占拠部位別では,結腸癌16.2%,直腸癌14.8%で差はみられなかった.また組織型,最大腫瘍径との間にも明らかな傾向はみられなかった.壁深達度では,肝転移は全例ss(a1)以上であった.リンパ管侵襲では陽性例18.7%,陰性例8.9%,また静脈侵襲では陽性例21.4%,陰性例10.1%,リンパ節転移では陽性例21.2%,陰性例8.3%で,いずれも陽性例が陰性例に比べ有意に肝転移率が高かった.以上により,大腸癌の肝転移は壁深達度,脈管侵襲と密接な関係があることが分かった.
  • 1988 年 41 巻 7 号 p. 987-997
    発行日: 1988年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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