昭和57年1月から昭和62年12月までの6年間に,われわれの施設で経験した早期大腸癌231症例を種々の要素別に分類し,治療法と成績を比較検討した.
1) 症例数m癌140例,sm癌98例であり,重複癌が7例(2.9%)にみられた.2)術式ポリペク113例,腸切96例,局切29例で,局切は開腹6例,経肛門22例,経仙骨1例である.3)追加切除19例あるが,その中で断端(+)は13例である.4)術式選択ポリペクではポリペク可能と判断94例,浸潤度診断13例,m癌と診断5例である.腸切の理由としては,ポリペク不能18例,sm癌と診断23例,進行癌と診断29例などが多い.5)形態隆起性病変はポリペクが多い,IIa,IIb,IIcは割と大きめで,リンパ管侵襲が(+)のものが多い.広範に切除する例が多い.6)最大径5mm以下の11例はすべてm癌で,隆起性が多い.2cmまでがポリペク,それ以上は腸切,局切である.7)深達度sm2までがポリペクで,それ以上では腸切,局切が行われる.8)部位別ポリペクは各部位で行われる.腸切も同様である.局切は直腸下部のものに用いられる.Pの症例は6例で,平盤型が多く,ファイバーでの発見は難しい.9)組織分類高分化はポリペクが多く,中分化は腸切されることが多い.10)癌組織比率cancer with adenoma, de novo癌などの要素はさほど術式に関連しない.11)リンパ管侵襲・静脈侵襲lyo, voはポリペクで,(+)は腸切で処理されることが多い.12)n(+)症例は3例あり,病変はいずれも大きめで,部位はRb, ly(+)である.13)局所再発例はない.肝転移は2例ある.14)合併症はポリペクで出血1例,穿孔1例,開腹でイレウス2例,縫合不全5例である.
抄録全体を表示