日本大腸肛門病学会雑誌
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41 巻, 1 号
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  • 原 彰男, 寺本 龍生, 小平 進, 阿部 令彦, 渡辺 昌彦, 露木 晃
    1988 年 41 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1988年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    実験的に大腸粘膜の癌化と糖鎖である血液型物質との関連を検討するため,ドンリュウラットに1,2-dimethylhydrazineを(以下DMH)投与し,発生した大腸腫瘍の病理形態学的検索と同時に,遠位大腸よりえられた非腫瘍部粘膜および腫瘍の免疫組織化学的検索を経時的に行った.大腸腫瘍の病理形態学的検索では従来の報告とほぼ一致した結果が得られた.免疫組織化学的検索では,DMHを投与することにより正常遠位大腸粘膜で高頻度に発現していたA型物質の経時的な減少が認められ,癌組織では,ほぼ消失していた.一方正常遠位大腸粘膜で発現の認められなかったH型物質は,癌組織で高頻度に発現が認められた.これは血液型物質の生成過程でH型物質よりA型物質への誘導が大腸粘膜の癌化に伴って阻害され,A型物質の前駆体であるH型物質の蓄積をきたしたと考えられる.以上,免疫組織化学的にラット大腸粘膜における癌化と糖鎖の合成不全との関連があきらかにされた.
  • 鮫島 由規則, 陳 恵南, 松尾 真一郎, 宮路 憲一, 恒吉 礼三, 田中 啓三, 渋江 正, 橋本 修治, 鮫島 潤, 種子田 哲郎, ...
    1988 年 41 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 1988年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    過去10年間の当科および関連施設における大腸肛門異物例の臨床診断,治療法について検討した.症例は肛門異物53例,上行結腸1例の計54例で,年齢は3歳から77歳まで広い年齢層におよんでいた.異物の内訳は魚骨が42例で大半を占めその他,焼き鳥の竹串,鳥骨,つま揚枝などがみられた.
    臨床症状および受診状況は肛門部の急激な激痛発作のため発作後短時間で受診したもの27例,肛門部の鈍痛が出現した後,熱感と腫脹を伴い長時間経過した後はじめて受診したもの27例であった.異物の除去は経大腸内視鏡的に摘除しえたものと開腹術を要したものが各1例つつあり,その他の例は経肛門的に除去した.異物除去後患者の症状はすみやかに消失し各症例とも良好な経過をたどり治癒した.
  • 角田 明良, 安井 昭, 西田 佳昭, 熊谷 一秀, 渡辺 敢仁, 増尾 光樹
    1988 年 41 巻 1 号 p. 14-18
    発行日: 1988年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    過去4年6カ月間に当施設において,大腸多発癌症例を5例経験したので,臨床病理学的に検討し,文献的考察を加えた.
    癌巣数は,癌巣を2個有するものは2例,3個以上有するものが3例に認められ,占居部位は大腸全域に分布していた.全例に腺腫性ポリープの合併を認め,全ポリープ数13個のうち6個に癌巣の併存を認めた.壁深達度は第1癌はpm以上の進行癌であり,第3癌以後は早期癌の頻度が高く,とくにm癌が多かった,他臓器重複癌の合併は2例にみられ,重複癌臓器は共に胃癌である.同・異時性大腸多発癌例には癌家族歴が認められた.
    大腸多発癌は,進行癌の口側に存在する早期癌の場合,術前検査での診断は困難となるため,手術に際しての術中内視鏡が有用であり,ポリペクトミーによる迅速診断が術式の決定に有効であった.
  • 高野 正孝
    1988 年 41 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 1988年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    著者らは,人間ドックの注腸造影検査79例を検討した結果,以下のような結論を得た,
    1)検査前夜の下剤投与,直前の浣腸といった簡単な前処置でも,有用な注腸造影検査が行える.とくに大腸癌の好発部位である直腸S状結腸での有用性はきわめて高い.全大腸の造影を目的とする場合は,さらに前日夕のみの低残渣食を付加すべきである.
    2)注入したバリウムは,下剤投与により,翌日までにほとんどが排泄され,翌日施行の胃X線検査への障害はまったくない.
    3)専門の医師でなくとも十分行えるため,検診部門が独立していない医療機関では,人間ドックにおける大腸癌のスクリーニングにぜひとも取り入れるべき方法である.
    4)今後の検討課題として,コスト,人手,検査時間などを軽減させるため,装置や撮影の仕方をさらに工夫すべきことが上げられる.
  • 奥山 和明, 小野田 昌一, 唐司 則之, 山本 義一, 小出 義雄, 元山 逸功, 花岡 明宏, 松原 宏昌, 磯野 可一, 関 幸雄, ...
    1988 年 41 巻 1 号 p. 26-33
    発行日: 1988年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌肝転移例に対する有効な治療法を検討した.教室と関連病院で1965~1986年まで手術された125例(同時性98例,異時性27例)を検索対象としてretrospectiveに検討した.P(+)H(+)またはP0H(+)大腸癌に対する原発巣切除(原切)群は原発巣非切除(原非切)群の予後と有意差を認めない.しかしP0H(+)大腸癌では原切+肝切除(肝切)+術後化学療法(化療)群>原切+化療群>原切群の順に有意に予後良好であり,肝合併切除は有意義な治療法である.
    またリンパ節郭清(R2以上)も予後向上には有意義である.術後化療も大事で,特にFML肝動脈内持続動注(肝・持・動)療法はP0H3例の予後向上に有効である.H1肝再発例に対する肝切も予後向上に意義を認めた.
    同時性P0H(+)大腸癌であればR2以上のリンパ節郭清を伴なう原切を行い,H2までなら肝切も付加し,術後に肝・持・動療法主体の化療をできる限り長期間行うことが,また異時性でも肝切+化療の治療が予後向上に有意義である.
  • 自験例と本邦報告例の検討
    増田 亮, 磯山 徹, 板東 隆文, 豊島 宏
    1988 年 41 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 1988年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    盲腸軸捻転症の1例を経験したので報告し,自験例を含め検索し得た本邦例46例の検討を行った.症例は61歳男性,嘔気,腹痛で発症,腹部単純X-Pで左上腹部に著明に拡張した大腸ガス像を認め,注腸では横行結腸途中でバリウムが停止した.横行結腸癌,あるいは横行結腸軸捻転症の術前診断で緊急手術を行った.開腹所見は,盲腸が時計回転に540度軸捻転しており,総腸間膜症はなく,移動性盲腸のみであった.腸管壊死はなく整復,減圧,固定術で手術を終了,術後経過は良好であり,現在まで再発もない.本症は特徴ある疾患でありながら術前診断は難しい事が多く,本邦例でも正診率は20%であった.治療については,腸管非壊死例では整復,固定術で十分に満足な結果が得られると考えてよいが,壊死例では,とくに高齢者,合併症を有する症例で死亡率が今なお高く,正しい早期の診断,治療が重要である.
  • 千葉 満郎, 児玉 光, 正宗 研, 樋渡 信夫
    1988 年 41 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 1988年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    本邦における潰瘍性大腸炎家族発生例についてHLAに検討を加えたものはきわめて稀である.著者らは姉妹に発症した潰瘍性大腸炎についてHLAを検討し,文献的考察を加えた.症例:7人兄弟の姉(39歳,昭和23年生)と妹(37歳昭和25年生)に発症した潰瘍性大腸炎である。姉は25歳時,直腸炎型で発症,経過中5回再燃を繰返し,次第に左側大腸炎型(中等症)へと進展した。一方,妹は36歳時,直腸炎型で発症した軽症のものである。姉妹ともHLA typeは全く同一で,本邦において潰瘍性大腸炎との相関が指摘されているHLA-Aw24-Bw52-DR2のhaplotypeであり,本症の発症に遺伝子因子の関与の重要性を示したものと思われた,症例報告に加えて,潰瘍性大腸炎の家族発生例頻度およびHLA typeについての本邦および欧米の報告について文献的考察を行った,
  • 大村 裕子, 臨倉 薫, 太田 博俊, 高橋 孝, 西 満正
    1988 年 41 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 1988年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    211例の消化器系ストーマ患者について,術前のストーマサイトマーキングの臨床的意義を,ストーマ状況,ストーマ周囲皮膚管理状況および後期合併症の面から検討した.その結果,1)マーキング施行例では非施行例に比べ,皮膚障害の発生が低かった.2)マーキング非施行例では,ストーマ状況の良好なものが低かった,3)非施行例でストーマ状況の不良だったものは,施行例の不良症例に比べ皮膚障害の発生頻度が高かった.4)ストーマの後期合併症の中で,ヘルニア,腸脱出の発生率は,われわれが用いたクリーブランドクリニックのマーキングの原則にうたわれている腹直筋内造設症例で低かった.以上により,クリーブランドクリニックのストーマサイトマーキングの妥当性が確認された.より良きストーマ管理には,より良きストーマ造設が前提であることは自明のことをあるが,そのためには術前のストーマサイトマーキングは不可欠のものである.
  • 1988 年 41 巻 1 号 p. 50-113
    発行日: 1988年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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