日本大腸肛門病学会雑誌
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42 巻, 3 号
選択された号の論文の24件中1~24を表示しています
  • 鶴居 信昭, 千葉 満郎, 飯塚 政弘, 堀江 泰夫, 五十嵐 潔, 児玉 光, 正宗 研
    1989 年 42 巻 3 号 p. 321-326
    発行日: 1989/05/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    教室の潰瘍性大腸炎53例 (延べ入院75例) のうち, 厚生省特定疾患消化吸収障害調査研究班の判定基準を満たした重症例は, 8例延べ入院9例であった.5例が緩解し, 4例が手術適応となった.死亡は1例で, 緊急手術を経て2期手術後に死亡した.緩解例5例のうち4例はprednisolone (PS) の経口投与で緩解したが, 2例で初回投与量30mgは不十分で, 40mg~60mgに増量していた.他の1例はPS静注 (60mg), 動注療法 (40mg) で緩解した.手術例4例の内訳は, 1) 2例は内科的治療に抵抗を示した例, 2) 1例は慢性持続型のため積極的治療なしに手術適応とした例, 3) 1例は穿孔を起こした例であった.現在教室では, 重症例に対しては, Trueloveらの強力静注療法に準じPS60mg経静脈的または経口で投与し, さらにPS40mg動注を追加し, それらの治療に抵抗を示した場合, 早期の段階に手術適応としている.
  • -臨床的改善度と形態的改善度の不一致について-
    飯塚 政弘, 千葉 満郎, 五十嵐 潔, 児玉 光, 堀江 泰夫, 正宗 研
    1989 年 42 巻 3 号 p. 327-333
    発行日: 1989/05/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    教室のCrohn病5症例 (のべ入院7症例) に対し, ED2400~2700kcal/日による治療を行い, 臨床的改善度および大腸病変の形態的改善度を対比検討した.その結果, 1) ED療法により臨床的には, CDAI値は全例150以下に改善され緩解と判定された.厚生省炎症性腸管障害調査研究班の治療効果判定基準による臨床的改善度は著効3例, 有効4例で, 全例に有効以上の改善がえられた.2) 臨床的改善度著効3例の形態的改善度は, 潰瘍が消失, 癩痕化した著明改善2例, 潰瘍が半分以上消失した中等度改善1例, 一方, 有効4例の形態的改善度は, 中等度改善2例, 潰瘍がやや縮少した軽度改善1例, 不変1例であった.ED療法によるCrohn病の治療に際し, 臨床的改善度と形態的改善度は必ずしも一致しないことに十分留意する必要があると考えられた.
  • 磯 篤典, 裏川 公章, 山口 俊昌, 中本 光春, 熨斗 有, 出射 秀樹, 西尾 幸男, 植松 清, 五百蔵 昭夫, 瀬藤 晃一
    1989 年 42 巻 3 号 p. 334-340
    発行日: 1989/05/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    過去17年間に切除した大腸癌339例のうち多発癌27例 (8.0%) について臨床病理学的特徴を検討した.発生頻度は同時性多発癌20例 (5.9%), 異時性多発癌7例 (2.1%) で, 異時性多発癌の平均発現間隔は54カ月であった.手術時平均年齢は同時性多発癌64.2歳に対し異時性多発癌では50.4歳であった.発生部位は同時性多発癌では下部大腸に好発し, 腫瘍間距離は同一または隣接領域に限局する傾向を示した.組織学的壁深達度は, 第1癌ではpmよりも深達度の深い高度進行例が同時性75.0%, 異時性85.7%と高率で, 同時性第2癌ではpmよりも浅い症例が65.0%を占めた.同時性多発癌の治癒切除率は60.0%, その5年生存率は57.1%, 異時性の治癒切除率は71.4%でその5年生存率は100%であった.同時性・異時性の臨床病理学的特徴から術前の適確な診断と手術後の定期的なfollow upの重要性がうかがえた.
  • 小田 奈芳紀, 更科 広実, 斎藤 典男, 布村 正夫, 谷山 新次, 横山 正之, 井上 育夫, 井原 真都, 中山 肇, 白井 芳則, ...
    1989 年 42 巻 3 号 p. 341-345
    発行日: 1989/05/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    当教室で最近経験した大腸他臓器重複癌症例49例について検討した.全大腸癌手術症例に対する割合は7.9%であり, 男女比は1.7 : 1で, 大腸癌発現時の平均年齢は61.4歳であった.臨床病理学的検討では単発大腸癌に比して右側大腸に多くみられ, 早期癌の比率も高かった.また他臓器癌発生部位としては, 胃24例 (48%), 子宮5例 (10%), 前立腺5例 (10%), 頭頸部4例 (8%) の順に多く, 消化器系の癌は28例 (56%) を占めた.他臓器癌重複大腸癌の発生部位分布の違いは, 左右大腸における発生学的・組織学的違いの関与を示唆し, また重複癌症例の予後の改善のためには他の消化器系の注意深い検索が必須と考えられた.
  • -NK活性の増強および経口投与との比較-
    山下 巖, 田澤 賢次, 笠木 徳三, 石澤 伸, 増山 喜一, 山本 克弥, 新井 英樹, 竹森 繁, 勝山 新弥, 鈴木 康將, 藤巻 ...
    1989 年 42 巻 3 号 p. 346-351
    発行日: 1989/05/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    インドメタシン (IND) の経直腸的投与と経口投与の効果を非担癌状態の脾臓, 腹腔浸出細胞 (PEC), 腸間膜リンパ節 (MLN) のNK活性およびAOM誘発大腸腫瘍の発現で比較検討した.非担癌5週齢雄ドンリュウラットを1回投与量としてIND3mg/kg/ratになるように調整し, 経口投与群, 経直腸投与群, 対照群の3群に分け, 1日目, 4日目の計2回投与した.7日目に脾臓, PEC, MLNを取り出し, YAC-1細胞を標的細胞としE/T=50でNK活性を測定した.脾臓のNK活性においては, それぞれ22.7%, 36.2%, 14.1%と経直腸投与群が他の2群と比較して, 1.6-2.6倍の増強を認めた.一方, PECにおいても各々35.4%, 60.2%, 16.0%, MLNにおいても各々6.2%, 10.4%, 5.6%と経直腸投与群が他の2群と比較して1.6-3.8倍の増強を認めた.AOM誘発大腸腫瘍に対する抑制効果について週2回, 30週連続投与で上記の3群間で比較検討すると, 1匹あたりの腫瘍個数では各々平均3.0, 1.4, 5.2 (個) と経直腸投与群が他の2群と比較して有意な低値1を示した (P<0.01).以上よりINDの経直腸投与は経口投与と比較して全身の非特異的免疫能を良好に賦活し, AOM誘発大腸腫瘍の発現抑制に有用であることが示唆された.
  • 辻田 和紀, 鷲沢 尚宏, 鳥越 義房, 大桶 博美, 永澤 康滋, 小林 一雄, 大谷 忠久, 柳田 謙三, 蔵本 新太郎, 吉雄 敏文, ...
    1989 年 42 巻 3 号 p. 352-358
    発行日: 1989/05/25
    公開日: 2010/05/07
    ジャーナル フリー
    カルチノイド3例, 平滑筋腫2例, 良性リンパ炉胞性ポリープ2例4病変, 血管脂肪腫1例, リンパ管腫2例, 血管腫2例4病変の6疾患12例16病変の内視鏡所見につき検討した.対象例は正常粘膜に覆われた平滑な病変が多く, 結節状の2病変, 径3mmの微小な1病変以外は粘膜下腫瘍の診断は比較的容易であった.血管腫では4病変中青色調が1病変, 暗赤色2病変, カルチノイドは3例中1例は黄色調であった.リンパ管腫はやや灰白色調で, 光沢, 透明感があり, 軟らかくcushion signが認められ, 大きいものでは体位変換により形状の変化がみられた.平滑筋腫, 良性リンパ炉胞性ポリープ, 血管脂肪腫ではその疾患に特有な所見に乏しく, 診断の困難な症例が多いと思われた.充実性の腫瘍は弾性硬で, とくにカルチノイドは硬く感じられた.粘膜下腫瘍の質的診断には肉眼所見だけではなく, 触診所見も重要であると思われた.
  • 平井 一郎
    1989 年 42 巻 3 号 p. 359-363
    発行日: 1989/05/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    痔核を結紮して壊死を起こさせる治療方法として, 痔核結紮器が我国でも広く用いられるようになった.その理由としては, いわゆる office procedure の一手法として簡易かつ非観血的な痔核の処理が可能であるという優れた長所があげられる.しかしその反面, 外痔核の腫れ, 2次出血, 再発といった欠点が少数ではあるが存在している.この欠点に対する改善策を工夫し, 積極的に痔核結紮器を肛門の手術に応用できないものかと検討した結果, 痔核結紮器を内痔核の集約分離の段階まで利用し, 痔核根部の結紮には cat gut を用い, より確実に処理するという方法を考案した. HILE (hemorrhoids isolated ligation and excision) 法と称しているこの方法により, 痔核結紮器応用の拡大をはかることができ, 出血例や再発例も全く認めなかった.
  • 中山 肇, 更科 広実, 斉藤 典男, 布村 正夫, 新井 竜夫, 谷山 新次, 横山 正之, 井上 育夫, 井原 真都, 小田 奈芳紀, ...
    1989 年 42 巻 3 号 p. 364-370
    発行日: 1989/05/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    CEA, CA 19-9は, 本来, 大腸癌関連抗原として発見されたものであるが, 現在では消化器系をはじめとする腫瘍マーカーとして臨床上広く応用されている.一方, 大腸腺腫の大腸癌発生における意義に関しては議論の多い所であるが, 組織学的には幅広いスペクトラムの異型上皮巣からなる腫瘍であり, そこにおけるCEA, CA 19-9の発現性に関しては興味のあるところである.そこで, 今回169個の大腸ポリープを対象とし, このうち腺腫内癌30症例において酵素抗体法によりCEA, CA 19-9免疫染色を行い, 腺腫内腺管の異型度とこれら抗原の組織局在性との相関について検討するとともに, 全例にHID-AB, PAS染色を行い, 腺腫内粘液の性状の検討を行った.この結果, CEAはCA 19-9に比べ各異型度毎に一様性をもった染色性を示し, 異型度の増加につれてその局在性のGradeも上昇する傾向が認められた.しかし, 高度異型腺管と癌腺管との問には差が認められなかった.反面, この局在性から異型度を同定することは不可能と考えられた.また粘液性状と異型度との問には一定の傾向は認められず, 異型度の増加につれて粘液の著明な枯渇化を認めた.CEAの染色性からみるかぎり, 高度異型腺管と癌腺管とは近似する性格を有するものと考えられた.
  • 押谷 伸英, 北野 厚生, 岡部 弘, 福島 龍二, 加島 和俊, 中村 志郎, 小畠 昭重, 橋村 秀親, 日置 正人, 松本 誉之, 大 ...
    1989 年 42 巻 3 号 p. 371-376
    発行日: 1989/05/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    当科にて1983年1月より1988年4月までに入院加療した潰瘍性大腸炎重症例23例について臨床的に検討した.病型は初回発作型5例, 再燃緩解型17例, 慢性持続型1例であり, 全大腸炎型12例, 左側大腸炎型11例である.病変の進展に関しては, 直腸炎型より左側大腸炎型への進展1例, 直腸炎型より全大腸炎型への進展1例, 左側大腸炎型より全大腸炎型への進展2例であった.急性期における治療効果と臨床的背景について検討したところ, 罹患範囲および炎症性ポリポーシスの有無と治療効果に有意な関連が認められた.外科的治療の施行された6例における検討では, retrospectiveにみた手術の有無に関して罹患範囲の進展が有意な背景因子であった.
  • 福嶋 健一, 八木田 旭邦, 松本 英男, 伊藤 久, 立川 勲
    1989 年 42 巻 3 号 p. 377-383
    発行日: 1989/05/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    大腸癌272例および大腸癌を伴う重複癌30例のHLA抗原を測定し, 対照310例と比較した.大腸癌で有意に高いHLA抗原はCw3, B35であり, 大腸重複癌ではCw3, DQw3であった.一方, 大腸癌で有意に低いHLA抗原はDRw52であり, 大腸重複癌ではDQw1であった (いずれもcorrected P<0.05).一般の大腸癌症例と大腸重複癌症例でともに有意に高い抗原はCw3であり, とくにより遺伝的因子が強く関与していると考えられている大腸重複癌症例ではCw3抗原が90%と高率であり, 相対危険率は10.5であることより.遺伝的因子が大腸癌の発生に, とくにCw3抗原が重要であることが示唆された.さらに今回の検討で, 免疫応答性の個体差を支配するHLA-classII抗原系においていくつかの有意差のある抗原 (DRw52, DQw1, DQw3) を見い出したことは, 大腸癌の病因が宿主の免疫応答, 免疫抑制と深く関係していることを示唆するものであり, 悪性腫瘍とHLAの検討は重要な問題と考えられる.
  • 堀田 芳樹, 奥本 聡, 黒田 勝哉, 加藤 道男, 斉藤 洋一
    1989 年 42 巻 3 号 p. 384-390
    発行日: 1989/05/25
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    人工肛門造設術を行った137例について早期合併症の発生に関する検討を行った.早期合併症としては皮膚炎がもっとも多く37.2%にみられ, 陥凹, 壊死, 狭窄などについては10%以下と低い頻度であった.手術期間別に検討すると, skinbarrierの普及した後期では皮膚炎, 創感染ともに減少していたが, 陥凹, 壊死, 狭窄, 痩孔形成については手術期間による差はみられなかった.人工肛門造設術の各因子と早期合併症の関連について検討すると, 一期的開口は皮膚炎, 狭窄の合併が少なく, また創感染については二期的開口と差がなく推奨されるべき術式と考えられた.人工肛門の再造設例では壊死, 痩孔形成, 皮膚炎ともに初回手術例に比べ多かった。重複合併症症例では陥凹, 壊死, 狭窄, 痩孔形成を伴う症例が多く, 皮膚炎を高率に併発していた.さらに : 重複合併症症例では再造設術例, 合併症のために再手術を要した症例が多かった.
  • 中村 清
    1989 年 42 巻 3 号 p. 391-398
    発行日: 1989/05/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    異なる測定法や測定Kitで得られた大腸癌患者の血中CEA値を同等に扱って良いかどうかを知るために, Roche社製 CEA-RIA法 kitとAbbott 社製 CEA-EIA法 kitで同時に血中 CEA 値を測定し, 比較検討した.結果 : (1) EIA法とRIA法による大腸癌患者の術前のCEA測定値は良好な相関を示した. (2) EIA法はRIA法に比して偽陰性率が低く比較的早期の癌に対して陽性率が高く, 大腸癌のスクリーニングにはEIA法の方が優れていると考えられた. (3) 粘液癌, 低分化腺癌, 結腸癌などではEIA法とRIA法による測定値問に解離を示すものがみられ, CEAの不均一性と抗CEA抗体活性の差異によるものと思われた.以上, EIA法は測定操作が簡便であり, RIを使用しないなどの利点があり, 日常臨床上, 有用な方法と考えられた.
  • -大腸リンパ管腫本邦報告例の文献的考察-
    船橋 公彦, 渡辺 聖, 桑原 利章, 小林 一雄, 柳田 謙蔵, 吉雄 敏文, 辻本 志朗
    1989 年 42 巻 3 号 p. 399-405
    発行日: 1989/05/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    消化管ことに大腸に発生したリンパ管腫は稀で, 本邦における報告も46例にすぎない.今回横行結腸に発生したリンパ管腫を経験したので, 本症例を含め本邦報告集計47例について若干の検討を加えて報告する.症例は30歳, 女性で, 下腹部痛を主訴として来院した.入院後諸検査にて横行結腸に発生したリンパ管腫と診断し, 部分切除を施行した.摘出腫瘍は, 3.3×2.4cmのリンパ管腫であった.最近では内視鏡的にポリペクトミーを施行し成功した報告もあり, 今回の検討でその適応は最大径が2cm以下と考えられた.しかし, 2cm以上でも内容の吸引で腫瘍の縮小傾向がみられるものは積極的に内視鏡的ポリペクトミーを試みるべきと思われた.
  • 神谷 須賀男, 志田 晴彦, 山本 登司, 浅野 哲
    1989 年 42 巻 3 号 p. 406-410
    発行日: 1989/05/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    転移性上行結腸悪性黒色腫の1例を報告した.患者は69歳, 女性.1983年1月に右足底部の悪性黒色腫切除と右鼠径部のリンパ節郭清を施行され, 化学療法後, 免疫療法を継続中であった.1985年2月より食欲不振, 悪心, 嘔吐, 体重減少が出現, 同年6月に東京厚生年金病院入院となった.
    入院時身体所見として, 右側腹部に手拳大の腫瘤を触知した.注腸造影, 大腸内視鏡検査にて上行結腸に1型腫瘤を認め, 組織生検を施行し, 上行結腸悪性黒色腫と診断した.
    右半結腸切除を施行し, 一時, 症状の改善を認めたが, 約8カ月後に全身転移にて死亡した.悪性黒色腫は全身に転移しやすく, 予後不良な疾患であり, 剖検時には, 高率に消化管への転移が認められる.しかし, 生前に消化管転移が診断され, 手術を施行された報告は, 本邦では稀である.
  • 加納 宣康, 山田 直樹, 足立 俊之, 波江野 善昭, 和田 英一, 稲田 潔, 松波 英一, 鷲見 裕久
    1989 年 42 巻 3 号 p. 411-414
    発行日: 1989/05/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    子宮転移をきたした盲腸癌の1例を報告した.
    症例は41歳女性.主訴は腰痛および下腹部痛.現病歴 : 約2カ月前より腰痛および下腹部痛があったため某院を受診したところ, 注腸造影にて回盲部の異常を指摘されたが, 同時に当院婦人科を受診したところ, 子宮頸部の生検で腺癌を指摘されたため, 同科にて開腹術を施行された.開腹すると, 回盲部に鷲卵大の癌腫を認め, 近傍の腸問膜への播種性転移および腸問膜から大動脈周囲におよぶ広範なリンパ節転移とリンパの諺滞を認めた.回盲部癌の子宮転移または重複癌と考え, 両側付属器切除を伴う単純子宮全摘術および結腸右半切除術を施行した.病理組織学的検査にて盲腸癌の子宮および卵巣転移と判明した。
    子宮転移の機序としては, 後腹膜のリンパ流が腫瘍によって閉塞され, 逆行性にリンパが流れることによって子宮転移が起こると考えられる.
  • 大東 誠司, 大谷 洋一, 加藤 博之, 森 正樹, 梅田 浩一, 松本 紀夫, 小豆畑 博, 芳賀 駿介, 梶原 哲郎, 野村 二郎
    1989 年 42 巻 3 号 p. 415-419
    発行日: 1989/05/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    腹腔内膿瘍を合併した若年者大腸癌の1例を経験した.症例は24歳, 男性.腹痛, 下痢, 発熱を主訴として来院.右下腹部に限局性腹膜炎の所見を認め, 腹部エコーでは同部に一致して腹腔内膿瘍を認めたため緊急手術を行った.開腹所見では大網が膿瘍壁を形成しており, 横行結腸と強固に癒着していた.膿瘍および横行結腸の部分切除を行った結果, 結腸癌と診断されたため, 改めて右半結腸切除術を施行した.組織学的には中分化腺癌で, 一部に低分化腺癌, 粘液癌の所見を認めた.病期はss, a2, n (-), H0, P0, stageIIであった.一般に若年者大腸癌は, 生物学的悪性度が高く予後は不良とされている.予後の改善には早期発見が重要で, 若年者といえども常に癌の存在を念頭においておくことが必要である.
  • 丸山 規雄, 成高 義彦, 細川 俊彦, 小川 智子, 石川 信也, 大谷 洋一, 菊池 友充, 小川 健治, 梶原 哲郎
    1989 年 42 巻 3 号 p. 420-424
    発行日: 1989/05/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    腸管に発生した子宮内膜症が腸閉塞をきたすことは本邦ではきわめて少ない.われわれは, S状結腸に発生した子宮内膜症が腸閉塞をきたした1例を経験したので報告する.
    症例 : 29歳既婚女性.主訴 : 腹痛.既往歴 : 22歳時左卵巣嚢腫にて卵巣摘出術, 25歳時右卵管閉鎖開通術を施行.現病歴 : 昭和63年4月7日腹痛を生じ近医を受診.症状増強しイレウスにて人工肛門造設術を施行.4月16日再手術目的にて当科入院となった.注腸検査, 大腸内視鏡検査にて, 肛門縁より20cmの部位に完全閉塞が認められた.5月24日腸管子宮内膜症または悪性腫瘍を疑い開腹.術中迅速病理検査でS状結腸子宮内膜症と診断されS状結腸切除術を施行.術後Danazol投与によるホルモン療法を行い, 経過観察中である.
  • 特別講演I
    佐野 開三
    1989 年 42 巻 3 号 p. 425
    発行日: 1989/05/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
  • 特別講演II
    高木 弘
    1989 年 42 巻 3 号 p. 425a
    発行日: 1989/05/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
  • 佐野 開三
    1989 年 42 巻 3 号 p. 426-430
    発行日: 1989/05/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
  • 1989 年 42 巻 3 号 p. 430-433
    発行日: 1989/05/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
  • 1989 年 42 巻 3 号 p. 433-435
    発行日: 1989/05/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
  • 1989 年 42 巻 3 号 p. 435-456
    発行日: 1989/05/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
  • 1989 年 42 巻 3 号 p. 457-483
    発行日: 1989/05/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
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