日本大腸肛門病学会雑誌
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42 巻, 4 号
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  • 北野 厚生, 押谷 伸英, 岡部 弘, 福島 龍二, 加島 和俊, 中村 志郎, 小島 昭重, 日置 正人, 橋村 秀親, 大川 清孝, 小 ...
    1989 年 42 巻 4 号 p. 485-491
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎 (ulcerative colitis : UC) を長期経過例も含めて臨床的な面から難治性の要因を分析し, 難治性UCとしてのcriteriaを設けることを試みた. 5年間以上にわたって追求し得たUCでは頻回再燃例や厳密な内科的治療に奏効せず, 活動期間が遷延したり, より重症化する傾向が得られた. これらの症例は, (1) 慢性持続型, (2) 再燃後6カ月以上活動期にある例, (3) 頻回に再燃をくり返す例, のいずれかに相当するものであり, これらを総括して難治性UCとした. その結果, 難治性UCでは26%において罹患範囲が進展し, 再燃の頻度は発症後の5年以内において高く, その後低下する傾向を示した. 活動期間は発症後5年以内では年当りに占める割合は低いが, 6年から15年間では逆に高くなった. 難治性UCの中で, とくに3回以上再燃し, かつその都度重症化し, 6カ月以上活動期にある場合は相対的手術適応と考えた.
  • 歯状線形成SSG法
    高野 正博
    1989 年 42 巻 4 号 p. 492-497
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    裂肛の手術療法には, 開放創とするものから, この創を皮膚弁で覆うというもの等, 種々の方法が考察されている. わが国においては1984年Carmelが報告し坂部らによって紹介されたsliding skin graft (SSG) 法が, その成績の優秀なことから採用されている. ただしSSG法の欠点として, 皮膚弁を横に滑り込ませるため, 粘膜と皮膚弁の間に横の癖痕が生じ, 不快感・疼痛・排便障害・肛門拡張不全をもたらす場合がある. この欠点を是正するため些か考えを巡らせたが, 本来, 解剖学的にこの部分は歯状線と呼ばれ, 文字通り鋸歯状となっており, これが肛門の大きな収縮力の原因となっていると考え, これを術式に応用することにした. すなわち, 従来一直線であった移動皮膚弁と粘膜との間を鋸歯状に形成することを試みた. この術式を臨床的に応用し, 期待通り良好な成績を得たので報告する.
  • 佐藤 弘房, 樋渡 信夫, 三浦 正明, 中嶋 和幸, 山崎 日出雄, 鈴木 邦彦, 山下 和良, 小林 和人
    1989 年 42 巻 4 号 p. 498-504
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    われわれは, 1983年より宮城県内のモデル町 (MI, MO町) において5年間継続して大腸がん集検を行ってきた. 対象は45~69歳の男女で, 一次検診は便潜血反応 (ヘモカルトIIスライド3日法) と問診票を用いた. 便潜血反応1日以上陽性者と, 便潜血反応が陰性であっても問診票のいずれかが該当する者はハイリスク群として要精検者に加えた. 精検はS状結腸内視鏡検査と注腸X線検査の同日併用とした. 5年間の集検対象者は延べ37,768名で, 一次検診受診率は23.4% (8,842名) であった. 便潜血反応陽性率7.6% (668名) とハイリスク群2.5% (225名) を合わせた10.1% (893名) が要精検率となり, 精検施行率は88.5%であった. 大腸癌が15例 (早期癌8例) 0.17%と, 大腸腺腫が127例1.44%発見された. 初回受診発見癌は9例だけであり, 癌発見には逐年検診が不可欠と考えられた. 同地区での胃集検と比較しても遜色のない成績と考えられた.
  • 小豆畑 博, 森 正樹, 松本 紀夫, 梅田 浩, 加藤 博之, 高橋 直樹, 飯田 富雄, 今村 洋, 成高 義彦, 菊池 友允, 芳賀 ...
    1989 年 42 巻 4 号 p. 505-509
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    1983年より1987年までの5年間に当科で経験した大腸癌切除症例196例のうち, 肝転移のみられた35例 (同時性25例, 異時性10例) について, 治療法と予後を検討した.
    同時性肝転移では, 肝切除を4例, 経カテーテル治療を11例, 化学療法を10例に, また異時性肝転移では, 肝切除を4例, 経カテーテル治療を5例, 化学療法を1例に行った.
    治療後平均生存期間は, 同時性では肝切除例16カ月, 経カテーテル治療例13カ月, 化学療法例7カ月, 異時性では肝切除例20カ月, 経カテーテル治療例11カ月, 化学療法例4カ月であった.
    肝切除後の残肝再発を, 同時性では4例中2例に, 異時性では4例全例にみとめたが, 肝切除時持続動注を付加した同時性肝転移の2例には, 現在, 残肝再発をみとめていない.
  • 病態との関連を中心に
    下山 孝俊, 清水 輝久, 高平 良二, 草野 裕幸, 石川 啓, 福田 豊, 中越 享, 平野 達雄, 國崎 忠臣, 三浦 敏夫, 富田 ...
    1989 年 42 巻 4 号 p. 510-518
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    炎症性腸疾患の腸病変の特性を知る目的で, 摘出標本のmicroangiography像を各疾患の病態と関連して検討した. (1) 潰瘍性大腸炎では腸壁外および腸壁内血管系の著明な拡張が認められた. (2) 腸壁内血管系の改築は潰瘍性大腸炎では粘膜, 粘膜下血管が主体で, 血管系の集中像がなく, 筋層以下の基本的血管構築像が保たれているのに対し, クローン病では全層の血管系の改築と潰瘍中心域や肉芽腫への集中像が特徴的であった. (3) 炎症性ポリープは増殖性ポリープと島状残存ポリープに大別され, 粘膜ひだに分布する貫通枝の支配が認められた. (4) クローン病の縦走潰瘍やcobblestoneはvascularityに乏しく, 成立過程に2次的な虚血性病変の関与が示唆された. (5) 原発性小腸潰瘍は腸間膜対側にあり, 循環末梢域の虚血性病変と推察された.クローン病類縁疾患群は共通して潰瘍中心域へ向かう求心性の血管集中像がみられ, 病態上, 環状収縮の性質を有するものと考えられた.
  • D型カルチノイドを含めて
    白水 和雄, 磯本 浩晴, 掛川 暉夫
    1989 年 42 巻 4 号 p. 519-525
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    直腸カルチノイドは典型的カルチノイドがほとんどで, 転移をきたすことは比較的少ない. しかし最近, 非典型的カルチノイド, とくにD型カルチノイドの存在が知られるようになったが, その臨床的, 病理学的特徴は詳細不明で, 治療方針も確立されていない. 4例のD型カルチノイドを含めた直腸カルチノイド19例について臨床病理学的に治療方針を検討し, 以下の結論に達した. (1) 1cm未満の典型的カルチノイドは転移もなく, 予後も良好で, 筋層を含めた局所切除で十分である. (2) oat cell carcinomaに類似するD型の非典型的カルチノイドの場合には, たとえ1cm未満でも広範囲に転移をきたす危険性があり, リンパ節郭清を伴っった根治術が必要である. (3) 神経分泌顆粒の数や大きさは術式を選択する指標となることが推測された.
  • -とくに主病巣および所属リンパ節の抗腫瘍性反応について-
    緒方 裕
    1989 年 42 巻 4 号 p. 526-536
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    直腸癌患者に対して, OK-432を術前腫瘍縁に局注し, 主病巣および所属リンパ節の抗腫瘍性反応の増強の可能性について免疫担当細胞の動態とNK細胞活性より検討した. 免疫担当細胞の動態は, 凍結切片の免疫組織化学染色および単離細胞のtwo color flow cytometric analysisにより検索した. NK活性は51Cr release assay法で測定した. OK-432の局注により腫瘍増殖先進部にLeu 4細胞が誘導され, そのsubsetsは主にLeu 3a+3b+細胞で, Leu 2a+細胞には変化を認めなかった. 所属リンパ節では, 遠位リンパ節にLeu 2a+細胞の相対的増加が認められ, とくにcytotoxic T cellおよびそのprecursorの増加がみられた. 腫瘍浸潤リンパ球のNK活性は, OK-432の局注により約半数の症例で増強した. 以上より, OK-432局注によって主病巣および所属リンパ節の細胞性免疫能が増強され, 癌治療での有用性が示唆された.
  • 野登 隆, 則久 洋子, 池田 正見, 徳田 裕, 安田 聖栄, 田島 知郎, 三富 利夫
    1989 年 42 巻 4 号 p. 537-541
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    大腸癌周囲浸潤リンパ球, 所属リンパ節リンパ球の免疫能を賦活する目的でOK432を術前腫瘍内に局注した. その結果, OK432を局注した群のリンパ節リンパ球は各種腫瘍細胞に対し細胞障害活性を示したが, 非局注群リンパ節リンパ球に細胞障害活性はみられなかった. リンパ節リンパ球をrecombinant IL-2添加培養を行うと強いLAK (lymphokine activated killer) 活性を誘導できた. しかしLAK活性の強弱はOK432前投与しても変わらなかった. 腫瘍周囲浸潤リンパ球, リンパ節リンパ球のサブセットを免疫組織化学およびFACStarによる定量的解析を行ったが, 両群間に差はなかった. またリンパ節にはNK細胞はほとんどみられなかった.
  • 宮島 伸宜
    1989 年 42 巻 4 号 p. 542-552
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    外傷や直腸癌手術で失われた外肛門括約筋機能を有茎薄筋移植にて再建することを目的としてラットの脱神経薄筋に陰部神経を移植する実験的研究を行った. 薄筋はタイプ1, 55.8%, タイプ2A, 12.6%, タイプ2B, 30.9%, タイプ2C, 0.7%であった. 一方, 外肛門括約筋にはタイプ2B線維はみられず, タイプ1, 0.9%, タイプ2A, 98.4%, タイプ2C, 0.7%と両者の筋線維タイプは有意に異なっていた. 薄筋は陰部神経移植後2週ではほとんどの筋線維が未分化で分化能を有するとされるタイプ2C線維となった. 移植後3週目以降にはタイプ2B線維は消失し, 移植後8週目にはタイプ1, 0.9%, タイプ2A, 96.6%, タイプ2C, 2.5%と外肛門括約筋と同様の筋線維タイプの分布を持つようになった. また移植後3週目より移植した陰部神経を刺激することにより薄筋の収縮がみられた. したがって, 脱神経薄筋に陰部神経を移植することにより, 本来の外肛門括約筋機能再建の可能性が示唆された.
  • 原岡 誠司, 森 倫人, 佐藤 裕, 溝口 哲郎, 広橋 喜美, 中城 博見, 樋高 克彦, 久次 武晴
    1989 年 42 巻 4 号 p. 553-556
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    虫垂にも稀ではあるが憩室が生ずるが, われわれは最近, 2例の虫垂仮性憩室を経験した. 症例1は41歳男性, 膀胱腫瘍にて入院中急性虫垂炎を発症し, 虫垂切除後の標本検索にて発見された. 症例2は69歳男性, 直腸癌にて開腹手術中に虫垂憩室を認めたために予防的虫垂切除を施行した. 2例とも組織学的に筋層を欠く仮性憩室であった.
    虫垂憩室は一旦憩室炎を生ずると容易に膿瘍形成や穿孔などの合併症をきたすために, 開腹手術時や腸透視の際に本疾患を認めた場合には予防的虫垂切除を施行すべきであると考えられた.
  • 石橋 克之, 横木 和弘, 猪狩 弘之, 栗原 陽一, 粕川 禮司
    1989 年 42 巻 4 号 p. 557-561
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    症例1 : 58歳の男性. 主訴は腹痛. 胃潰瘍にて胃切除施行時に虫垂切除の既往あり. 注腸X線検査で盲腸末端部に1.1×1.1cmの山田II型の腫瘤陰影を認めた. 大腸内視鏡検査にて同部位に表面平滑で頂部に陥凹があり, はちまき状ひだで囲まれた粘膜下腫瘍像を認めた. 盲腸切除術を施行し, 切除組織の病理学的検査にて絹糸による異物肉芽腫がある翻転虫垂切除断端による盲腸腫瘤と診断した.
    症例2 : 44歳の男性. 主訴は全身倦怠感. 虫垂切除の既往あり. 注腸X線検査にて盲腸末端部に1.5×1.5cmの山田III型の腫瘤陰影を認めた. 大腸内視鏡検査にて同部位に症例1と酷似した粘膜下腫瘍所見を認め, 画像上翻転虫垂切除断端による盲腸腫瘤と診断した.
  • 長沼 敏雄, 正宗 研, 向島 偕, 武田 正人, 水口 直樹, 熊谷 正之
    1989 年 42 巻 4 号 p. 562-567
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    症例は58歳女性, 昭和60年12月より臍周囲痛が出現, 症状は間欠的で, 近医にて治療を受けていたが, 昭和61年6月16日, 食 欲不振, 下腹部痛を主訴に秋田県成人病医療センターを受診し, 腹部単純X線検査で腸閉塞と診断した. 入院後の注腸検査で, 上行結腸に重積した腸重積症と診断し, 同日開腹手術を施行した. 回腸が内筒となって盲腸に重積し, その先進部の回腸には, 内翻憩室がみられた. 重積部位の回腸は壊死に陥っていた. 切除標本の病理検査で, 憩室は全層性で, 異所性胃粘膜を持ち, Meckel憩室の内翻による腸重積症と確定診断した. 症例報告に加えて, Meckel憩室による腸重積症について文献的考察を加えた.
  • 小川 泰史, 田中 美和, 今峰 聡, 小野 彰範, 国近 啓三, 村上 晃司, 村上 善昭, 星加 博司, 西蔭 三郎
    1989 年 42 巻 4 号 p. 568-571
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    若年で発病した虚血性大腸炎を経験したので報告する. 症例は33歳の女性. 突然の下腹部痛と下痢, 下血にて発病した. 第4病日の大腸ファイバーにて脾彎曲部から下行結腸全域にかけ腸管の狭窄, 粘膜の浮腫, 出血と3条の縦走潰瘍を認めた. 生検組織像はghost like appearance, 好中球浸潤, 浸出を認めた. 第7病日の注腸透視では腸管の辺縁不整のみが残存し, 第19病日の大腸ファイバーでは粘膜は正常となり, transientischemic colitisと診断した. なお, 本症例ではRA, 抗DNA抗体が陽性であった.
    虚血性大腸炎のほとんどは高血圧, 動脈硬化症を背景として高齢者に多い. 本症例は高血圧症も無く, 33歳と若く, 虚血性大腸炎の発生機構を考える上で興味深い症例であるので報告した.
  • 西 律, 岡島 邦雄, 冨士原 彰, 革島 康雄, 森田 真照, 原 章倫, 田口 忠宏, 石賀 信史, 浜口 伊久夫, 吉岡 卓治, 原 ...
    1989 年 42 巻 4 号 p. 572-577
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    大腸癌手術後早期の血小板数の変動と血小板数測定の臨床的意義を明らかにする目的で, 62例 (結腸癌30例, 直腸癌32例) について術後7日目までの血小板数と, これに影響を与える因子および術後合併症との関連を検討した. 血小板数は術後2日目に最低となるが, 術後3日目以後増加し, 5日目に術前値に回復し, 7日目には逆に術前値より有意に増加した. 血小板数減少と有意の相関を有していたのは手術時間と出血量, 輸血量であった. 血小板の減少, 特に術後3日目での120×103/μl以下の減少は重篤な合併症発生と有意の関連を認めたが, 白血球数と合併症との間には有意の関連はなかった. 今回の検討より, 術後早期の血小板数の変動を知ることは感染症を主体とした大腸癌手術後合併症の早期診断に重要な情報を提供すると考えられた.
  • (ウリナスタチンの応用)
    多田 正大, 磯 彰格, 大塚 弘友, 尾川 美弥子, 清水 誠治, 青木 美博, 川井 啓市
    1989 年 42 巻 4 号 p. 578-582
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    SHやSASPに抵抗する難治性潰瘍性大腸炎の原因として, 疫学的, 病理学的, 心身医学的立場などからさまざまなアプローチが試みられてきているが, 必ずしも一定の見解は得られていない. 筆者らも水素ガスクリアランス法による粘膜血流量低下の現象, および病理学的にも局所の循環不全の状態にあることから, これが難治化の一因であると考えられた1症例に対して微小循環障害を改善する目的としてUSTの投与を試みた. その結果, USTによって血流を回復させることによって粘膜面のビラン, 潰瘍の修復を期待することができたこと, およびSHの効果を増強させたこと, などの薬理作用によって難治性の炎症を修復できた. 過去の潰瘍性大腸炎の病態に関する報告例を渉猟してみても, 粘膜局所の循環不全, DICの所見がみられるとする報告も少なくない. したがって自験例は潰瘍性大腸炎の難治症例に対する治療法の1つのあり方として, 教訓的な症例であると強調される.
  • 大東 誠司, 芳賀 駿介, 加藤 博之, 森 正樹, 梅田 浩, 松本 紀夫, 小豆畑 博, 大谷 洋一, 小川 健治, 梶原 哲郎
    1989 年 42 巻 4 号 p. 583-587
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    1969年より1983年8月まで当教室で経験した大腸癌症例は393例であり, 39歳以下の若年者大腸癌は19例であった。このうち大腸腺腫症および潰瘍性大腸炎に合併した大腸癌を除く17例について検討し, 以下の考察を行った。 (1) 若年者大腸癌は全大腸癌の4.3%であり, とくに性差はなかった。 (2) 結腸癌10例, 直腸癌7例で, 占居部位では各部位にほぼ均等に存在していた。 (3) 若年者大腸癌では病期の進行した症例が多く, その原因としてはリンパ節転移ともっとも関連が深かった。深達度, 肝転移, 腹膜転移および病理組織型については非若年者と比較して有意差は認めなかった。 (4) 若年者大腸癌の切除率は100%であったが, 治癒切除率は52.9%と低かった。 (5) 若年者大腸癌全体の予後は早期死亡例が多く不良であったが, 治癒切除例は全例生存しており予後は良好であった。以上より, 若年者大腸癌では早期発見が重要で, 治癒切除が可能であれば予後は良好であることが示唆された。
  • 増田 純一, 横井 雅一, 小西 睦美, 松島 誠, 辻仲 康伸, 大見 良裕, 鈴木 和徳, 河野 一男, 衣笠 昭, 鈴木 信夫, 西野 ...
    1989 年 42 巻 4 号 p. 588-591
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    肛門疾患手術後, 硬膜外鎮痛薬としてブプレノルフィン0.1-0.15mgを生食10mlと共に投与したもの (100例 ; IIa群), これにドロペリドール2.5mg併用したもの (100例 ; IIb群) および無処置のもの (150例 ; I群) の3群間で鎮痛効果や付随する合併症について比較検討した. 硬膜外投与は術直後より48時間後まで約12時間毎に行い, 疼痛時には主としてメフェナム酸を内服投与した.
    術後48時間にわたり鎮痛薬を服用しなかったのは, I群, IIa群, IIb群それぞれ35, 62, 79%, 鎮痛薬内服の有無にかかわらず, 術翌日朝ほとんど無痛であったのはそれぞれ27, 55, 60%と硬膜外鎮痛薬の有用性が確かめられた. またドロペリドール併用により鎮痛効果が増強することが示唆された. 悪心はI群, IIa群, IIb群それぞれ6, 11, 3%に生じ, ドロペリドールの悪心発現抑制作用がみられた. しかし, 硬膜外鎮痛薬による軽度排尿障害や一過性発熱例などの問題点もみられた.
  • 木村 光雄, 樋渡 信夫, 三浦 正明, 山崎 日出雄, 中嶋 和幸, 豊田 隆謙
    1989 年 42 巻 4 号 p. 592-596
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    強力静注療法を含めたステロイド大量投与に抵抗を示した潰瘍性大腸炎重症例に対するACTH併用の治療効果について検討した. 対象は7例で, 男性3例, 女性4例, 平均年齢23.1±11.2歳 (平均値±標準偏差), 病型は慢性持続型1例, 再燃緩解型6例, 左側大腸炎型2例, 全大腸炎型5例であった. ACTHを併用する直前の治療は, プレドニゾロン30-60mg/日 (10歳の症例のみ20mg/日) を3-26日間投与, うち4例は絶食のうえ完全静脈栄養を施行したが, いずれも無効であった. ACTHは1日40U (10歳の症例では1日20U) を朝・夕に分け筋注した. ACTH併用により, 有効5例, やや有効1例, 無効1例の成績を得た. やや有効例と無効例は準緊急手術を必要とした. 有効例において, ACTH投与後血便が消失するまでの期間は平均5. 6±2. 5日であった. ステロイド抵抗性の重症例に対して, ACTHの併用は試みるべき治療法と考えられた.
  • 微小大腸癌
    1989 年 42 巻 4 号 p. 597-673
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
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