日本大腸肛門病学会雑誌
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43 巻, 4 号
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  • 剥離面擦過細胞診法および剥離面穿刺吸引細胞診法の有用性
    足立 武則
    1990 年 43 巻 4 号 p. 517-525
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    癌先進部から外科的剥離面までの距離 (ew) の不足による直腸癌の局所再発を減少させることを目的に, 剥離面における癌細胞遺残の有無を術中に診断する剥離面擦過細胞診法, およびewを術中に迅速診断する剥離面穿刺吸引細胞法を考案し, 検討した.また自験例におけるewと局所再発率の関係も併せて検討した.ewを3mm毎に分けて比較した結果では, 対象65例中ew3mm以下の症例の局所再発率は26例中12例 (46.1%) と他の症例に比べ有意に高かった。剥離面擦過細胞診の成績は対象41例の検討で, accuracyは95%で粘液癌の2例を除き誤診例はなく, 良好な結果であった, 剥離面穿刺吸引細胞診の成績は対象20例300回の穿刺でのew測定の正診は272/300 (91%) と良好な成績が得られた.これらの方法は術中に剥離面の広い範囲から迅速, 簡便, かつ正確に剥離面の情報を提供し, ew不足に伴う直腸癌の局所再発を防止する有用な方法と考えられた.
  • 辻 順行
    1990 年 43 巻 4 号 p. 526-532
    発行日: 1990年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    現在痔瘻および肛門膿瘍の診断は, 視診・触診によるところが多く, 検査機器を用いての客観的検査は施行されることが少ない.そこで今回これらの疾患に対し, 経肛門的超音波検査を用い, 診断補助としての有効性を調べた.対象は1989年5月から10月までの手術症例50例で, 以下の結果を得た。 (1) 内外 (深, 浅, 皮下) 括約筋, 肛門挙筋が描出された。 (2) 歯状線は局麻剤を歯状線上に局注することにより同定された. (3) これらを総合することにより, 隅越分類(表1) のIIL, IIH, III, IVの術前診断が可能であった. (4) 肛囲膿瘍の場合は, 超音波画像上cysticpattemとして描出され, 痔瘻の場合は, 括約筋類似のecholevelとして描出され, 診断は比較的容易であった. (5) 深部肛門病変のうち, III病変の揚合ほとんどの症例においてII病変を合併し, IV病変の場合は特殊病変を除けばII, III病変を合併することが多かった.
  • とくに高分化腺癌と中分化腺癌の生存率の違いについて
    飯田 明
    1990 年 43 巻 4 号 p. 533-541
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    大腸癌手術後の転帰およびその経過を組織型との関係を中心に検討した.408例を組織学的に分類し, 治癒切除例についてはその生存率, 再発形式, 再発時期を, 非治癒切除例についてはその生存期間, 非治癒切除の理由等を検討した. (1) 大腸癌切除例の組織型は高分化腺癌が多く, 中分化腺癌, 粘液癌がこれにつぎ, その他の組織型は少数であった. (2) 直腸癌治癒切除例の5年生存率は, リンパ節転移の有無や深達度を一致させても, 中分化腺癌の方が高分化腺癌より低かった. (3) 直腸癌治癒切除後に再発死亡した症例の生存期間と, 直腸癌非治癒切除例の術後生存期間は, 高分化腺癌より中分化腺癌の方が短かった.以上のことより, 直腸癌においては中分化腺癌は高分化腺癌に比べて, 悪性度が高い癌であると考えられた.
  • 前田 耕太郎
    1990 年 43 巻 4 号 p. 542-553
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    これまで左側結腸切除時, 残存肛門側腸管の虚血による縫合不全を懸念して, 吻合操作の困難な腹膜翻転部近傍にて吻合が行われる場合が多かった.本研究は, 左側結腸切除時, より容易で安全な吻合を行うために, 中・下直腸動脈で栄養される残存肛門側腸管の血行が腹膜翻転部上どの部位まで保たれているかを明らかにする日的で行った。まず実験的に雑種成犬の大腸を用い, フローレッセン螢光法と組織酸素分圧 (PtO2) を指標とし, 虚血腸管のviabilityと吻合可能な虚血限界を検討した結果, no fluorescence pattern (PtO2 16mmHg) を呈した腸管はnon viableであり, normal (PtO2 52mmHg), fine patchy (PtO2 41mmHg), coarse patchy pattern (PtO2 27mmHg) を呈した腸管は吻合可能と考えられた.これらの指標を用い, 左側結腸切除術を施行した9例の臨床的検討では, 残存肛門側腸管の血行は, 腹膜翻転部上20cmまでは吻合に十分な血流が保たれていると考えられた.
  • 石島 直人
    1990 年 43 巻 4 号 p. 554-560
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    大腸癌72例, 大腸腺腫30例, 正常大腸粘膜75例について, 抗ras p21モノクローナル抗体 (Y13-259) を用いた免疫組織化学染色を行い, その発現と大腸腫瘍の発生, 進展の関連について検討を加えた.ras oncogene p21の発現は大腸癌39例 (54%), 大腸腺腫24例 (80%), 正常大腸粘膜7例 (9%) にみられ, 正常大腸粘膜では腺管の表層と平滑筋に発現がみられた.大腸癌・腺腫では正常大腸粘膜に比して有意に高い発現率がみられ, 大腸腺腫でのras oncogene p21の発現率は, 大腸癌に比して有意に高かった.大腸癌の病理組織学的所見や臨床病期とras oncogene p21の発現率との問には相関がみられなかった.このことから, ras oncogene p21は正常組織においてはそのdifferentiationに関与し, また大腸腫瘍においてはその発生過程に関与するが, 大腸癌の進展には関与するところが少ないと考えられた.
  • 高野 正博
    1990 年 43 巻 4 号 p. 561-571
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    最近, わが国でも痔瘻に対する括約筋温存術式の研究が進み, 多くの症例に用いられるようになったが, その遠隔成績に関する論文はほとんど見られない.昭和57年1月~59年12月までの当院の痔瘻手術患者は786例で, うち362例 (46%) に括約筋温存術を行っている.再発症例は16例, 全体 (皮下・粘膜下痔瘻は除く) の6.6%である.各型別の再発率は, 低位筋間痔瘻 (IIL型) 1.5%, 高位筋間痔瘻 (IIH型) 3.6%, 坐骨直腸窩痔瘻 (III型) 9, 5%, 骨盤直腸窩痔瘻 (IV型) 23.8%と型が進むに従って再発率が高まる.平均治癒日数は, IIL型27.0目, IIH型33.3日, III型51.2目, IV型55.3日と, これも痔瘻の型が進むにつれて延長する.再発の原因を分析してみると, 原発口残存 (処理不良) 2例, 原発膿瘍残存5例, 外方・内方創の処理不良, 遷延治癒等による再発が8例, 不明1例となっている.以上より痔瘻の再発の防止にあたり, 原発口の処理は (1) 確実に発見 (2) 完全な切除 (3) 十分なドレナージ形成, 膿瘍の処理に関しては (1) 的確に切除 (2) 死腔をなくす, 最後の瘻管の処理に関しては (1) 可及的切除 (2) 十分なドレナージ創の形成で, これらの点を考慮して手術を行えば再発率はさらに低下すると思われる.
  • 奥野 匡宥, 池原 照幸, 長山 正義, 西森 武雄, 東郷 杏一, 川口 貢, 鎗山 秀人, 加藤 保之, 大平 雅一, 梅山 馨
    1990 年 43 巻 4 号 p. 572-576
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    1973年から1988年までに経験した大腸早期癌73例, 79病変を対象に臨床病理学的検討を行った.壁深達度別では, m癌37病変, sm癌42病変, 治療法別では内視鏡的ポリペクトミーが14病変 (13例), 局所切除術が5病変 (5例), 腸管切除術によるものが60病変 (57例) であった.早期癌の全大腸癌に占める割合は, 全期間では8.5%, 最近の4年問では15.0%であった.占居部位では, 早期癌の91.1%がS状結腸以下にみられた.肉眼形態では, Ip型29病変, Is型22病変, IIa型20病変, IIa+IIc型8病変であり, IIa+IIc型の8病変中7病変がsm癌であった.リンパ節転移はsm癌37病変のうち5病変 (13.5%) にみられ, IIa型, IIa+IIc型, 中・低分化腺癌, ly (+) の病変にその陽性率は高かった。治療成績では, m癌, sm癌それぞれ1病変に局所再発がみられたが, いずれも根治的再手術を施行することができた.残りの病変では再発は認めなかった.
  • 金 松傑, 斎藤 幸夫, 武藤 徹一郎, 正木 忠彦, 森岡 恭彦
    1990 年 43 巻 4 号 p. 577-582
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    DMH誘発ラット大腸腫瘍の発生と増殖に高脂肪食がいかに関与するかを明らかにする目的で, 以下2群の実験を行った.実験1 : DMH20mg/kgx1回+MF食投与群 (n=12), DMH20mg/kgx1回+Wilgram食投与群 (n=12).実験II : DMH20mg/kg×3回+MF食投与群 (n=12), DMH20mg/kg×3回+Wilgram食投与群 (F12).実験I, IIとも雄Sprague-Dawleyを使用し, DMH初回投与後28週目に屠殺し, 肉眼的に確認できる腫瘍および平坦粘膜の病理組織学的検索を行った.肉眼的に確認できる腫瘍の個数に関しては高脂肪食群はMF食群に対し有意差が認められなかったが, 平坦粘膜内の異型腺管巣の検討では高脂肪食群においてその出現頻度が高く, またその異型も強い傾向が認められ, 高脂肪食が本実験系腫瘍の発生に対し促進作用を持つことが示唆された.
  • 各背景因子別の遠隔成績と再発死亡例の検討を中心に
    桜井 洋一, 青木 明人, 岡芹 繁夫, 中山 隆市
    1990 年 43 巻 4 号 p. 583-589
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    リンパ節転移および遠隔転移を認めない症例179例を対象に, 遠隔転移がなく, リンパ節にのみ転移を認めた症例105例と臨床病理学的成績および遠隔成績につき比較検討した.年齢は, n (-) 群がn (+) 群に比較し有意に高く, 性比ではn (-) 群で男性が, n (+) 群に比較し, 有意に多かった.ly因子は, ly0が64.0%でn (+) 群に比し有意に多かったが, v因子には有意差を認めなかった.各背景因子別に遠隔成績を検討した結果, 性別, 病変占居部位, 組織型, v因子では生存率に有意差を認めず, 壁深達度で, m, sm, pm症例とss (a1), s (a2), si (ai) 症例との間に有意差を認め, ly因子で, 1y (-) 症例と1y (+) 症例の問に有意差を認めた.再発死亡症例は11例あり, 9例 (81.8%) はRbで, いずれも壁深達度s (a1) 以上の症例であり, 平均生存期間は35カ月であった.再発部位は8例は, 肺, 肝, 骨への遠隔転移であった.したがって, n0でも下部直腸癌でai以上の症例は再発する可能性が高く, 十分な補助化学療法および厳重なfollowupが必要であると考えられた.
  • 亀岡 信悟, 進藤 廣成, 朝比奈 完, 中島 清隆, 宮崎 要, 神崎 博, 板橋 道朗, 泉 公成, 斉藤 登, 浜野 恭一
    1990 年 43 巻 4 号 p. 590-594
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    S状結腸・直腸癌において下腸間膜動脈領域のリンパ節転移診断は重要である.今回われわれは7.5MHzの探触子を用いた超音波検査 (体表走査) によるIMA領域のリンパ節転移診断につき検討を行った.preli-minarystudyとして100例のスクリーニング症例においてIMA描出を試みた.IMAは88%と高率に描出された.IMA描出が困難な症例は肥満症例で, 性差と年齢差は認められなかった.IMAの走行は多種多様であった.IMAの描出距離は20mm以下9例, 21-39mm38例, 40mm以上41例, IMA直径は平均2.87±0.75mm (n=88), IMAと腹壁との距離は平均2.81±1.11cm (n=88) であった.S状結腸・直腸癌55例におけるIMAの描出率は85.5%であった。IMA領域のリンパ節腫大は15例に認められ, このうち9例が病理学的に転移陽性であった.すなわち診断率はsensitivity100%, specificity84.2%, positivepredictiveva-lue60%, negativepredictivevalue100%であった.
  • (抗癌剤門脈内投与の効果について)
    安田 聖栄, 野登 隆, 池田 正見, 向井 正哉, 中崎 久雄, 田島 知郎, 三富 利夫
    1990 年 43 巻 4 号 p. 595-600
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    大腸癌肝転移に対する治療法を研究する目的で, 動物モデルを作成した.可移植性マウス大腸癌 (colon26) から浮遊細胞を得, 同系マウスの門脈内に注入し, 肝転移を作成した.腫瘍;細胞103,104,105個門注後8日目では, 全例顕微鏡的転移の状態であった.105個門注後18目目では, 全例に肉眼的肝転移が認められ, 本モデルは大腸癌肝転移の治療実験に有用と考えられた。つぎに, このモデルを微小肝転移巣に対する抗癌剤門脈内投与の治療実験に応用した.あらかじめ本腫瘍がMMCに感受性があることを確認した.腫瘍細胞105個を注入後8日目を微小肝転移と考え, MMCを門脈内に投与した.その結果, MMC投与群は非投与群に比較し肝転移数肝湿重量とも有意に減少した, また生存日数の延長も有意であった、このことから, 感受性のある抗癌剤の門脈内投与により, 微小肝転移巣の発育を抑制できる可能性が考えられた。
  • 山口 明夫, 伊井 徹, 竹川 茂, 石田 哲也, 西村 元一, 加藤 真史, 神野 正博, 小坂 健夫, 米村 豊, 泉 良平, 三輪 晃 ...
    1990 年 43 巻 4 号 p. 601-605
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    大腸癌肝転移切除例35例を対象として, その予後規定因子について検討した.全例の3年および5年生存率は53.1%, 35.4%であった.転移時期では同時性肝転移の5年生存率28.3%に比して, 異時性肝転移では45.8%とその予後がやや良好な傾向がみられた.転移個数, 転移程度, 転移巣最大径, 肝切除術式, 組織型おびよ原発巣の組織学的病期と予後の間には相関がみられなかった.肝転移巣のDNA ploidy patternをみると, diploid症例の5年生存率71.1%に比して, aneuploid症例ではその5年生存率が17.0%ときわめて低く, 有意に予後が不良である傾向がみられた.また各因子をCoxの比例ハザードモデルを用いて検討すると, 肝転移巣DNA ploidy patternが最もその重みが大きく, ついで転移時期, 組織型の順であった.
  • 朴 哲在, 李 基周, 隅越 幸男
    1990 年 43 巻 4 号 p. 606-612
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    便秘はいろいろの原因, 機序が複合しておこり, 器質的, 機能的なものとに大別できる.器質的なものには典型的な症状がみられるので診断は容易であるが, 機能的なものは診断は難しい.著者らは排便困難や肛門疾患のない対照群22例と, 排便困難を主訴とする患者群73例にdefecographyを行った.患者群ではpefineal descent 43, rectocele 33, 直腸重積 14, spastic lavator syndrome 5, 直腸脱 2, がみられたが, 14例には特別な変化はみられなかった.また両群で肛門直腸角 (ARA) とresting (ARA1), squeezing (ARA2), straining (ARA3) のそれぞれで比較した結果, rectoceleとSpastic levator syndromeでは (ARA3-ARA1) は対照群にくらべ, 有意に減少をみせた.
  • 本邦回盲部放線菌症37例の文献的集計を加えて
    斉藤 雅之, 加納 宣康, 松波 英一, 和田 英一
    1990 年 43 巻 4 号 p. 613-620
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    回盲部放線菌症の1例を経験したので報告する.患者は55歳, 女性.主訴は右下腹部痛.回盲部腫瘤性病変の術前診断にて開腹, 腫瘤は回盲部外側から腹壁にかけて存在し, 横行結腸および大網と癒着性に一塊となっていた.右半結腸切除術を施行.腫瘤は径70mmx60mm大, 病理組織学的に菌塊を証明し放線菌症と診断, 術後Penicillinの大量療法をおこなった.また本邦における回盲部放線菌症37例を集計し考察を加えた.術前に正診された症例はなく, 全例術後菌塊の証明により診断されていた。画像診断上, 特有な所見ははなく腸管外性に増大するため粘膜下腫瘍像を示すにすぎなかった.治療上, 病変部切除およびpenicillinを始めとする抗生物質の十分な長期投与が必要と考えられた.近年, 稀な疾患とはなったが, 回盲部病変に遭遇した場合, 本疾患も念頭におくべきであると考えられる.
  • 武田 弘明, 高橋 恒男, 安日 新, 冨樫 整, 石川 誠
    1990 年 43 巻 4 号 p. 621-625
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    小腸脂肪腫の血管造影所見についての報告は少ない.われわれは回腸大腸型腸重積症を呈した回腸脂肪腫の手術症例において, 術前に従来記載のない腫瘍濃染様所見を認めたので若干の考察を加えて報告する.症例は80歳男性, 主訴は約3カ月間の腹部膨満感である.注腸X線検査および大腸内視鏡検査で上行結腸内に鶏卵大の腫瘤を認めた.腫瘤は回盲弁から滑脱した回腸粘膜に続いており, 腸重積症を呈した回腸末端部の腫瘤と診断した.腫瘤はCT検査で低吸収域を, 超音波検査で高エコーを呈し脂肪腫と推定されたが, 血管造影検査で腫瘍濃染様の所見が見られた.回盲切除を施行したところ, 腫瘤は回盲弁から約10cm口側の回腸に発生した粘膜下腫瘍で, 病理組織学的に脂肪腫であった.血管造影検査の腫瘍濃染様所見は大腸と回腸の造影剤による濃染度の差が反映されたためのものか, あるいは血管に富んだ粘膜および粘膜下組織によるものと推論された.
  • 鍋嶋 誠也, 太枝 良夫, 山本 尚人, 鈴木 正人, 村上 和
    1990 年 43 巻 4 号 p. 626-630
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    小児結腸癌は大部分が腹痛, 嘔吐という小児に一般的な症状を主とし, 病理組織型も印環細胞癌や粘液癌が大半を占めることから診断が遅れ急速な臨床経過をたどる予後不良でまれな疾患である.われわれの症例は15歳男児の下行結腸癌で3か月間にわたる腹痛を主訴とし腸閉塞の診断で入院した.イレウス管による減圧後, 手術を行ったが癌性腹膜炎を呈し, 主病巣は周囲臓器と一塊で切除不能であり横行~S状結腸吻合術のみに終わった.組織型は粘液産生腺癌であり術後約5か月で死亡した.本邦症例とあわせて49例の考察を行った結果, 年長 (中学生) 男児, 横行結腸発生例で予後が悪くstage分類IV~V症例が多い.初発症状を血便としたものや結腸癌と正しく術前診断されたものは比較的生存期間が長い。印環細胞癌症例はほとんどが予後不良であるが従来の文献と異なり粘液癌と腺癌の間には予後に関して差がなかった.
  • 関岡 敏夫, 仲井 理, 飯塚 修, 遠藤 清, 尾松 操, 小菅 貴彦, 辻 雅衛, 増田 道彦, 竹田 彬一
    1990 年 43 巻 4 号 p. 631-635
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎には痔核, 痔瘻, 肛門周囲膿瘍が合併することがあるが, 肛門潰瘍が合併することは日本では稀である.私達は潰瘍性大腸炎に合併した肛門潰瘍の1例を経験したので報告する.症例は59歳男性.1989年5月肛門の激痛のため来院した.肛門の1時と7時に広くて深い潰瘍が認められた.この肛門潰瘍は通常の裂肛と異なるため基礎疾患の存在を疑った.当初基礎疾患がわからず診断に難渋したが, 結局潰瘍性大腸炎に合併した肛門潰瘍であった.潰瘍性大腸炎の治療をすると, 同時に肛門潰瘍も治癒した.本例は腹部症状が乏しく, 肛門潰瘍を主症状とした潰瘍性大腸炎であった.
  • 松橋 信行, 中釜 斉, 菅野 健太郎, 高久 史麿, 武藤 徹一郎
    1990 年 43 巻 4 号 p. 636-640
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    症例は33歳女性.直腸炎型で発症し6カ月の間に全結腸炎型に進展した中等症の潰瘍性大腸炎で, prednisoloneの経口および大量静注療法に抵抗した. このためcyclosporin 8mg/kg/dayを経口投与したところ, 2週間の内に粘血便は消失し内視鏡的にも明らかな改善を認めた.cyclosporin投与を続けつつprednisoloneを60mg/dayから15mg/dayまで漸減したが増悪せず, cyclosporin投与開始2カ月後に結腸全摘, 回腸直腸吻合術を施行した。術後cyclosporin投与を中止したが残存直腸の炎症はsulfasalazineおよびprednisolone坐薬10mg/dayでコントロールされた.副作用は軽度の手指振戦がみられたのみで対処を要せず, 投与中止後直ちに消失した.cyclosporinが難治性, とくにsteroid抵抗性の潰瘍性大腸炎の緩解導入に有用である可能性が示唆された.
  • 新澤 真理, 伊藤 万寿雄, 向島 偕, 武田 正人, 水口 直樹, 鈴木 俊太郎, 五十嵐 潔, 正宗 研, 上坂 佳敬
    1990 年 43 巻 4 号 p. 641-644
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    われわれは内臓逆位に大腸三重重複癌を伴った1例を経験したので報告する.症例, 52歳, 女性.下腹部膨満感・下腹部痛を主訴に来院.内臓逆位の所見に加え, 注腸検査で下行結腸にapple-core sign, 横行結腸に陥凹性病変を認めたため, 大腸内視鏡検査を施行.下行結腸にほぼ全周性の2型の腫瘤を認め, 生検で中分化型腺癌を検出した.狭窄が高度なため, さらに口側への内視鏡挿入は不能であった.また腹部CT検査で, 内臓逆位の所見に加え, 肝S6に腫瘤を認めたが, 術前肝腫瘤の質的診断は困難であった.以上より内臓逆位・大腸重複癌・肝腫瘤と診断し, 切除術を施行.手術標本で下行結腸に2型と0型の陥凹性病変および横行結腸に0型の陥凹性病変を認め, 病理組織像で癌組織を確認した.また肝腫瘤は大腸癌の肝転移であった。内臓逆位に大腸癌を含む重複癌の報告は散見されるが, 大腸多発癌を合併した報告例はなく, われわれの症例はきわめて稀なものと思われた.
  • 白井 聡, 秋本 伸, 五十嵐 達紀, 北畠 滋郎, 渡辺 和義, 河野 史尊, 太田 代安律, 山田 明義, 羽生 富士夫
    1990 年 43 巻 4 号 p. 645-650
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    症例は64歳男性で1年前からの左側腹部痛を主訴に来院.注腸X線検査にて下行結腸癌の診断で入院となった。US, CT検査にて肝S3区域に直径3cmの腫瘤を認め, 肝転移の診断で開腹した.術中, 新たに肝S2区域辺縁に直径7mmの小腫瘤を認め, 肝左葉外側区域切除+左半結腸切除+胆嚢摘出術を施行した.病理組織所見では, S3の3cm大の腫瘤は肝細胞癌であり, S2の7mm大の腫瘤は粘液癌で下行結腸癌の肝転移であった.大腸・肝重複癌は剖検例では比較的多いが, 手術例は少なく, 両者とも同時切除した報告は極めて少ない.さらに肝転移巣と肝細胞癌を同時に認め切除した報告は今までみられていないのでここに報告した.
  • 廣本 雅之, 安井 昭, 西田 佳昭, 熊谷 一秀, 真田 裕, 吉利 彰洋, 増尾 光樹, 清水 喜徳, 田崎 博之, 小林 建一
    1990 年 43 巻 4 号 p. 651-655
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    今回, 癌多発家系の1例を経験したので報告する.発端者は, 同時性胃多発癌と上行結腸癌の同時性重複癌にて, 胃全摘術, 脾摘, 右半結腸切除術を施行後, 異時性の直腸癌, 右腎癌を認めた.夫は胆道癌, 肝転移にて死亡.長男はS状結腸癌にて部分切除後, 上行結腸肝彎曲部に3個の同時性結腸多発癌を認め, 右半結腸切除術を施行した.次男は直腸癌にて手術後, 異時性の肝癌にて死亡した.五男は若年時よりの定期健診で, 脾彎曲部の早期大腸癌を指摘, 結腸部分切除を行った.長女は子宮癌にて広範子宮全摘術を施行後, 胃癌を指摘されている.本邦におけるcancer family syndromeの報告は, 未だ十数家系に留まり, 決して多くはない.しかし, 本症のような癌多発家系においては, 自覚を促したうえで, 経時的なスクリーニングを施行し早期発見, 早期治療に役立てる必要があると考える.
  • 1990 年 43 巻 4 号 p. 656-690
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
  • 1990 年 43 巻 4 号 p. 691-766
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
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