日本大腸肛門病学会雑誌
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44 巻, 6 号
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  • 安田 慎治, 藤井 久男, 中野 博重
    1991 年 44 巻 6 号 p. 867-875
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    S状結腸人工肛門患者の洗腸療法を大腸シンチグラム検査を用いて検討した.対象は直腸癌12例,S状結腸癌1例であった.方法は注腸X線検査により残存大腸容量測定を行い,その容量の微温湯に99mTc-DTPA74MBqを注入した溶液を用いて注入開始からdynamic scanをsampling time3秒で30分間行った.結果は(1)残存大腸容量の平均は650mlであった.(2)大腸シンチグラム検査により,1回の洗腸療法施行中に大蠕動が平均4,3回起こっていた.(3)大腸排泄曲線から,排便時間,および指数関数で近似した半減期を求めた.半減期は平均9分30秒,排便時間は平均11分56秒であった.(4)洗腸期間2年未満と2年以上の症例に分けて検討すると,洗腸期間2年以上の症例は有意に排便時間が長かった,(5)回腸へ洗腸液が逆流している症例は半減期,大蠕動の回数が有意に多く,回腸に逆流した洗腸液は大腸内容排泄終了まで貯留しており,洗腸終了後に排便を引き起こすと考えられた.
  • 勝又 健次
    1991 年 44 巻 6 号 p. 876-887
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸癌に対して行われた自律神経温存術後の排尿機能を温存形式別に臨床症状および尿流動体検査を用いて経時的に比較検討した.臨床的には尿意および自尿に関して自律神経完全温存例ではそれぞれ7.7±2.3日,8.5±2.2日,骨盤神経片側S〓温存例で25.4±3.8日,25.4±4.7日であったが,拡大郭清術を行った症例は術後3ヵ月で11例(84.6%)に自己導尿を必要とした.尿流動態検査は自律神経,骨盤神経完全温存例では術後3週間では一過性に最大尿意時膀胱内圧の上昇と膀胱コンプライアンスの低下を認めるが,術後3ヵ月には改善していた。骨盤神経選択的部分温存例では初発尿意遅延,初発尿意時,最大尿意時膀胱内圧の上昇,膀胱コンプライアンスの低下,平均尿流量率,最大尿流量率の低下を認めたが,骨盤神経選択的部分温存例でも尿意,自尿などの排尿機能が充分保たれていた.肛門括約筋温存術と直腸切断術では尿意,自尿出現に後者に多少の遅延を認めたが,尿流動体検査では差を認めなかった.
  • 森 正樹
    1991 年 44 巻 6 号 p. 888-897
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌患者の所属リンパ節の免疫能を調べる目的で,OK-432を術前経内視鏡的に腫瘍内投与し,所属リンパ節の免疫能および全身的免疫能についてみた.対象は術前OK-432腫瘍内投与した14例と,非投与の11例である.リンパ節リンパ球のK-562細胞に対する細胞障害活性は所属リンパ節で,非投与群1.7±1。3%,投与群4.9±4.2%,Daudi細胞に対しては,それぞれ5.1±3.6%,10.4±8.4%と,投与群で高い傾向がみられた.またリンパ節リンパ球よりrIL-2,0K-432の添加培養で,LAK細胞,OKAK細胞の誘導が可能であった.LAK細胞のDaudi細胞に対する細胞障害活性は所属リンパ節で,非投与群13.4±5.1%,投与群32.2±25.2%と,投与群が高値傾向を示し,OKAK細胞でも同様な傾向がみられた.全身の免疫能に関しても投与群でリンパ球数の増加,PHA幼若化反応の上昇がみられた.以上より,OK-432の術前腫瘍内投与は,術前補助療法として臨床的にも免疫学的にも有用であると思われる.
  • 斎藤 登
    1991 年 44 巻 6 号 p. 898-905
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌症例100例を対象に血清ラミニン測定を,うち57例に組織ラミニン染色を同時に施行し,大腸癌進展・転移の予知について検討した.血清ラミニン陽性率は63%とCEA,CA19-9,CA125より高率で,stageが進むにつれ陽性率も上昇する傾向を認めた.肝転移例においては陽性率84%とさらに高率を示した.組織ラミニン染色では組織固定法として凍結切片のみが安定した染色性を呈し,組織型では高分化な癌ほどラミニン染色陽性率が高かった,肝転移との関係ではラミニン染色陰性例に肝転移例が有意差をもって多かった(p<0.01).血清ラミニンとラミニン染色との相関では血清ラミニン陽性かつラミニン染色陰性例は肝転移のrisk factorとなることがわかった,以上よりラミニンは大腸癌の肝転移に関する有用な予知因子であると考えられた.
  • 山口 茂樹
    1991 年 44 巻 6 号 p. 906-916
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸癌における内腸骨血管領域郭清(いわゆる拡大郭清)を行った根治手術の遠隔成績を調べ,それを行わなかった手術(通常郭清)と比較検討した.治癒手術後5年以上経過したもののうち,予後不良なsi・al,n3(+),80歳以上を除外した拡大郭清163例,通常郭清98例について生存率と再発率を比較した.拡大郭清群の5年,10年生存率は66.8%,57.9%で通常郭清群に比べ術後6年から9年で有意に良好であった.しかし,他病死を打切り例として生存率を比較すると両群に有意差はなかった.各因子別生存率の比較ではリンパ節転移陽性例(特に第2群リンパ節陽性例),壁深達度s・a2症例で有意差を認めたが,他のものでは差がなかった.局所再発率ではs・a2症例の場合に差があったが,他の各因子では差がなかった.拡大郭清の効果はかなり限られた症例に認められるものであり,術後の機能障害が高頻度にみられることも考慮した上で適応症例を選択して行うべきと思われた.
  • 岩垣 博巳, 淵本 定儀, 松原 長秀, 赤在 義浩, 須崎 紀一, 渡辺 哲也, 山下 博士, 折田 薫三, 岩井 富美子
    1991 年 44 巻 6 号 p. 917-922
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌患者10名に対し,術前早朝空腹時採血を施行し,必須アミノ酸8種類,非必須アミノ酸12種類,計20種類の血漿遊離アミノ酸をアミノ酸自動分析器(日立835-50)で測定した.コントロール群として健常成人50名に対し,早朝空腹時採血を施行し,同様に20種類のアミノ酸を測定した.その結果,大腸癌患者においては,コントロール群に比し,有意の差をもって,Arg, Thr, Asp, Ser, Pro, Glnが減少し,Orn, Pheが増加していた.大腸癌患者がアミノ酸アンバランスの状態にあることは,制癌アミノ酸輪液製剤の開発に有用な知見であるものと考える.
  • 第1報:自律神経を中心とした直腸癌手術分類の試み
    竹村 克二, 安藤 昌之, 椿 昌祐, 多田 雅典, 山下 博典, 和田 靖, 谷畑 英一, 中島 和美, 遠藤 光夫
    1991 年 44 巻 6 号 p. 923-933
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    上下腹神経叢,骨盤神経叢の処理を主眼とした手術分類を規定し,腫瘍の部位,進行度に応じどの程度の機能が温存できるかを検討した.対象は当科で切除された直腸癌症例100例で,縮小手術;Ia(全神経叢を残す)5例,Ib(骨盤神経叢を残す)26例,機能温存手術;IIa(全神経叢を残す)2例,IIb(骨盤神経叢を残す)51例,拡大手術;IIIa(片側骨盤神経叢は残す)9例,IIIb(全神経叢の切除)7例であった.術後の神経因性膀胱の発現率はIa, Ib, IIa 0%, IIb 65%,IIIa 86%, IIIb 100%で,勃起機能障害はIa, Ibでは0%, IIa,IIb では20%,IIIa+bでは100%の発生率であった。遠隔転移例を除いた全症例の5年率はIa+b64.3%,IIa+b75.6%と良好で,逆にIIIの拡大手術では67.5%と不良であった.再発は16例19%で,その内訳は局所再発3例,吻合部再発2例,鼠径リンパ節再発2例,遠隔転移再発8例,腹膜播種1例であり,IIbで局所再発の占める割合が高かった.
  • 椎木 滋雄, 淵本 定儀, 岩垣 博巳, 赤在 義浩, 松原 長秀, 安井 義政, 浜田 史洋, 折田 薫三
    1991 年 44 巻 6 号 p. 934-940
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/12/03
    ジャーナル フリー
    過去12年間に教室で経験した単発大腸癌切除346例を対象とし,臨床病理学的特徴を検討した.m・sm癌21例,pm癌50例,ss・a1・癌132例,s・a2癌101例,si・ai癌31例とss・a1以上の癌が全体の78.8%を占めた.リンパ節転移は,m・sm癌9.5%,pm癌34.0%,ss・a1癌50,0%,s・a2癌66.3%,si・ai癌74.2%にみられ,壁深達度が進むにつれて,リンパ節転移は多くなった.累積5年生存率はm・sm癌93.1%,pm癌80.2%,ss・a1癌59.4%,s・a2癌38.6%,si・ai癌37.7%で,s・a2以上の癌では不良であった.しかし,治癒切除例での5年生存率はs・a2癌58.3%,si・ai癌54.8%と比較的良好となった.また相対非治癒切除例は絶対非治癒切除例と比較し,有意に予後良好であり,予後の改善には進行した癌での治癒切除および可及的に非治癒因子を切除することが重要と思われる.
  • リンパ節転移と側方郭清に関して
    上野 雅資, 太田 博俊, 関 誠, 塩田 吉宣, 飴山 晶, 豊田 悟, 西 満正, 梶谷 鐶, 加藤 洋, 柳沢 昭夫
    1991 年 44 巻 6 号 p. 941-944
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸pm癌の側方リンパ節転移について検討した.当科にて手術した単発直腸癌1,466例のうち,深達度pmの症例は195例(13%)で,このうち治癒切除例はH1およびN4の各1例を除く193例であった.治癒切除例でリンパ節転移陽性は53例(27%)で,n1は29例(15%),n2,3は24例(12%)に認めた.側方リンパ節転移は12例(全体の6%,側方郭清例の13%)で,いずれも腫瘍下縁が歯状線上6cm以下(Rb,P)の症例であり,このうち2例に腫瘍の壁在と反対側の側方転移を認めた.12例中11例(92%)は術中に凍結標本などで側方転移を確認し得た.直腸pm癌全体の5年生存率は89%と良好であったが,腫瘍下縁が肛門管に及ぶ症例では,側方郭清例の91%に対して,非郭清例では69%と不良であり,郭清の効果が示唆された,以上より,Rb以下の下部直腸pm癌では,側方転移の頻度も高く,郭清効果も認めることより,仮に神経、温存手術を行うとしても,両側の側方郭清を行い,側方転移を確認することが望ましいと考えられた.
  • 大内 明夫, 椎葉 健一, 蝦名 宣男, 斉藤 善広, 石井 誠一, 松野 正紀
    1991 年 44 巻 6 号 p. 945-951
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    目的:早期直腸癌症例の治療方針について,臨床病理学的解析より検討を行った.方法:過去28年間に経験した大腸癌1,117例のうちの早期直腸癌40症例を検索対象とした.結果:(1)リンパ節転移はm癌では認められず,sm癌では13.6%に認められた.脈管侵襲はm癌にはなく,sm癌では,v(+)が7.7%に,ly(+)が23.1%に認められた.(2)遠隔成績は,Rb領域m癌の非治癒切除の1例で局所再発死亡を認めた他には,ポリペクトミーや腸切除例のいずれにも再発死亡例は認められなかった.結論:早期直腸癌の治療方針として,m癌では,内視鏡的や経肛門的ポリペクトミーにて治療は完了したものとし,sm層へのmassiveな癌浸潤や低分化腺癌のsm癌では,第2群リンパ節郭清を伴った腸切除が行われるべきである.しかし,高分化腺癌で脈管侵襲がなくsm層への浸潤もごくわずかである際には,症例を選んで内視鏡的ポリペクトミーや局所切除にて経過観察としても良いものと考えられた.
  • 大原 昇, 長廻 紘, 馬場 理加, 田中 良基, 佐藤 秀一, 屋代 庫人, 飯塚 文瑛, 鈴木 茂, 小幡 裕, Y. Murata
    1991 年 44 巻 6 号 p. 952-956
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸sm癌の予後と臨床病理学的特徴よリポリペクトミー後の追加腸切除の必要性について検討した.過去18年間に当センターで経験した大腸sm癌のうち126症例127病変(手術例71症例)を対象とした.(1)有茎性sm癌は手術症例でリンパ節転移を認めず,ポリペクトミー後手術例でも癌遺残はなく,ポリペクトミー単独の症例でも再発は認められなかった.(2)無茎性(広基性,表面型)sm癌はsm 2以上でリンパ節転移を認めた.従って粘膜下層にわずかに浸潤しているものsm 1(約300μ)以外はリンパ節転移の可能性があるため追加切除が必要である.
  • 辻 順行, 藤好 建史, 高木 幸一, 藤吉 学, 河野 通孝, 橋本 正也, 濱田 映, 藤本 直幸, 佐々木 俊治, 高野 正博
    1991 年 44 巻 6 号 p. 957-963
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    筆者らは超音波検査により骨盤直腸窩病変10例を分析し,骨盤直腸窩病変の発生様式に関する検討を行い,以下の結果を得た.(1)超音波検査により恥骨直腸筋,恥骨尾骨筋,腸骨尾骨筋がそれぞれ描出された.(2)肛門挙筋は一枚の皿状の筋ではなく,腸骨尾骨筋が坐骨直腸窩側で恥骨直腸筋や恥骨尾骨筋に乗るような形で存在し,その間に段差が存在した.(3)坐骨直腸窩病変がその段差の部分,つまり恥骨直腸筋,恥骨尾骨筋の2つの筋と腸骨尾骨筋の問を通り骨盤直腸窩へ上行し,骨盤直腸窩病変が発生していた.(4)肛門挙筋の穿孔部分は肛門の5時と7時の方向で,6時の方向からは左右にずれて存在していた.
  • 板野 聡, 寺田 紀彦, 橋本 修, 矢田 和彦, 石川 隆, 淵本 定儀, 折田 薫三
    1991 年 44 巻 6 号 p. 964-968
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は,64歳の男性.主訴は,便秘と下血.大腸内視鏡検査にて,S状結腸に直径約1cmのIIc+IIa型の病変が発見され,陥凹型大腸早期癌と診断された.生検標本で高分化腺癌と診断され,S状結腸部分切除術(R2)を施行した.肉眼診断では,13mm×10mmのIIc+IIa,深達度SM,S0,N0,H0,P0でstage Iと診断された.組織学的検討では,高分化腺癌,ly0,v0,n1,中心の陥凹部で深達度smのIIa+IIc型大腸早期癌と診断され,腺腫成分は認められず, de novo癌と考えられた.術後経過は良好で,現在外来にて経過観察中である.近年,本症例のような陥凹型もしくは扁平隆起型の大腸早期癌が発見されるようになってきている.これらの症例の集積によって大腸早期癌の病理学的背景や大腸癌の組織発生そのものの解明に役立つものと期待される.
  • 金子 隆志, 松橋 信行, 菅野 健太郎, 高久 史麿, 小西 文雄
    1991 年 44 巻 6 号 p. 969-974
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は49歳男性.転移による鼠径リンパ節腫脹で発症し,肛門管の粘膜下の硬結と肛門周囲皮膚の軽度発赤隆起した湿潤な局面があり,生検によりリンパ節転移を伴う肛門癌(腺癌)及びその肛門周囲皮膚へのPaget様進展と診断された.粘膜下に主病巣があり,肛門腺由来の癌と考えられた.原発巣,Paget様進展部とも癌細胞はCEA染色陽性であり,両者の起源が同一であることを支持した.肛門腺由来の肛門癌に合併したPaget様皮膚病変は本邦での報告としては6例目に当り,稀な症例であると考えられた.
  • 藤林 里佳子, 岩越 一彦, 霜野 良一, 築山 順一, 常岡 武史, 前田 達生, 種本 基一郎, 植松 清, 川口 勝徳, 裏川 公章, ...
    1991 年 44 巻 6 号 p. 974-978
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は40歳の男性.運動時呼吸困難および右下腹部痛を主訴に入院した.心エコー検査,心臓カテーテル検査よりEbstein奇形と診断し三尖弁切開術を施行した,術後経過は良好で心不全症状は改善し右下腹部痛も軽快した.入院後施行した小腸造影にて,回盲部に母指頭大の不整形のニッシェを認め潰瘍周辺は幅広い周堤を形成していた.Behcet病の症状がないことから単純性潰瘍と診断した.三尖弁切開術後1カ月して回盲部切除術を行った.自験例はEbstein奇形に単純性潰瘍を伴った1例であり両者の因果関係について若干の文献的考察を加えた.
  • 岩本 末治, 山本 康久, 木元 正利, 清水 裕英, 牟礼 勉, 延藤 浩, 忠岡 好之, 小牧 隆夫, 吉田 和弘, 藤森 恭孝, 佐野 ...
    1991 年 44 巻 6 号 p. 979-982
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    S状結腸癌に併存した閉塞性大腸炎の3例を報告した.いずれも腸管の狭窄を伴う癌腫で,その原因としては,狭窄による口側腸管の内圧亢進を主因とした腸管壁の虚血性変化,糞便の停滞,細菌の増殖,蠕動運動の変化が考えられた.病理組織学的には虚血性大腸炎と同様の所見を示し,粘膜の出血,浮腫,出血性びらんや縦走潰瘍がみられた.しかし明らかな血栓や動脈閉塞はなかった.本症は左半結腸に好発し,とくにS状結腸癌に合併することが多い.切除吻合に際しては口側腸管の色調の変化,吻合時における粘膜面の観察が重要と思われた.
  • 久保 章, 高橋 利通, 伊東 重義, 竹内 信道, 山内 毅, 福島 恒男
    1991 年 44 巻 6 号 p. 983-986
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,男性.主訴は血便.入院後,注腸,大腸内視鏡検査で横行結腸癌と診断した.54歳時に白内障の手術を受けており,前頭部の脱毛,両眼瞼の下垂,顔筋,前頸筋の筋力低下,grip myotonia, percussion myotonia,遠位筋を主とする筋萎縮,筋硬直など筋緊張性ジストロフィーに特徴的な所見を呈していた.手術は,無挿管の硬膜外麻酔で筋弛緩剤は使用せずに施行したがとくに問題はなかった.術後も呼吸抑制,肺合併症もなく経過し第60病日に退院した.本症患者の手術では,術前の心筋障害,呼吸機能の評価麻酔法の選択,そして術後の厳重な呼吸管理が必要であると考えられた.
  • 品川 博樹, 坂田 優, 棟方 昭博, 吉田 豊
    1991 年 44 巻 6 号 p. 987-991
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎発症15年後に,悪性リンパ腫を合併した症例を報告した.患者は70歳,女性.昭和49年潰瘍性大腸炎にて保存的治療を受け,昭和57年再燃後,緩解中であった.平成元年5月,頸部リンパ節の腫大に気づき,生検でnon-Hodgkin's lymphoma(follicular, medium-sized cell type)の診断を得た.肝脾腫はなかったが,胸部X線写真とCTで,縦隔リンパ節,右肺門部リンパ節の腫大がみられた.また67Gaシンチグラムで,腹部中央にも集積像がみられた.骨髄浸潤はなかった.stage III A としてmodified CHOP療法を行い,著明なリンパ節の縮小をみた.治療中,潰瘍性大腸炎の再燃はみられなかった.潰瘍性大腸炎の悪性リンパ腫合併例の報告は少ないが,最近大腸癌以外の合併の報告が散見されつつあり,われわれの経験した症例も有意義であると考え,報告した.
  • 高橋 利通, 久保 章, 竹内 信道
    1991 年 44 巻 6 号 p. 992-995
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    腹膜原発の中皮腫はまれな疾患であり,その成績も不良といわれている.当科においてS状結腸間膜原発の限局性悪性腹膜中皮腫の1切除例を経験したので報告する.症例は71歳,女性.左下腹部痛を主訴に1990年7月,当院産婦人科に入院となった.腹部超音波,CTを施行し,腹水なく,左卵巣腫瘍と診断され,7月25日開腹術を行った.腫瘍はS状結腸間膜から発生し,cysticで直径8cm球状で,S状結腸,回腸の腸間膜をまきこんでいた.S状結腸切除術,回腸部分切除術を行った.病理組織所見では紡錘型の核を有する腫瘍細胞が束状に増殖し,hyaluronidaseに消化される間質が認められた.また上皮性部分はkeratin染色が陽性で中皮腫と確診された.術後経過は良好で化学療法を行い,術後1カ月で退院となった.術後8カ月の現在外来通院中で再発は認めていない.
  • 太田 正孝, 寺田 近義, 竹井 信夫, 青山 修, 上中 博之
    1991 年 44 巻 6 号 p. 996-999
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は36歳男性.腹部膨満,嘔吐,腹痛を主訴とし来院し,腸閉塞の疑いで入院した,大腸内視鏡検査にて肛門縁から15cmの部位に全周性の直腸癌を,また直腸膨大部には大小無数のポリープを認めた.大腸腺腫症の癌化と診断し,入院後13日目に大腸全摘術を施行した.術後,患者家族に対して注腸X線検査,眼底検査,染色体検査等を施行したが家族性は証明されず,本症例は非家族性大腸腺腫症と考えられた.
  • 1991 年 44 巻 6 号 p. 1000-1004
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸絨毛腫腫7例の臨床的および病理学的特徴について検討した.平均年齢は55.0歳で男女比は5:2であった,主訴は下血が4例(57.1%)と高率で,発生部位は直腸5例,S状結腸1例,上行結腸1例で,このうち直腸に発生した1例に腺腫内癌(m癌)を認めた.肉眼形態の特徴として最大腫瘍径4cm以上が3例,広基性が3例,表面絨毛状6例(85,7%)であった。腫瘍構成細胞としては杯細胞を全例に,paneth細胞を1例に,銀還元性細胞を2例に認め,また柳澤らの明調細胞型腺腫が6例(85.7%)を占めていた.CEA染色陽性は2例(28.6%)で,腺腫内癌を併発していた1例は明調細胞型で,CEA陰性であった.粘液染色ではS状結腸以下に発生していた6例中4例(66.7%)においてはスルフォムチンよりもシアロムチン優位であった.
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