日本大腸肛門病学会雑誌
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45 巻, 4 号
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  • とくに神経周囲浸潤について
    河原 秀次郎
    1992 年 45 巻 4 号 p. 377-383
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    1980年~1990年に当教室で施行された下部直腸癌の治癒切除39例を再発のみられた9例,5年以上再発のみられていない13例,再発はないが術後5年を経過していない17例に分け,術後再発と腫瘍の臨床病理学的因子の関連について検討した.粘膜下層のリンパ管侵襲・静脈侵襲と再発は相関を認めず,漿膜下層のリンパ管侵襲・静脈侵襲(下部直腸は漿膜を有さないが,以下便宜的に使用する),リンパ節転移,神経周囲浸潤と再発に相関が認められた.神経周囲浸潤は壁深達度と関連するが,リンパ管侵襲,静脈侵襲には従属しない独立した予後危険因子と考えられた.すなわち下部直腸癌では固有筋層を越えて浸潤したものに神経周囲浸潤,リンパ節転移が有意に多くみられ再発も多い.これを直腸の解剖学的特徴と考え合わせると,厚い固有筋層は固有筋層を越えての浸潤に防御的に働く一方,漿膜を欠くことは神経周囲浸潤の機会を多くするものと考えられ,当施設で施行してきた手術法からretrospectiveに考えて,深達度がa2と考えられる症例に関しては,放射線照射などの補助療法が必要であると考えられた.
  • 須藤 一郎, 小林 智子, 五頭 三秀, 木幡 義彰, 中島 昌人, 清水 直樹, 渡辺 浩一, 井川 守仁, 片山 麻子, 佐々木 敬典, ...
    1992 年 45 巻 4 号 p. 384-390
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎(以下UC)患者を内視鏡所見および生検組織所見の程度に従い分類し,糞便中のヘモグロビン(以下F-Hb),アルブミン(以下F-Alb)濃度およびその陽性率を比較した.内視鏡所見はMattsの分類に従い,組織所見は炎症性細胞浸潤による組織活動度分類に従い緩解期,活動期(軽度,中等度,高度)に分けた.F-Hb,F-Albは湿糞便1g当り20μg以上を陽性とした.またMattsのgrade3,4群,および組織活動期群の症例において,F-Hb,F-Alb陽性率と白血球増多,血沈亢進,CRP陽性などの炎症所見の陽性率と比較した.さらに低アルブミン血症の有無によるF-Albの濃度と陽性率の比較を行った.F-Hb,F-Alb濃度とその陽性率は,ともにMattsのgrade1,2群に比較しgrade3,4群で有意に高率で,組織分類でも活動度が高くなるに従い高くなった.Mattsのgrade3,4群,組織活動期群におけるF-Hb,F-Albの陽性率は,ともに白血球および血沈の陽性率に比較し有意に高率で,とくに直腸炎型ではどの炎症所見の陽性率より有意に高率であった.低アルブミン血症群のF-Alb陽性率は,低アルブミン血症のない群に比較し高かった.
  • とくにCD 45 RO, CD 45 RA陽性細胞とIgGサブクラスについて
    堀内 洋, 森瀬 公友, 木村 昌之
    1992 年 45 巻 4 号 p. 391-399
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎(UC)32例を対象として大腸粘膜におけるIgGサブクラスおよびCD45(白血球共通抗原)のisoformであるCD45RO,RA陽性細胞の分布と局在について免疫組織化学的検討を行った.UC粘膜では,Matts分類のgradeが進むにつれリンパ小節が増加し,その周囲にはIgG1を主体としたIgG陽性細胞の増加が見られた.CD45RO,RA陽性細胞はMatts分類grade4,5群では粘膜固有層において対照に比し有意に増加していた.二重染色による検討では増加したCD45RA陽性細胞はリンパ小節内ではCD3-CD20+でありリンパ小節周囲ではCD3-CD20-であった.また粘膜固有層における・Tリンパ球のほとんどがCD45RO陽性のメモリー細胞と考えられた.UCの慢性化の機序の一つとして,Bリンパ球,19G陽性細胞の増加に関与するリンパ小節の増加とともにCD45ROおよびRA陽性細胞の免疫応答が重要な役割を果たしていることが示唆された.
  • 予後との関連性について
    下山 孝俊, 石川 啓, 清水 輝久, 草野 裕幸, 中越 享, 中崎 隆行, 安武 亨, 吉田 彰, 吉田 一也, 小川 敏幸, 西田 卓 ...
    1992 年 45 巻 4 号 p. 400-407
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    腫瘍を構成する血管系は腫瘍の発育,進展にともなって改築され,その浸潤様式を反映する.大腸癌患者の手術摘出標本にmicroangiographyを行い,腫瘍を形態的に類型化するとともに,腫瘍の核DNA量を測定して対比し,予後との関連性を検討した.腫瘍の形態は腫瘤型,腫瘤破壊型,水平方向進展型,垂直方向進展型,水平垂直方向進展型の5型に分類された..DNA量の測定では,垂直方向または水平垂直方向進展型にaneuploidyが優位で,とくに水平垂直方向進展型は他の型との間に有意差を認めた(p<0.01).腫瘍内血管の性状では糸玉状血管を有するもの,漿膜血管の改築例にanueplddyが多くみられた.累積5年生存率では腫瘤型83.3%,腫瘤破壊型74%,水平方向進展型84.4%に対し,垂直方向進展型56。9%,水平垂直方向進展型35.4%と有意に不良であった(P<0.01).大腸癌の血管構築像は腫瘍の生物学的特性と関連して大腸癌患者の予後に大きく関与するものと推察された.
  • とくに側方リンパ節について
    白井 芳則, 新井 竜夫, 谷山 新次, 山崎 武, 更科 広実, 斉藤 典男, 布村 正夫, 井上 育夫
    1992 年 45 巻 4 号 p. 408-414
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    術前照射療法(42.6Gy)を併用した直腸癌症例のリンパ節転移について非照射症例と対比検討した.対象は非照射群28例,照射群31例である.非照射群のリンパ節転移率は46.4%(13/28),転移度5.?%(78/1,376個),平均転移個数は6.0個,照射群では転移率29.0%(9/31),転移度1.0%(18/1,812個),平均転移個数2.0個であった.転移方向別では非照射群で,上方転移がなく側方転移のみ認めた症例が3例(10.7%)あったのに対し,照射群では1例もみられなかった,壁深達度別では照射群のpm,ss(ai)症例に側方転移を認めなかった。側方リンパ節転移率は照射群の#262で減少しており,転移度は照射群の#262,#282で有意な減少を認めた.以上の結果,術前照射療法は転移リンパ節個数を有意に減少させ,とくに側方リンパ節転移に対し効果が認められ,骨盤内自律神経温存術式の適応拡大に有用であることが示唆された.
  • 臨床病理学的および微粒子活性炭によるリンパ流路の検討
    三枝 奈芳紀, 更科 広実, 斉藤 典男, 布村 正夫, 中山 肇, 大森 敏生, 中島 伸之, 樋口 道雄, 古山 信明
    1992 年 45 巻 4 号 p. 415-420
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    右側結腸癌のリンパ節転移の特徴およびリンパ流路の解明を目的として,右側結腸癌76例の臨床病理学的諸因子とリンパ節転移との関係を検討し,またこのうち22例において微粒子活性炭を術中腫瘍近傍に注入し,リンパ節の黒染度を比較した.76例中30例にリンパ節転移を認め,検索リンパ節総数は2,686個であり,転移陽性リンパ節は79個(2.9%)であった.環周度亜全周以上,中・低分化腺癌,壁深達度s以上,ly2以上の症例にリンパ節転移が有意に多く認められた(P<0.01).また,n2以上の転移は肉眼型の3型に有意に多く認められた(P<0.05).リンパ節転移は腸管軸方向よりも中枢方向への転移が主流であったが,微粒子活性炭によるリンパ流路の検討では他領域リンパ節の黒染も認められ,複雑な経路が示唆された.再発症例はすべて血行性あるいは播種性転移によるものであり,リンパ節郭清からみると現在行われているR2以上の結腸右半切除術が妥当であると考えられた.
  • 肛門側切離線決定のための病理組織学的検討
    須田 武保, 畠山 勝義, 岡本 春彦, 斉藤 英俊, 千田 匡, 遠藤 和彦, 下田 聡, 武藤 輝一, 渡辺 英伸
    1992 年 45 巻 4 号 p. 421-426
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸癌の肛門括約筋温存手術の際,肛門側切離線(AW)決定の一助とするために,壁深達度sm以上の直腸癌171例を対象として臨床病理学的に癌の壁内進展について検討した,壁内進展は癌の口側と肛門側,性,手術時の年齢,占居部位で差を認めなかった.0型,1型,2型で98,1%,高分化,中分化の分化型癌で98.7%,深達度pm以内で100%が10mm以内に限局し,大多数腫瘍からの直接浸潤によるものであったが,3型,4型癌,低分化型癌および深達度a2・s以上の癌では10mm以上の壁内進展高度例が多く,腫瘍からの直接浸潤よりもリンパ管侵襲による進展を示していた.壁内進展に影響を及ぼす因子として重要なものは組織型,壁深達度およびリンパ管侵襲であった.以上よりAWは,0型癌と1型,2型でpm以内の分化型癌では10mm,aLssでしかもリンパ管侵襲のない分化型癌では20mmで十分であるが,3型,4型癌や低分化型癌,a2.s以上の癌では最低40mm以上必要であると考えられた.
  • 富田 凉一, 宗像 敬明, 森田 建
    1992 年 45 巻 4 号 p. 427-436
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    Hirschsprung病(aganglionosis)とその類似疾患〔neuronal intestinal dysplasia(NID),hypoganglionosis〕におけるpeptidergic nerveの臨床的意義を明らかにするため研究を行った.当科にて結腸切除で切除した正常結腸16例を対照として,NID5例,hypoganglionosis6例,aganglionosis10例の病変部結腸について,in vitroでmechanogramを用いて電気刺激反応(electrical field stimulation),各種自律神経遮断剤,消化管ホレモン(VIP,substance-P,neurotensin)について検討し以下の結果を得た.
    (1)ヒト正常結腸にはnon-adrenergic inhibitory nerveの調節が存在し,NIDとhypoganglionosisでは有意に減少し,aganglionosisでは消失していた.
    (2)ヒト正常結腸にはpeptidergic nerve(VIP,substance-p,neurotensin)の調節が存在し,NIDとHypogangIionosisでは減少し,aganglionosisではほぼ消失していた.
    (3)VIPは神経を介して作用し,substance-Pとneurotensinは神経を介しての作用と筋直接作用が存在していた.
  • とくに50歳代大腸癌との比較
    増田 英樹, 林 成興, 中村 陽一, 堀内 寛人, 渡辺 賢治, 林 一郎, 岩井 重富, 加藤 克彦, 田中 隆
    1992 年 45 巻 4 号 p. 437-443
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    1982年1月から1991年12月までの10年間で教室で手術施行された大腸癌は896例であり,そのうち80歳以上の症例(高齢者群)は44例であった.今回の研究では,高齢者群の臨床病理学的事項,術前合併症,術後合併症,予後について,50歳代症例(234例)と比較検討した.臨床病理学的には高齢者大腸癌は50歳代に比べて組織学的リンパ節転移率が低く(P<0.05),他臓器重複癌の頻度が高く(P<0.01),stage II症例の割合が高かった(P<0.01).また,術前合併症が多く(P<0.01),切除率が低率であった(P<0.01).しかし,術後合併症や生存率に関しては高齢者群と50歳代との間に有意差は認められなかった.また,高齢者群にはR1までのリンパ節郭清例が82.4%を占めた.以上より,高齢者群に術前合併症が多くリンパ節転移が少ないことを考慮すれば,R1を中心にしたリンパ節郭清で50歳代とほぼ同等の治療成績,予後が得られるものと考えられた.
  • 小金沢 滋
    1992 年 45 巻 4 号 p. 444-455
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    痔核の新らしい外来治療法としての赤外線凝固を評価するため,内痔核1711例を対象に,4週~7.5年間追跡調査が行われた.結果:(1)本法による効果は,軽症の痔核ほど重症度順に有意にすぐれ(p<0.01),かつ1度痔核はもつとも症状消失の期間が長い傾向をもっている.(2)III度痔核でも症状消失率が9%えられた.(3)症状別効果:出血,掻痒感,肛門痛,湿潤,下着汚染の順に高い症状消失率(84~70%)がえられ,それらの再発率は脱肛(78%)を除き,72~62%であった.(4)注射硬化療法に比べて,本法は脱肛のみにおいて劣っていた(p<0.01).5)副作用:局所疼痛では,一般患者の有痛度は37%で,妊・産・褥婦の59%に比べて,有意に低かった(p<0.01).
  • 多羅尾 信, 後藤 明彦, 市橋 正嘉, 船戸 崇史
    1992 年 45 巻 4 号 p. 456-459
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は35歳男性.腹痛・下血を訴え,画像診断で右側大腸癌による腸閉塞と診断し緊急手術を施行.膿性腹水,盲腸・上行結腸の腫大と壊死状の変化を認め,結腸右半切除術を施行.切除標本は,盲腸より上行結腸まで壁は肥厚し,粘膜面に膿性白苔を認める.術後第3病日より下血・腹痛・発熱を生じ,第6病日に再手術を行った。S状結腸より直腸にかけ腫大し,S状結腸の一部に炎症性壊死状の部分があり,穿孔防止のためS状結腸脂肪垂でこの部を覆うように漿膜に縫い寄せて,さらに回腸末端を一時的入工肛門とした・この時点で赤痢アメーバを疑い,メトラニダゾールを投与したところ,徐々に改善・治癒した.初回手術の13日後に組織学的に赤痢アメーバが確認された.
  • 山出 尚久, 青木 洋三, 岡 統三, 中村 昌文, 中塚 裕久, 谷村 宏, 石本 喜和男, 内山 和久, 落合 実, 大西 博信
    1992 年 45 巻 4 号 p. 460-465
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    患者は46歳の男性.1990年10月,下血に気づき当院を受診した.肛門指診,肛門鏡にて肛門より約7cmに,径約8cm大の石様球形物質を認め,経肛門的に鉗子にて破砕・摘出した.結石は軟線X線,CT,走査電顕にて層状構造を示し,内部には糸が含まれていた.結石の赤外吸収スペクトル法ではリン酸カルシウム,炭酸カルシウム,脂肪酸カルシウムに一致するピークを認め,X線微量分析でも,カルシウム,リンが主成分であった.結石を内層,外層に分け,その胆汁酸分画を高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した.内.外層とも遊離型のリトコール酸とデキオキシコール酸が大部分を占め,そのパターンは糞便中の胆汁酸とほぼ同じであった.以上よりわれわれはこれを異物を核にし,糞便中の胆汁酸,カルシウム塩が沈着し発生した仮性腸石と考えた.
  • 青沼 宏, 岡村 慎也, 大久保 剛, 長浜 徴, 榊原 宣, 岡村 広志
    1992 年 45 巻 4 号 p. 466-470
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    高度の便秘で発症した成人の先天性直腸膜様狭窄と思われる1例を経験した.症例は36歳,男性.主訴は便秘,排便痛.視診上肛門,会陰部には異常を認めず.直腸指診で肛門縁より約4cm口側に表面平滑な全周性の狭窄を認めた.血液生化学的検査では明らかな異常を認めず.注腸検査では直腸に膜様部と思われる隔壁像とその中央には狭窄部と思われる小孔が認められた.大腸内視鏡検査では肛門縁より約4cm口側の部位に直径6mm大の小孔を伴い表面には光沢のある全周性の膜様狭窄を認めた.以上より先天性直腸膜様狭窄と診断し手術を施行した.手術は経仙骨的に直腸後壁を開放し,小孔部から膜様部を前壁および後壁方向にわたり切開を加えた(cut back手術).狭窄部は充分に開大し術後も排便障害なく退院.術後6ヵ月目の現在も排便障害なく順調に経過している.
  • 島田 悦司, 裏川 公章, 中江 史朗, 川口 勝徳, 上田 隆, 西川 淳介, 西尾 幸男, 植松 清, 岩越 一彦
    1992 年 45 巻 4 号 p. 471-474
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    皮膚筋炎に合併する悪性腫瘍として比較的稀な直腸癌の2症例を経験した.症例1は52歳,女性,眼瞼周囲を中心とする浮腫整紅斑を主訴とし,皮膚筋炎と診断された、悪性腫瘍の検索が行われ直腸癌が発見されたため,低位前方切除術を行った.術後皮膚筋炎の症状は改善し,ステロイド投与は不要であった.症例2は47歳,男性,顔面紅斑,上肢脱力感を主訴とし皮膚筋炎と診断された.悪性腫瘍の検索が行われ直腸癌が発見されたため,経仙骨式直腸切断術が行われた.皮膚筋炎に対しては,プレドニン投与が現在も必要である.皮膚筋炎合併悪性腫瘍としては胃癌が多いが,直腸癌も念頭におき皮膚筋炎発症時に十分な検索を行うことが必要である.
  • 田中 実, 中野 昌志, 奥 雅志, 白松 幸爾, 佐々木 一晃, 筒井 完, 平田 公一
    1992 年 45 巻 4 号 p. 475-479
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,閉経女性.1988年6月直腸癌(Ra)に対し低位前方切除術(R3)を施行された.病理組織学的所見は中分化型腺癌で絶対治癒切除であった.1989年4月より腹痛,腹満感等の自覚症状を生じ,諸検査で両側卵巣腫瘍と診断.同年5月,両側卵巣摘出術施行.病理組織学的所見では直腸癌の転移性卵巣腫瘍であった.大腸癌卵巣転移の本邦報告集計によれば,その頻度は約3%で,閉経前の50歳前後に多い.この多くは同時性卵巣転移症例であり,報告された原発巣治癒切除後の卵巣転移は自験例を含めて12例にすぎない.転移性卵巣腫瘍として再発した場合,その予後は非常に不良である.そのため原発巣切除時に予防的な卵巣摘出の是非が問題となるが,今後の検討が心要である.
  • 若杉 純一, 金 正文, 簾田 康一郎, 杉山 貢
    1992 年 45 巻 4 号 p. 480-484
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は53歳の男性で,陰嚢の発赤腫張を主訴に来院した.腹部単純X線検査で陰嚢および骨盤内に散在する小ガス像を,CT検査で陰嚢から仙骨前面,膵後面まで広がる異常ガス像を認めた.直腸診で肛門管後壁に痔瘻の1次口を認め,注腸造影検査で1次口から仙骨前面に造影剤が逸脱し,痔瘻より発生した壊疽性筋膜炎と診断,ドレナージ術および人工肛門造設術を施行した.細菌培養検査の結果,好気性菌のE. coli,pseudomonas aeruginosaと嫌気性菌のbacteroides fragilisによる混合感染であった.肛門疾患から発生したガス壊疽の本邦報告例は自験例も含め29例で,糖尿病を合併しているものが多かった.抗生物質の発達した近年,壊疽性筋膜炎は比較的まれ疾な患であるが,痔瘻や肛門周囲膿瘍などの肛門疾患で,糖尿病などの基礎疾患がある場合は,広範な壊疽性筋膜炎に進展することもあるので,十分な経過観察が必要であると考えられた.
  • 今村 幹雄, 山内 英生, 國井 康男
    1992 年 45 巻 4 号 p. 485-490
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    壊死型虚血性大腸炎の4例を報告した.いずれも73歳以上の高齢者で,基礎疾患として高血圧症が3例,心筋梗塞,脳梗塞が各1例でみられた.主訴では腹痛が全例にあり,ほかに下血,嘔気,嘔吐,腹部膨満などがみられた.血液検査では低蛋白血症,肝・腎機能障害,電解質異常,凝固機能障害などが認められ,腹部単純X線写真では3例で多量の腸管内ガスが,1例で大腰筋の旁に異常ガスがみられ,また全例で腸雑音は聴取せず,3例では腸閉塞,1例では穿孔性腹膜炎と診断され,緊急手術を施行した.切除標本の肉眼的および組織学的所見,ならびに類似疾患の除外診断よりいずれも壊死型の虚血性大腸炎(1例では小腸病変も合併)と診断された.術後は全例,多臓器障害(MOF)をおこし死亡した.予後がきわめて不良の本症では発症後の速やかな外科治療とMOFに対する早期からの強力な薬物療法が救命率向上につながると考えられた.
  • 1992 年 45 巻 4 号 p. 491-502
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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