日本大腸肛門病学会雑誌
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47 巻, 1 号
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  • 臨床病理学的所見および予後との関連について
    柴野 成幸
    1994 年 47 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌におけるp53異常発現(124例)とDNA ploidy pattern(97例)について,それぞれ免疫組織学的検索と,DAPI染色による落射型顕微蛍光測光法を用いて検索し,臨床病理学的所見と予後およびPCNA陽性率との関連を検討した.p53異常発現は41.9%(52/124)に認められたが,v因子に差が認めれた以外には病理学的所見,予後およびPCNA陽性率については関連がみられなかった.再発形式においてはp53陽性例は血行性再発が多かった.DNA ploidy patternについては,aneuploidを呈する症例により進行したものが多く,とくに肝転移およびly,n因子の陽性例に有意に多く認められたが,PCNA陽性率とは関連がみられなかった.予後に関してはaneuploid例はdiploid例に比べ,有意た不良であった(p<0.05),しかし治癒切除例のみに限定した場合その差は消失した.再発形式ではaneu-ploid tumorは血行性転移を,またdiploid tumorは腹膜播種をきたしやすく予後を推測するには有用と思われた.
  • とくに神経周囲侵襲との関連性
    笹富 輝男
    1994 年 47 巻 1 号 p. 12-22
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸癌における神経接着分子(NCAM)の臨床的,病理学的意義を明らかにするために,直腸癌277例について免疫組織学的検討を行い,種々の臨床病理学的因子との関連性を検討した.(1)NCAM陽性例は43例,15.5%の頻度であった.(2)病理学的予後規定因子のなかでNCAMと統計学的に関連が認められたのは神経周囲侵襲,静脈侵襲,リンパ管侵襲,肝転移,深達度,組織型,リンパ節転移,炎症細胞浸潤で,多変量解析の結果,神経周囲侵襲が最も関連性が深かった.(3)治癒切除例の再発や生存率は,Dukes C症例では,神経接着分子陽性例の局所再発率が高い傾向が認められ,また,10年生存率は陰性例に比べて有意に低かった.以上のことより神経接着分子は予後因子として重要であるばかりでなく,神経周囲侵襲の腫瘍マーカーとなる可能性が示唆された.
  • 菊池 隆一, 高野 正博, 藤好 建史, 高木 幸一, 藤本 直幸, 江藤 公則, 中山 慶明, 野崎 良一, 紀伊 文隆, 大湾 朝尚, ...
    1994 年 47 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    当院で経験した虚血性大腸炎49例について臨床的検討を行い,治療方針,とくに手術適応および時機について考察を加えた.年齢は35歳から87歳におよび平均60,8歳であり,約2:3で若干女性に多かった,主訴は下血腹痛をほぼ全例に認めた.心血管系疾患の既往症例は28.6%と少なく,発症前に便秘を訴えた症例が46.9%と高頻度であったこと,および2例の再発例がいずれも長期の便秘症であったことから,虚血性大腸炎の成因として,血管側因子とともに腸管側因子の重要性が示唆された.手術を4例に施行したがその要因は腸管壊死1例,限局性腹膜炎2例,長期間の慢性炎症による栄養状態の悪化1例であった.虚血性大腸炎に対する手術適応は,発症初期には壊死穿孔,大量出血,腹膜炎等であり,晩期には炎症の遷延,狭窄等が考えられ,その時機としては発症5週目を1つの目安とするのが適当と思われた.
  • 山崎 震一, 山崎 健二, 宮崎 高明, 松岡 健司, 丸山 寅巳, 八木 禧徳, 高桜 芳郎, 伴野 昌厚
    1994 年 47 巻 1 号 p. 31-39
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    注腸二重造影像に示された腸管に紙紐を使って盲腸,結腸の各部分,直腸の長さと内径を測定し,性,年齢,身長,体重,肥満度,横行結腸下垂,S状結腸挙上,症状に対する統計学的分析を試みた.検査対象は男性120例,女性112例,平均年齢56.6歳であった.結果は大腸の長さは性と年齢に対して有意に関与するが,身長,体重,肥満度に対しては積極的関与はなかった.内径に対しては横行,S状結腸とも身長,体重に正の相関,年齢に負の相関があり,性差ではS状結腸の内径は女性の方が小であった.つぎに横行結腸下垂は性,年齢,身長,体重,肥満度,横行結腸大腸の長さに,S状結腸挙上は年齢,S状結腸,大腸の長さに,便秘は性,年齢身長,体重,横行結腸S状結腸大腸の長さに,便通異常は横行結腸大腸の長さに,出血は性に相関があり,腹痛はすべてに有為差を認めなかった.
  • 山田 靖哉, 鄭 容錫, 小野田 尚佳, 有本 裕一, 澤田 鉄二, 久保 俊彰, 奥野 匡宥, 曽和 融生
    1994 年 47 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌の肝転移機構の解明を目的として,大腸癌肝転移巣より組織を採取し大腸癌細胞株(OCUC-LM 1)を樹立し,その性状を検討するとともに,ヌードマウスおよびSCIDマウスを用いた肝転移モデルの作製を行った,OCUC-LM 1細胞は,単層で敷石状配列を示し,倍加時間は29.4時間であった.染色体分析では染色体数70本をモードとした異常核型が認められ,核DNA量分析ではaneuploidy patternを示した.OCUC-LM 1はさまざまな腫瘍関連抗原(CEA,CA19-9,SLX,SPan-1)を発現しており,ヌードマウス可移植性であった.OCUC-LM 1の脾注による肝転移形成の検討では,ヌードマウスでは50%のマウスに,SCIDマウスでは100%のマウスに肝転移を認めた.OCUC-LM 1はさまざまな糖鎖抗原を発現しており,今回作製した肝転移モデルは癌細胞表面の糖鎖抗原の発現と転移の関係を調べる上で有用なモデルであるといえる.
  • 田中 昌彦, 白石 敦, 渋谷 哲男, 浅野 伍朗
    1994 年 47 巻 1 号 p. 48-58
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌の基底膜や細胞外基質成分であるラミニン(LN),IV型コラーゲン(C-IV),フィブロネクチン(FN),III型コラーゲン(C-III)とその受容体,そしてマトリックスメタロプロテァーゼ(MMP)の局在と癌細胞の脈管侵襲や壁深達度との関連性について免疫組織化学法とRT-PCR法,in situ hybridization(ISH)法にて検討した.基底膜成分のC-IV,LN,C-IIIの局在が癌の進行とともに減少し,C-IV,LNでは癌がpmに浸潤すると,その局在は有意に減少し受容体に変化をみた.リンパ節転移を認める症例でLNのみが有意に減少していた(p<0.01).間質ではpm以上に浸潤した症例でFN,C-II,LNの増加と,リンパ節転移を有する症例でC-Nの有意な増加を認めた(P<0.05).RT-PCR法とISH法では,癌巣周囲の正常腺管と癌組織内の間質細胞にMMP-2とそのm-RNAの発現を認めた.以上の細胞生物学的知見は,癌細胞と基底膜,間質の相互作用の重要性を示唆していると思われた.
  • 鈴木 啓子
    1994 年 47 巻 1 号 p. 59-70
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸癌において脈管系のほかに,神経系を介する進展形式が存在すると考えられているが,直腸癌118例を対象に神経浸潤に関する病理組織学的な検討を行った.神経浸潤は27.1%に認められ,神経線維東内浸潤と神経周囲間隙浸潤が認められた.神経浸潤と他因子との関係を偏相関分析で検討したところ,肉眼所見では肉眼分類が強い相関関係をもっていた.病理組織学的所見ではリンパ管侵襲およびリンパ節転移が強い相関関係をもち,神経浸潤とリンパ流との関係が示唆された.局所再発は神経浸潤陰性例の14.0%に対し神経浸潤陽性例では37.5%と有意に高頻度で認あられ(p<0.01),特に神経周囲間隙浸潤陽性例ではその頻度が高かった.生存率においても,神経浸潤陽性例では有意に低く(p<0.001),リンパ節転移を認あない場合においても神経浸潤陽性例では生存率が低く,神経浸潤は予後規定因子のひとつであると考えられた.
  • 能見 伸八郎, 藤原 斉, 岡 克彦, 濱頭 憲一郎, 中路 啓介
    1994 年 47 巻 1 号 p. 71-74
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌が原因となった肝膿瘍の報告はほとんどみられない.著者らは,原因不明の肝膿瘍症例において進行直腸癌がみられ,他に原因がなくこの癌が膿瘍の原因と考えられた1例を経験した,患者は75歳,女性。肝胆膵に異常を認めない単発性の肝膿瘍加療中に進行直腸癌が発見された.PTADにより膿瘍は加療され,起炎菌としてKlebsiellaが検出された,手術は低位前方切除ならびに肝外側区域切除を施行したが肝臓への癌の転移は組織学的に認められなかった.原因不明の肝膿瘍では,膿瘍が治癒し退院後にはじめて大腸癌が診断された症例報告もあり,消化管の精査は必要欠くべらかずものと考えられる.また転移合併の有無についても診断上問題が残るところである.
  • 久保 章, 瀧本 篤, 亀田 久仁郎
    1994 年 47 巻 1 号 p. 75-79
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌と他臓器重複癌の報告は近年増加しているが,胆嚢癌との重複は報告例が少ない.今回,比較的稀な胆嚢腺扁平上皮癌と盲腸癌の同時性重複例を経験した.症例は78歳の男性.下腹部痛を主訴に来院.注腸,大腸内視鏡検査で盲腸癌と診断した.腹部超音波検査で胆嚢癌を発見した,手術は一期的にR2リンパ節郭清を伴なう右半結腸切除術と,肝床切除兼R2リンパ節郭清を伴う胆嚢切除術を施行し両癌ともに治癒切除と考えられた.病理組織学的検査で胆嚢癌は腺扁平上皮癌と診断された.しかし,本症例は術後8ヵ月目に胆嚢癌の肝転移再発のため死亡した,
  • 前田 壽哉, 木下 欣也
    1994 年 47 巻 1 号 p. 80-85
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸脂肪腫は比較的稀な疾患である.今回大腸内視鏡検査により見つかった横行結腸脂肪腫の2例を経験したので報告する.症例1は47歳,女性.便潜血検査陽性により大腸内視鏡検査を施行.横行結腸に5cm大の広基性の粘膜下腫瘍を認める.内視鏡所見およびCT撮影により脂肪腫と診断,結腸部分切除を施行する.症例2は56歳,男性.内痔核治療中,大腸内視鏡検査を施行.横行結腸に直径2cm大の有茎性の隆起病変を認める.内視鏡所見および注腸所見により脂肪腫と診断,内視鏡的ポリペクトミーを施行する.組織学的診断は,両者,粘膜下に発生した良性の脂肪腫であった,大腸脂肪腫は良性非上皮性腫瘍であり,最小限の侵襲による治療が望ましい.今回,ともに術前に脂肪腫と診断できたことから,適切な治療を行うことができた.
  • 小高 明雄, 藤岡 正志, 小林 正幸, 金丸 洋
    1994 年 47 巻 1 号 p. 86-91
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    成人前仙骨部腫瘤を2例経験した,症例1は41歳の女性で,産婦人科にて偶然,前仙骨部腫瘤を指摘された.症例2は64歳の女性で,肛門出血を主訴に外来受診し,直腸指診によって前仙骨部腫瘤を発見された.いずれも経直腸的超音波検査と骨盤部CT検査によって,前仙骨部嚢胞性腫瘤と術前診断し,経仙骨的腫瘤摘出術を施行した.病理組織学的にはdermoid cyst(症例1)とepidermoid cyst(症例2)であった、成人前仙骨部腫瘤はまれな疾患である.なかでも,epidermoid cystは本邦ではきわめてまれであり,われわれが調べえた範囲では,症例2は本邦で8例目の報告である.
  • 鈴木 恵史, 新井 一成, 新井 浩士, 上地 一平, 横川 京児, 久代 裕史, 福島 元彦, 村上 雅彦, 石井 博, 河村 正敏
    1994 年 47 巻 1 号 p. 92-99
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    教室における過去5年間に経験した切除不能大腸癌肝転移症例中,集学的治療を施行した38例を対象とし,その予後について検討した.動注薬剤は症例により5 FU, ADM, CDDP, Epirubicin, MMCを投与した.温熱動注併用群では,温熱療法装置は周波数13,56 MHzのRF波誘電加温装置を使用した,温熱動注併用群(n=10)ではPR2例,奏効率20%,1年生存率70.0%,2年生存率40.0%,50%生存期間19.5か月であった.動注群(n=10)ではCR 1例,PR 1例,奏効率20%,1年生存率60.0%,2年生存率12.5%,50%生存期間14.4か月であった.全身化療群(n=18)は1年生存率27.8%,2年生存率11.1%,50%生存期間7.6か月であった.温熱動注併用群は動注群と比較し,生存率はやや良好であったが有意差は認めず,全身化療群と比較し背景因子に差はあるが生存率曲線に有意差を認めた.温熱動注併用群,動注群ともに,同時性,異時性による生存率に有意差は認めなかった.
  • 亀岡 信悟, 板橋 道朗, 桐田 孝史, 鈴木 啓子, 大石 英人, 河 一京, 四条 隆幸, 朝比奈 完, 浜野 恭一
    1994 年 47 巻 1 号 p. 100-105
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    MRSA感染症は重要な術後感染症の一つであるが,下部消化管手術症例についての報告は散見するにすぎない.下部消化管手術症例381例についてMRSAの検出,腸炎発症の現状と誘因について検討した.MRSAの検出率は11.3%,腸炎発症率は4.5%であった.侵襲の大きな術式で検出率,発症率ともに高率であった,検出部位は,会陰創の検出頻度が30.2%と高率であった.H2プロッカー投与例は,非投与群に比べて検出率,発症率共に高率であった(P<0.01).糖尿病合併例では,非合併例に比べて発症率が高率であった(P<0.01).下部消化管手術のMRSA感染症の高危険群は,侵襲の大きな手術,H2プロッカー投与例,糖尿病合併例などである.また,会陰創はMRSA検出頻度が高く,感染予防上重要と思われた.高危険群を考慮したMRSA腸炎の早期発見,早期治療が望まれる.
  • 本田 勇二, 三木 修, 関川 敬義, 松本 由朗, 江口 英雄
    1994 年 47 巻 1 号 p. 106-113
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    1989年より1991年までに経験した直腸カルチノイド8症例9病変について臨床病理学的に検討し,術前診断と治療方針について考察した.腫瘍径は2.0cmの1例以外すべて1cm以下であった.6例に術前超音波内視鏡(EUS)を施行し固有筋層(PM)上層浸潤疑いの1例と,ヘモクリップで深逹度診断が不可能であった1例以外,粘膜下層(SM)と診断した.リンパ節転移例は認めず,SMで腫瘍径2.0cmの症例に多発性肝転移を認めた.治療はEUS未施行例と深逹度不明例とPM上層浸潤疑い例に経仙骨式直腸局所切除術(局所切除)を施行し,肝転移例には局所切除と肝動脈cannulationを施行し,他のSM例には内視鏡的polypectomyを施行した.組織学的診断はpm上層浸潤例以外すべてsmであり,リンパ節転移はなく,EUS診断と全例一致し,EUSは術前の深逹度診断,壁在リンパ節転移診断に有用であると思われた.この結果EUSを始め術前診断を総合的に判断すれば,治療方針の決定が可能であると判断した.
  • 荒木 靖三, 緒方 裕, 諸富 立寿, 白水 和雄, 磯本 浩晴, 掛川 暉夫
    1994 年 47 巻 1 号 p. 114-119
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/12/03
    ジャーナル フリー
    Buessらが考案したtransanal endoscopic microsurgeryの手技を応用して,直腸鏡的に直腸腫瘍を局所切除したので当教室におけるその術式と手術成績を報告する.1993年1月から6月までに直腸鏡的に切除した直腸腫瘍性病変を12症例経験した.切除標本の最大径は60mm,肛門縁より病変までの最大距離は15cm,平均手術時間は94分,平均術中出血は88meであった.術後合併症を認めなかった.本法は経肛門的に直腸の腫瘍を切除,縫合でき,入院期間も平均8日間と短期間で,手術手技を習得すれば本邦でも普及すべき低侵襲手術であると考えられた.
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