日本大腸肛門病学会雑誌
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47 巻, 5 号
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  • 朝比奈 完
    1994 年 47 巻 5 号 p. 381-392
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸肛門の形態異常が排便障害に及ぼす影響を明らかにするため,videodefecographyを用いて排便障害における直腸肛門の形態分類を行った。対象は器質的疾患のない排便障害100例,controlは排便障害の無いもの20例である,方法は造影剤200mBを浣腸し,排泄時の側面透視像をビデオテープに録画し観察,動的な形態変化を分類した.スポットフィルムより直腸肛門角,会陰下降度を測定した。対象では89%に形態異常が見られたが,controlでは3例にrectoceleを認めたのみであった.形態異常は直腸襞の異常,骨盤底筋群の異常および両者の合併の3群に分類され,これらはさらにrectocele 60, wide rectum 8,重積43,spastic pelvic floor syndrome 5,恥骨直腸筋奇異収縮7,恥骨直腸筋弛緩不全5,失禁4,ente-rocele 3,直腸脱6,所見のないもの11例に分類された(所見の重複あり).直腸肛門角や会陰下降度の計測は値のばらつきが大きく,排便障害の診断に当たっては形態的評価の方がより有用と思われた.
  • 大矢 正俊, 石川 宏, 河野 信博, 澤田 俊夫, 武藤 徹一郎
    1994 年 47 巻 5 号 p. 393-400
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    X線写真上識別可能な3種類のX線不透過マーカーをおのおの5日前,3日前,1日前に経口投与して腹部単純撮影を1回行う方法で,消化管に器質的な異常のない慢性機能性便秘症例19例の大腸通過時間を検査した.19例中12例は大腸通過時間に異常な延長のないnormal transit,残る7例は通過時間の延長のあるslow transitと判定された.slow transitの7例については,3日間経過したマーカーの分布の重心位置が脾彎曲部より遠位にある3例をrectosigmoid delay,これが脾彎曲より近位にある4例をwhole colo ndelayとした.re-ctosigmoiddelayは直腸肛門部での便排泄障害によると考えられ,whole colon delayは大腸運動機能の低下によると考えられる.3種類のマーカーを用いる大腸通過時間検査は,少ないX線被曝と短い拘束時間で,慢性便秘症例の病態の鑑別とそれに基づいた治療法の選択を可能にする有用な検査法である.
  • 三富 弘之, 中 英男, 上杉 秀永, 西山 保比古, 五十嵐 正広, 勝又 伴栄, 西元寺 克禮, 大谷 剛正
    1994 年 47 巻 5 号 p. 401-412
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    10mm以下の大腸表面型腺管腺腫37病変〔平坦・陥凹型(D型)5,扁平隆起型(F型)32〕,隆起型腺管腺腫(P型)38病変の病理学的特徴を比較した.結果(1)実体顕微鏡下の腫瘍表面構造の観察ではD型は小型類円形ピット構造が80%に対し,F型の69%,P型の76%は大型管状ピットで,D型とFおよびP型で差がある(p<0.05).(2)組織所見ではD型の60%,F型の50%が粘膜固有層表層,P型の66%は粘膜固有層全層に腫瘍があり,D型とP型で差がある(p<0.01),腫瘍細胞が陰窩細胞とほぼ同大のものはD型全例,F型59%に対し,P型の61%は陰窩細胞より大型の腫瘍細胞より成り,D型とP型で差がある(p<0.01).(3)杯細胞が腺腫全体の2/3より多いものはD型0%,F型22%,P型50%で,D型とF型,F型とP型で差がある(p<0.01).(4)腫瘍腺管長径・短径はD<F<P型であった.(5)PCNA染色陽性率は各型で差はない.結論:D型腺腫はF型と類似性があるが,P型とは相違点がある.
  • 大腸癌症例20年の変遷
    長山 正義, 奥野 匡宥, 池原 照幸, 西口 幸雄, 西森 武雄, 東郷 杏一, 川口 貢, 鎗山 秀人, 曽和 融生
    1994 年 47 巻 5 号 p. 413-419
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    1972年~1991年に当科で手術を行った大腸癌1089例を対象として,4期に分類して,大腸癌症例の20年間における年齢構成,手術術式,切除率,予後などの変遷を検討した.20年間に大腸癌症例は漸増し,性別では男性の増加が多く,年齢別では若年者が漸減し,高齢者が増加傾向を示した.占居部位では直腸が減少し,S状結腸の増加傾向がみられた.大腸多発癌の発生率は有意に増加し,多発癌のうち同時多発症例が60%以上を占め,大腸重複癌は症例数では約5倍に増加した.手術術式は,直腸癌ではMiles手術の減少と肛門温存術式の増加がみられ,結腸癌ではS状結腸切除,結腸部分切除の増加傾向がみられた.大腸単発癌治癒切除例の累積5年生存率は少数術式を除き平均70%前後であったが,前方切除例のIV期では91.7%と良好な生存率であった.以上より,最近の大腸癌症例の増加は著しく,年齢や症例などによってはQOLを考慮した術式を積極的に行うことが必要であると思われた.
  • 新井 英樹, 田沢 賢次, 坂本 隆, 藤巻 雅夫
    1994 年 47 巻 5 号 p. 420-429
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    continent stomaをめざし,腸管平滑筋を移植した人工肛門造設術を実験的に作製し,内圧検査・血流測定・筋電図・組織学的検索から臨床応用可能な方法であることを確認した.遊離移植30例,有茎移植16例の計46例に臨床応用したが,本法を適用した症例に重篤な合併症は認められなかった,内圧検査・注腸・組織学的検索・臨床経過などの結果からみて,一部には洗腸療法をくわえているものの,ほぼ満足すべき臨床成績をおさめることができた,その目的とするcontinent stomaを目ざす試みとしては有茎移植の方が遊離移植に較べてより有効であると考えられるが,有茎移植の場合「いかにdenervationを完全に行うか」が重要である.現在までのところ,本法はcontinent stomaとして有用と思われるが,さらに移植された平滑筋が今後どのような経過を辿るのか長期の観察が必要である.
  • 原発巣からの距離(zone)別検討
    上野 秀樹, 望月 英隆, 長谷 和生, 横山 幸生, 吉村 一克, 山本 哲久, 玉熊 正悦
    1994 年 47 巻 5 号 p. 430-441
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    腫瘍に対するリンパ系組織の免疫学的反応の場を腫瘍からの距離により4つのzone(zone1:腫瘍先進部,zone2:先進部よりやや離れた近傍領域,zone3:転移陰性1群所属リンパ節,zone4:転移陰性所属2,3群リンパ節)に分類した.zone1,zone2では各々リンパ球浸潤,リンパ濾胞(LF)が高度な群の生存率曲線が良好であった.zone3,4ではpara-cortical hyperplasia(PH),germinal center hyperplasia(GH)の高度群はそれぞれ良好な生存率曲線を示した.各症例が有する高度反応因子〔PH2,3,GH2,3,SH(sinus histiocytosis)2,3〕の数により,0,1因子〔NA(-)〕群と2,3因子〔NA(+)〕群に分けると,NA(+)群の生存率曲線は極めて良好であった.Coxの比例ハザードモデルを用いた多変量解析によるとNA,LFはリンパ節転移,深達度とともに予後への寄与度が高度であった.直腸癌症例のリンパ系組織に認める宿主側反応は,術後予後を予測する上で重要な意義を有することが示唆された.
  • 平 昇
    1994 年 47 巻 5 号 p. 442-447
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    腸間膜脂肪織炎は腸間膜に発生する稀な非特異性炎症で,本邦では文献上本例を含め50例が報告されているに過ぎない。われわれは卵巣嚢腫摘出後に発生し,右水腎症を伴ったS状結腸~直月腸間膜脂肪織炎の1例を経験したので報告する,症例は54歳女性で昭和63年10月に右卵巣嚢腫(2,680g)の摘出手術を受けており組織学的に悪性像は認あられていない.平成2年3月より腹部膨満感出現し,近医にて注腸造影検査にてS状結腸から直腸上部の狭窄を指摘されたものである.入院後保存的治療に反応せず,右水腎症を認めたため,平成2年4月9日に低位前方切除および右尿管遊離を行った.病理組織所見では悪性像を認めず,脂肪織の変性と線維化を主体とする非特異性炎の像を呈しており,脂肪織炎と診断した.術後経過は良好で第35病日に退院し,現在まで3年間健在で,後腹膜および腸間膜に再燃を認めていない.
  • 大湾 朝尚, 高野 正博, 高木 幸一, 藤好 建史, 藤本 直幸, 野崎 良一, 江藤 公則, 菊池 隆一, 紀伊 文隆, 田中 聡也, ...
    1994 年 47 巻 5 号 p. 448-454
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    クローン病発症後約10年でアミロイドーシスを併発した兄弟発生クローン病の1例を経験したので報告する.患者は26歳,男性.兄がクローン病で死亡.1980年,下痢,腹痛で発症し,近医にてクローン病と診断され治療を受けていたが,1983年より放置.
    1990年4月,再発のたあ当院に入院した.保存療法無効のたあ同年7月,上行結腸および回腸部分切除術,低位前方切除術,回腸瘻造設術,尿管端側吻合術を施行した.その後,経過は良好だったが,1993年1,月,腹痛,食欲不振,全身倦怠感を訴え当院に再入院となった.急激な腎機能の悪化のため近医へ転院となり,血液透析により腎機能の改善がみられ,以後経過観察中である.アミロイドーシスの合併を疑い検索したところ,腎生検およびretrospectiveにみた胃・十二指腸生検,回腸・結腸切除標本にアミロイド沈着を認あた.アミロイド蛋白分析ではAA蛋白で,続発性アミロイドーシスと考えられた.
  • 柿坂 明俊, 河野 透, 伊籐 久美子, 紀野 修一, 蘆田 知史, 綾部 時芳, 並木 正義
    1994 年 47 巻 5 号 p. 455-460
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    Crohn病の多彩な症状を内科的治療よってコントロールしたあとの小腸狭窄病変に対して,外科的狭窄拡張術であるstrictureplasty(SP)を施行し,その手術成績について検討した,症例は2症例7病変に対して施行.病型は小腸型と小腸大腸型で,1例は小腸切除術も施行している.狭窄病変は,いずれも短く4cm以下であったため,Heineke-Mikulicz型SPを行った.術後に合併症は認めず,IOIBD scoreは,術前と比較して低値を示した。術後は成分栄養療法(elemental diet:ED)により順調に回復し,現在のところ良好に経過している.狭窄部位が多数存在する場合にも,SPにより腸管を温存し効果的にかつ安全に狭窄を解除することが可能である.以上より,SPは小腸の線維性狭窄病変を有するCrohn病に対して,有効な手術術式であることが示唆された.
  • F. Ishida, K. Omura, E. Kanehira, T. Hashimoto, T. Watanabe, K. Hirano ...
    1994 年 47 巻 5 号 p. 461-465
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    切除不能大腸癌肝転移11例に対し,5-FU+CDDP療法を行った.うち7例はCDDP50mg/body/dayの持続静脈内投与2日間に5-FU375mg/m2/dayを6日間併用し,以後3週間,UFT 400mg/dayを経口的に投与して,4週間を1クールとした.4例は5-FU500mg/body/dayの持続静脈内投与か,またはUFTE 600mg/dayの連日経口投与にCDDP10mg/dayを5投2休で静脈内点滴投与して,4週間を1クールとした.なお肝動脈内投与あるいは門脈内投与には全身投与の1/2量を用いた.結果は,PRが3例,NCが3例,PDが5例であり,奏効率は27%であった.1年生存率は72%,50%生存期間は14ヵ月であった.5-FU+CDDP療法を行った群の生存率が,本療法以外の化学療法が施行されたH2,H3症例,15例に比べ統計学的に有意に良好な結果(p<0.05)が得られた.本療法は大腸癌肝転移に対して有効な化学療法と思われた.
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