症例は57歳の男性,1981年10月,上行結腸癌で右側結腸切除術を施行した.病理組織学的には高分化型腺癌で,大腸癌取扱い規約に従うと,占拠部位はAでs,n(―),P
0,H
0,M(―), stage II,絶対的治癒切除であった.以後外来でfollow upしていたが,1984年6月頃より血清carcinoembryonic antigen(CEA)値の上昇を認めた。腹部CTで右副腎にlow density massを認め副腎転移と診断した.他に転移巣を認めず,1985年1月21日,腫瘤を摘出した,摘出標本は6×4×3cmで重量66g,割面は黄白色分葉状で一部に正常の副腎組織が残存していた.病理組織学的には高分化乳頭状管状腺癌で上行結腸癌からの転移と考えられた.その後,血清CEA値は正常化し,副腎摘出より9年経た現在,画像的に再発の所見なく,血清CEA値の上昇も認めず,患者は健在で社会復帰している.大腸癌の孤立性副腎転移巣の切除例はきわめてまれであり,本例のごとき長期生存例は文献上みあたらない.
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