日本大腸肛門病学会雑誌
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48 巻, 5 号
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  • 斎藤 典男, 更科 広実, 布村 正夫, 幸田 圭史, 滝口 伸浩, 佐野 隆久, 竹中 修, 早田 浩明, 寺戸 孝之, 尾崎 和義, 近 ...
    1995 年 48 巻 5 号 p. 381-388
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    初発および再発直腸癌に対する骨盤内臓器全摘術(TPE)の適応と予後について検討した.対象は最近の13年間に施工した初発TPE22例と局所再発TPE14例の計36例である,36例中15例(初発6,再発9)に術前照射(30~40Gy)を行った.再発TPEでは初発例に比べ手術侵襲(手術時間,出血量)が大きく術後合併症の頻度も高く,術前照射群で同様の傾向を示した.5年生存率は初発TPE例で55.2%を示し,n0~n1群は良好であった.再発TPEの5年生存率は48.6%であるが,無再発5年生存率は31.1%と低値を示した.再発TPEでの長期生存例は,術前照射群に認められた.再発および再々発型式は,血行性転移が主であった.初発例のTPEは安全であり,遠隔転移の有無に関係なく局所制御の意味で従来の適応を拡大してよいと考えられた.再発例に対するTPEでは,厳重な症例選択により,生命予後の延長と良好なQOLの得られる症例も認められた.
  • 山田 靖哉, 鄭 容錫, 前田 清, 澤田 鉄二, 池原 照幸, 西原 裕二, 曽和 融生, 奥野 匡宥
    1995 年 48 巻 5 号 p. 389-395
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌肝転移症例24例を対象として原発巣および肝転移巣でのSPan-1抗原およびCEAの発現を検討した.原発巣におけるSPan-1抗原,CEAの陽性率は,それぞれ87.5%,91.0%と高率であった.次に,原発巣および肝転移巣の組織発現の程度を比較検討したところ,SPan-1抗原は原発巣陽性例21例中10例の47.6%に肝転移巣における発現の増加を認め,総計学的に有意な差を認めた(p<0.02).一方,CEAについてみると,原発巣陽性例23例中,肝転移巣での発現増加が認められたのは21.7%(5/23例)であり,Sean-1.抗原の検討で認あられたような,肝転移巣における発現の増加は認めず,74,0%の症例は,原発巣と同程度の発現を示した.以上のことから,大腸癌においてSPan-1抗原の発現が癌転移に関与している可能性が示唆され,SPan-1抗原は大腸癌の肝転移因子として重要であると推測された.
  • 清水 秀之
    1995 年 48 巻 5 号 p. 396-406
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌組織37例と病理組織学的に転移を認めたリンパ節28個および合併切除された大腸腺腫5例を対象として,EGFRおよびp53の発現について免疫組織化学的に検討した.進行癌におけるEGFRの陽性率は早期癌に比し有意に高値を示した:.一方,p53ではリンパ節転移を伴なわない進行癌での陽性率は低く,また腺腫例はすべて陰性であったが,早期癌およびリンパ節転移を有する進行癌で有意に高値を示した.これらの結果より,EGFRの発現は早期癌から進行癌への移行を,p53は癌の発生段階およびリンパ節転移を反映しているものと考えられ,術前の病期診断の指標として,臨床応用され得る可能性が示唆された.
  • 岡村 慎也, 長濱 徴, 勝浦 康光, 冨木 裕一, 原口 美明, 榊原 宣
    1995 年 48 巻 5 号 p. 407-411
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸に原発した腺扁平上皮癌の2例を経験した.症例1は82歳,女性で便秘,下腹部痛を主訴に来院した.上行結腸に2'型の腫瘍を認め,組織生検で低分化型腺癌を認めた.結腸右半切除術を施行したところ,病理組織検査で扁平上皮癌と中分化型腺癌との混在を認め,腺扁平上皮癌と診断した,症例2は73歳,女性で下腹部痛,下血を主訴に来院した.直腸Rsに腫瘍を認め,組織生検で中分化型腺癌を認めたため手術を施行した.腫瘍は回腸に癒着,直接浸潤していたため低位前方切除術および小腸合併切除術を施行した.病理組織検査で扁平上皮癌が主体であるが中~低分化型腺癌との混在も認めたため,腺扁平上皮癌と診断した.大腸原発の腺扁平上皮癌は非常にまれであり,その組織発生機転もさまざまな説があるが,腺癌細胞の扁平上皮化説が有力であると考えられた.
  • 井上 雄志, 松山 秀樹, 増田 浩, 手塚 秀夫, 杉山 勇治, 平松 京一
    1995 年 48 巻 5 号 p. 412-415
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は84歳,女性で,下血を主訴に来院した.大腸内視鏡を施行し大腸からの出血と思われたが出血源は不明であった.大腸angiodysplasiaを疑い,前処置を施行後再度大腸内視鏡を試みたが,出血源は不明であった.その後も下血が持続したため,血管造影を施行,上腸間膜動脈造影により回結腸動脈末梢に造影剤の血管外漏出を認めた.上行結腸angiodysplasiaの診断で回盲部切除を施行した.標本の回結腸動脈造影で造影剤の血管外流出を認あなかったため上行結腸を検索,angiodysplasiaを確認しこの部を追加切除した.angiodysplasiaはしばしば下血の原因となる。われわれはangiodysplasiaを疑い大腸内視鏡を施行したが診断に至らず血管造影にて診断され,かつ標本の血管造影が部位診断に有用であったangiodys-plasiaの1切除例を経験したので報告する.
  • 宮崎 道彦, 吉川 宣輝, 中山 貴寛, 谷口 一則, 今村 博司, 柳生 俊夫
    1995 年 48 巻 5 号 p. 416-421
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    妊娠中の消化器癌の合併は頻度的には少なく,さらに大腸癌であれば稀である.その診断は難しく,また治療法決定に関してもさまざまな因子がかかわってくるためわれわれ臨床家が頭を悩ますところである.今回われわれの施設で,妊娠中に診断された結腸癌の1切除例の経験をもとに妊娠時の消化器癌(結腸癌)の診断,処置,治療法などについて述べることにする.
  • 木村 聖路, 工藤 育男, 鈴木 秀和, 福士 道夫, 坂田 優, 菅三 知雄, 相沢 中
    1995 年 48 巻 5 号 p. 422-427
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は49歳,男性.平成4年8.月15日,突然の左下腹部痛が出現し,当科入院.諸検査にて腸間膜腫瘍と診断した,血中CEA値が高値を示し,CT像は左側骨盤内に隔壁を有する嚢胞性腫瘍を示した.11月9日に手術を施行.S状結腸間膜に原発腫瘍があり,ダグラス窩から左下横隔膜腔にかけて粟粒大の粘液様分泌物が散在していた.摘出した腫瘍は内腔に粘液を多量に含んだ鶏卵大の嚢胞で,嚢胞壁の組織学的所見は隣接する大腸と同一の粘膜層,粘膜下層,筋層を有しており,重複腸管と診断された.さらに嚢胞内壁に配列する高円柱状細胞が低悪性度の粘液嚢胞腺癌に変化しており,重複腸管の腫瘍化と考えられた.粘液は嚢胞壁を破壊して壁外へ進展しており,腹腔内粘液にも同様の腫瘍細胞を確認した.S状結腸に隣接する重複腸管を原発巣とする腹膜偽粘液腫のきわめて稀な1例と考えられた.
  • 芳川 一郎, 村田 育夫, 田中 由美, 金川 賢二, 田原 章成, 大槻 眞
    1995 年 48 巻 5 号 p. 428-433
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,女性.1994年2月腹痛と人工肛門よりの出血を主訴に入院,1955年子宮筋腫手術および虫垂切除術,1976年直腸癌手術および人工肛門造設術の既往あり.1988年に高血圧,1991年に糖尿病を指摘されている.また1991年には下血で当科入院し,虚血性大腸炎の診断を受けている.入院後,人工肛門より大腸内視鏡を施行したところ,下行結腸に縦走潰瘍とびらんが認められた.経過は良好で腸管の安静のみで軽快した.抗生剤の服用歴もなく,細菌,結核菌培養とも陰性で,一過性の経過をとったことより,虚血性大腸炎の再発と診断した.再発型虚血性大腸炎と初回型虚血性大腸炎の本邦報告例を比較検討したところ,再発型虚血性大腸炎は女性に多く,病型は一過性型で便秘が誘因と考えられる症例が多く,再発因子として血管側因子よりも腸管側因子の関与がより大きいと考えられた.虚血性大腸炎の再発は従来考えられていたほど稀ではなく,むしろ再発しやすい疾患と考えられ,便通を制御することが再発防止に重要であると考えられる.
  • 高橋 通規, 今村 幹雄, 山内 英生
    1995 年 48 巻 5 号 p. 434-437
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    下血により発症し,回盲部結核が疑われた回盲部単純性潰瘍を経験したので報告する.患者は43歳,男性で,大量の下血を主訴に近医を受信し,注腸造影で大腸潰瘍と診断され,当院に紹介された.大腸内視鏡検査にて回盲部に潰瘍を認め,潰瘍底よりの生検材料塗抹標本にてGaffky-2号の抗酸菌を認め,腸結核と診断した.3者併用療法を施行したが著効なく,回盲部切除を施行した.切除標本で,回盲弁上にpunched-out typeの潰瘍を認め,病理組織学所見では肉芽腫や乾酪壊死巣はみられず,抗酸菌染色陰性で,潰瘍底組織の培養でも結核菌は陰性であった.以上より,本症例は非定型抗酸菌陽性を呈した単純性潰瘍と診断され,腸結核の診断に当たっては注意すべき病態と考えられた.
  • 萱場 広之, 阪本 哲也, 児玉 光
    1995 年 48 巻 5 号 p. 438-445
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    脊髄瘤12例,髄膜瘤11例(♂16例,♀7例.新生児13例,乳児7例,幼児1例,学童2例)の計23例を対象に排便状態,肛門管静止圧曲線,肛門管律動波数,直腸肛門反射律動波抑制時間および反応型にっき検討した.肛門管静止圧曲線では9例が正常型,5例が弛緩型と判定され,各々5例が排便障害を有した.律動波数は新生児8例中6例が正常新生児に比し減少していたが乳児期以降は対照群と差はなく,排便障害や神経障害による差も認めなかった.直腸肛門反射では高度排便障害例に律動波抑制時間の長い過大反射型が多かった.反射型は乳児期以降は経時変化がなかったことから,乳児期の反射型による排便機能の予後予測の可能性が示唆された.仙椎(n=6)と腰椎レベル障害例(n=4)比較では後者に高度排便障害例が多かった.高度神経障害例では排便障害の強い傾向があったが,早期訓練で良好な排便習慣を得た例もあり,早期からの排便訓練が重要と思われる.
  • 山本 雅由, 杉田 昭, 山内 毅, 原田 博文, 小金井 一隆, 瀧本 篤, 山崎 安信, 石黒 直樹, 嶋田 紘, 福島 恒男
    1995 年 48 巻 5 号 p. 446-451
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    クローン病の腸管合併症の中で大量下血は比較的稀であるが,早急で適切な治療を行う必要がある.当科で経験した大量下血を伴った4例のクローン病は全例が男性で,初回大量下血時の平均年齢は23歳7カ月で,罹患部位は小腸大腸型2例と大腸型2例であった.大量下血前に経腸栄養療法を施行していたのは4例中2例であった.大量下血後,3例に腸切除を施行し,残り1例にはプレドニンを併用した経腸栄養療法を施行し軽快した.クローン病の大量下血に対する治療として,経腸栄養療法を行っていない症例ではプレドニン投与と経腸栄養療法で軽快することがある.しかし経腸栄養療法施行中に発症した例では動脈塞栓術を含めた保存的治療で軽快することは少なく,手術で病変部の切除が必要である.
  • 板野 聡, 寺田 紀彦, 橋本 修, 松川 啓義, 森多 克行
    1995 年 48 巻 5 号 p. 452-458
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    われわれは,いわゆる"狭義の虚血性大腸炎"の5症例を経験し,虚血性大腸炎の外科的治療の選択要因について検討するため,保存的治療症例と外科的治療症例の症状,検査所見,経過などについて比較検討した.この結果,1)発症時,突発性腹痛と血便に嘔気・嘔吐を伴い,重症感があるもの,2)腹部所見で,広範囲に腹膜刺激症状を呈するもの,3)血液検査で炎症所見が高度かつ長期におよぶもの,4)注腸X-P所見または内視鏡所見が,発症後2週間以後も改善傾向がなく狭窄をきたし症状が続くもの,などが外科的治療を選択すべき要因であると考えられた.とくに1),2),3)は発症時からみられるものであり,治療方針を決定する際に役立つものと考えられた.
  • 1995 年 48 巻 5 号 p. 459-470
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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