1970年から1987年の間に治癒切除され5年以上追跡された大腸癌964例 (結腸594例, 直腸370例) を対象とし, 癌の浸潤増殖様式 (INF) の予後規定因子としての意義について検討した. 「胃癌取扱い規約」に準じてα, β, γの3型に分類するとαは8%, β82%, γ10%, であった. γ症例の頻度をDukes分類別にみると, Dukes'Aで0%, Bで5%, Cで19%と病期の進行とともに高率となった. γ症例はα, β症例に比べ肉眼型3型, 環周度亜全周・全周, 組織型低分化, 壁深達度si (ai), リンパ節転移陽性, 脈管侵襲中等度以上のものが有意に高率であった. INFγ症例の予後は不良で, 結腸癌ではγ症例はα, β症例に比べ再発率 (66% : 25%、P<0.0001), 累積5年生存率 (29% : 67%, P<0.001) がいずれも不良であり, また直腸癌でもγ症例は同様に再発率 (53% : 32%, p<0.02), 累積5年生存率 (41% : 65%, P<0.05) が不良であった. 以上よりINFは癌の悪性度や浸潤に関する旺盛な生物学的態度を表し, 大腸癌の予後規定因子として有用な指標と考えられた.
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