日本大腸肛門病学会雑誌
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50 巻, 1 号
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  • 李 樺
    1997 年 50 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌切除例76例を対象として血清NCC-ST-439の測定,腫瘍組織NCC-ST-439の免疫化学染色を行った.血清NCC-ST-439は76例中17例で陽性であり,血清NCC-ST-439陽性とリンパ節転移(p=0.01),肝転移(p<0.01),臨床病期(p<0.01)との間には有意な相関が見られた.血清NCC-ST-439濃度と血清CEA濃度は有意に相関した.腫瘍組織NCC-ST-439は8例で陰性,7例でapical stainingを示し,61例ではdiffuse stainingを示した.腫瘍組織NCC-ST-439がdiffuse stainingを示した症例ではapical stainingを示した症例あるいは染色陰性例に比して腫瘍の壁深達度の高い例(p<0.05)およびリンパ節転移陽性例(p<0.05)が有意に多く見られた.治癒切除後の再発との関連では,血清NCC-ST-439陽性症例では陰性症例に比して再発が有意に高い頻度で見られ,累積健存率も有意に不良であったのに対して(p<0.01),腫瘍組織NCC-ST-439染色様式と再発の間には相関を認めなかった.再発を従属変数とし,年齢,性別,原発部位,肉眼型,組織型,壁深達度,リンパ節転移,臨床病期,血清NCC-ST-439,腫瘍組織NCC-ST-439染色様式,および血清CEAを独立変数とした多変量解析では,再発に有意に寄与したのは血清NCC-ST-439とリンパ節転移のみであった.
  • 原田 嘉和, 緒方 裕, 赤木 由人, 平城 守, 尾田 仁, 犬塚 清久, 小西 治郎, 山内 健嗣, 原 靖, 白水 和雄
    1997 年 50 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    癌の発育,進展転移において血管新生が重要な役割を担っていると考えられている.血管内皮細胞に選択的に増殖促進作用を有することが報告されているVascular Endothelial Growth Factor (VEGF) の大腸癌組織における発現と局在を免疫組織化学的に検討した.152例の大腸癌組織を用い,anti-human VEGF monoclonal IgG を1次抗体としたavidin biotin peroxidase complex method による免疫染色を施行した.腫瘍細胞におけるVEGFの発現は,腫瘍細胞と問質の単球―マクロファージ系細胞,線維芽細胞および血管内皮細胞に認められた.また癌腫近傍の正常腺管細胞では,腫瘍細胞のVEGF陽性例にのみVEGFの発現を認めた.腫瘍細胞のVEGF陽性例では癌組織におけるVEGFの主要産生細胞は腫瘍細胞と考えられた,以上より大腸癌組織でVEGFによる血管新生作用に,autocrine, para-trine機構の存在が示唆され,腫瘍細胞自身がVEGFを介した血管新生のkey roleを担っていると推測された.
  • 術後の腹部症状や排便機能との関連を中心に
    中村 哲郎, 大矢 正俊, 石川 宏
    1997 年 50 巻 1 号 p. 17-32
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    S状結腸癌・直腸癌に対する前方切除術後6カ月以上経過した33例を対象として,全大腸・大腸各区域通過時問をX線不透過マーカーを用いて測定し,術後の腹部症状や排便機能との関係を検討した,33例中14例では術前にも検査を施行し,健常ボランティア(対照例)・右十三結腸切除後症例についても検討した.X線不透過マーカーを20個ずつ連続3日間経口投与後,4日目に腹部単純X線撮影を行い,大腸各区域のマーカー数を数え,Arhan-Metcalfらの方法を用いて通過時間を算出した.また対象例中の低位前方切除術(LAR)後19例には直腸肛門機能検査を行った.前方切除術後には,全大腸通過時間が術前より延長し,大腸各区域で通過時間が対照例より有意に長く,腹痛・腹部膨満感などの腹部症状を有する例ではこれらを有しない例より全大腸通過時間が長かった.LAR後症例のうち直腸容量が80ml以上の症例に限ると,排便機能不良例で全大腸・左側大腸通過時間が長かった.
  • 服部 隆志, 福地 邦彦, 五味 邦英, 藤田 力也
    1997 年 50 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌スクリーニングとしては現在,免疫学的便潜血検査が主に行われている.今回,われわれは遺伝子スクリーニングの一歩としてmutant-allele-specific amplification (MASA)を用いて,大腸癌46例のK-ras codon12, 13, 61のpoint mutationの有無を癌組織とその糞便中について検索した.大腸癌症例のうち,癌組織にK-ras point mutationが認められたのは18例(39.1%)であり,糞便中では15例(32.6%)であった.糞便中のK-ras point mutationの検出率と腫瘍径,占拠部位,ステージ分類別との間には有意な差は認められず,Dukes Aのような初期の大腸癌や近位側の大腸癌においても高い検出率(100%,85,7%)であった.同症例での免疫学的便潜血反応の検出感度(63%)と比較すると本法の検出感度は低率(32.6%)ではあるが,特異度は100%であり,、しかも,便潜血反応陰性のうち2例でK-rasのpoint mutationが検出された.以上のことから,糞便中のK-rasのpoint muta-tionの検索は,大腸癌の二次的スクリーニングとして有用と考えられた.
  • 福地 稔, 長町 幸雄, 秋山 典夫, 石崎 政利, 加藤 広行, 笹本 肇, 杉山 博之
    1997 年 50 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.大腸がん検診で便潜血反応陽性を指摘され,1995年7月10日当科受診.注腸造影で横行結腸脾曲部寄りに長径5cmで表面平滑な広基性隆起病変を認め,粘膜下腫瘍と診断した.大腸内視鏡検査では同部に半周性の2型腫瘍を認め,生検結果はgroup3であった.1995年9月14日手術の目的で入院し,9月26日横行結腸切除術を施行した.術中,平滑筋肉腫を疑った.病理組織診断は,免疫組織化学染色にてS-100白陽性およびアクチン陰性で神経原性の悪性神経鞘腫であった,大腸発生の神経鞘腫は稀で,とりわけ悪性のものはきわめて稀である.
  • 中崎 久雄, 森屋 秀樹, 太田 正敏, 添田 仁一, 徳永 信弘, 平川 均, 安田 聖栄, 三富 利夫, 佐藤 慎吉
    1997 年 50 巻 1 号 p. 45-52
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例1は63歳男性.6年前に多発性骨髄腫で2年間化学療法治療を受けた.同疾患の再発は認めず6年経過している.最近腹部膨満著明で高度の便秘を主訴として来院した.注腸造影で下降結腸の狭小化,内視鏡での拡張不全を認めるが粘膜面は異常所見を認めなかった.メコリール試験は陽性であった.症例2は56歳,女性.17年前に限局性巨大結腸症で脾屈曲部の大腸の拡張部位の切除を受けたが症状の改善を認めなかった.高度の便秘で来院した.注腸造影で異常な拡張から狭小への移行,内視鏡検査で拡張不全と粘膜面の正常所見,メコリール試験陽性,前回手術標本の再検討で狭小部のaganglionosisが証明された.症例1および2は狭窄部を含めて結腸切除が施行された.組織学的検索でlocalized segmental aganglionosisと診断された.術後の経過は4年および2.5年を経過しているが順調である.
  • 片柳 創, 宮下 智之, 谷藤 公紀, 粕谷 和彦, 原 理, 谷藤 和弘, 小柳 泰久
    1997 年 50 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    全結腸型壊死型虚血性大腸炎の1例を経験した.症例は90歳の男性.主訴腹痛.腹部全体に筋性防御とBlumberg徴候がみられたため,汎発性腹膜炎の診断にて同日開腹した.膿性腹水,腐敗臭,盲腸から直腸に腸管壁の暗黒色変化を認め急性結腸壊死と判断し,下部直腸を除く全結腸と末端回腸切除・回腸瘻造設術を施行した.病変部位は主要動脈の血流域に一致せず,非連続性・不整形であった.病変部粘膜の肉眼所見は出血と皺壁の扁平化,組織は粘膜に限局する広範な上皮の立ち枯れ像であり,小腸・直腸を含む大腸全域の粘膜固有層・粘膜下層と一部の結腸紐内に著明な静脈うっ滞,拡張,fibrin血栓がみられた,小動脈閉塞,狭窄,血管炎の所見はなかった.以上の所見から,壊死型虚血性大腸炎の病態は小静脈梗塞による粘膜の凝固壊死であり,自験例はその早期の変化であると考えられた.また同病態は結腸のみならず小腸・直腸にもおこることを組織学的に確認した.
  • 落合 匠, 杉谷 通治, 岡田 豪, 野口 肇, 榊原 敬, 安田 一彦, 森脇 稔, 豊田 忠之
    1997 年 50 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    最近,直腸癌に対してdouble stapling techniqueを用いた低位前方切除術(LAR)が盛んに行われている.今回われわれは,LAR後吻合部瘢痕狭窄のためにイレウスを呈した症例に対し経肛門的腸管減圧(Colonoscopic Retrograde Bowel Drainage: CRBD)が,イレウスのみならず吻合部狭窄改善にも有用であった1例を経験したので報告する.症例は43歳,女性.平成7年6月直腸癌の診断にてLAR施行.平成8年3月頃より便柱の狭小化が出現,大腸内視鏡検査のための腸管洗浄液を内服後イレウスとなる.内視鏡検査にて術後吻合部狭窄によるイレウスと診断直ちにCRBDを施行し漸次イレウスを解除1週間後の内視鏡検査では狭窄部位は減圧チューブによる圧迫懐死のため開大しており,狭窄の改善が認められた.以上よりCRBDはイレウスのみならず吻合部狭窄改善にも有用な治療法になりうると考えられた.
  • 前田 耕太郎, 丸田 守人, 橋本 光正, 細田 洋一郎, 森川 康英
    1997 年 50 巻 1 号 p. 65-70
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/12/03
    ジャーナル フリー
    Rectoceleに対して,経膣的に余剰な膣壁の切除,縫縮と同時に,直腸膣中隔の補強の目的で,恥骨直腸筋および肛門挙筋の縫縮を行うanteriorlevatorplasty(ALP)を施行した症例の,術後の症状と機能の変化にっき検討した.対象は,有症状のrectocele5症例で,平均年齢は61歳で,2例は便失禁を,3例は尿失禁を合併していた.手術は,全例に余剰膣壁の切除,縫縮とALPを行い,便失禁の2例にはsphincter plicationを追加した.術後,全例で症状と便,尿の失禁は改善した.直腸肛門内圧検査では,全体として大きな変化はなかったが,術前に最小便意発現量,最大耐容量,最大静止圧が異常高値を示した例では,術後これらの値が低下し,便失禁例では,肛門管長,最大静止圧の上昇がみられた.術後の排便造影検査では,全例rectoceleは消失した.rectoceleに対するALPは,症状,形態異常の改善とともに,合併失禁例にも有用な術式であることが示唆された.
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