日本大腸肛門病学会雑誌
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50 巻, 4 号
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  • 河村 光俊
    1997 年 50 巻 4 号 p. 227-233
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    adenoma-carcinoma sequenceにおけるp53遺伝子変異の関与を明らかにするために,主に大腸ポリープを試料として抗p53抗体(PAb1801)を用いた免疫組織化学的検討を行った.各種大腸腫瘍性病変のp53発現率は進行癌で66.7%,sm癌で50.0%,腺腫では20.6%であった.p53は腺腫の段階では一部の腺管単位に限局して発現がみられ,それが腺腫内癌,進行癌と進むにつれて陽性腺管の範囲が増加していく傾向がみられた.腺腫例では異型度,ポリープの大きさとp53発現率の間に相関がみられた.以上の結果より,病理組織形態上は腺腫の時期よりp53遺伝子変異が生じはじめ,腺腫の発育とともにその関与が大きくなることが示唆された.
  • 今村 幹雄, 中嶋 裕人, 三上 幸夫, 山内 英生, 國井 康男
    1997 年 50 巻 4 号 p. 234-238
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎症例に対し大腸亜全摘兼回腸直腸吻合術(以下,IRA)を施行後,残存直腸粘膜に再燃を生じた際,吻合部回腸粘膜は大腸粘膜化し,著明なbackwash ileitisを伴った1例を経験した.症例は37歳,男性で,11年前に重症型,全大腸炎型の潰瘍性大腸炎に対しIRAを受けた.今回,残存直腸粘膜に再燃をきたし,内視鏡および組織学的に著明なbackwash ileitisを伴った.難治性痔瘻も合併していたが,最大肛門静止圧は正常であったため根治手術として残存直腸粘膜抜去,回腸直腸吻合部切除後,J型回腸嚢肛門吻合術(以下,IPAA)を施行した.術後はpouchitisの発生もなく経過している.以上より,IRA後に残存直腸粘膜に再燃が生じた際にはbackwash ileitisの発生が考えられるが,このような症例に対してはIPAAのような手術により良好な術後成績が期待される.
  • 前田 耕太郎, 丸田 守人, 内海 俊明, 佐藤 美信, 遠山 邦宏, 奥村 嘉浩, 升森 宏次, 小出 欣和, 松本 昌久, 石原 廉, ...
    1997 年 50 巻 4 号 p. 239-244
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    内視鏡的ポリペクトミー後,定期的な経過観察中4年8カ月目に粘膜下の進展を主体にして特異な肉眼形態を呈し再発したS状結腸癌の1例を経験したので報告する.症例は64歳の男性で,4年8カ月前にS状結腸の15mm大の山田3型のポリープのポリペクトミーを施行された.組織診では粘膜筋板を越える腺腫内癌と診断され,注腸検査(注腸),大腸内視鏡検査(CF)による経過観察を行っていた.CFによる最終経過観察後19カ月目のCFでポリペクトミー部にIIc advanced様の腫瘤が発見され,注腸では腸管の高度なひきつれを伴う潰瘍性病変が描出された.開腹所見は,H0,P0,SE,N1でS状結腸切除(D3)を施行した,切除標本では3cm大の正常粘膜に被われた腫瘤の中心に0.8cm大の潰瘍を伴う腫瘍を認め,組織学的には粘膜下の進展を主体にした高分化腺癌でss,ly2,v0,n2であった.初回標本の再検でポリープはsm2,ly2,v0の高分化腺癌で,粘膜下部分の癌の遺残による再発と考えられた.
  • 中尾 健太郎, 村上 雅彦, 鈴木 和雄, 平塚 研之, 李 雨元, 角田 明良, 草野 満夫
    1997 年 50 巻 4 号 p. 245-248
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は18歳男性.14歳頃より頻回に右下腹部痛がみられたが放置していた.18歳時,大腸内視鏡検査を施行したところ回腸末端からBauhin弁にかけてポリポーシス様病変がみられ,痛みと同時に重積をおこす所見が観察された.生検ではchronic severe inflamlnation, granulation tissueがみられ,Crohn病が疑われ,入院にて低残査食とサラゾピリン内服させたところ軽快した.再度,施行した大腸内視鏡にて前回と同様の所見がみられ,生検における組織診断ではGroup1:chronic inflammatory change with lymph folliclesであった.繰り返し生じる右下腹部痛および入退院を繰り返すことによるQOLの低下より手術適応と判断し,回盲部切除を施行した.病理組織学的検討ではBenign Iymphoid polyposisであった.本症における外科的治療の適応については慎重をきすべきであるが,それが極端にQOLを低下させる場合本例のように手術を考慮する必要もあると思われた.
  • 中山 肇, 柏木 福和, 西澤 正彦, 小川 清, 奥井 勝二
    1997 年 50 巻 4 号 p. 249-253
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    患者は42歳,男性.平成7年12月下旬に右下腹部痛,下痢,発熱の急性発症を認めた.保存的治療で一時症状の改善を見るが,食事摂取のたびに症状再燃し,検査の結果回腸末端部に約20cmの全周性区域性潰瘍と高度の狭窄を認あた.約3カ月の保存的治療にても改善を認めず,諸検査にて虚血性小腸炎による狭窄を疑い,平成8年3月15日回盲部切除術を施行した,術後病理では,狭窄部腸管は一様にUL IIの潰瘍を示し,粘膜下層を中心とした血管の増生,うっ血,線維化と動脈内膜の肥厚を認め,狭窄型虚血性小腸炎と診断された.本症の成因は不明であるが,進行性に狭窄を生じることから本症を念頭においた早期診断と外科的切除が必要と考えられた.またこれまで非定型的クローン病,非特異的小腸潰瘍とされてきた疾患の中に本症が含まれる可能性もあるとされることから,術前の慎重な診断とともに術後の病理検索が重要であると考えられた.
  • 張 仁俊, 澁澤 三喜, 角田 明良, 神山 剛一, 高田 学, 横山 登, 吉沢 太人, 保田 尚邦, 中尾 健太郎, 草野 満夫, 田中 ...
    1997 年 50 巻 4 号 p. 254-259
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    クローン病による消化管膀胱瘻は比較的まれで本邦では62例の報告がある.今回,著者らは教室においてクローン病による消化管膀胱瘻を2例経験したので報告する.症例1は32歳,男性.腹痛,発熱,混濁尿のため慢性膀胱炎として治療を受けていたが,糞尿が出現したため入院となった.小腸造影,注腸造影にて直腸S状結腸瘻,回腸直腸瘻がみられた.膀胱造影にて造影剤の漏出を認め,腸管膀胱瘻が強く疑われた.症例2はクローン病のためsalazosulfa-pyridineの内服治療を受けている28歳の男性.血尿,気尿,発熱を主訴に入院.膀胱造影にて直腸が造影され,クローン病による直腸膀胱瘻と診断した.いずれの症例も中心静脈栄養や成分栄養剤,prednisolonの投与等の内科的治療が奏効せず腸管切除と瘻孔部を含めた膀胱部分切除術を施行した.
  • 村上 茂樹, 岡島 邦雄, 磯崎 博司, 豊田 昌夫, 金川 泰一朗, 渡辺 一三, 竹田 幹, 原 均, 黒川 彰夫
    1997 年 50 巻 4 号 p. 260-266
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は45歳の男性.下腹部痛,便柱の狭小化を主訴とし,下部直腸狭窄の精査目的に当科を紹介された.20数年来排便時の怒責を必要とし,10年前より排便後に少量の出血を認めていた.外来受診時直腸指診にて肛門縁より約2.5cm口側に硬い全周性の狭窄あり.大腸内視鏡検査では狭窄部口側2/3周に浮腫状の粘膜の結節隆起と,その小隆起間に陥凹を認めた.経仙骨的に切除した組織にて腺癌と診断され,直腸切除術を行った.切除標本の歯状線口側1cmの粘膜に環周性にならぶ陥凹と,粘膜下全周に幅1.5cmの硬結を認めた.陥凹部一部粘膜と全周に粘膜下層から筋層におよぶ中分化腺癌を,深層浸潤部に印環細胞を認めた,また癌巣部とその周囲の広い範囲に,著明な線維増生を認めた.本例は怒責により肛門管粘膜の脱出と潰瘍形成を繰り返し,その部の瘢痕治癒による肛門管狭窄部の一部粘膜に癌が発生し,粘膜下を輪状に浸潤した結果管外型を呈した肛門管癌と考えられた.
  • 田村 礼三, 増田 英樹, 林 成興, 中村 陽一, 堀内 寛人, 林 一郎, 山岸 緑, 青木 久幸, 谷口 利尚, 岩井 重富
    1997 年 50 巻 4 号 p. 267-271
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    非外傷性大腸遊離穿孔の予後に影響を及ぼす因子について検討した.方法:教室では1982年1月から1995年12月までの14年間に34例の非外傷性大腸遊離穿孔を経験した.34例を予後良好群(24例)と予後不良群(10例)の2群に分け,年齢,性別,原因疾患,穿孔部位,穿孔から手術までの時間,術前併存疾患,術前白血球数,ショックの有無,腹腔内遊離ガス像,術式,腹腔内検出菌について比較検討した.成績:(1)予後不良群では,90%に術前併存疾患を認めたのに対し良好群では8%に術前併存疾患を認めた(p<0.01).(2)不良群の術前白血球数は3,200±1,786であり,良好群(11,243±5,819)より有意に低値であった(p<0.01).(3)穿孔から手術までの時間についてはむしろ予後良好群の方が長い傾向にあった(ns).結論:非外傷性大腸遊離穿孔の予後不良因子として術前併存疾患や術直前白血球数の減少が考えられた.
  • 1997 年 50 巻 4 号 p. 272-305
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
  • 1997 年 50 巻 4 号 p. e1
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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