日本大腸肛門病学会雑誌
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50 巻, 5 号
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  • 前田 耕太郎, 丸田 守人, 内海 俊明, 遠山 邦宏, 佐藤 美信, 奥村 嘉浩, 橋本 光正, 細田 洋一郎, 掘部 良宗, 黒田 誠
    1997 年 50 巻 5 号 p. 307-310
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸早期癌の局所切除時におけるimplantation metastasisの可能性を明らかにするために,直腸早期癌における腸管内の癌細胞について検索し,術中の特別な前処置の必要性の有無を検討した.対象は,経肛門的局所切除術を施行した直腸早期癌12例とS状結腸癌1例の計13例である.方法は,経肛門的に視野を展開後,腫瘍と腫瘍の左右および肛門側の直腸粘膜より,綿棒を用いて細胞を採取し細胞診にて癌細胞の有無を検討した.腫瘍切除後には,腫瘍の擦過細胞診も行った.腫瘍周囲の直腸粘膜の細胞診では,39か所中1か所(2.6%),腫瘍細胞診では,13例中9例(69.2%),腫瘍擦過細胞診では,11例中10例(90.9%)で癌細胞が検出された.以上より,局所切除術の際には,手術操作の加わらない自然な状態では直腸周囲粘膜への癌の落下の可能性は少なく,直腸洗浄などの前処置の必要はないと考えられた.
  • 福家 博史
    1997 年 50 巻 5 号 p. 311-317
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    1978年1月から1994年12月までの16年間に2cm以下の進行大腸癌18例を経験し,全進行大腸癌689病変の2.6%を占めた.男10例,女8例,平均年齢64.3歳であった.便潜血反応陽性で発見されたのが8例と最も多く,血清CEA値は16例が正常であった.発生部位は直腸を主に左側結腸に多く,腺腫をはじめとする合併大腸病変を認めた.発育様式はnonpolypoid growth 16例,polypod growth 2例と表面型早期癌由来のものが多かった.深達度と肉眼型の関係をみると,隆起型のものはmpを主とする深達度の浅いものが多く,IIa+IIc類似型,IIc類似型と陥凹成分が多くなるにつれて深達度の深いものが多かった.またリンパ節転移陽性例は4例に認め,いずれもnonpolypoid growthで深達度も深いものが多く,IIa+IIc,IIc類似型の肉眼型を示すものが多かった.これらのことより,小さな病変とはいえmalignant potentialの高いこれらの病変は見落としてはならないと考える.
  • 正木 忠彦, 武藤 徹一郎, 安富 正幸
    1997 年 50 巻 5 号 p. 318-330
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    253番ないし216番リンパ節転移陽性のS状結腸癌と直腸癌の,臨床病理学的特徴と旁大動脈リンパ節郭清の意義を明らかにする目的で,大腸癌研究会に所属する全国107施設にアンケート調査を行った.労大動脈リンパ節郭清は全体の4分の3の施設で行われていた.ほとんどの場合下腹神経は切除されていた.253番ないし216番リンパ節転移症例は,壁深達度が深く,低分化腺癌・粘液癌・印環細胞癌の頻度が高く,腹膜播種,肝転移,遠隔転移を伴うことが多く,治癒切除の困難な症例であった.旁大動脈リンパ節郭清による予後の改善は,S状結腸癌216番転移陽性例にのみ認められると考えられた.これらの症例における旁大動脈リンパ節郭清の意義を明らかにするには,今後prospective randomized trialが必要であると考えられた.
  • 尹 太明
    1997 年 50 巻 5 号 p. 331-338
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌転移リンパ節を転移様式により節内限局型と節外浸潤型の2群に分類し経過予測因子としての意義を検討した.対象は1977年から1990年までに手術が施行された盲腸から下部直腸までの原発性大腸癌492例中,原発巣が切除され,所属リンパ節の病理学的検索が行われた451例である.肝転移率は,節内限局型6/52(11.5%),節外浸潤型49/145(33.8%)と有意差がみられた(p<0.01).5年生存率は,節内限局型62.3%,節外浸潤型26.0%と有意差をみとめ(p<0.01),治癒・非治癒別の生存率は,治癒症例では,節内限局型64.3%,節外浸潤型40.9%と有意差がみられたが(p<0.05),非治癒症例では,節内限局型45.0%,節外浸潤型3.3%で有意差は認められなかった.転移リンパ節を節内限局型,節外浸潤型に区別することは,経過予測,肝転移予測因子として重要な指標である.
  • 光辻 理顕, 市原 隆夫, 裏川 公章
    1997 年 50 巻 5 号 p. 339-343
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    71歳,女性の狭窄型虚血性大腸炎に対して腹腔鏡併用横行結腸切除術を行い,良好な経過を得た1例を経験したので報告する.突然の下血腹痛が出現し,大腸内視鏡検査により横行結腸脾弯曲の虚血性大腸炎と診断されたが,2か月後も腸閉塞症状は軽快せず,注腸X線検査でも同部に約2cmにおよぶ全周性の狭窄,辺縁硬化像を認めたため狭窄型虚血性大腸炎と診断し,腹腔鏡併用横行結腸切除術を施行した.腹腔鏡下で脾弯曲を中心に横行結腸,および下行結腸の授動を行い臍部の創より病変部を腹腔外へ誘導し,体外で結腸切除,吻合を行ったが,第1病日より創痛の訴えはなく,10日目に経過順調で退院した.併存疾患の多い高齢者に発症する特徴のある本疾患に対して,術後QOLの面からも利点がある腹腔鏡を併用した手術はよい適応と思われる.
  • 塩澤 学, 鈴木 紳一郎, 高橋 大介, 田村 功, 深野 史靖, 松田 玲圭, 長 晴彦
    1997 年 50 巻 5 号 p. 344-349
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    クローン病に肝膿瘍を合併することは非常に稀で本邦では4例の報告をみるにすぎない,今回われわれは,クローン病に肝膿瘍を併発し,経皮経肝的ドレナージを施行し,軽快した症例を経験したので報告する.症例は26歳,男性。平成5年に痔瘻の手術施行しこのときに糖尿病,クローン病を認め,再燃,寛解を繰り返していた.平成8年3月よりプレドニゾロン10mg/day投与を受け,同年9月に発熱,息苦しさ出現.腹部CT,超音波検査にて,肝臓右葉に孤立性の膿瘍を認めた.抗生物質のみで治療効果なく,経皮経肝的ドレナージにて改善した.本症例は画像や血液検査所見より門脈菌血症によるものが考えられ,糖尿病やステロイド投与が起因となったと思われる.クローン病にステロイド投与を行う際は,腹腔内の炎症に対する易感染症を常に念頭におき保存的治療に抵抗する発熱を認めた時は肝膿瘍も考慮しなければならない.
  • 伴登 宏行, 小杉 光世, 中島 久幸, 家接 健一
    1997 年 50 巻 5 号 p. 350-354
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    colitis cystica profunda(以下,CCP)は大腸の粘膜下層の粘液嚢胞を特徴とし,隆起性病変を呈する非腫瘍性の良性疾患である.限局型,区域型,びまん型に分類され,通常は限局型の直腸のpolypoid病変として認められることが多い.今回上行結腸に有茎性ポリープとして認められたCCPの1例を経験したので報告した.症例は64歳男性.住民検診で便潜血陽性を指摘され,まったく無症状であった.全大腸内視鏡検査でBauhin弁の直上に表面平滑な有茎性ポリープを認めた.やや褐色した色調で毛細血管拡張様の発赤を不均一に認めた.内視鏡的ポリペクトミーを行った.上行結腸のポリープは大きさは11×8×8mmであった.病理組織学的には粘膜固有層に平滑筋,線維組織の増生すなわちfibromuscular obliterationを認めた。粘膜下層には腺組織の迷入とその一部の嚢胞状拡張を認め,CCPと診断した.1年後に内視鏡検査をしたが再発はなかった.
  • 曾場尾 勇司, 小金井 一隆, 池 秀之, 江口 和哉, 志沢 良一, 大久保 賢治, 菊池 光伸, 坂下 武, 大木 繁男, 嶋田 紘, ...
    1997 年 50 巻 5 号 p. 355-359
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸内視鏡で診断しえた虫垂腺腫の1例を経験した.症例は73歳,男性.大腸ポリペクトミー後のfollow-upのために行った大腸内視鏡検査で虫垂口から突出する腫瘤を指摘された.内視鏡的切除は不可能と判断し,切除目的で当科に入院した.大腸内視鏡検査では腸蠕動によって虫垂口から突出したり観察できなくなったりする有茎性ポリープを認めた.注腸では虫垂内に類円形の陰影欠損を認めた,虫垂腺腫と診断し,開腹,虫垂盲腸部分切除術を施行した.標本では虫垂内に基部がある頭部6×6mm,茎長2mmのIp様ポリープを認め,病理組織では腺管腺腫であった.虫垂腺腫は切除虫垂中の0.02~0.08%で,本邦では自験例を含め10例の報告があるにすぎない.術前に虫垂腺腫と診断しえたのは2例のみで,他は虫垂炎の診断が多かった.虫垂腺腫はmalignant potentialityが高い絨毛腺腫が最も多いため虫垂切除を行う必要がある.
  • 高坂 一, 佐々木 一晃, 中村 真孝, 小出 真二, 星川 剛, 土田 繁, 平田 公一
    1997 年 50 巻 5 号 p. 360-364
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    術後6年の無再発生存を得た若年者結腸癌の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は15歳,男性.左側腹部痛,嘔吐を主訴に来院.イレウスのたあ緊急手術施行.開腹所見で下行結腸癌と診断し,左側結腸切除(D3)を施行した.病理組織学的には中分化型腺癌,s,n(-),ly1,v0,ow(-),aw(-),ew(-),H0,P0, stage IIであった.初回手術より2年後イレウスにて開腹したが癌の再発を認めなかった.その後経過良好で初回手術より6年を経た現在再発徴候なく健在である.本邦で報告された15歳以下の小児結腸癌60例の予後は不良で,5年以上生存した症例は8例のみであった,その理由としては低分化度の癌腫や高度進行例が多かったためと考えられた.治療成績の向上には小児といえど持続する原因不明の腹痛や消化管出血を認めたなら癌の存在をも念頭においた診療態度が必要である.
  • 1997 年 50 巻 5 号 p. 365-382
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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