日本大腸肛門病学会雑誌
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51 巻, 7 号
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  • 転移頻度および転移例の特徴と予後
    前田 耕太郎, 丸田 守人, 橋本 光正, 細田 洋一郎, 堀部 良宗
    1998 年 51 巻 7 号 p. 457-464
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸癌における神経周囲浸潤および自律神経周囲組織への微小転移の頻度,さらに転移例の臨床病理組織学的な特徴ならびに予後を明らかにするために,自律神経を合併切除した直腸癌50例を対象に摘出標本より自律神経を剥離した神経標本と残りの切除標本を病理組織学的に検討した.切除標本では40%の症例に神経周囲浸潤を認めたが,神経標本では神経周囲浸潤は1例もなかった.神経標本では,5例(10%)に自律神経周囲のリンパ節もしくは結合織内に微小転移を認め,これらは全例腫瘍下縁が腹膜反転部以下の例で,se(a2)以上に多い傾向があり(p=0.07),有意差はないが環周度半周以上(p=0.13),神経周囲浸潤陽性例(p=0.18)に多かった.しかしながら骨盤神経叢周囲微小転移例は,自律神経合併切除にかかわらず全例癌死しており再発の高危険群と考えられた.骨盤神経叢周囲以外の神経への1例の微小転移例では再発がなく,神経合併切除により良好な予後が得られた.
  • 菊地 勝一, 望月 英隆, 相原 司, 山本 哲久, 市倉 隆, 加賀田 豊
    1998 年 51 巻 7 号 p. 465-472
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    家族性大腸腺腫症には種々の腫瘍性病変の合併が報告されているが,大腸癌以外に,腹腔内デスモイド,甲状腺乳頭癌,十二指腸乳頭部癌を合併した症例を経験したので,文献的考察も含めて報告する.
  • 安井 昌義, 吉川 宣輝, 西庄 勇, 三嶋 秀行, 竹政 伊知朗, 柳生 俊夫
    1998 年 51 巻 7 号 p. 473-478
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,男性腹部膨満感が出現し,3カ月後に排便困難となり,注腸検査で上部直腸に病変を指摘された.大腸内視鏡検査では上部直腸に2/3周性の潰瘍性病変を認め,生検は扁平上皮癌であった.腫瘍下縁と歯状線の距離は12cmで,その間は正常の直腸粘膜であった.直腸低位前方切除術を施行し,切除標本では10cmの2型腫瘍で,組織学的には高分化型扁平上皮癌であり,腺癌成分は全く見られず,上部直腸原発の純粋な扁平上皮癌と診断した.術後,7カ月で原癌死した,
    大腸原発の扁平上皮癌は非常に稀であり,国内外を併せ86例の報告を見るにすぎない.国内報告の14例については,病態と予後等を報告者に直接問い合わせ,集計した.診断時には,進行度の高い症例が多く,診断後早期に死亡する例が多く見られた.
  • 井坂 直秀, 野末 睦, 足立 信也, 小池 直人, 川本 徹, 深尾 立
    1998 年 51 巻 7 号 p. 479-484
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/12/03
    ジャーナル フリー
    62歳,女性.左頚部腫瘤を主訴に来院.Virchowリンパ節と大動脈周囲リンパ節転移を伴う3型の直腸S状部低分化腺癌と診断された.CEAは45.8(正常値0.0~5.0)ng/ml.本例に,メトトレキセート(以下MTX)-5FU,5FU-ロイコボリン(以下LV)交互療法を3クール施行した.プロトコールは1コース56日間とし,前半4週に5FU急速静注のMTX-5FU交代療法を2回施行し,後半4週に5FU接続投与の5FU-LV療法を施行するものとした.2コース終了時において,原発巣は著効を示し,リンパ節転移は50%以上の縮小を認め,有効であった.CEAは9.5ng/mlへと低下した,この状態は4週間以上継続した.重篤な副作用は出現せず,performance statusは0のまま経過した.しかし,第3コースの半ばより,腫瘍は再度増大するようになり,全身状態の悪化とともに,治療開始から約9カ月後に死亡した.
  • 上地 一平, 北村 宗生, 三沢 篤志, 中山 宏文
    1998 年 51 巻 7 号 p. 485-489
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸にadenocarcinoma, multiple carcinoid, neurofibromatosis, ganglioneuromatosisを合併したvon Recklinghausen病(以下VRD)の1例を経験した.症例は39歳男性,主訴は下血.1996年11月中旬より排便時に下血するようになり,12月19日当科を紹介受診した.初診時,全身に多発する大小不同の柔らかい小結節と褐色の色素斑を認めた.大腸内視鏡検査で肛門縁より約3cmから20cmにわたり連続性・全周性に多発するポリープ様病変を認めた.ポリペクトミーを施行し,adenocarcinoma,carcinoidの病理組織診断を得た.1997年2月6日腹会陰式直腸切断術を施行した.VRDは消化管に神経原性腫瘍が比較的多く合併することが知られているが,自験例のように直腸に癌やカルチノイドのほか多彩な組織像を合併した症例は他に報告例をみない.今回著者らは,自験例の概要とともに若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 本邦特発性大腸穿孔187例の文献的考察
    沼田 典久, 長畑 洋司, 黒田 嘉和
    1998 年 51 巻 7 号 p. 490-495
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    特発性大腸穿孔は明らかな原因を認めずに大腸穿孔をきたす比較的稀な疾患で,予後は不良といわれている.今回,その中でも稀な横行結腸穿孔例を経験し救命できたので報告する.症例は49歳,男性で,昼食後心窩部痛を自覚し,しだいに疼痛が増強したたあ当科を受診したところ,胸部単純X線写真にて両側横隔膜下に遊離ガス像を認めたため,消化管穿孔と診断し直ちに緊急手術となった.開腹時所見は横行結腸に直径約8mmの円形の穿孔を認あたため,穿孔部を腹腔外に引き出し,複孔式人工肛門造設術を施行した.穿孔部位の楔状切除標本の病理組織検査より特発性横行結腸穿孔と診断した.術後経過は良好で術後25日目に退院した.本症例を含めた本邦報告例15例について文献的考察を加えた.
  • 福島 恒男, 松尾 恵五, 小金井 一隆
    1998 年 51 巻 7 号 p. 496-499
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    当科で治療したCrohn病208例中女性は61例で,そのうち6例がanovaginal fistulaを合併した.6例の平均年齢は28.3歳,IOIBD scoreは平均3.7,小腸大腸型3例,大腸型2例,小腸型1例であった.発症から膣瘻発生までの平均期間は9年であった.膿瘍や複数の瘻管のない単純な瘻孔の3例のうち2例は人工肛門をおきtransvaginal flap advancement(TFA)で閉鎖し,1例はsetonを設置した.瘻孔間に膿瘍があったり,会陰,陰唇,膣に複数の瘻孔を持った3例は人工肛門を作らずsetonで治療した.そのうち2例は治癒し,1例は治癒が遷延している.術直後の1例を除いた5例中4例(80%)は治癒した.肛門膣瘻の治療は単純なもののうち瘻管の比較的太いものはTFA,瘻管の細いものや複雑な瘻孔はsetonが有効である.
  • 高橋 誠, 藤本 茂, 武藤 高明, 小林 国力, 豊沢 忠
    1998 年 51 巻 7 号 p. 500-504
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    胃癌再発による大腸狭窄9例に手術を施行した.胃癌の病理所見は,低分化型が7例,粘液癌2例で,高および中分化型はなかった.再手術までの期間は12~86カ月,平均39カ月と長かった.手術は大腸切除のみが3例で,6例では他臓器合併切除がされた,癌性腹水(少量)がみられたのは2例のみであった.治癒的切除4例,姑息的切除5例であった.4例が術後2,3,10および12カ月で生存中であり,入院死1例を除いた死亡4例の術後生存期間は8~34カ月,平均24カ月であった.入院死1例を除いた8例はすべて大腸狭窄が解除され,経口摂取が可能となり退院した.以上のごとく,胃癌再発による大腸狭窄例のうち,低分化型あるいは粘液癌で,再発までの期間が長く,癌性腹水のない症例では,積極的切除によって,QOLの向上が期待できると思われた.
  • PCR法によるヒトパピローマウイルスの検出
    加川 隆三郎, 斎藤 徹, 宮岡 哲郎, 黒川 彰夫, 有竹 賀子, 吉川 宣輝, 西庄 勇, 岩田 辰吾, 竹林 正孝
    1998 年 51 巻 7 号 p. 505-512
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    ヒトパピローマウイルス(HPV)は,子宮頚癌をはじめ各種扁平上皮癌組織にそのDNAが検出され,HPV感染による発癌機構の解明が進みつつある,諸外国では肛門管,直腸の扁平上皮癌にHPV-DNAを確認した報告がみられるが,本邦ではほとんどない。今回,HPV-DNAの検出に最も感度が高く,また型の同定も可能なPCR法により,日本人の肛門管,大腸の扁平上皮癌発癌におけるHPVの関与を研究した,方法:肛門管扁平上皮癌18例,その他の肛門管癌5例および大腸扁平上皮癌3例のパラフィン包埋標本より得られた検体のDNAをPCR法にて増幅,制限酵素にて処理後,消化パターンにより型判定をおこないHPV6,11,16,18,31,33,42,52,58について検討した.また肛門管扁平上皮癌症例で,HPV,p53に対する免疫組織化学的検討を行った.結果:肛門管扁平上皮癌症例のうち3例からHPV16,1例からHPV6のDNAが検出され,HPVによる発癌が示唆された。免疫染色では扁平上皮癌細胞の核が染色され,癌細胞核内のHPVの存在,mutantp53の蓄積が示された.欧米の成績と比較してHPVの種類には差はないものの,検出頻度は低かった.しかし,日本人の性習慣の変貌にともない,肛門管の扁平上皮癌の感染実態の変化が予想された。
  • 保田 尚邦
    1998 年 51 巻 7 号 p. 513-516
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    閉塞性大腸炎を合併した大腸癌の特徴を明らかにするため,1989年1月から1996年5月までに当科で施行した313例の大腸癌初回手術症例のうち,閉塞性大腸炎を合併した8例と閉塞性大腸炎を合併しなかった大腸癌イレウス症例24例を比較し臨床病理学的検討を行った.男女比,年齢腫瘍占拠部位,肉眼的分類,組織学的stageなどにおいて両群間に有意差は認めなかったが,環周率で両群間に差を認めた。閉塞性大腸炎の病変部ではU1I~IIが5例(62.5%),UIIVが3例(37.5%)に認められた。今回の検討より閉塞性大腸炎が特定の大腸癌に続発するのではなかったことから,とくにイレウス症状を伴った左側大腸癌症例では閉塞性大腸炎の合併を念頭におくことが診断に重要であり,閉塞性大腸炎を合併した大腸癌症例に対して,可能な限り閉塞性大腸炎の病変部を含め一期的腸切除を施行することがQOLを向上するうえで望ましいと考えられた.
  • 1998 年 51 巻 7 号 p. 517-524
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
  • 1998 年 51 巻 7 号 p. 525-538
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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