日本大腸肛門病学会雑誌
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52 巻, 2 号
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  • 河原 秀次郎, 平井 勝也, 青木 照明
    1999 年 52 巻 2 号 p. 91-97
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    これまでヒト大腸の運動機能を評価する際だって有用な方法はなかったが,今回著者らは大腸鏡を用いて大腸腸管内を生理的食塩水で満たし,その後体外式超音波検査を行いreal timeな画像として大腸の運動機能の評価を試みた(water sealed method).健常者では盲腸~下行結腸の半月ヒダは約2.5cm間隔に存在し,その位置は時間の経過とともには変化せず,一定の位置に存在していた.また積極的な蠕動運動は盲腸~上行結腸にだけ認められ,他の結腸では受動的に腸内容だけが移動していた.横行結腸~下行結腸の腸内容の移動は,半月ヒダとhaustraによって仕切られた2~3segmentを1単位とし肛側と口側を単振動しながら徐々に肛側に移動していった.一方,便秘症者では明瞭な半月ヒダおよびhaustraは観察されず,neostigmine負荷試験にも反応がみられなかった.よって腸内容の移動に半月ヒダおよびhaustraの緊張が強く関与しているものと考えられた.
  • 池川 隆一郎, 中江 史朗, 中村 毅, 多淵 芳樹
    1999 年 52 巻 2 号 p. 98-106
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    大腸粘液癌38例(全例深達度mp以上)を同時期に切除されたmp以上の高・中分化腺癌533例を対照とし比較した.粘液癌は対照群に比べて平均年齢は4.5歳若く(p<0.05),結腸では右側結腸に(p<0.05),直腸では肛門管に(p<0.05)高頻度に認められた.肉眼型では5型が多く(p<0.05),腫瘍径は有意に大きく(p<0.05),壁深達度ではse,a2以上の頻度が有意に高かったが(p<0.05),リンパ節転移率に有意差はなかった.またly3の占める割合が有意に(p<0.01)高率であったが,肝および腹膜転移率に有意な差はなかった.粘液癌の5年生存率は44%であり,対照群の53%に比べ有意差はないがやや不良であった.根治度A症例では,各々62%, 65%で差はみられなかった.また粘液癌を高分化型15例,中分化型6例,低分化型17例に分類し,高分化型と低分化型を比較した.低分化型は浸潤型(p<0.1),深達度se,a2以上(p<0.1),n2以上のリンパ節転移が多い傾向がみられ(p<0.1),ly3(p<0.05)およびstageIIIa以上(p<0.05)が有意に高率であった.逆に肝転移は高,中分化型にのみみられた(p<0.05).HID-AB染色では低分化型でsialomucin優位型が多い傾向にあった(p<0.1).以上より粘液癌では局所進行例が多く,積極的な局所の切除により治癒切除を得ることが重要と考えられた.亜分類では低分化型は,低分化腺癌や,印環細胞癌に近い特徴を有していると考えられた.
  • 全国アンケート調査結果(第47回大腸癌研究会)
    河原 正樹, 北條 慶一
    1999 年 52 巻 2 号 p. 107-118
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    大腸癌の同時性肝転移に対する本邦での治療の現況を明らかにするため,大腸癌研究会に所属する全国の主要施設にアンケート調査を行った.転移程度別にいかなる治療方法が有効であるのかを明確にすることを目的とした.H1,H2,H3のすべてのステージで外科的切除が最も有効であった。H2,H3症例では動注化学療法も有効であった.全身化学療法,TAE, PEIT, MCTのそれぞれ単独での有効性や切除後の補助療法としての動注療法の有効性は立証できなかった.H1症例では転移個数と腫瘍径が,H3では腫瘍径がハザードに影響を与えていた.このアンケート調査結果を踏まえ,将来的にプロジェクト研究としてさらなる症例の蓄積と詳細な検討を行い,肝転移の総括的な研究が前進することが重要なことであると思われる.
  • 血中レベル定量および免疫組織染色について
    曽山 鋼一, 斎藤 登, 亀岡 信悟
    1999 年 52 巻 2 号 p. 119-127
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    多種多様のインテグリンのうち,β1サブユニットの多くは、上皮細胞の細胞外基質蛋白の受容体として機能し,大腸癌の浸潤,転移において重要な役割を果たしていると考えられている.今回,教室での大腸癌術前症例86例を対象に血清β1インテグリン値測定を行い,うち63例に免疫組織インテグリン染色を同時に施行し,大腸癌の進行度について検討した.その結果,癌の深達度(p=0.0024)リンパ節転移(p=0.0415),リンパ管侵襲(p=0.0002),病期(p=0.0142)において,いずれも進行するにつれ血清インテグリン値が低下した.またインテグリン染色においても深達度(p=0.0021),リンパ節転移(p=0.0001),リンパ管侵襲(p=0.0003),病期(p=0.0001),静脈侵襲(p=0.0266)が進行するにつれ低染色性を示した.接着分子β1インテグリンの血清値測定および免疫組織染色が大腸癌の進行度の評価において有用であると考えられた。
  • 遺伝子学的検索を中心に
    増渕 成彦, 小西 文雄, 冨樫 一智, 紫藤 和久, 柏木 宏, 金澤 暁太郎
    1999 年 52 巻 2 号 p. 128-132
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    症例は49歳の男性.S状結腸癌術後フォローアップ目的にて施行した大腸内視鏡検査にて盲腸に径20mmのIs型の隆起性病変を認め,内視鏡的粘膜切除を施行した.病理組織学的所見では,周辺に中等度異型を示す腺管腺腫があり,中央に高分化腺癌から印環細胞癌への移行像が認められた.ごく一部で粘膜下層に浸潤していたが,脈管侵襲は認められなかったので追加腸管切除は施行しなかった.一次癌(S状結腸高分化腺癌)と二次癌(盲腸印環細胞癌)のmicrosatellite instability(MSI)を検索したところ,それぞれ4/6,5/6領域で陽性であった.Ki-ras Codon 12はwild typeであった.大腸早期印環細胞癌の報告例22例の臨床病理学的特徴について考察したところ,大腸多発癌例42%,多臓器癌合併例29%,癌家族歴陽性例21%であった.いずれも大腸癌発生の高危険群と考えられた.以上の文献的考察と本症例におけるMSIの結果より早期印環細胞癌は多発癌・重複癌症例に発生する傾向があると考えられた.
  • 木村 聖路, 鈴木 和夫, 相沢 中, 金沢 洋, 田中 正則
    1999 年 52 巻 2 号 p. 133-138
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    症例は85歳,女性.基礎疾患として糖尿病,心房細動,うっ血性心不全があり,脳塞栓症発症後は寝たきりとなり自力排便ができない便秘状態だった.平成6年1月突然に血便が出現し前医にて直腸潰瘍を指摘されたため平成6年5月当科入院した.下部直腸後壁に2分の1周を占める境界明瞭な打抜き状潰瘍があり,組織像は非特異的慢性活動性炎症所見のみだった.宿便性直腸潰瘍と診断し,便通促進を図ったところ3ヵ月後には瘢痕化した.しかしその後も肛門痛と血便があり,平成7年3月に同部位に4分の1周の直腸潰瘍が再発してから,平成9年3月に至るまで縮小と増大を繰り返した.患者は平成9年8月に心不全の悪化のため死亡した.平成6年1月から平成9年3月まで3年余りの期間に便通コントロールにもかかわらず,1回は瘢痕化したもののすぐ再発し,慢性難治性潰瘍として観察され続けた宿便性潰瘍の稀な1例を報告した.
  • 大川 清孝, 追矢 秀人, 佐野 弘治, 青木 哲哉, 針原 重義, 黒木 哲夫
    1999 年 52 巻 2 号 p. 139-143
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    患者は20歳男性で,元来便秘気味であり,8歳頃より過敏性腸症候群に合致する症状があった.午後5時頃に強い腹痛があり,その後大量に排便があり,続いて朝まで7~8回の血性下痢がみられた。当院を受診しすぐに内視鏡検査を施行したところ、下行結腸から横行結腸にかけて全周性と縦走性の潰瘍があり虚血性大腸炎と診断し入院となった.虚血性大腸炎を合併した過敏性腸症候群は世界で3例目であり,稀と考え報告する.
  • 家接 健一, 小杉 光世, 中島 久幸, 酒徳 光明, 伴登 宏行, 春原 哲之
    1999 年 52 巻 2 号 p. 144-149
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    放射線性大腸炎は時に難治性の出血をきたす.今回著者らは,放射線性大腸炎による出血に対して4%ホルマリンを使用し,止血し得た2症例を経験したので報告する.症例1は80歳の女性.低分化扁平上皮癌型の総排泄腔由来癌に対し放射線治療を受け,16か月後,出血性直腸炎を併発した.ステロイドの注腸,内視鏡的レーザー治療を行ったが止血できず,ホルマリン治療を行ったところ下血は消失した.症例2は47歳の女性.乳癌末期患者で,腰椎,仙骨の骨転移に対し放射線治療を受け,15か月後,S状結腸下部に出血性大腸炎を併発した.ホルマリン治療を3回施行し,止血し得た.本法は簡便で侵襲が少なく,S状結腸下部や直腸の放射線性出血性大腸炎に対し有用な治療方法と考えられた.
  • 塩谷 猛, 渡辺 秀裕, 渋谷 哲男, 小熊 将之, 内山 喜一郎, 松本 光司, 田中 茂夫
    1999 年 52 巻 2 号 p. 150-155
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    顆粒細胞腫は全身の臓器組織に発生するSchwann細胞由来の良性腫瘍といわれており,とくに舌,皮膚などが好発部位である.消化管での発生報告は少なく,食道に散見されるが,大腸では珍しく,肛門での発生はさらに稀である.今回われわれは肛門管に発生した顆粒細胞腫を経験したので報告する.症例は50歳,男性.原発口が肛門12時方向で前方陰嚢方向の二次口へ向けてまっすぐのびる痔痩があり(隅越分類のII Ls),同時に原発口に隣接するdentate line直下の肛門管に1cm大の表面平滑な堅い結節を認めた.痔痩をcoring outした後,粘膜下の結節も摘出した.この結節はH・E染色では細胞質に好酸性の顆粒を有する細胞から構成され,免疫組織染色でS-100蛋白,NSE陽性の顆粒細胞腫であった.腫瘍は薄い線維性被膜で境されており完全切除されていた.顆粒細胞腫は一般に良性腫瘍とされるが,浸潤性発育を示す報告もあり,切除が第一選択と考える.
  • 大畑 一幸, 早田 正典, 佐藤 恵, 出口 剛, 船津 史郎, 大江 宣春, 寺田 隆介, 江口 正明, 河村 康司
    1999 年 52 巻 2 号 p. 156-162
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,男性.検診で便潜血陽性を指摘され,精査目的で当院受診し,注腸X線検査,大腸内視鏡でRa後壁に粘膜下腫瘍様隆起を認めた.生検の結果,大腸癌の診断で低位前方切除術を施行した.切除標本では,中心陥凹部のみ癌が表層に露出しており,腫瘍はほとんどの部位で非癌大腸粘膜に覆われていた.切除の結果は,高分化型腺癌で,腫瘍周囲に著明なリンパ球浸潤を伴っており,深達度はsmであった.粘膜下腫瘍様発育形態を呈する大腸癌の報告は比較的稀で,病理組織学的にlymphoid stromaを伴う症例の報告は稀である.著者らは,lymphoid stromaを伴い,粘膜下腫瘍様発育形態を呈した直腸癌の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
  • 藤川 亨, 高野 正博, 黒水 丈次, 辻 順行, 嘉村 好峰, 豊原 敏光, 石橋 憲吾
    1999 年 52 巻 2 号 p. 163-168
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    S状結腸軸捻転を併発した特発性巨大結腸症に対して,S状結腸切除術を施行し,小児期より続く高度の便通異常が改善した症例を経験したので,文献的考察を含め報告する.症例は45歳,女性.小児期より便秘と診断され下剤を常用していた.腹痛,腹部膨満を主訴に当院を受診し,大腸通過時間測定,直腸肛門内圧測定,直腸肛門反射,注腸造影,排便造影検査により,S状結腸過長症,特発性巨大結腸症,会陰下垂症候群,Rectoceleと診断した.下剤にて排便を調節していたが,その経過観察中に再び腹痛,腹部膨満を生じ,S状結腸軸捻転と診断し,緊急手術を施行した.術後便通異常は著明に改善し,ほとんど下剤を必要としなくなった.便通異常を伴う特発性巨大結腸症は,手術により便通異常の著明な改善が望める.したがって十分な原因精査により,待機的手術の適応となりうると考えられた.
  • 馬場 秀文, 渡辺 稔彦, 板野 理, 神野 浩光, 鈴木 文雄, 大高 均, 守谷 孝夫, 三浦 弘志, 今井 裕
    1999 年 52 巻 2 号 p. 169-178
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    大腸癌肝転移89例を対象としてその臨床・病理学的特徴,治療成績ならびに残肝再発について検討して,以下の結果が得られた.
    1)大腸癌から肝転移をきたす危険因子としては壁深達度,リンパ節転移ならびにリンパ管侵襲が有意な因子であった.2)同時性および異時性肝転移切除群の5生率はそれぞれ36.1%, 40.1%であった.一方, 非肝切除群では5年生存例は認められなかった.3)肝切除後の残肝再発は41%(14/34例)で,再発までの期間は10か月以内であった.残肝再発14例のうち7例に再肝切除が行われ, 治療後の生存期間は11か月から29か月(生存中)で, 非再切除群に比較して予後は良好であった.
    以上より大腸癌肝転移症例の遠隔成績を向上させるためには1)肝転移巣の正確な局在診断および積極的な肝切除術,2)リザーバーなどによる予防的肝動注を含めた再発予防,3)肝転移切除後の残肝再発例に対して積極的な再肝切除が重要と思われた.
  • 大腸憩室の全て
    1999 年 52 巻 2 号 p. 179-191
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
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