日本大腸肛門病学会雑誌
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52 巻, 8 号
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  • 井上 雄志, 鈴木 衛, 高崎 健
    1999 年 52 巻 8 号 p. 669-675
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    過去10年間に当センターで経験した下部直腸mp癌41例の臨床病理学的に検討を行い, 側方郭清の必要性および局所切除の適応に関して考察した.リンパ節転移は8例 (20%) で, 全例1群のリンパ節転移 (#251) であった.リンパ節転移陽性率は腫瘍の肉眼型, 最大径による差はなかったが, 組織型が中・低分化腺癌, リンパ管侵襲陽性例に有意に多かった.また局所再発は3例 (7%) で, 全例リンパ管侵襲を有していたが, 側方リンパ節からの再発例はなかった, 以上から, 側方郭清に関しては, 下部直腸mp癌のリンパ節転移は全例1群のみで, 側方リンパ節からの再発例ないことから, その必要性は低いと思われた.局所切除に関しては, 1型癌にリンパ節転移は認めなかったが, 有意差はなく, その適応の確立にはさらなる症例の集積が必要であると思われた.
  • 佐藤 美信, 丸田 守人, 前田 耕太郎, 内海 俊明, 遠山 邦宏, 黒田 誠, 藤崎 真人
    1999 年 52 巻 8 号 p. 676-683
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    1988年から9年間に教室で経験した多発癌, 痔瘻癌を除く, 原発巣を切除した粘液癌29例の臨床病理学的特徴について, 結腸と直腸に分けて高分化腺癌470例, 中分化腺癌162例と比較検討した.結腸粘液癌の78.9%がse以上, 直腸粘液癌では全例がa1以上であった.n2以上の進行例の占める割合は結腸癌44.4%, 直腸癌40.0%と他に比べて高率であった.しかし遠隔転移および腹膜播種の占める割合は他と差を認めず, 広範な周囲組織の切除とリンパ節郭清により, 結腸癌77.8%, 直腸癌の80.0%で根治度Aの手術が可能であり, 根治性が期待された.粘液癌の5年生存率は結腸で53.3%, 直腸で64.9%と他と差を認めなかったが, 結腸粘液癌のDukes Cは37.5%と高分化腺癌に比べて不良であり, 補助療法の検討が必要と考えられた.粘液癌の術前正診率は結腸で45.0%, 直腸で16.0%と不良で, 内視鏡所見の特徴や組織生検法の検討が必要と考えられた.
  • -特に侵襲・免疫学的指標の変動について-
    下山 修
    1999 年 52 巻 8 号 p. 684-695
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    大腸癌手術19例に希釈式自己血輸血 (HAT) を導入し, 無輸血例10例と輸血例16例を対照として周術期の侵襲・免疫学的指標について検討した.IL6, 10, PNME, CD11b+CD8+bright細胞比はHAT群で上昇が抑制され, 輸血群では著明に上昇した.IGF-1, IL2産生能, NK活性, CD11b-CD8+細胞比, CD57-CDI6+細胞比は術後1~2週間で回復したが, 輸血群では低値で推移した.HAT群と無輸血群との間にはこれらの指標に明らかな差は見られなかった.各群に対するパラメーターの寄与度を検討するため, 主成分分析, 因子負荷量を行った.3群は出血量, IL6, CD11b+CD8+brightが小さく, かつIGF-I, IL2産生能, CD11b-CD8+, CD57-CD16+, NK活性が大きいHAT群, 無輸血群と, その逆のパターンを示す輸血群とに大別された.以上よりHATは輸血による周術期の侵襲や免疫能の低下を軽減する可能性が示唆された.
  • 桂島 良子, 樋渡 信夫, 島田 剛延, 豊田 隆謙
    1999 年 52 巻 8 号 p. 696-708
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    既存の厚生省武藤班作成の炎症性腸疾患のためのQOL調査票を用いて, 調査票の信頼性, 妥当性を検討し, 外来クローン病患者のQOLの横断的および縦断的評価を試みた。対象は当科外来通院中のクローン病110例で, 縦断的評価には初回調査から1年以上経過した同一患者72例を対象とした.その結果, (1) 本調査票の信頼性, 妥当性は, 満足できるものであった. (2) 肛門部病変を有する症例は明らかにQOLが低下していた. (3) 在宅経腸栄養法は患者のQOLを少なからず低下させていた. (4) 内科治療や外科手術により活動度が改善した症例では, 「腹部症状」「全身症状」「精神状態」「社会活動」とその「合計平均」のQOLは平行して上昇を示したが, 「主観的QOL」は変動しなかった.それまでの患者の実体験が強く影響し, 患者自身が評価する日常生活の満足度や長期的展望からみた期待感などは, ほとんど変動しないことが明らかにされた.
  • 指宿 一彦, 堤田 英明, 山本 佳正, 稲津 東彦, 山本 淳, 谷口 正次, 古賀 和美, 鍋島 一樹
    1999 年 52 巻 8 号 p. 709-713
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    検診で発見され, 来院時には腸重積を来していた大腸脂肪腫の1例を経験.した。良性疾患であり低侵襲の観点から, 腹腔鏡補助下に大腸切除を行った.病理組織学的にはangiolipomaの像であった.術後経過は良好で術後14日で退院した.大腸脂肪腫に対して, 腹腔鏡補助下手術を施行した報告は少ない.また大腸におけるangiolipomaは国内外に2例の報告しかなく, 極めて稀な症例と考えられる.
  • 上野 達也, 佐々木 巌, 内藤 広郎, 舟山 裕士, 福島 浩平, 柴田 近, 大谷 典也, 児山 香, 増子 毅, 高橋 賢一, 小川 ...
    1999 年 52 巻 8 号 p. 714-719
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    症例 : 症例は23歳, 女性.14歳時に下痢にてCrohn病発症後内科的治療を行ったが, 16歳時に腸管狭窄のため結腸亜全摘, 小腸部分切除, 回腸直腸吻合術を施行した.23歳時に直腸膣瘻 (RVF) 形成, 腸管病変再燃および胆嚢結石症を認めた.術後3ヵ月後に結婚を予定して外科を受診, 術式は患者の希望を考慮して吻合部切除, 回腸直腸吻合, 胆嚢摘出およびループ式回腸瘻造設術を施行した.結婚後妊娠希望で薬物治療は行わずに病変の再燃は認めなかったが不妊が続いた.産婦人科で25歳時に排卵誘発剤投与を受けて妊娠, 26歳時に帝王切開にて正常男児 (2550g) を無事出産した.妊娠期および周産期での病変再燃, 回腸人工肛門トラブル, RVF増悪などは認めず, 出生男児は順調に成長している.
    結語 : RVF合併したCrohn病症例で回腸瘻造設を行い妊娠, 出産が可能であった.
  • 平山 一久, 笠原 善郎, 宗本 義則, 飯田 善郎, 小西 二三男
    1999 年 52 巻 8 号 p. 720-724
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    症例は54歳, 男性.便潜血反応陽性のため施行した大腸内視鏡検査で多発性大腸ポリープが観察された.S状結腸の有茎型ポリープは, その頭部には潰瘍の形成等明らかな悪性所見は示さなかったが, 緊満感を伴った太い茎部の所見から粘膜下浸潤の大腸癌を否定できず, 小開腹にてS状結腸部分切除を施行した.腫瘍は頭部が15×12mm, 茎部は長さ20mm, 太さ12mmのダルマ状のポリープであった.組織学的に, 頭部は中等度異型腺腫を示し, 茎部の大部分は粘液の充満からなり, 一部に嚢状に拡張した中等度異型腺腫様組織を認めた.また粘膜筋板にヘモジデリンの沈着を認めた.以上より偽浸潤を伴った大腸腺腫と診断した.茎部の太い大腸ポリープは, その頭部を詳細に観察することが治療法を選択する上で重要であると思われた.
  • -Neuroendocrine Cell Carcinoma (NECC) の1例-
    亀井 秀策, 寺本 龍生, 渡邊 昌彦, 石井 良幸, 遠藤 高志, 橋本 修, 北島 政樹, 向井 万起男
    1999 年 52 巻 8 号 p. 725-729
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    症例は37歳女性で, 1997年より強迫神経症にて他院入院中であった.1998年2月中旬より間欠的に腹痛を認めていたが, 3月5日疼痛著明となり腹部CT検査を施行され, 内ヘルニアまたは腸軸捻転症の疑いで翌6日当院を紹介され受診した.右回盲部に有痛性で弾性軟の手拳大の腫瘤を触知し, 腹部CTにて境界明瞭で数層の壁構造よりなる腫瘤を認め, 腸重積の診断にて緊急手術を施行した.開腹すると重積のため著明に肥厚した上行結腸を認め, 整復不能と判断し結腸右半切除術を施行した.切除標本では潰瘍形成を伴う盲腸腫瘍を認め重積の先進部となっていた.病理組織学的診断はneuroendocrine carcinomaであった.
  • 高瀬 真, 炭山 嘉伸, 長尾 二郎, 斉田 芳久, 草地 信也, 柁原 宏久, 神馬 由宏, 中村 寧
    1999 年 52 巻 8 号 p. 730-735
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    大腸穿孔は上部消化管穿孔に比較して, 発生頻度が低く, 手術に踏み切るタイミングがつかみにくいため治療が遅れがちである.そのため手術後の経過は不良で重篤な合併症を併発したり, 入院期間の延長や死亡といった最悪の結果を招くことがある.最近過去13年間に当科で経験した大腸憩室穿孔手術症例16例につき検討したので報告する.症例は, 男性7例, 女性9例で, 平均年齢は68.9歳であった.症状発生から手術までの期間は平均60.2時間であり, 入院期間は, 68.3日であった.腹腔内遊離ガス発生症例は, 4例であり全体の24%であった.穿孔部位は, S状結腸がもっとも多く56%, ついで上行結腸18.8%, 盲腸, 横行結腸, 直腸の順であった.術前ショック状態であった症例は2例, 死亡症例は3例であった.死亡症例は全例が術前白血球数の低下を伴っていた.死亡原因は敗血症, 多臓器不全であった.
  • 渋谷 均, 小出 眞二, 黒川 城司, 沖田 憲司
    1999 年 52 巻 8 号 p. 736-739
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    セルフケアが容易で, 合併症のないストーマを造設することは患者のQOL上極めて重要である.ストーマの形態としては, 高齢者のオストメイトの増加を考慮し, 洗腸療法, 自然排便法の双方に対応できる突出型のストーマを造設しておくのが良い.それでも皮膚切開の大きさや, 挙上腸管の長さ, 縫合法などにより術後のストーマの形状はさまざまである.著者らは過去7年間, 20例の単孔式結腸ストーマ造設に際し, 皮膚切開の大きさ, 挙上腸管の長さを測定し, その結果としてのストーマの最大径, 高さを計測してきた.種々の検討の結果, 皮膚切開は2.5×1.5cm (縦×横), 挙上腸管の長さを3.0~3.5cmとすると, ストーマの最大径は2.5cm, 高さ1cm程度の円形のストーマが造設され満足しうる結果を得た.
  • 辻 順行, 高野 正博, 黒水 丈次, 辻 大志, 辻 時夫
    1999 年 52 巻 8 号 p. 740-741
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
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