日本大腸肛門病学会雑誌
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53 巻, 1 号
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  • 佐藤 美信, 丸田 守人, 前田 耕太郎, 内海 俊明, 奥村 嘉浩, 升森 宏次
    2000 年 53 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    中・下部直腸癌に対し側方リンパ節郭清(側方郭清)を行い神経を温存する手術の臨床的意義を検討するために,側方郭清を行い自律神経を温存した群(温存術)と自律神経を切除した群(切除術)の再発率および予後をretrospectiveに比較検討した.対象は根治手術を施行した中・下部直腸癌で,1980年~1987年の切除術109例(a群)と1988年~1993年の温存術71例(b群),切除術12例(c群)であった.全例の側方転移陰性例の5年生存率(5生率)は76.8%,陽性例は33.8%であった.a群とb群では,Dukes分類別,stage分類別の5生率,局所再発率に差はなかった.Rbでb群の5生率はa群に比し有意に良好であったが,a群とb群+c群の5生率には差がなく,b群の5生率はc群に比し有意に良好であったことから,教室の温存術の適応(術中の肉眼的,術中迅速病理で自律神経に直接浸潤のない症例)では温存術は切除術と遜色ない術式と考えられた.
  • 山本 聖一郎, 固武 健二郎, 五十嵐 誠治, 市川 明, 小山 靖夫
    2000 年 53 巻 1 号 p. 12-19
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌の発育進展の解明には小さな進行癌の臨床病理学的特徴を分析することが重要である.大腸mp癌は進行癌全体では約15%を占めるが,20mm以下の小さな進行大腸癌では半数以上を占め,小さな進行大腸癌を検討する際には壁深達度を考慮する必要がある.大腸mp癌91例を,20mm以下の小型mp癌と20mmより大きい通常型mp癌,Polypoid growth (PG)群とNon-polypoid growth (NPG)群で臨床病理学的因子およびDNA ploidy pattern, DNA index (DI)に関して比較検討した.小型mp癌は通常型mp癌と比較して内輪筋層までの浅い浸潤例が多く,若年発症で,中分化腺癌の占める割合が高かった.また両群でDNA ploidy patternに差はないが小型mp癌でDIが低値を示した.NPG群はPG群と比較して腫瘍径が低値を示した以外に差はなかった.小型mp癌は通常型mp癌と比較して臨床病理学的には同等もしくはそれ以上の悪性度を有していると考えられ,慎重な対応が必要である.
  • 藤田 正幸, 大矢 正俊
    2000 年 53 巻 1 号 p. 20-26
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸癌に対する低位前方切除術(LAR)後の排便機能異常と吻合部口側腸管運動との関係を長時間内圧測定により検討した.LAR後1年以上経過した20例に対し,肛門縁より15cmの吻合部口側腸管にマイクロチップ型圧トランスデューサーを留置,内圧変動を約3時間記録した.発生した収縮波の振幅と持続時間を解析し,振幅50mmHg以上の収縮波(強収縮波)の発生頻度を検討した.健常成人4人を対照とし,直腸上部の内圧変動を記録した.LAR後症例では対照者よりも強収縮波が有意に高頻度であった.LAR後例で4回/日以上の排便,soiling,便意促迫(便保持可能10分以下)のいずれかを有する機能不良9例では,これらを有しない機能良好11例よりも強収縮波が有意に高頻度であった(中央値:9.4回/時間vs0.5回/時間).吻合部口側腸管の過度の収縮運動はLAR後の排便機能異常の一因と考えられた.
  • 山村 卓也, 小笹 貴夫, 須田 直史, 松岡 博光, 田中 一行, 猪飼 英隆, 及川 博, 赤石 治, 月川 賢, 山口 晋
    2000 年 53 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    消化器癌や乳癌においてVEGFの発現例は予後不良であるといわれている.本研究の目的は大腸癌におけるVEGFの予後因子としての意義を明らかにすることである.対象はstage I-IIIの大腸進行癌156例である.VEGFおよび腫瘍内微小血管の免疫組織染色はA-20およびCD34を用いて行った.VEGF陽性例における5年生存率は67.8%,血行性再発率は31%で,VEGF陰性例と比べ不良であった.VEGF陽性例ではMVDが高く,また血行性再発例でもMVDが高かった.多変量解析による分析で最も影響が強い予後因子のCEAとVEGFの組み合わせによる予後を検討したところVEGF+/CEA+の5年生存率は47.2%,血行性再発は50%で,他の3群と比べ不良であった.以上からVEGFとCEAの組み合わせは大腸癌の予後因子として意義があり,VEGF+/CEA+の予後は極めて不良である.
  • 小川 真平, 板橋 道朗, 亀岡 信悟
    2000 年 53 巻 1 号 p. 35-43
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    ヘリカルCTの特徴を活かした新たな大腸癌リンパ節転移診断法を考案し,その有用性について検討した.ヘリカルCTの1mm横断像およびMPR画像は,従来法に比べて存在診断能が優れており,51例を対象にした正診率は,腸管傍リンパ節86.3%,中間リンパ節82.2%であった.リンパ節の造影効果の検討から,造影剤注入40秒後に辺縁のみ造影されるリンパ節,まだら状に造影されるリンパ節,40秒後,120秒後いずれでも造影効果を認めないリンパ節が転移陽性と考えられ,造影所見から考案した質的診断による,28例の正診率は,腸管傍リンパ節96.4%,中間リンパ節94.7%と,従来法に比べて極めて高い正診率であった.ヘリカルCTによる大腸癌リンパ節転移診断法では,1mm横断像およびMPR画像によって,存在診断能の向上が図られ,さらに質的診断の要素を加えることによって,ほぼ正確な診断が可能であり,極めて有用な診断法と思われた.
  • 木村 聖路, 鈴木 和夫, 相沢 中, 塩谷 晃, 金沢 洋, 田中 正則
    2000 年 53 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,女性.右下腹部痛とともに同部位に鶏卵大腫瘤を指摘され入院した.注腸造影では虫垂は描出されず,回盲部を下方から圧排する65×50mmの卵円形の管外性腫瘤が認められた.内視鏡検査では盲腸は虫垂開口部を中心に半球状に膨隆し,開口部の生検にて白色膿汁の噴出が観察された.膿汁培養にてE.coliが検出され盲腸周囲膿瘍の診断が得られた.抗生物質投与により回盲部腫瘤は縮小して2週間後には40×30mmとなった.内視鏡検査でも盲腸の半球状隆起は消失し開口部の発赤のみが残存した.根治目的に手術を行い回盲部の器質化,縮小した陳旧性膿瘍を切除したが,虫垂はその中に埋没し瘢痕化していた.虫垂炎に起因した盲腸腫瘤を内視鏡的に観察し,内視鏡下の排膿により術前診断しえた極めて稀な1例を報告した.
  • 木村 英明, 小金井 一隆, 篠崎 大, 三邉 大介, 藤井 正一, 鬼頭 文彦, 福島 恒男
    2000 年 53 巻 1 号 p. 50-55
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    宿便性大腸穿孔の4例を経験した.症例は,男性1例,女性3例,平均年齢62,3歳で,3例は元来便秘であった.いずれも突然の腹痛で発症し,全例に嘔吐,1例に下血を認め,2例はショック症状を呈した.検査所見で,1例にfree airを,3例に腹水貯留を認め,4例とも消化管穿孔,汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.いずれもS状結腸から直腸の穿孔で,腹腔内,もしくは穿孔部に穿孔の原因と思われる硬便を認め,他部位大腸に多量の便塊を認めた.3例に病変部腸管切除,ドレナージ,入工肛門造設術を,1例にexteriorizationを施行した.いずれも術後経過は良好で退院し,2例で人工肛門を閉鎖した.切除例3例の穿孔部な,いずれも類円形,楕円形で,病理組織学的に穿孔部周囲の圧迫像を認めた.臨床症状,手術所見,病理所見より宿便性大腸穿孔と診断した.
  • 小島 康知, 中塚 博文, 栗原 毅, 豊田 和広, 大城 久司
    2000 年 53 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    虫垂炎疑診例に対しCT検査を行い,有用性を検討した.対象と方法:1997年1月から98年8月まで当院へ右下腹部痛を主訴に来院し,急性虫垂炎が疑われた32例に腹部CT検査を施行した.結果:CT所見では直接所見を24例,間接所見を16例(複数所見15例を含む)に認め,25例を虫垂炎と診断し緊急手術を施行した.他の7例はCT検査にて上記の所見は陰性であり,虫垂炎は否定的であった.開腹手術施行した25例中,組織診断に提出した21例は虫垂炎と病理組織診断された.以上の結果から虫垂炎の診断にCT検査を用いる利点として,(1)高い正診率,(2)不必要な虫垂切除の回避,(3)膿瘍および穿孔性虫垂炎の指摘,(4)虫垂位置異常の指摘,(5)麻酔方法の選択である.欠点として,(1)放射線被曝,(2)医療費の高騰化の問題がある.以上の点をふまえても虫垂炎疑診例の診断にはCT検査は有用であると思われた.
  • 2000 年 53 巻 1 号 p. 62
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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