日本大腸肛門病学会雑誌
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53 巻, 4 号
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  • 大司 俊郎, 森 武生, 高橋 慶一, 安野 正道
    2000 年 53 巻 4 号 p. 197-205
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    結腸癌根治術施行症例における,周術期同種血輸血の影響を検討した.対象はDukes BまたはCの結腸癌根治術施行症例269例とし,非輸血群175例,輸血群94例に分類,予後および術後合併症を検討した.累積5年生存率は非輸血群89.8%,輸血群71.9%と輸血群が予後不良であった(p=0.0015).臨床病理学的背景をもとに行った多変量解析では,輸血の有無は有意な危険因子であった(ハザード比2.823).術後感染症の発生率は,輸血群29.8%,無輸血群15.4%と輸血群において高かった.対象をリンパ節転移のない症例とし無再発生存率を検討したところ,非輸血群の5年生存率は96.6%,輸血群の5年生存率は88.5%であり輸血群の方が不良の傾向があった.小野寺指数の推移を検討すると,輸血群において回復に時間を要した.周術期の同種血輸血は,免疫系統の影響を介して,予後,再発,および術後感染症に影響を与えている可能性が示唆された.
  • 飯塚 敏郎, 澤田 寿仁, 堤 謙二, 早川 健, 宇田川 晴司
    2000 年 53 巻 4 号 p. 206-211
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸カルチノイドは増加傾向にあり,好発部位が下部直腸という特殊性からその治療方針は慎重でなければならない.とくに腫瘍径20mm以下の病変の治療方針は各施設で模索中である.今回自験例49症例を対象に治療方針を検討した.腫瘍径5mm以下は24例,6~10mmは21例,11~20mmは3例,21mm以上が1例であった.内視鏡的切除を31例,うち外科的追加治療は11例,外科的切除は17例に施行した.内視鏡的切除は10mm以下の67%の腫瘍に行い,切除断端陽性でも摘出標本では全例腫瘍の残存を認めなかった.10mmでリンパ節転移例と16mmで肝転移例を1例認めた.治療方針としては腫瘍径10mm以下では基本的に内視鏡的切除をまず第1に考えるが,組織学的検討の結果により追加切除の必要性を考慮する.腫瘍径11mm以上では外科的切除を第1に考える.腫瘍径はひとつの目安であって,症例ごとに治療法の選択をする必要がある.
  • 橋本 可成, 裏川 公章, 小野山 裕彦, 安積 靖友, 杉原 俊一, 斎藤 洋一
    2000 年 53 巻 4 号 p. 212-215
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    多発性骨髄腫に合併した異時性多発性大腸癌の1例を経験したので報告する,症例は68歳,女性.60歳の時に右側多発性大腸癌で右半結腸切除.術後3年,6年後の大腸内視鏡検査では再発はなかった.67歳の時IgA 1600mg/dl,BenceJones蛋白陽性,頭部X線で骨打ち抜き像を認め,多発性骨髄腫と診断され,VCAPとINF療法を行った.術後8年目にHb 5.8g/dlと高度の貧血を示し,大腸内視鏡検査で吻合部に大腸癌がみつかり手術を行った.手術所見は,前回の吻合部に2型,全周,8×12cm,H0P0SENIで,組織学的にはwell differentiatedad enocarcinoma,ly3v1n1であった.多発性骨髄腫ではmonocl onalgammopathyを合併しやすく,また二次的な免疫不全状態や,抗癌剤投与が免疫抑制的に働き異時性発癌を誘発したと考えられた.
  • 森藤 雅彦, 竹末 芳生, 大毛 宏喜, 坂下 吉弘, 横山 隆
    2000 年 53 巻 4 号 p. 216-220
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    偽膜性腸炎は広域抗菌薬が広く使用されることにより,最近増加傾向にある疾患である.その背景には高齢者や免疫機能の低下した患者の増加があるとされるが,消化管運動機能障害が認められる場合もある.筆者らは,消化管運動機能障害を伴い,治療に難渋した一例を経験した.症例は84歳,男性.発熱・腹部膨満が軽快せず当科紹介となった.精査にて偽膜性腸炎と診断されvancomycin経口投与で一時症状は軽快したものの,腸閉塞症状が再燃した.病態精査のため,マーカー法による消化管運動機能検査を施行すると,主に大腸で通過時間が著明に延長していた.vancomycinの漸減投与に消化管運動促進剤Mosapride Citrateを併用して,再発することなく良好に経過した.偽膜性腸炎が再燃を呈する際には,背景に何らかの病態が存在することがあり,このことを考慮した治療方針が必要である.
  • 直腸Lipoid granulomaの1例
    関岡 敏夫, 仲井 理, 増田 道彦, 保田 光代, 竹田 彬一, 山岸 久一
    2000 年 53 巻 4 号 p. 221-226
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    内痔核の治療に使用した坐薬,軟膏の副作用として直腸lipoid granulomaができた症例を経験したので報告する.症例は54歳,女性.3度内痔核に対し坐薬,軟膏を使用した.1年後直腸下部に3cm大の硬い粘膜下腫瘍を認めた.大腸内視鏡検査,注腸X線検査,骨盤CT検査,骨盤MR検査を施行したが,確定診断できなかった.確診のため腫瘍を経肛門的に切除した.病理学的所見は直腸lipoid granulomaであった.坐薬,軟膏の副作用として直腸lipoid granulomaが発生した症例の報告は外国に2例,本邦に2例のみであり極めて稀な症例であった.今後坐薬,軟膏使用中の患者に直腸粘膜下腫瘍の発生を見た場合,坐薬,軟膏の副作用としての直腸lipoid granulomaを考えておく必要がある.
  • 岸渕 正典, 柳生 俊夫, 安井 昌義, 森 武貞
    2000 年 53 巻 4 号 p. 227-230
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は56歳の男性.主訴は肛門部痛.肛囲膿瘍の疑いで,切開術を行うも黄色ゼリー状の粘液のみであった.粘液の病理組織検査では悪性細胞を認めなかったが,再切開時に嚢胞壁からの組織で粘液癌と診断可能であった.CEAは10.1ng/mlと上昇.肛門管粘膜には異常を認めず.触診では病変部位は不明瞭であったが,骨盤MRIで肛門周囲,会陰部,海綿体の脂肪織内へ嚢胞状に広がった腫瘤を明瞭にとられることができた.以上より肛門腺由来粘液癌と考えられた.手術は広範囲肛囲皮下脂肪織切除を含む仙骨腹式直腸切断術,海綿体部分切除術,薄筋皮弁形成術を施行.摘出標本では,粘液を多量に貯留した多房性嚢胞とその壁に進展した高分化型腺癌を認めた.診断に関して,痔関連疾患を示すことがあり,本疾患を念頭におく必要があると思われた.また骨盤MRI検査が正確な浸潤範囲と術式決定に有用であった.
  • 前田 耕太郎, 丸田 守人, 青山 浩幸, 青木 和恵, 高橋 哲也, 青柳 孝信
    2000 年 53 巻 4 号 p. 231-236
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    灌注排便(洗腸)の実態と洗腸患者の灌注排便法に対する認識,評価についてアンケート調査を行った.対象は,オストメイト91人で洗腸経験者は92.4%で,5年以上洗腸例は62.4%,洗腸施行例の76.5%が60歳以上と高齢で,82.4%が常時洗腸を行っており,多くのオストメイトが洗腸継続を前提とした排便管理を念頭においた不安を感じていた.病院以外で洗腸指導例が8%以上あり,情報提供の不十分さが示唆された.洗腸間隔は,91.8%で1回/1~3日の頻度で,男性は女性に比し,毎日洗腸の頻度が多い傾向にあり,1回/2日であった頻度は有意に少なかった(p=0.002).注入液量は500~1000mlが63%と最も多く,1,000ml以上も15.3%存在し,注入速度100m1/分以上例も多かったが,トラブルもなかった.女性はガス音を男性に比し有意に気にした.とくに非常時に対する不安が注目された.洗腸法の実態,利点・欠点,患者の不安などを認識し,指導と情報提供が必要と考えられた.
  • 高山 鉄郎
    2000 年 53 巻 4 号 p. 237-240
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    肛門手術後の疼痛体策として強力な局所麻酔剤であるオキセサゼインを混和した軟膏を調整し(以下オキセサゼイン軟膏),その効果を検討した.136例の日帰り肛門手術症例に対し,術直後よりオキセサゼイン軟膏の肛門内塗布を行った.全例で塗布後に痛みが和らぎ(痛み指数1,9→0,6),以後用時自己使用としたところ約1日4回の塗布とジクロフェナクナトリウム徐放性カプセル37.5mg錠1日2回服用でおおむね術後の痛みはコントロールされた.5例は自己塗布ができず2例はペンタゾシン使用が必要であった.オキセサゼイン軟骨は使用方法が簡便であり,投与による全身作用の懸念がないため,薬を自己管理にできる,という点で安全簡便効果的な方法と考えられ,特に日帰り手術後における疼痛管理対策として推奨できると考えられた.
  • 特に術前最大肛門静止圧による術後疼痛の比較検討
    渡辺 賢治, 渡辺 元治, 増田 英樹
    2000 年 53 巻 4 号 p. 241-243
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    痔核根治術後の疼痛について,術前最大肛門静止圧との関係を検討した.対象:平成10年9月から平成11年3月までに痔核根治術を施行した146例を対象とした.方法:術後3時間後の疼痛の程度を「痛くない」,「少し痛い」,「痛い」,「とても痛い」に分類し,疼痛の程度と最大肛門静止圧との関係を比較検討した.結果:(1)術前の最大肛門静止圧について,「痛くない」群(88.5±36.5mmHg)と「痛い」群(118.9±38.0mmHg)との間で有意差を認めた(p=0.016).(2)術前最大肛門静止圧が100mmHg未満の群と以上の群との間で,術後3時間後の疼痛に有意差を認めた(p=0.0126).以上より術前最大肛門静止圧が高い症例では,術後疼痛の出現する可能性が高く,内圧を下げる工夫で,さらに術後の疼痛を緩和できると考える.
  • 宮田 美智也, 家田 浩男, 川瀬 恭平, 三浦 由雄, 太田 章比古
    2000 年 53 巻 4 号 p. 244-247
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    肛門小窩炎は肛門小窩に炎症が起こった疾者である.著者らは,1995年7月より1996年6月までに経験した本症例102例について検討した.男69例,女33例で,年齢では幅広く分布していた.主症状は肛門痛で,排便との関連のないものが多く,とくに座位時に出現するものが多い.部位は主に後方に多く,単発のものから複数のものまでみられた.炎症を起こした肛門小窩は深く変形しており,同部に一致して圧痛がある.また小さな硬結が触れるものもある.便通は普通便から軟便のものが多かった.合併している肛門疾患では裂肛が最も多く,近似疾者とされる肛門周囲膿瘍・痔瘻はみられなかった.治療は,投薬による保存的療法が第一選択で症例により切除術を行った.病理学的には肛門腺は正常で,その周囲にリンパ球の浸潤がみられた.
    肛門小窩炎は未だ病因は不明であるが,臨床病理学的見地から肛門疾患の一つのclinical entityとして認識すべきである.
  • 神藤 英二, 上野 秀樹, 長谷 和生, 小泉 和也, 相沢 亮, 橋口 陽二郎, 望月 英隆
    2000 年 53 巻 4 号 p. 248-251
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    術前に肛門側腫瘍縁より粘膜下水平先進部のpunch biopsyを行い組織学的悪性度を評価,側方癌進展の予知因子としての有用性について検討した.直腸癌42症例に対し術前punch biopsyを施行,得られた組織中に認められる(1)粘膜下水平先進部組織型por or sig or muc,(2)リンパ管ないし静脈侵襲陽性,(3)簇出中等度以上,(4)腫瘍縁から肛門側5mm粘膜下層水平進展陽性,以上の4因子を悪性所見とし,1因子以上有する高悪性群(H群),皆無の低悪性群(L群)とに分類し比較した.側方郭清を全例に施行した腫瘍下縁がRb/Pに位置する症例に限ると,側方進展率はH群47%(7/15)に対しL群0%(0/11)と有意にH群で高率であった(p<0.05).この検討から,術前punch biopsyは側方癌進展を予知するうえで,有用な検査であることが示唆された.
  • 窪田 覚, 寺本 龍生, 鳥越 義房, 後藤 友彦, 高月 誠
    2000 年 53 巻 4 号 p. 252-254
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
  • 大見 良裕, 深野 雅彦, 土屋 周二, 城 俊明, 久保 章, 高橋 利通
    2000 年 53 巻 4 号 p. 255-256
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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