日本大腸肛門病学会雑誌
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54 巻 , 10 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 黒川 彰夫, 岩垂 純一
    2001 年 54 巻 10 号 p. 893-895
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    最近の医療技術の発展と医療情勢の変化は,肛門疾患の治療法や考え方にまで影響を及ぼすようになってきた.とくに痔核の病態に対する認識の変化は痔核治療の基本的な考え方自体にも変化をもたらした.つまり,内痔核発生の成因について,血管起源説である静脈瘤の存在を否定はできないにしても,痔核の脱出にはana lcushionの関与が重要とする支持組織減弱説に変遷する中で,治療も侵襲を必要最小限にする考えになってきた.同時にさまざまな基本的な考え方の異なる新しい治療法が報告されるようになってきた.しかも実際には既に種々の新しい痔核治療が多くの専門施設で実施されている.そこで,これらに対する客観的な評価が不可欠となってきたので,明日への発展に繋がる新しい痔核治療の方法の確立のために,今回の特集を組んだ.
  • 辻仲 康伸, 浜畑 幸弘, 松尾 恵五
    2001 年 54 巻 10 号 p. 896-900
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    痔核の脱出は,anal cushionsと呼ばれる肛門粘膜,肛門上皮と粘膜下層および粘膜下層の線維性血管組織が,肛門外へ弛緩して滑脱することと考えられる.Longoにより確立されたcircular staplerによる下部直腸粘膜環状切除術(PPH)は,痔核組織への血流を減らし,弛緩したanal cushionsを吊り上げて,解剖学的位置へ復元することにある.手技上歯状線より肛門側に創部がないことから,術後疼痛が小さく早期に社会復帰し得る.術後経過の上では,出血,狭窄などの臨床症状が著明な例は少なく,1年後の患者満足度も高い.しかしながら直腸膣瘻や骨盤内膿瘍などの重篤な手術合併症も起こり得るため,適応を選び十分習熟した術者が行う必要がある.
  • 寺本 龍生, 窪田 覚, 後藤 友彦
    2001 年 54 巻 10 号 p. 901-904
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    教室では1999年10月より,従来,結紮切除術が行われていたIII~IV度の内痔核に対してLongoのPPHに工夫を加えてきた.術式の工夫の要点は1)stapler締結時の下腹痛を防止するための麻酔法,2)dilaterのかわりにLone Star Retractor®を使用して,縫合操作,staplerの挿入,タバコ縫合の確認を容易にする,3)あらかじめ上直腸動脈の高位結紮およびfire前後に2分間の締結時間をおくなどである.現在まで22例にPPHを施行した.fire前後の痔核粘膜の血流は前後で有意に57%の低下がみられた.術中の吻合部出血は少なく,多くは1~3針の縫合止血のみであった.鎮痛剤は15例が第4病日までに使用されたが,殆どが鎮痛剤の内服で自制可能であった.術後在院日数は平均4.5日,職場復帰は術後6.9日であった.PPHは,適応が限定されれば,従来の結紮切除術より優れていると考えられる.
  • 大須賀 達也, 工藤 進英, 梅里 和哉, 森田 圭紀, 為我井 芳郎, 山野 泰穂, 今井 靖
    2001 年 54 巻 10 号 p. 905-909
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    Because of the spread use of colonoscopy at the time of examination, the chance of encountering the internal hemorrhoid which requires endoscopic treatment has become increasingly frequent in recent years.
    Thus, since 1977, we have been developing a specific device, which permits us to examine the anal canal by anal side and also enable to treat the internal hemorrhoid by ligation. Since we have achieved satisfactory results in the treatment by means of this "Endoscopic Hemorrhoidal Ligation : EHL device", we are going to report on its technique and its treatment results hereafter. Though, it is still necessary for us to study further cases, we consider that this treatment is efficient enough to elevate patients' QOL.
  • 高村 寿雄, 稲次 直樹, 吉川 周作, 増田 勉
    2001 年 54 巻 10 号 p. 910-914
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    消痔霊は,中華人民共和国にて開発された硬化剤で,水溶性局所用注射剤である.明礬およびタンニン酸を主成分とし,内痔核・直腸脱等に適応がある.これまではGoligher III・IV度の内痔核に対しては手術療法が優先されたが,それらの内痔核に対しても十分な効果が認められた.注射方法は,四歩注射法といい,痔核本体の最も上端・痔核の底面・表面そして下端の4箇所に適切な量を注射する.注射量は痔核の大きさによるが,全体で30~60ml程度を使用する.注射部位が不適切であったり,注射量の過不足があると痔核の残存・合併症を引き起こす可能性があり,注射手技の充分な習得を要する.
    1991年7月より2001年6月までに,計483回施行したが,重大な合併症もなく,痔核の残存・再発に対しては,追加投与を行い有効であった.進行した内痔核に対する非手術的治療法として,第一選択としてよい治療法である.
  • 松田 直樹
    2001 年 54 巻 10 号 p. 915-920
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/12/03
    ジャーナル フリー
    従来の痔核手術は痔核を被う肛門粘膜や肛門上皮を切開し痔核組織を切除する方法が主流である.閉鎖法,半閉鎖法などの術式があるが出血や疼痛を軽減するには限度がある.当院では肛門上皮や肛門粘膜をふれずに外部より痔核組織みのを選択的に切除する手術法を考案した.鋼刃のメス,電気メス,レーザーメスでは不可能であったものが新しい器械の開発により可能となった手術法である.この手術は,肛門管に近い皮膚面の3カ所より刺入した超音波駆動のHarmonic scalpelフック型メスで行う.このメスの持つ瞬時に切開,止血,凝固が出来る特徴を生かし,皮下,粘膜下を通り直接に痔核組織に達し,選択的に手術をする.この手術法の長所は,出血しやすい肛門粘膜や知覚の過敏な肛門上皮を触れぬため,出血もなく,痛みも非常に少ない.しかも痔核根部結紮も不要で手術時間も短い.また,術後瘢痕もほとんど残らぬため術後愁訴も少ない新しい手術法の一つと思われる.
  • 碓井 芳樹
    2001 年 54 巻 10 号 p. 921-925
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    痔核の新しい治療法として,インドシアニングリーン(ICG)を痔核内に注入し,低出力で半導体レーザーを照射する非観血的治療法をはじめて報告した.本法は,食道静脈瘤に対する内視鏡的治療としてすでに報告されているものを痔核に応用したものである.ICGは半導体レーザー光を効率よく吸収するので,粘膜下層内の痔核を選択的に熱凝固に至らしめ,一方,固有筋層は粘膜下のICGによりレーザー光の直達が阻止されるので傷害を受けない.本法を施行した103例を対象に術後アンケート調査を行い,回答のあった85例(回答率825%)について術後の満足度を検討すると92.9%が満足していた.本法は,痔核に対する簡便,安全かつ効果的な治療法として期待できる.
  • 高橋 成一, 樋渡 信夫
    2001 年 54 巻 10 号 p. 926-931
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    虚血性大腸病変として,虚血性大腸炎と静脈硬化性大腸炎を概説した.また合わせて,当教室にて長期経過を追えている静脈硬化性大腸炎症例を報告した.虚血性大腸炎では,突然発症する臨床症状から当該疾患を疑い,速やかに大腸内視鏡検査で診断を進めることが最も重要と思われる.また治療においては,重症化の可能性を常に考慮し,外科との密接な連携が必要である.一方,静脈硬化性大腸炎は,病変部腸管の静脈に石灰化を来たす慢性虚血性の稀な疾患であり,いまだ日本人19例が報告されているにすぎない.しかも,初期には盲腸,上行結腸に留まる石灰化が,しだいに経過とともに肛門側に進展する特徴を持つ.そこで10年以上経過を追えた症例で,実際の病変の変化を提示した.
  • 本多 啓介, 飯田 三雄
    2001 年 54 巻 10 号 p. 932-938
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    治療目的で投与される種々の薬剤が大腸炎を誘発する.薬剤起因性大腸炎の治療法は起因薬剤の中止が基本となるため,その存在を認識することは重要である.抗生物質は代表的薬剤であり,急性出血性腸炎,偽膜性腸炎および最近ではMRSA(methicillin-cephem resistant staphylococcus aureus)腸炎を来すことはよく知られている.その発生機序に関しては不明な点もあるが,病態・治療に関してはほぼ確立されている.近年,大腸内視鏡検査の普及とともに,NSAIDs(non-steroidal anti-inflammatory drugs)による大腸病変の報告が増加しており,高齢化社会を反映して今後さらに増加することが予測される.NSAIDs起因性腸炎は内視鏡所見から潰瘍型と腸炎型に大別され,その発生機序も異なることが推測されているが不明な点も多く,さらに症例を集積し診断基準を確立する必要がある.原因不明の腸炎の診断には薬剤起因性大腸炎を念頭において,薬歴とくに抗生物質,NSAIDs服用の有無を詳細に調べることが重要である.
  • 藤沼 澄夫, 酒井 義浩
    2001 年 54 巻 10 号 p. 939-944
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    細菌による感染性大腸炎は多種多様なものがあり,その中で最近注目されている病原性大腸菌腸炎,MRSA腸炎,キャンピロバクター腸炎,腸結核について,その背景,症状,内視鏡所見,診断を概説した.病原性大腸菌は5群に大別され,特にO157は集団発生や重篤化が社会的問題となった.早期診断上,内視鏡は重要であり,深部大腸の出血性粘膜,浮腫,縦走潰瘍が特徴的所見である.MRSA腸炎は術後感染症以外でも,免疫力が低下している患者にも発症し,内視鏡所見は右半結腸~回腸末端に膿苔を伴う潰瘍性病変を示し,重症例では深い潰瘍となる.キャンピロバクター腸炎はほとんどがC.jejuniが起因菌であり,内視鏡所見は大腸全体に粘膜の発赤,出血,びらん,多発する大小の発赤斑であり,高率に回盲弁上の潰瘍を呈する.腸結核は1996年以降再び増加傾向にあり,特に高齢者に著しい.最近は肺に病巣のない孤在性腸結核として発症することの方が多く,典型的な症状がなく不明熱として発症することもあり注意を要する.
  • 中嶋 均
    2001 年 54 巻 10 号 p. 945-949
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    ウィルスや寄生虫感染は感染性腸炎の主要な病因のひとつである.本稿では病原性が明らかにされているウィルス,寄生虫感染症に関して述べることにする.ヒトに病原性のある寄生虫としては,赤痢アメーバ,日本住血吸虫,クリプトスポリジウム,糞線虫,ランブル鞭毛虫などが知られている.日本住血吸虫は甲府地方など地域限定の風土病として有名である.国内では新たな感染は無いとされているが,最近本症による腸管病変の報告がありそれらは遷延感染,邦人の海外での感染,感染異国人などである.住血吸虫感染症は再興感染症として忘れてはならない疾患である.赤痢アメーバ,ランブル鞭毛虫,糞線虫感染は主としてエイズや同性愛者における感染症として重要である.
    ウィルス感染症も細菌感染ばかりでなく忘れてはならないものである.サイトメガロウィルスはしばしば腸管に打ち抜き様潰瘍やびらんを形成することがあり,大腸は主要な罹患部位である.カポジ肉腫はヒトヘルペスウィルス8の感染が原因として考えられているが,大多数はエイズ患者での発症である.他に感染性腸炎を惹起するウィルスとしてはロタウィルス,アデノウィルス,アストロウィルス,カリシウィルス,アイチウィルス,コロナウィルスなどが知られている.これらのウィルスが確実に大腸に病変を形成するという確証はえられていないが,感染性腸炎の鑑別診断では大切である.
  • 赤松 泰次
    2001 年 54 巻 10 号 p. 950-954
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    Cap polyposis は Williams らによって報告された大腸の炎症性疾患で,特徴的な臨床所見と病理組織所見を示す.原因は大腸運動機能異常に伴う慢性的な機械的刺激説が有力で,粘膜脱症候群との異同が問題になる.報告例と自験例の18例について検討した.年齢は20歳から76歳(平均46.9歳)で好発年齢はなく,男女比は5:13と女性に多い.症状は粘液下痢や粘血便が最も多い.血液検査では低蛋白血症を認める症例が多く,炎症反応は通常陰性である.内視鏡所見は直腸からS状結腸にかけて広基性の多発性炎症性ポリープを認め,病変の表面は発赤と粘液の付着がみられる.病変周囲にしばしば白斑が認められ,介在粘膜はほぼ正常である.治療は5-ASA製剤やステロイドは無効で,メトロニダゾールが有効な症例がある.外科的手術を行なっても短期間に再発する場合が多い.
  • 清水 誠治
    2001 年 54 巻 10 号 p. 955-959
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    急性出血性直腸潰瘍と宿便性潰瘍はいずれも基礎疾患を有する高齢者に発生し大量下血をきたす疾患であり,高齢化が進む中でますます重要性が増すと考えられる.急性出血性直腸潰瘍はストレスや臥床などによる血流低下を基礎に発生すると考えられている.下部直腸の歯状線近傍に発生する不整形潰瘍で輪状に分布するのが特徴である.宿便性潰瘍は高度の便秘による糞便塊が腸管を機械的に圧迫することにより生じるが,血流低下が背景にあると考えられている.直腸に好発するが結腸にもみられ穿孔をきたすこともある.不整形潰瘍であるが歯状線近傍にはみられない.先行する高度の便秘の有無や病変の部位,形状から両者の鑑別はある程度可能である.いずれの疾患も大量出血をきたすため,速やかに診断して内視鏡止血術などの積極的治療を行う必要がある.止血できれば治癒傾向は良好であることが多い.
  • 佐藤 茂, 松井 敏幸, 八尾 恒良
    2001 年 54 巻 10 号 p. 960-964
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    膠原線維性大腸炎(collagenous colitis,以下CC)は1976年にLindstromによって最初に報告された水様性下痢を主徴とする大腸の炎症性疾患である.その後欧米を中心に同様の臨床症状を呈するリンパ球性大腸炎(lymphocytic colitis,以下LC)の概念も提唱され現在では両者とも広く認められている.両者は慢性の水様性下痢を主訴として発症し,大腸内視鏡や注腸造影で明らかな異常所見に乏しく,生検によって確定診断がなされるとされている.その病理学的特徴はCCでは粘膜上皮直下の厚いcollagen bandの証明,LCにおいては粘膜上皮内のリンパ球の増加を証明することによってなされる.本邦では少数の症例報告が見られるのみであるが,今後本症の疾患概念が広く認識され,本邦におけるその実態が明らかにされることが期待される.
  • 岡崎 和一, 西 俊希, 渡部 則彦, 松浦 稔, 仲瀬 裕志, 河南 智晴, 千葉 勉
    2001 年 54 巻 10 号 p. 965-969
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    移植片対宿主病(graft-versus-host disease:GVHD)は各臓器移植で合併するが同種骨髄移植後に最もよく認められる.GVHDは皮膚,肝,消化管に好発するが,中でも消化管症状は多彩であり,急性GVHDにおいては出血など重篤な病態を呈することも稀ではない.しかし,消化管症状だけでは日和見感染症などとの鑑別は困難なことが多く,内視鏡や組織検査を含む的確な診断が重要である.急性GVHDにおける腸管病変の内視鏡所見は粘膜の浮腫,斑状発赤,出血,脱落など多彩であるが,粘膜の斑状発赤や脱落が特徴的な所見であり,これらを認めれば肉眼的にも診断可能である.病理組織学的には陰窩上皮細胞のアポトーシスが炎症細胞浸潤のほとんど目立たない粘膜で認められるため早期診断にもっとも有用である.一方,慢性GVHDにおいては急性GVHDでは通常認められない食道粘膜の脱落と粘膜下層の線維化が特徴である.
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