大腸低分化腺癌は頻度が低いため,臨床病理学的に十分な検討がなされていない.そこで,低分化腺癌の臨床病理学的特徴を抽出するために,1986年から1999年までに当院で経験した低分化腺癌82例について,同時期の分化型腺癌1,003例と臨床病理学的に比較し,さらに,低分化腺癌を充実型と非充実型に亜分類し検討を加えた.低分化腺癌は高・中分化腺癌に比べ腫瘍径が大きく,リンパ節・肝・腹膜転移陽性例が多く(p<0.01~0.0001),予後不良で(logrank test,p<0.0001),5年生存率は低分化腺癌47%,中分化腺癌66%,高分化腺癌75%であった.また非充実型低分化腺癌は充実型に比べ有意にリンパ節・肝転移が多く(p<0.05),予後不良で(p<0.01),5年生存率は非充実型37%,充実型68%であった.Coxの回帰分析では,独立した予後不良因子の1つとして非充実型が抽出され,低分化腺癌の亜分類は予後を推定する上で有用な指標と考えられた.
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