日本大腸肛門病学会雑誌
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55 巻, 1 号
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  • 瀬戸 武士, 板橋 道朗, 亀岡 信悟, 西川 俊郎
    2002 年 55 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    初発大腸癌開腹手術症例42例を対象,良性疾患5例を対照とし術中腹腔洗浄液の細胞診及びRT-PCR法を用いたCEAm-RNAの定性を施行し,その臨床病理学的意義を検討した.CEAm-RNA陽性率は19.0%,細胞診陽性率は7.1%であった.良性疾患ではCEAm-RNA,細胞診共に陰性であった.肉眼的腹膜播種性転移陽性症例3例全例はCEAm-RNA,細胞診ともに陽性であった.CEAm-RNA陽性,細胞診陰性症例5例中1例に術後腹膜再発を認めた.RT-PCR法を用いたCEAm-RNAの定性は細胞診に比,癌細胞の存在診断をより鋭敏に可能とする可能性があり,有用な予後判定因子になり得ると考えられた.また臨床病理学的検討により,遊離癌細胞を生じやすい,あるいは合併しやすい因子として深達度SS以上で浸潤様式が散在性の症例,組織型が高分化腺癌よりも中分化腺癌,粘液癌の症例,リンパ節転移,リンパ管浸襲を有する症例,肝転移を有する症例,Stage II以上の症例が考えられた.
  • 奥田 隆
    2002 年 55 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    癌の浸潤や転移にはMatrix Metalloproteinases(MMPs)による細胞外マトリクスの分解が重要な役割を果たしていると考えられている.今回,基底膜破壊に関与するとされるMMP-9と,大腸癌の臨床病理学的所見との関連を検討した.手術で切除された高分化型大腸sm癌25例・mp癌25例にMMP-9の免疫組織化学染色を施行した.MMP-9は癌先進部に接する間質細胞(主にマクロファージ)に発現しており,発現細胞の頻度から-・+・++・+++の4段階に発現程度を評価した.MMP-9の発現程度はリンパ節転移の有無との有意な関連は認められなかったが,sm癌よりもmp癌で高度であり,リンパ管侵襲,浸潤性発育,細胞異型度が高異型度,組織型変化,buddingといった高悪性度を示唆する病変で高度であった.以上よりMMP-9の発現は大腸sm癌・mp癌の悪性度と関連があると考えられた.
  • 中村 隆俊, 大谷 剛正, 三富 弘之, 金澤 秀紀, 根本 一彦, 国場 幸均, 佐田 美和, 井原 厚, 柿田 章
    2002 年 55 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸低分化腺癌は頻度が低いため,臨床病理学的に十分な検討がなされていない.そこで,低分化腺癌の臨床病理学的特徴を抽出するために,1986年から1999年までに当院で経験した低分化腺癌82例について,同時期の分化型腺癌1,003例と臨床病理学的に比較し,さらに,低分化腺癌を充実型と非充実型に亜分類し検討を加えた.低分化腺癌は高・中分化腺癌に比べ腫瘍径が大きく,リンパ節・肝・腹膜転移陽性例が多く(p<0.01~0.0001),予後不良で(logrank test,p<0.0001),5年生存率は低分化腺癌47%,中分化腺癌66%,高分化腺癌75%であった.また非充実型低分化腺癌は充実型に比べ有意にリンパ節・肝転移が多く(p<0.05),予後不良で(p<0.01),5年生存率は非充実型37%,充実型68%であった.Coxの回帰分析では,独立した予後不良因子の1つとして非充実型が抽出され,低分化腺癌の亜分類は予後を推定する上で有用な指標と考えられた.
  • 石井 正之, 斎藤 典男, 小野 正人, 杉藤 正典, 伊藤 雅昭, 川島 清隆, 渡邉 一郎, 小杉 千弘, 大森 聡士
    2002 年 55 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    女性生殖器以外の腫瘍を原発巣とする転移性子宮腫瘍は頻度が少なく,また大腸癌からの転移は極めて稀である.我々は直腸癌の腹腔内再発及び子宮体部転移をきたした症例を経験したので報告する.
    患者は3年前に直腸癌の切除を受けており,術後経過観察中に血清CEA値の上昇を認めた.MRI,CTにて子宮体部に腫瘍を認め,術前のFDG-PETにて直腸癌からの子宮体部転移と判断した.切除標本の病理組織検査では中分化腺癌を認め直腸癌の子宮体部転移と考えた.
    転移性子宮腫瘍に対しては確立した診断法は無く,また転移性子宮腫瘍の患者は診断の時点で他臓器の転移があることが多い.転移性子宮腫瘍に対して手術を行う前に他臓器への転移の有無を確認することが重要であろう.本症例では転移性子宮腫瘍の診断と他臓器の遠隔転移の除外においてFDG-PETが有用であった.
  • 森谷 行利
    2002 年 55 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    Tailgut cystは仙骨前腔に発症し,ときに癌化を伴う比較的まれな疾患である.複雑痔瘻との鑑別を要したtailgut cystを経験したので報告する.
    症例は60歳の男性で,骨盤直腸窩痔瘻(IV型)と診断して,初回,経肛門的穿刺術を施行したが,1年9カ月後に再発症状で来院した.直腸指診,経直腸的超音波検査,CT検査にてtailgut cystと診断した.手術は後方経路(仙骨尾骨旁切開)で,尾骨合併切除により完全切除し得た.病理組織学的にtailgut cystと確認した.
  • 野津 聡, 山口 研成, 大倉 康男, 関根 毅
    2002 年 55 巻 1 号 p. 32-37
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸ポリペクトミー後の限局性腹膜炎に対する画像的なアプローチはほとんどされていない.我々は大腸ポリペクトミー後の限局性腹膜炎の診断にMRIを用い,胆石胆嚢炎の手術の際に病理組織学的検討も行った症例を経験した.症例は73歳男性.盲腸腺腫内癌の内視鏡的ポリペクトミー後に麻痺性イレウスにて発症した限局性の腹膜炎である.MRIではT1強調像にて病変部の脂肪組織内の網状の低信号,T2強調像での高信号と低信号の混在を認めた.病変の範囲は脂肪抑制像および造影後のT1強調像にてさらに明瞭に描出された.盲腸壁の組織変化と比較することにより,MRI所見は炎症所見および線維化によるものと推定された.熱変性による大腸壁の組織変化は内視鏡的ポリープ切除直後から生じる.MRIはその優れた組織分解能によりポリープ切除後の熱変性の範囲を術直後から明瞭に描出することが期待でき,限局性腹膜炎の病態把握に非常に有意義な診断方法と考えられる.
  • 岡村 慎也, 山口 浩彦, 川瀬 吉彦, 武川 悟, 長濱 徴
    2002 年 55 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    慢性膵炎急性増悪による結腸狭窄の1例を経験した.症例は52歳,男性.急性膵炎にて入院の既往がある.上腹部痛を主訴に来院.白血球数,血清アミラーゼ値の上昇を認め,慢性膵炎急性増悪の診断にて入院となった.入院後,DICを併発し一時ショック状態となったが保存的に軽快.しかし,イレウス症状出現したためイレウス管挿入し,減圧を行った.注腸造影検査,イレウス管造影検査では横行結腸,上行結腸,盲腸の3箇所に狭窄を認めたが,バリウムの通過は比較的容易であった.大腸内視鏡検査では横行結腸に全周性の狭窄を認め,内視鏡は通過しなかった.その後も保存的に治療を行ったが軽快せず,約3カ月後に右半結腸切除術を施行した.病理組織学検査では粘膜下層から筋層に強い炎症所見と線維化を認めた.膵炎による腸管狭窄は,症状発現後3カ月程度の保存的治療で軽快しないものに対しては,外科的処置の必要があると思われた.
  • 本邦報告例の検討を含めて
    星 加奈子, 大田 貢由, 金村 栄秀, 小金井 一隆, 高橋 正純, 鬼頭 文彦, 福島 恒男
    2002 年 55 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は50歳男性.下血・腹痛を主訴に当院消化器科を受診,上部・下部消化管内視鏡検査,注腸造影検査で明らかな出血性病変は認めず,小腸造影で回腸に突出する腸管が描出され,重複腸管が疑われた.重複腸管からの出血と診断し,手術を施行した.術中所見では,回盲部より約45cm口側の回腸に7×65cmの球状型の重複腸管を認め,頚部で切除した.切除標本では頚部に潰瘍を認め,出血源と思われたが,組織学的に異所性胃粘膜は認めなかった.
    重複腸管は本邦では約400例(1949~2000)の報告例があるが,約65%が幼児期に発症しており,成人では少ない.出血例の多くは異所性胃粘膜を有しており,本症例のように異所性胃粘膜の存在しない重複腸管からの出血の報告例は極めて稀であり,若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 宮崎 道彦, 黒水 丈次, 豊原 敏光, 竹尾 浩真, 衣笠 哲史, 高野 正博
    2002 年 55 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    平成9年から10年の2年間にrectoceleに対して経膣的に手術を施行した症例のうち術後症状の調査可能であった35例を対象とした、術前のdefecographyでrectoceleの大きさが30mm以上であった群(以下,L群)18例と,30mm未満であった群(以下,S群)17例に分けて検討した.Rectoceleの大きさはL群平均38.4mm,S群平均22.9mmであった.背景因子をみると全例が女性で,年齢はL群28~77歳,平均53.4歳,S群28~74歳,平均59.3歳であった.術前後で残便感「あり」の症状はL群が18例中15例(83.3%)から7例(38,9%)に(P<0.01),一方,S群が16例中11例(68.8%)から9例(56.3%)と改善がみられた.下剤の使用「あり」はL群18例中12例(66.7%)から6例(33.3%)に(P<0.05),S群16例中3例(18.8%)から5例(31.3%)に増え,L群のみ改善が見られた.平均排便時間はL群が6.2分から3.6分に(P<0.05),S群は6.8分から5.8分と改善がみられた.以上の結果から術前のdefecographyでrectoceleの大きさが30mm以上の症例では手術により症状の改善が見られるが30mm未満の症例では症状の改善は見られないことが判明した.
  • 藤田 秀人, 薮下 和久, 加治 正英, 井口 雅史, 岩田 啓子, 山本 精一, 小西 孝司
    2002 年 55 巻 1 号 p. 52-58
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸低分化腺癌63例と高分化腺癌608例・中分化腺癌609例の臨床病理学的因子および治療成績について比較検討した.男女比,年齢に差は認められなかった.低分化腺癌は高・中分化腺癌に比して腫瘍径が大きく,右側結腸に多く発生し,3・4型の肉眼型の頻度が高く,深達度が深かった.臨床病理学的因子についてss(al)以深の症例で比較検討した結果,肝転移率に差は認められなかったが,腹膜播種率は高/中/低分化腺癌の順に0/11/20%,リンパ節転移率は45/50/71%,リンパ管侵襲率は31/40/69%,静脈侵襲率は17/26/46%,といずれも高分化腺癌に比して低分化腺癌で高値であった.治癒切除率は順に87/80/66%で,最も低分化腺癌が低値であった.全症例の5年生存率は高/中/低分化腺癌の順に70/56/41%と有意に低分化腺癌が低かったが,治癒切除症例においては差を認めなかった.低分化腺癌を間質結合織量から髄様/中間/硬性型に亜分類すると,5年生存率は順に86/35/27%と髄様型が予後良好であり,髄様型低分化腺癌は特殊型として扱うべきと考えられた.
  • minimal seton術式
    加川 隆三郎, 斎藤 徹, 宮岡 哲郎, 南 亮
    2002 年 55 巻 1 号 p. 59-61
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
  • 林 成興, 増田 英樹, 林 一郎, 重松 千晋, 近藤 俊彦, 大久保 明, 佐藤 博信, 高山 忠利
    2002 年 55 巻 1 号 p. 62-64
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
  • 2002 年 55 巻 1 号 p. 65
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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