日本大腸肛門病学会雑誌
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55 巻, 7 号
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  • 伊佐 勉, 照屋 剛, 友利 寛文, 佐村 博範, 草野 敏臣, 砂川 亨, 与儀 実津夫, 武藤 良弘
    2002 年 55 巻 7 号 p. 343-347
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌における組織中Thymidylate synthase(TS)およびDihydropyrimidine dehydrogenase(DPD)活性と臨床病理学的因子との関連を検討した.大腸癌切除例85例を対象とし,癌部および非癌部のTSおよびDPD活性を測定した.TS活性は癌部で2.92±2.21pmol/g,変動係数(CV値)75.7%,非癌部で1.77±1.07pmol/g,CV値60.5%で,症例によるばらつきがみられたが癌部は非癌部に比べて有意に高かった(p<0.0001).DPD活性は癌部と非癌部との問に有意な差はなかった.臨床病理学的因子では癌部のTS活性は腫瘍の最大径と有意な相関を示し(相関係数0.538,p<0.001),低分化腺癌では他の組織型に比べ有意に癌部のTS活性が高かった(p<0.0001).癌部のDPD活性は肝転移陽性例で有意に低かった(p=0.042).TSおよびDPD酵素活性は臨床病理学的因子との間に関連を認め,5FU系抗癌剤による化学療法においては考慮する必要があると思われた.
  • 関根 庸, 坂本 一博, 坂本 修一, 川瀬 吉彦, 渡部 智雄, 狩野 元成, 鎌野 俊紀, 鶴丸 昌彦
    2002 年 55 巻 7 号 p. 348-353
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    1. 目的:血清胆汁酸組成比が大腸癌スクリーニングとして有用であるかを検討した.
    2. 対象と方法:対象は当院で治癒切除された肝機能障害のない大腸癌症例51例と健常者100例.大腸癌症例は手術の2週間前に静脈血および便を採取し,ELISA法でCholicacid(CA)とDeoxycholic acid(DCA)を測定した.
    3. 結果:大腸癌症例の血清DCAは健常者に比べ有意に高値を示したが,便中DCAは有意差がなかった.大腸癌症例の血清および便中DCA/CAは健常者に比べ有意に高値を示した.大腸癌同一症例の便中DCA/CAと血清DCA/CAの相関係数は,0.429で相関関係を認めた.便中DCA/CAのカットオフ値を1.1に設定すると感度78%,特異度56%であった.血清DCA/CAのカットオフ値を0.21に設定すると感度69%,特異度75%であった.
    4. 結論:血清DCA/CAの大腸癌スクリーニングとしての有用性が示唆された.
  • 大渕 康弘, 橋口 陽二郎, 望月 英隆
    2002 年 55 巻 7 号 p. 354-358
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    E-selectin(Esel)は血管内皮細胞表面に発現する接着因子の一つであり,血中可溶型E-sel(sEsel)上昇は生体内血管内皮細胞活性化を反映していると考えられる.今回,大腸癌におけるsEselの由来を知る目的にて,Dukes B,C症例18例において腫瘍部大腸潅流静脈血(DV),非腫瘍部大腸潅流静脈血(NDV),末梢血(PV)各々のsEselをELISA法にて測定し比較した.また免疫組織染色を行い腫瘍先進部近傍の小静脈血管内皮におけるEsel発現程度との関連性を検討した.DV-sEselの平均値は24ng/mlでありNDV,PV(21,21ng/ml)と比較して有意に高値で,DV-sEselとPV-sEselとの間には有意な正の相関が認められた(R=095, P<0.001).腫瘍先進部近傍小静脈Ese1発現程度とDV-sEse1との間には有意な正の相関が認められた(R=0.55, P<0.05).以上より,大腸癌末梢静脈血中のsEsel濃度上昇は腫瘍先進部近傍小静脈におけるEsel発現増強に由来する可能性が示唆された.
  • 小杉 光世, 王 敏, 寺畑 信太郎, 中島 久幸, 田畑 敏, 伴登 宏行, 家接 健一, 酒徳 光明
    2002 年 55 巻 7 号 p. 359-365
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    肛門管腺癌が隣接皮膚に連続進展するパジェット様進展(Pagetoid spread)は稀な病態で,皮膚腺原発の肛囲バジェット病,衝突癌や重複腺癌などと区別される.今回パジェット様進展を伴う肛門管腺癌の1例を臨床病理学的に分析した.患者は肛門腫瘍と肛囲の環状紅色局面による掻痒で受診し,肛門管腺癌に伴ったPagetoid spreadと診断し,直腸肛門,子宮,外陰唇,膣を切除した.肛門管腫瘍は粘液産生性の高分化型腺癌を主体とする進行癌で中分化,低分化腺癌の成分を有していた.Pagetoid病変の腫瘍細胞には肛門管腺癌と類似した組織所見と電顕所見を認めた.臨床経過ならびに病理構築像における両病変の連続性とGCDFP15陰性,CK7陰性,CK20陽性の免疫染色所見から,肛門管腺癌が肛囲,外陰部に進展したPagetoid spreadと考えられ,皮膚腺原発の乳房外・肛囲パジェット病と鑑別された.免疫組織化学的所見,電顕所見と文献的考察を含め報告した.
  • 岡田 邦明, 近藤 征文, 石津 寛之, 大沢 昌平, 益子 博幸, 石山 元太郎
    2002 年 55 巻 7 号 p. 366-370
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は67歳男性.1985年3月,早期胃癌で幽門側胃切除術を受けた(L,Gre,IIc,tub1,sm,ly0,v0,n0,stage IA).1995年7月,貧血の精査で盲腸癌と診断し結腸右半切除術(D3)を行った.腫瘍は2型,35×25mmで病理組織所見は高分化腺癌,se,Iy3,v1,nl(+),stage IIIaであった.1997年1月,CEAが17.1ng/mlと上昇し,CTで膵尾部,脾の腫瘍と大動脈周囲リンパ節の腫大を認めた.1997年3月,膵体尾部切除,脾摘,残胃全摘,リンパ節郭清を施行した.病理組織学的に盲腸癌の膵,脾転移と診断された.術後CEAは3.1ng,/mlと正常化したが,1998年3月に多発肝転移を認め,1999年1月より癌性腹膜炎となり転移巣切除術後23カ月目に死亡した.大腸癌術後の切除可能な膵,脾転移は極めて稀であるが,切除後長期生存の報告もあり積極的に切除することが望ましい.
  • 安藤 拓也, 榊原 堅式, 辻 秀樹, 安藤 重満
    2002 年 55 巻 7 号 p. 371-375
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    肉眼的にはびまん浸潤型を呈したが,病理組織学的には炎症性狭窄を伴った直腸癌の1例を経験したので報告する.症例は61歳男性.主訴は便柱狭小.直腸指診にて全周性の直腸狭窄を認めた.直腸造影検査にて肛門縁より約7cmの下部直腸から全長約8cmにわたる全周性狭窄を認めた.びまん浸潤型直腸癌の診断にて低位前方切除術を施行した.切除標本では直腸は約10cmにわたり全周性に肥厚・狭窄しており,病変の肛門側端に径約4.5cmの腫瘍性病変を認めた.病理組織学的には高分化腺癌であり,腫瘍細胞は筋層に達していた.腫瘍部より口側の壁肥厚部は粘膜粗造で,腸管壁全層にリンパ濾胞を伴う炎症細胞浸潤が著明であったが,腫瘍細胞は認めなかった.本症例のように炎症性狭窄を伴った大腸癌は,本邦で自験例を含めて7例報告きれているのみで極めて稀な症例であり,文献的考察を加え報告する.
  • 亀山 仁史, 須田 武保, 島村 公年, 谷 達夫, 山崎 俊幸, 飯合 恒夫, 岡本 春彦, 畠山 勝義, 酒井 靖夫
    2002 年 55 巻 7 号 p. 376-380
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    1984年から1999年の間に当科および関連施設で大腸全摘術を施行された潰瘍性大腸炎90例を対象として,腸管外合併症の頻度,外科治療後の転帰について検討した.全90症例中,36例(40.0%)の症例で延べ54疾患の腸管外合併症が認められた.合併症として,皮膚粘膜系疾患9例(10.0%),泌尿生殖器系疾患7例(7.8%),筋・骨格系疾患6例(6.7%),肝胆道系疾患2例(2.2%),血管系疾患1例(1.1%),精神疾患14例(15.6%)などがみられた,転帰について検討すると,特に皮膚疾患,精神疾患などは術後に症状の改善をみることが多かった.関節病変は術後に改善する症例が多くみられたが,術後発症の症例も経験した.潰瘍性大腸炎には腸管外の疾患が合併することがあり,それらの転帰も念頭に置いた術前術後の経過観察が必要と思われた.
  • 2002 年 55 巻 7 号 p. 381-388
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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