日本大腸肛門病学会雑誌
Online ISSN : 1882-9619
Print ISSN : 0047-1801
ISSN-L : 0047-1801
56 巻, 5 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 多田 雅典, 安藤 昌之, 青木 望
    2003 年 56 巻 5 号 p. 225-228
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    便潜血検査により発見された大腸癌手術症例(以下便潜血群)66例と,それ以外の大腸癌手術症例(以下対照群)69例を比較検討した.結果:便潜血群で早期癌が27例(40.9%)と対照群5例(7.6%)より有意に多く,術式では便潜血群で腹腔鏡下手術・経肛門・括約筋的切除など低侵襲なものが多く,対照群では二期的手術・マイルズ手術・TPEなど高侵襲なものが目立った.便潜血群では34例(51.5%)が合併症なく退院し,合併症も重篤なものは少なかったのに対し,対照群では合併症なしは25例(36.2%)と少なく,合併症も重篤なものが多かった.その結果として,入院期間も便潜血群38.1±22.5と,対照群57.3±34.5日より有意に短かった.累積5年生存率は,便潜血群88.5%,対照群52.3%と便潜血群が有意に良好であった.結語:便潜血検査による大腸癌検診は,大腸癌患者のQOLや予後と医療コストの抑制に寄与すると考えられた.
  • 位田 歳晴
    2003 年 56 巻 5 号 p. 229-233
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は18歳女性,未熟児出生で脳性麻痺が有り,著明な脊椎側弯を合併していた.便秘で時に浣腸を要していた.腹部膨満を主訴に来院し,腹部単純X線,CT検査にて著明に拡張した腸管ガスを認めた.大腸内視鏡検査で右側結腸に先細り閉塞を認めた.開腹すると盲腸が異常に拡張し,回盲部が反時計回りに360度捻転しており,盲腸軸捻転症と診断,右側結腸切除を行った.術後呼吸管理に難渋したが6カ月後に退院した.
    若年者の盲腸軸捻転症には精神疾患の合併例が多く,また脊椎側弯を多く伴っている.盲腸軸捻転症の発症誘因には臥床傾向,便秘などの他に脊椎の弯曲異常も関与しているものと思われた.
  • 本田 亮一, 下島 裕寛, 松本 浩, 相馬 明紀, 岩崎 直弥
    2003 年 56 巻 5 号 p. 234-238
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は62歳女性.左下腹部痛を伴う数回の下血を契機に当院を受診し,大腸内視鏡検査から盲腸に2型の癌とS状結腸に1/2周の粘膜面が結節状で暗青色の隆起性病変を認めた.また,腹部CTにてS状結腸壁の肥厚と一致した石灰化巣の所見から血管腫を疑い手術を施行した.切除検体は,S状結腸に4.5cm×4.0cmの暗青色の境界明瞭な隆起性病変を認め,組織学的には粘膜下組織から一部漿膜下にいたる,血管増殖を主体としたことからGentry分類のcavernous hemangioma simple polypoidと診断した.大腸血管腫は稀な疾患であるが,その特徴的所見から診断は比較的容易と考えられる.今回われわれは大腸血管腫についての特徴的所見を中心に文献的考察を加えて報告する.
  • 伊藤 博, 桐山 正人, 西島 弘二, 伊井 徹, 黒阪 慶幸, 竹川 茂, 小島 靖彦, 渡辺 騏七郎
    2003 年 56 巻 5 号 p. 239-244
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸原発の腺扁平上皮癌の2例を経験したので文献的考察を加え報告する.症例1は71歳の女性で,左下腹部痛を主訴に来院した.大腸内視鏡検査でS状結腸に2型腫瘍を認め,組織生検で中分化腺癌と診断されたため,D2郭清を伴うS状結腸切除術を施行した.病理組織検査の結果,腫瘍は中分化腺癌を主体とし,偏在性に扁平上皮癌を認める腺扁平上皮癌と診断された.1群リンパ節に転移を認め,その組織型は中分化腺癌であった.症例2は74歳の男性で,排便時出血を主訴に来院した.大腸内視鏡検査で下行結腸に1型腫瘍を認め,組織生検で高分化腺癌と診断されたため,D2郭清を伴う結腸左半切除術を施行した.病理組織学的には,腫瘍は高分化腺癌が主体で,腫瘍の中層以下に高分化扁平上皮癌を認める腺扁平上皮癌であった.組織発生機転には様々な説があるが,自験例は病理組織所見で腺癌と扁平上皮癌に移行像を認めることから,腺癌細胞の扁平上皮化生によると考えられた.
  • 黒坂 慶幸, 桐山 正人, 西島 弘二, 伊藤 博, 伊井 徹, 竹川 茂, 小島 靖彦, 渡辺 騏七郎
    2003 年 56 巻 5 号 p. 245-250
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は65歳女性で,臍部を中心にさし込むような腹痛を自覚し来院した.左上腹部に可動性のない手拳大の腫瘤を触知し,精査加療目的に入院となった.注腸造影と大腸内視鏡検査で脾彎曲部に全周性の狭窄を認め,組織生検で印環細胞癌の診断が得られた.腹部CTで,脾彎曲部に胃体上部と左横隔膜に接する10×5cm大の腫瘤を認めた.上部消化管精査では異常なく,脾彎曲部の4型進行結腸癌と診断し手術を行った.腫瘍は著しい壁の肥厚と狭小を示すlinitisplasticatypeの癌で,周囲臓器への浸潤と多数の腹膜播種を認めた.横隔膜の一部を合併切除し,横行結腸と下行結腸の部分切除を施行した.組織学的に腫瘍は,印環細胞癌のみで構成されていた.患者は術後8カ月目に癌性胸膜炎および腹膜炎を発症し死の転帰をとった.自験例は脾彎曲部に発生した印環細胞癌のみで構成される典型的なlinitis plastica typeの大腸癌で,臨床的に稀な症例と思われたので文献的考察を加え報告した.
  • 岡本 規博, 丸田 守人, 前田 耕太郎, 佐藤 美信, 升森 宏次, 青山 浩幸, 松岡 宏, 加藤 良一
    2003 年 56 巻 5 号 p. 251-256
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    血管腫瘍は易出血性で組織診断が困難なことが多く, また術中に大量出血を来たすことが多い. 著者らは非常に稀な会陰部の胞巣状軟部肉腫に対し, マルチスライスCTによる3D-angiographyが手術進行に有用であったので報告する. 症例は31歳の男性で, 排便時肛門痛と出血を主訴に近医を受診し, 生検にて血管肉腫を疑われ来院した. マルチスライスCTの多断面再構成像および3D-angiographyにより, 肛門管に隣接する腫瘍と診断した. 術中出血を考慮し, 術前に栄養血管塞栓術を行ない, 術前の画像所見を参考にしつつ肛門括約筋部分切除を伴う腫瘍切除術と肛門括約筋形成術を施行した. 塞栓術と画像所見による良好なオリエンテーションにより出血量も少量であった. 病理組織診断は胞巣状軟部肉腫であった. 周囲組織への浸潤もなく, surgical marginもfreeであったため, 厳重な経過観察とした. 術後は軽度の肛門痛と肛門狭窄を認めたが経過は良好であった.
  • 長田 俊一, 亀田 久仁郎, 高橋 利通
    2003 年 56 巻 5 号 p. 257-261
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は60歳, 男性, 仙骨部皮膚の出血を伴う腫瘍を主訴に来院した. 仙骨部に4×2cmの腫瘍とそれに近接して2個の腫瘤性病変を認め, 右臀部の皮膚の変色と硬結を認めた. CTおよびMRIでは仙骨部腫瘍の仙骨への浸潤は認めなかった. 出血コントロールのため, 仙骨部腫瘍切除術を施行し, 病理組織学的検査で高分化型扁平上皮癌と診断されたが断端は陰性であった. それに近接する2個の腫瘤性病変も悪性が疑われたため, 切除術を施行した. 腫瘍直下に同側肛門歯状線につながる瘻孔を認めたが, 明らかな原発口は認めなかった. 病理組織学的検査で扁平上皮癌と診断され, 断端が陽性であった. 以上の所見より臀部慢性膿皮症と診断し, 広範囲切除術を行い, 皮弁形成術を施行した. 切除標本の臀部慢性膿皮症内への癌の遺残は認めなかった. 臀部慢性膿皮症に続発した多発扁平上皮癌の報告は稀であり, 文献的考察を加え報告した.
  • 勝野 秀稔, 丸田 守人, 前田 耕太郎, 内海 俊明, 花井 恒一, 佐藤 美信, 升森 宏次
    2003 年 56 巻 5 号 p. 262-265
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は58歳の女性で, 排便時出血, 残便感, soilingを認め来院した. 直腸指診では, 肛門括約筋のtonusは低下しており, 怒責にて直腸の脱出及び粘膜面から少量の出血を認めた. 排便造影検査所見では, Tuttle II型の直腸脱とrectoceleを認め, 直腸肛門内圧検査所見では生理的肛門管長は測定不能で, 最大静止圧は14.7cmH2O, 最大随意収縮圧は54cmH2Oであった. 入院後のTransit timestudyおよび大腸内視鏡検査所見では特記すべき異常は認められず, 直腸脱に対する腹腔鏡下直腸固定術と同時にrectoceleおよび肛門括約筋不全に対してanterior levatorplastyとsphincter plicationを施行した. 術後は創が一部移開したが, その他の合併症なく第19病日に退院した. 術後soilingなどの諸症状は, すべて消失した.
  • 2003 年 56 巻 5 号 p. 266-272
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
feedback
Top