日本大腸肛門病学会雑誌
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56 巻, 9 号
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  • 丸田 守人
    2003 年 56 巻 9 号 p. 441
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸肛門疾患に携わったのは,昭和44年(1969年)慶應義塾大学島田信勝教授のもと植草実助教授研究室からであった.当時は大腸癌症例は少なかった.新設の藤田保健衛生大学病院に赴任して,開院後初めての大腸癌第一例目の手術は昭和49年(1974年)1月31日,29歳,横行結腸癌のび漫浸潤型の腸閉塞であった.まだ大腸癌取り扱い規約はなく,胃癌の拡大郭清の概念から,進行程度に関係なく徹底的に郭清することが根治性を得ることと考えて手術をした.時の流れと共に一般には手術術式,郭清度等も変わっているが,教室では一貫して,大腸癌の病態と手術治療を追求するため,進行程度による適応を決めずに,プアリスク症例以外,すべてリンパ節郭清を一律に3群郭清として行ってきた.それ以来,大腸癌手術症例は2003年6月まで2050例になった.大腸癌取り扱い規約制定前には,大腸癌の進行度は,Dukes分類が一般であり,制定後は規約によるstage分類,国際的にはTNM分離類が用いられた.予後の良い症例,悪い症例,再発を来たした症例,再発に対して切除し生存している症例などさまざまである.これらを術後確実にフォローアップすることを考えて,フォローアップ表を昭和.60年に作成し,改定は62年に行った.以後今日まで施行しているが,大腸癌術後再発危険群の設定,術前インフォームドコンセントの必要性,予後の推察方法などが,日常の現場で要求されており,フォローアップ方法にそれらを反映させることが意義のあることと考え,現在,もっとも臨床的に実用的な手段を検討している.今回の検討から,stage分類は術後3年まで再発率と密接な関係を示し,さらに術前の血清CEA値が同様に再発率と関係していた.術後外来では,術前の血清CEA値と術後病理からのstage分類を組み合わせて指標とし,再発症例の検討から再発形式とその時期を考慮してフォローアップ期間および検査内容を選択することが適切と考えている.医療費の節減から診療の是非を医療費の観点からも考慮する傾向が生じてきているが,それが主体となって本質を見失わないようにしたいと考えている.
  • 篠崎 英夫
    2003 年 56 巻 9 号 p. 442
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    我が国の医療提供体制は,国民皆保険制度の下で,国民が必要な医療を受けることができるよう整備が進められ,国民の健康を確保するための重要な基盤となっている.一方,少子高齢化の進展,医療技術の進歩,国民の意識の変化等を背景として,より質の高い効率的な医療サービスを提供するための改革を推進することが課題となっている.
    こうした改革を進めるに当たっては,医療提供体制の将来像について国民的な合意を得ていくことが重要である.このため,厚生労働省としては,平成14年3月8日に,厚生労働大臣を本部長とする「医療制度改革推進本部」の下に「医療提供体制の改革に関する検討チーム」(主査:医政局長)を設定して検討を行い,同年8月29日に「医療提供体制の改革の基本的方向」(中間まとめ)を公表した.
    その後も,様々な検討会等において,それぞれの課題について検討を進めるとともに3有識者や関係団体からのヒアリングの実施も含めて国民各層の幅広い御意見をいただきながら,更に検討を進めてきたところであるが,厚生労働省は平成15年4月30日に21世紀における「医療提供体制の改革のビジョン案」を取りまとめ,公表したところである.今後の医療提供体制の改革は,患者と医療人との信頼関係の下に,患者が健康に対する自覚を高め,医療に参加するとともに,予防から治療までのニーズに応じた医療サービスが提供される患者本位の医療を確立することを基本として進めるべきである.具体的には,
    ・患者の選択のための情報提供の推進
    ・質の高い医療を効率的に提供するための医療機関の機能分化・連携の推進と地域医療の確保
    ・医療を担う人材の確保と質の向上
    ・生命の世紀の医療を支える基盤の整備
    などの分野で改革を進めることが必要であり,以下に,それぞれの分野ごとに将来像のイメージを示し,それに続いて,その実現に向けて当面進めるべき施策を掲げた.
    こうした改革は,法令改正による措置のみならず,公的補助,公的融資,税制による支援,診療報酬等による経済的評価,関係団体との共同した取組などを組み合わせて総合的に推進していくことが必要である.
    このビジョン案をもとに,国民各層において更に幅広い議論が行われることを期待するとともに,国民全体で合意できる医療提供体制の将来像の形成を目指して,今後も適宜見直しを行っていくこととしており,この概略を紹介する.
  • Leif Hultén
    2003 年 56 巻 9 号 p. 443-444
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    At present restorative proctocolectomy is widely considered to be the operation of choice for patients with ulcerative colitis. While the initial functional results are marred by a high evacuation frequency with gross imperfection of anal continence the overall functional result improves gradually during the first 3-6 months with continuous improvement over the first 2-3 years. Frequency decreases and stabilizes to about 4-5/24 hours, quite a few patients may need to evacuate nighttime however and many suffer incontinence problems with occasional or permanent perineal soreness. Most patients need to use constipating drugs.
    The operation has a high potential for complications even in the expert. surgeon's hands, however. Anastomotic leakage with pelvic sepsis and/or fistulas are the most feared early complications-known also to be a significantly prognostic factor influencing the ultimate functional outcome. Pouchitis-a particularly disappointing and distressing early complication-also contributes greatly to the long term morbidity. The reported results in most studies-covering a limited number of follow up years-may well indicate a favourable outcome for the majority of patients with a reasonable postoperative complication rate and low pouch failure/excisional rate. However, results when calculated and expressed in crude figures are often unreliable particularly when based on a small patients series and/or a short follow-up. Calculations according to the life table technique-a more appropriate way both for comparison between groups of patients and for reflecting the course of a process-imply that both the cumulative probability of complications as well as the pouch failure rate increases with time. Most pelvic pouch patients had their operation at a young age and will even after a 10-15 years follow up still be considered young with a normal life expectancy. It may therefore be a reason for concern regarding the development of further complications and functional deterioration in a longer time perspective. Even other adverse long term consequences of the operation such as the severly reduced female fecundity and the effect of pregnancy and delivery on long term pouch function have to be considered.
  • 神奈木 玲児
    2003 年 56 巻 9 号 p. 445-446
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    癌の転移には数多くの接着分子が関与するが,ここでは臨床的に最も問題となる遠隔血行性転移に関与するセレクチン系の細胞接着分子について最近の研究を紹介したい.
    1.癌転移におけるセレクチンの関与と癌細胞における糖鎖リガンドの発現誘導機構
    血行性転移において流血中の癌細胞が血管内皮と接着する際にセレクチンとその糖鎖リガンドが重要な役割を演じる.血管内皮側ではE-セレクチンが,癌細胞側にはシアリルルイスa・シアリルルイスXなどの糖鎖リガンドが発現する.これらの糖鎖リガンドは以前からCA19-9,SLX,NCC-ST-439などの名称のもとに腫瘍マーカーとして臨床応用されてきた.癌細胞ではこれらの糖鎖の発現が正常上皮細胞に比べて有意に亢進している.最近になり癌におけるこれら糖鎖の発現亢進機構がようやく判明してきた.
    最近,大腸の正常上皮細胞がシアリルルイスa・シアリルルイスXよりも一段と複雑な構造の糖鎖を構成的に発現することが知られるようになった.おそらく発癌の最も初期に起こるのはこれらの複雑な糖鎖の合成不全であると考えられる.正常上皮細胞に発現する複雑な糖鎖としては,シアリルルイスX系糖鎖では硫酸基の付加した硫酸化シアリルルイスXが典型例であり,シアリルルイスa系糖鎖ではシアル酸がさらに付加したジシアリルルイスaが代表的である.癌化の初期に硫酸化やシアル酸化反応が低下してこれらの複雑な糖鎖の合成不全がおこり,これらの修飾のないシアリルルイスa・シアリルルイスXの発現が亢進する.この合成不全の背景には,これらの修飾に関与する転移酵素遺伝子のDNAのメチル化やピストンの脱アセチル化が推定されている.
    2.上皮細胞と免疫系細胞との相互作用と発癌
    正常上皮細胞に発現する硫酸化シアリルルイスXはL一セレクチンの特異的リガンドとして日常的にホーミングするリンパ球の粘膜内での挙動を制御し,ジシアリルルイスaはNK細胞や一部のT細胞の抑制性リセプターSiglec-7/p75/AIRM1の特異的リガンドとなっている.
    正常上皮細胞に発現するこれら複雑な糖鎖がいずれも免疫系細胞との相互作用を媒介する機能を持つことは注目される.腸管ホーミング性のリンパ球はα4β7インテグリン,L-セレクチンをもち,腸管上皮細胞が産生するケモカインTECKのリセプターCCR9を発現する.このリンパ球は腸管関連リンパ組織ヘホーミングしたのち,さらに粘膜固有層へ出て硫酸化シアリルルイスXやジシアリルルイスaを発現する腸管上皮細胞とL-セレクチンやSiglec-7を介して接着する.この接着によってリンパ球側にCCR10の発現が誘導される.CCR10はより分化した腸管上皮細胞が分泌するケモカインMECのリセプターであり,これによってリンパ球は粘膜固有層内をさらに遊走する.こうした細胞接着分子とケモカインの継時的なはたらきが正常粘膜のLPLやIELの成立に関与すると思われる.
    細胞の癌化に伴ってこれら複雑な構造の機能性糖鎖が消失すると粘膜内の免疫学的ホメオスタシスが障害されると考えられる.大腸癌の血行性転移を促進するシアリルルイスX・シアリルルイスaの発現亢進の背景には,こうした機能性糖鎖の消失がある.腸癌発生におけるCOX2の関与や,IL-10ノックアウトマウスにおける発癌は,粘膜中の免疫学的ホメオスタシスの乱れが大腸癌の発生に深く関連することを示す.正常大腸においては硫酸化シァリルルイスXやジシアリルルイスaなどの糖鎖は主にMUC2ムチンに担われるが,最近MUC2ノックアウトマウスで大腸癌の発生が報告されたことは,これら糖鎖を介する正常の細胞接着の消失が癌の発生に関与する可能性をさらに示唆する.
    3.三種のセレクチンのリガンド特異性と治療応用の展望
    セレクチンにはE-,P-,L-セレクチンの三種類があるが,癌細胞と血管内皮との接着で主役を演じるのはE-セレクチンであり,P-およびL-セレクチンの関与は少ない.しかし最近P-セレクチンやL-セレクチンのノックアウトマウスを用いたモデルでも転移の減少が認められ,P-,L-セレクチンも癌の血行性転移に有意に関与すると考えられるようになった.このため三つのセレクチンのすべてを阻害する治療法の樹立が課題である.この点についても紹介したい.
  • 古川 俊治
    2003 年 56 巻 9 号 p. 447
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    医療に関する国民意識の伸長を背景に,医療に関連した法的争訟は増加している.現在までに,医療過誤防止に関しては,医療安全対策の面から多くの議論が重ねられてきた.ここでは,大腸肛門病診療に関して,医療の質の向上の面から,法的問題点を検討してみたい.
    【診断】(1)大腸癌検診:人間ドックにおいて,一般の集団検診よりも高い注意義務を要求した裁判例が少なくない.異常を疑わせる兆候を全て受診者に告知し,診断が確定できない場合には再検査・精査を促す義務が要求されている.(2)便潜血陽性患者:注腸造影と大腸内視鏡検査の適応関係が問題となるが,一般に,注腸造影の読影では,糞塊・腸管の弯曲・骨陰影などと隆起性病変の鑑別が問題となり,特に,直腸・S状結腸では,ある程度不可避な解剖学的諸条件のため,隆起性病変が見逃されやすい.便潜血陽性患者に対する大腸病変のスクリーニングとして,まず注腸造影を行うか大腸内視鏡を行うかは今日でも医師の裁量であるが,注腸造影で異常が発見されなかった場合には,便潜血検査を再検し,陽性結果が継続するようであれば,大腸内視鏡を行う必要があると考えるべきであろう.(3)大腸癌術後フォローアップ:患者が体調悪化を訴えていたような場合には,その体調変化が癌再発以外の原因によることが明らかでない限り,注腸造影及び大腸内視鏡検査の双方または何れかを実施すべき注意義務があったとされている.
    【大腸内視鏡】消化器診療に関わる医事紛争として,大腸内視鏡による医原性穿孔は,最も頻繁なもの一つである.一般的な解決パターンとしては,(1)通常例の単純な観察検査における穿孔では,訴訟では手技的過失が肯定されて有責となる可能性が高く,多くの場合,医療側が責任を認める形で,訴訟に至らずに示談によって解決される.(2)高度癒着など困難例の観察検査における穿孔やホットバイオプシーにおける穿孔では,手技的過失の有無とインフォームド・コンセントが問題となり,事案毎に,示談・訴訟の別,有責・無責の別は異なる,(3)ポリペクトミー,EMRにおける穿孔では,適応基準の範囲内であれば,手技的には不可避の合併症と認められる可能性が高く,インフォームド・コンセント,療養指導の内容と合併症発生に対する監視の問題が争点となり,やはり事案毎に,示談・訴訟の別,有責・無責の別は異なる.大腸内視鏡診療に関する医療過誤の契機としては,(1)内視鏡検査・治療の適応,(2)インフォームド・コンセント,(3)前処置,(4)前投薬,(5)検査・治療手技,(7)偶発症の発見などが挙げられる.
    【治療標準化の影響】診療ガイドラインは,医事訴訟において「医療水準」認定の最重要証拠となると考えられる.従って,裁判官による素人判断を排し,診療行為に法的安定性を与え得るという意義の反面,臨床医の臨機応変な判断を事実上拘束し得るという問題点があり,その策定に当たっては,社会的影響への慎重な考慮が必要である.
    【外科手術】大腸切除術後の縫合不全は,訴訟に発展した事例が多い.一般に,縫合不全発生のみで医師が責任を負うことは少ないが,縫合不全の早期発見と適切な対処に関する注意義務は厳格に判断されており,慎重な監視と安全な対処に心掛ける必要がある.ドレナージの悪い大腸縫合不全の一般的予後は,縫合不全発症から再手術・ドレナージまでの時間が長い程悪く,12時間以上になるとショックに陥る危険性が高まり,48時間以後に再手術を行っても救命の可能性は極めて少ないとされている.術後管理については,縫合不全を疑うべき所見があるのに患者に経口摂取を続けさせていた事案で過失が問われている.
  • 2003 年 56 巻 9 号 p. 449-452
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
  • 2003 年 56 巻 9 号 p. 453-458
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
  • 2003 年 56 巻 9 号 p. 459-464
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
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  • 2003 年 56 巻 9 号 p. 465-470
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
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  • 2003 年 56 巻 9 号 p. 471-477
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
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  • 2003 年 56 巻 9 号 p. 478-483
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
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  • 2003 年 56 巻 9 号 p. 483-487
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
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  • 2003 年 56 巻 9 号 p. 489-494
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
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  • 2003 年 56 巻 9 号 p. 495-500
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
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  • 2003 年 56 巻 9 号 p. 501-506
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
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  • 2003 年 56 巻 9 号 p. 507-511
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
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  • 2003 年 56 巻 9 号 p. 513-517
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
  • 2003 年 56 巻 9 号 p. 518-519
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
  • 2003 年 56 巻 9 号 p. 520-524
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
  • 2003 年 56 巻 9 号 p. 525-547
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
  • 2003 年 56 巻 9 号 p. 549-703
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
  • 2003 年 56 巻 9 号 p. 705-774
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
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