日本大腸肛門病学会雑誌
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57 巻, 1 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 村上 三郎, 中島 三恵, 吉田 裕, 橋本 大樹, 辻 美隆, 大久保 雄彦, 浜田 節雄, 平山 廉三
    2004 年 57 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    血液透析治療中に繰り返し発症した宿便性大腸穿孔症例を経験したので,文献的検討を加えて報告する.症例は76歳,女性.慢性腎不全にて血液透析治療を受けている.3年前に宿便性S状結腸穿孔にてHartmann手術を施行されている.今回,突然の腹痛が出現し再入院となった.腹部X線写真および腹部CTで,freeairおよび多数の宿便を認め,宿便性大腸穿孔の再燃と判断し緊急手術を行った.S状結腸に穿孔を認め,その近傍に宿便を認めた.前回のストーマ造設部に新たなストーマを造設してHartmann手術を行った.
    水分摂取の制限を要した血液透析患者で宿便性大腸穿孔が発症したことを考えると,圧迫壊死という物理的因子以外に便塊表面の粘稠度の充進や腸粘液分泌減少などによって便塊が大腸粘膜へ強固に付着すること,さらに,それに続く大腸壁の局所循環血流障害などが本疾患の発症に関与している可能性がある.
  • 阿部 仁郎, 宗本 義則, 齋藤 英夫, 笠原 善郎, 飯田 善郎
    2004 年 57 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は45歳,女性.27歳時より子宮内膜症にてホルモン療法を受けていた.1995年5月に便秘,月経時の下血を主訴に当科初診.注腸,大腸内視鏡にて直腸狭窄を認め,既往歴,臨床症状,画像所見から腸管子宮内膜症と診断した.ホルモン療法と緩下剤にて経過観察したが臨床症状が悪化したため,外科的手術適応と考え,1999年8月2日低位前方切除および子宮全摘,左付属器合併切除を施行した.病理組織学的所見では腸管固有筋層内に子宮内膜の増生を認め,腸管子宮内膜症と確診した.術後は経過良好で再発兆候は認めず経過観察中である.
  • 五来 克也, 高橋 正純, 上向 伸幸, 小松 茂治, 籾山 信義, 金村 栄秀, 小金井 一隆, 橋本 邦夫, 鬼頭 文彦, 福島 恒男
    2004 年 57 巻 1 号 p. 12-16
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    深在性嚢胞性結腸炎(colitis cystica profunda:以下CCPと省略)に直腸癌を合併した1例を経験した.症例は43歳男性,直腸に長さ16cmにおよぶびまん型CCP発症後7年で,同部位に筋層浸潤を示す高分化腺癌(ss,nl(+),Stage IIIa)を合併し,平成13年3月直腸切断術を行った.病理組織像で,粘膜は粘膜下層へ嵌入し,典型的なCCPの像を呈しているなかに異形成を認め,癌細胞の筋層への浸潤とリンパ節転移を認めた.従来直腸に限局した隆起性病変を形成する良性疾患として知られるCCPであるが,発癌に関する報告は現在まで,本邦で1例,欧米では2例と極めてまれであり報告した.
  • 佐野 純, 太和田 昌宏, 國枝 克行, 佐治 重豊, 下川 邦泰
    2004 年 57 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は89歳の女性で,血便を主訴として近医を受診し当科を紹介された.注腸造影検査および大腸内視鏡検査により直腸Rs領域に40mm大の2型腫瘤影を認め,生検の結果,高分化腺癌と診断された.このため直腸癌の診断にて手術を施行した.腫瘍は盲腸,右尿管・卵管に癒着しており,直腸低位前方切除術に加え,回盲部切除,右尿管部分切除,右卵巣卵管切除を行った.切除標本で,腫瘍は虫垂から直腸を貫くように発育していた.病理組織検査では粘液嚢胞腺癌で,これに接する直腸壁は正常であった。以上の所見より,原発性虫垂癌の直腸穿通と診断した.自験例は特異な発育進展形態のため,直腸癌と術前診断したが,術後の検索で原発性虫垂癌の直腸穿通と診断されたまれな症例である.
  • 輿石 直樹, 木嶋 泰興
    2004 年 57 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    今回我々は極めて稀とされている虫垂原発の印環細胞癌の1例を経験した,症例は71歳男性,食欲不振と貧血を主訴に来院した.右下腹部に弾性硬の腫瘤を触知し,腹部CT検査で,盲腸内側に径5cmの腫瘤性病変を認めた.下部内視鏡検査で,盲腸の壁外性の圧迫と虫垂開口部の膨隆と浮腫状変化を認め,この部分の生検から虫垂原発の低分化腺癌と診断し,開腹手術を行った.開腹所見はリンパ節転移と腹膜播種をともなったStage IVの虫垂癌で,病理組織学的ではsignet ring cell carcinomaの診断であった.術後,化学療法を開始したが,患者の身体的理由により長期間の継続は出来ず中止とした.術後12カ月経過しても無症状で生存中である.大腸印環細胞癌は予後が極めて不良と言われる.虫垂原発印環細胞癌について考察を加え報告する.
  • 伊藤 正朗, 加瀬 肇, 下山 修, 小林 一雄, 平野 敬八郎, 伊原 文恵, 浜谷 茂治, 永澤 康滋, 田中 良明, 寺本 龍生
    2004 年 57 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    尾骨部嚢胞性疾患の3例を経験したので報告する.症例1:24歳女性.殿部仙痛および排便障害にて受診し,直腸後壁に腫瘤を指摘された.CT・MRI検査にて直径約6cmの嚢胞性腫瘤を認め,経仙骨的腫瘤切除術を施行した.症例2:60歳男性.直腸腫瘤を指摘されたが3年間放置していた.CT検査にて肛門から約3cm口側の直腸前壁に直径約2cmの境界明瞭な石灰化を伴う腫瘤を認め,経肛門的腫瘤摘出術を施行した.症例1・2では腺窩,絨毛,筋層問神経叢を有し平滑筋層と漿膜から構成され,嚢状型重複腸管と診断した.症例3:28歳女性.直腸後壁に仙痛をともなう腫瘤を触知し,MRI検査にて尾骨部嚢胞性疾患が疑われた.経仙骨的嚢胞切除術を施行した.病理所見では,重層円柱上皮で被われた管状構造が見られ,Tailgut cystと診断した.尾骨部嚢胞性疾患は術前診断が困難であるが悪性化をきたすことがあるので嚢胞を一塊に完全に摘出するべきである.
  • 亀井 秀策, 藤崎 真人, 高橋 孝行, 平畑 忍, 前田 大, 戸倉 英之, 犬塚 和徳, 船橋 益夫, 樋野 忠司, 石田 治
    2004 年 57 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,女性.便秘を主訴に近医入院.注腸検査で直腸の全周性狭窄を認め直腸癌の診断で当院紹介受診.同日緊急入院とし禁食にて管理した.数日後著明な腹部膨満,嘔吐を認めたため経肛門的にイレゥスチューブを挿入,減圧に成功した.腹部所見は一時軽快したもののチューブの自然抜去があり腹部膨満の再増悪を認めたため,全身麻酔下に虫垂を腹壁外へ挙上して固定し,経虫垂的にイレウスチューブを右側結腸に挿入した.効果的な減圧が得られ,閉塞部位口側の造影検査も可能であった.チューブ挿入後7日目に根治術を施行した.開腹したところ,腸管の前処置は良好で拡張はなく,低位前方切除術を施行し,チューブ挿入部は盲腸部分切除術を行った.術後は創感染を認めたが経過は良好であった.大腸癌イレウスに対する治療方針は施設によって異なるが,人工肛門を造設しない本法は初期治療の選択肢の一つとして検討すべきと考えられた.
  • 中村 隆俊, 三富 弘之, 大谷 剛正, 佐々木 真弓, 磯部 義憲, 佐田 美和, 佐藤 武郎, 根本 一彦, 國場 幸均, 井原 厚, ...
    2004 年 57 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は49歳,男性.約2年前より下血を繰り返すため近医で精査するも,原因不明であった.今回,当院に下血の原因精査目的で入院中に突然の大量下血を認め,腹部血管造影を施行したところ,空腸枝末端に出血源を同定し得た.超選択的に出血部近傍の動脈に留置したマイクロカテーテルより術中に色素を注入,腸管漿膜の色調の変化を確認した上で,腹腔鏡下に小腸切除を施行した.切除標本では,肉眼的に出血源は2mm大の血まめ様の腫瘤として認められ,病理組織学的にpyogenic granulomaと診断された.術後経過は良好で,術後8日目に退院した.小腸のpyogenic granulomaは極めてまれであるが,小腸出血の原因の1つとして念頭におく必要がある.また術中に病変部の確認が困難な小腸出血例における術中の動脈内留置カテーテルからの色素注入法は,切除範囲を決定するために有効な手段の1つと考えられた.
  • 石津 寛之, 近藤 征文, 益子 博幸, 岡田 邦明, 大沢 昌平, 植村 一仁, 横田 良一, 石山 元太郎
    2004 年 57 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌の肝転移切除後の肺転移に対する外科的治療法の意義を確かめるため,1977年から2002年12月までの大腸癌肝転移巣の切除例89例のうち肺に重複転移をきたし切除しえた12例の臨床病理学的所見を検討した.原発巣と同時性の肝転移例は7例で,3例は肝肺ともに同時性であった.残る5例のうち3例は異時性に肝肺同時転移を認め,他の2例は異時性に肝転移をきたしたのち,さらに遅発性に肺転移を認めた.12例とも術後在院死はなく退院した.
    12例の最終手術後の5年生存率は40.0%,5年無再発生存率は12.5%であった.1例が12年間無再発生存中である.最終手術後1年以内に再発した9例の各転移巣の出現間隔の平均は7.1カ月で,1年以上無再発であった3例の平均37.0カ月に比較し,出現間隔が短かった(p<0.01).
    大腸癌の肝肺転移例においても肝または肺単独転移例と同等の術後成績を得ることができ,特に長い期間をおいて各転移巣が出現する場合には長期生存も期待できることから積極的に手術適応を考慮すべきと思われる.
  • 小澤 広太郎, 金井 忠男, 栗原 浩幸, 山腰 英紀, 石川 徹, 橋口 陽二郎, 望月 英隆
    2004 年 57 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    1995~2001年に所沢肛門病院で経験した大腸癌症例の検討を行った.7年間に38,212例の大腸内視鏡検査が施行され,762例の大腸癌(進行癌498例,早期癌264例)が発見された.これは検査総数の約2.0%に達していた.進行癌では,男性の直腸癌が有意に多かった(p<0.01).平均年齢は進行癌(62.4歳)が早期癌(59.8歳)に比べ2.6歳高かった(p<0.002).当院の第一紹介病院である防衛医大第1外科で1995~99年に施行された大腸癌初回手術例743例を,当院から紹介した257例とその他の施設から紹介された476例に分け,両群の特徴を比較検討した.当院から紹介した症例では,主訴が出血である症例の割合が高く,腫瘍占拠部位では有意に直腸癌が多かった(p<0.0001).平均年齢は当院で有意に若年であるものの(p=0.02),臨床病期は有意に高く(p=0.01),痔疾患のある患者は出血しても痔からの出血と考え放置している可能性が示唆され注意が必要と考えられた.
  • 福長 洋介, 東野 正幸, 西口 幸雄, 谷村 愼哉, 岸田 哲, 西川 正博, 尾方 章人
    2004 年 57 巻 1 号 p. 55-56
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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